僅差でサイドエフェクト組が優勢だったのでこうなりました。
頭良くないので細かい流れとかなーんにもわからないや
「私に隊長は向かないことがよくわかった」
一戦目にて爆速で落とされた招木が言った。経験値があまりに違い過ぎる。一番の役立たずだった。チームで一番弱い駒は彼女だったのだ。そこを狙われた。
なるほどチーム戦とは強い奴と強い奴を戦わせるのではなく、弱い奴を優先的に落として自分たちに有利な状況を作っていくのねと学習する。
一戦目に臨む前、招木が出した指示は以下の通りだ。
迅は太刀川を、自分は出水を、影浦は烏丸を相手すること。1対1の個人戦のイメージがどうしても強い招木は、単騎で戦うものだと思い込んでいた。
「チーム戦術以前の問題だった。私はチームランク戦の戦い方を知らない」
「オメー真っ先に落とされてんじゃねーか!」
「その後2対1に追い込まれて影浦が落とされて、おれ3対1になってたもんな」
「次は合流優先かな。私たちは回避能力が高いから、そう難しくはないと思うけど」
「それで招木は火力でゴリ押しされてたよね」
迅の言う通りである。
招木が出くわしたのは出水だった。彼のフルパワーで削り殺された。「招木さんはおれが倒すって決めてるんで」と言った出水の笑顔には凄まじい迫力があった。
弾け飛んだ頭部は宙を舞い、出水の手の中に落ちる。逆さになった視界で見る微笑みはなんだか不気味だった。
「それでも逃げ切ってみせるよ。次は合流して数的有利の場を作る。乱戦に持ちこめたらそれがいいな」
「……ごちゃついても俺は連携できねーぞ」
「私は君とも迅とも連携できないから大丈夫」
どこが大丈夫なんだと影浦が胡乱げな目をする。「連携する必要はないんだよ」と招木が付け加えた。
「彼らと私たちの違いはサイドエフェクトの有無。あちらは勘や反射神経で乱戦を切り抜けようとするだろうけど、サイドエフェクトがある分こちらが優勢のはず。それに向こうも連携の練習はしていないから、やりにくいのはお互い様だよ」
結果から言うとだめだった。
数的有利の場は作れた。太刀川と烏丸を囲い込むように3対2に誘い込めたのである。二人を攻める迅と影浦、少し離れたところで援護射撃する招木。
しかし。
「大丈夫か?」
「っ、すみません、攻撃を捌くので精一杯で」
「相手はのらりくらりだからなぁ、穴を作りに行くか」
執拗に狙われる烏丸をカバーするように動いていた太刀川が、一瞬の隙をついて招木の方へ突撃する。乱戦の中心が2対1になった。
まさか烏丸を見捨てるつもりか? と招木が弾道を引く。
迅のスコーピオンをギリギリのところで躱す烏丸の背中を、影浦が狙った。
「見えてんぞ」
「やっぱ反応早えーな」
その影浦の首目掛けて、くるっと引き返した太刀川が孤月を振る。しかし不意打ちの効かない影浦が即座に対応する。
よってこちらに駆け出した太刀川に向けて放ったバイパーは無駄撃ちとなった。招木が再び彼らを攻撃しようとするも、援護射撃の一瞬の隙を太刀川は逃さない。
結局そのまま影浦から崩されてしまったのだ。
「クソ……」
「どんまいどんまい」
「あの場面で一番落としやすかったのが影浦だった。太刀川の駆け引きにあっさり騙された私のミスだね」
集団戦というのは難しい。全体の動きを把握しつつその意図を読み解かねばならない。
招木がまたもや学習していると、影浦が声を荒げた。
「は? いや、俺があいつにやられたから、」
「そもそもあの場をコントロールしなければならないのは私だよ。射手は離れた場所から攻撃できるのだから、二人が戦いやすいよう誘導する役目があった。できなかった時点で負けていたかな」
「……」
「つまり全面的に私の力不足。君が責任を感じるところじゃないよ」
影浦は現時点でものすごいことを成し遂げている。実践経験が少ない中、慣れない乱戦という状況下でもきっちり食らいついてきた。
同じようなことが烏丸にも言える。指示に従い格上との戦いに真っ先に落ちない時点で花丸ものだった。間違いなく今一番ノリに乗ってるC級隊員だ。
とはいえ、烏丸の方が周りが見えているが現状だ。影浦がより攻撃面に優れている分、好き勝手暴れるので招木のバイパーも連携が取りづらかった。サイドエフェクトがあろうと無理なものは無理だった。
そこを迅がうまくサポートしていた。太刀川の反撃をいなしながら。化け物である。
「さっきはああ言ったけど、やっぱり連携はできた方がいいと思う」
「わかってんだよそんなことは」
「間違いない」
この中で一番戦力差があるのは招木だ。
迅と太刀川、影浦と烏丸はそれぞれいいところまで競り合っている。だが残りの招木と出水では、圧倒的に出水の方が強かった。ここを埋めなければ彼らには勝てない。
彼女の能力差を均すため、より優秀なオペレーターがこちらについたのだと思われる。
埋めるピースとなるのは、やはりサイドエフェクトだ。出水が招木の実力の一部だと伝えてくれたもの。
ただそれを持ってしても力押しされたら負けてしまう。何か糸口はないものか。
『そろそろ時間よ。作戦会議に移った方がいいんじゃないかしら』
「そうだね、月見。教えてくれてありがとう」
適切に情報を送り届けてくれる月見の腕がなければもっと早く決着は着いている。流石は東隊オペレーターだ。
招木は彼女らに教えを請い、情報共有や進軍経路の予測、推奨される退避ルートを学んだ。
だが今日は目の前の相手に対応するので手一杯で、オペレーターをうまく活用することができていない。
「あ、思いついた。次の作戦」
「ほう。それはどんな?」
「運要素が絡むのと、特に月見に頑張ってもらう必要がある」
「それならオメーのサイドエフェクトがあんだから何とかなるだろ」
『いいわ、任せて。綾辻ちゃんの実践訓練も兼ねてるもの。もっと先輩オペレーターとしてできるところを見せないとね』
月見は自信たっぷりだった。
さて、三戦目が行われる。ランダムに配置された場所から戦闘開始となり、招木は真っ先にある人物のもとへ向かった。
「今度はどんな作戦を立てて来たんだ?」
太刀川である。未来視を持つ迅と互角以上に渡り合ってきた男。招木は彼を止めに来た。
オペレーターと密接なやりとりをしながら彼の攻撃を躱し、バイパーを放つ。回避に専念して必要以上に攻撃しない。射手という特性を存分に生かして、彼から距離をとっていた。
今は旋空オプションなしで戦っているので、招木が孤月の射程距離に入らない限りは一方的に撃つことができる。だが太刀川相手では普通に回避するか弾を斬られてしまうので、やはりこの男は化け物だと突きつけられる。
だからこそ、招木一人で相手をする意味があった。
「倒す気はなさそうだな。てことは足止め係か」
「そうだね。私一人では太刀川を倒せない」
あっさり看破されて素直に認める。
迅がいれば烏丸も出水も怖くないが、太刀川がいることで結局彼を止める役割を迅が担うことになる。
そうしたら自動的に影浦を烏丸が、招木が出水を倒さなければならないので、結局自身の性能差で負けてしまっていた。
となると、同じくらいの戦力の駒をぶつけてはだめだと思った。
だから招木は太刀川を止める役目を担った。一番弱い駒が一番強い駒を止めていれば、その間に。
『っし!』
『烏丸隊員ダウン。影浦隊員が一点獲得ね』
向こうの戦局が動く。
全員一つのトリガーのみという条件なので、本ランク戦よりも戦いはシンプルで短時間で終了する。
複数のトリガーをセットすればこうはならないし、招木も旋空孤月でとっくに落とされただろう。
「あー、こりゃ戻ろうとしても間に合わなかったな。そういう位置取りだった。月見の指示か?」
「優秀なオペレーターの力はすごいね」
2対2をする中心地に寄せつけない動かし方をしていた。これは月見の力が大きい。
もちろん太刀川もバイパーをいなしつつ交戦地点に戻ろうとはしていたが、遠くから一方的に攻撃できる射手相手ではそれも難しかった。時折駆け引きを仕掛けるがラッキーガールは乗ってこない。
そうこうしている間に、招木を力づくで倒して駆け付けても間に合わないくらいの距離は稼いでいた。
『出水隊員ダウン。あとは太刀川隊員だけよ』
「お、残りは俺だけだな。じゃあ戦るか?」
「いいえ。このまま二人と合流して3対1で倒すよ」
「最後まで気抜かねー。いいな、腕が鳴る」
「!」
太刀川が明確に落としにきた。狙い澄ました一撃を完全に躱し、確実に距離を離す。招木が展開する弾は太刀川ではなく建物を壊すのに使われた。
「とことん足止めに徹するんだな」
「自分の使い方がわかってきたからね」
太刀川の動きを邪魔することだけに尽力する。太刀川の進路は破壊した瓦礫で防いだ。
動線を指示するのは、太刀川の幼馴染であり東から戦術の指南を受ける月見だ。招木単体で考えるよりも、より面倒で厄介な道筋を破壊するよう指示してくる。
絶対に彼の間合いには入らない。射手の強みを保ち続ける。
力でゴリ押しされると弱いが、こちらだって運の良さで粘ってみせる。
「招木は戦い好きか?」
唐突に太刀川が質問した。戦いの最中、思考の裏で少し考えて答える。
「君のような猛烈な好きではないかな。でもこういう試行錯誤は楽しいかもしれない。自分だけの結果じゃないから」
サイドエフェクトにより決まりきった結末を辿るだけだった個人戦と違って、チーム戦は自分以外に他人がいる。
だから結果がわからない。みんなで勝ちたいとか、そういうガツガツした目標意識はないけれど、自分の一手で戦況が変わるのは招木には興味深い体験だった。
太刀川はふっと笑って、地面を力強く蹴る。いきなり接近してきた。回避は間に合わない。孤月の間合いに入ってしまうが、
「そこまでだ、太刀川さん。今回は勝ちを譲ってもらう」
駆けつけた迅が一刀両断し、目の前で太刀川はダウンした。
3-0。サイドエフェクトチームの初勝利、そして完全勝利である。
「やりゃアできんじゃねーか!」
「二人ともありがとう。転送位置がよかったみたい」
「太刀川さん相手にあれだけ時間稼いでくれたんだから、こっちも結果出さないとね」
わかりやすくテンションが上がっている影浦と違って、招木も迅も然程喜びが大きくは見えない。
招木は爆速で一番目に落とされようが最後まで生き残ろうがテンションに差が生まれないので相変わらずだが、迅のは少し違う気がすると招木は感じていた。
反省会をして次の作戦を立てて、まもなく転送開始という時に招木は隣に立つ迅に近づく。
「迅。様子見してるのか何なのかどうでもいいけど、太刀川とやってる時はもっとバチバチだったでしょ。ならそうして」
「!」
「隊長命令」
ゆるく握った手の甲を、迅の胸元にこつんと当てる。迅は驚いた顔をして小さな声で。
「はーい……」
と言った。まずい。招木が友人ルートを強制的に選んでくる。後で好感度調整しなくては。真っ先にそう思った。
─────────
「太刀川。そういえばコレ負けた方が罰ゲームとかあるの?」
「うわ勝ったからって調子乗り出したっすわこの人。てか罰ゲームって概念あったんだ」
「一回しか敵落としてないのにな」
「トータルで一番ダウンした回数多いの招木だからあんま言わないほうがいいよ」
「作戦勝ちってよりも迅で勝ってただろ」
チーム戦を終え、招木は出水と太刀川と迅に「図に乗るな」と言われた。
諏訪に誘われる麻雀では負けた奴が罰ゲーム行きなのでそう質問しただけだったが、チーム戦はそういう感じでもないらしい。まあ模擬戦でもそうだったし、と招木は大人しくなった。
囮役として主に太刀川や出水を引き受ける役を担った招木だったが、最後まで生き残ることはあまりできていなかった。
そんな彼女にダウンさせられた、この中で一番割を食った烏丸がボソッと言う。
「もっと理不尽な戦いになるかと思ってました。サイドエフェクトって俺からしたら未知なものですから」
烏丸はこの六人の中で動きが最も硬く、どこか緊張もしていた様子だった。
当然である。いきなり正隊員のトップを含めたチーム戦に参加させられて、普段通りでいる方がおかしい。
「まあ普通はもっと相手にならないだろ。俺らがチームだったからこんだけやったんだよ」
「未来読む奴と運で回避する奴と攻撃先を感知する奴だからな。おまえの器用さが随分と役に立った。全く将来有望だな」
「そうっすかね」
太刀川と出水に褒められても烏丸は平然としている。かなり二人に気に入られているが、まだ自覚していないようだ。
そのまま相手側が烏丸を褒めるフェーズに移行するので、迅は招木にチョイチョイと合図する。
「招木も。彼に何か言ってあげなよ」
「何を? 伝えるべきことは作戦会議と反省会で伝えたよ」
「いや、途中でフォローしなきゃって気づいて動いてたでしょ。それ相手にも伝わってるし、何も言わずに誤解になるのは防ぐべきだよ。特に招木は臨時隊長なんだから」
そう言われるとその通りな気がする。わかった、とこくりと頷いて招木は一匹狼の影浦に話しかけた。
「影浦、今日はありがとう。君のおかげで勝てたよ」
「ああ? 俺はただ……やりたいようにやってただけだ。おまえらが振り回されてたのも、わかってた」
「そうだね。私の指示通りに君は動いてくれていた」
ぐっ、と影浦が言葉を飲み込む。
たしかに彼が好き勝手するのを二人がフォローする形で主に動いていた。しかしそれでいいと招木は思っている。
急に迅や太刀川という化け物のいる戦場に連れてこられたのだから、必死に食らいつくので精一杯だったのだろう。
訓練生だから当たり前だ。招木は影浦より弱いが「あコレ私が頑張んなきゃだめだ」となった。正隊員のプライドは全く持ってないが、先輩としていいところを見せなきゃとかもないが、自然と支えなきゃなとなっていた。
「君は強いよ。そして君のおかげで、私には色んな課題があるとわかった。私はもっと強くなれる。だから、ありがとう」
多分今まで関わってきた諏訪や風間や加古……色んな年上の人たちもそんなふうに接してくれていたんだなと想像するくらい、招木はサポートの経験を積んだのである。
「クソ能力に動かされただけだ」
「そのサイドエフェクトも君の一部だよ。受け入れ難いのはよくわかるけど」
「……!」
「君に助けられた人間もいるということを、知っておいてね」
「オメーまたッ……、ちっ」
招木が影浦の背中をポンと叩く。影浦は何故か酷く傷ついた顔をしてそっぽを向いた。
その様子を、迅と出水が見ている。
特に迅は、胸の中で彼女が良い未来に繋がったことを実感して安心していた。
隊長を任せたのは影浦との交流を通じて周りを見る目を養うため。だがそれ以外の部分でも彼女の性質がよく現れていた。
どんな作戦でも実行することに躊躇いがない。立場や実力が上の相手に指示を出すことに抵抗がない。失敗したらとか不安がることもない。ボコられてばかりでも落ち込まない。淡々と自分の仕事に取り組んでいる。職人タイプだ。
いきなり隊長を任されても精神的に揺れることはまったくなく、サイドエフェクトの影響もありパフォーマンスが崩れる心配もない。
しかも今日の数戦で自分の使い方を理解し始めた。
「これから隊員はどんどん増える」
「ん? うん」
迅は独り言のように呟くが、それを拾ったのは太刀川だ。
「太刀川さんもいずれ隊を率いることになるし、この場の全員がそれぞれの隊に所属することになる。チームランク戦も今よりもっと賑わって、色んな戦術が編み出されて新しいトリガーも開発される」
「そうだろうな」
「だから今、こんなふうに自由に混成部隊を作って戦えるのも、珍しくなるかもな」
「はは、一番珍しい奴が何か言ってら」
今日芽生えた縁が巡り巡ってまた新しい未来を作る。そんな未来を予知する迅の目が遠くを見ていた。太刀川にはそれに見覚えがあった。
また別のものを見ているな、とわかった彼は顎を撫でるような仕草をして言う。
「あれだった時は、俺がここまでおまえを引っ張ってやるよ」
「すごいアバウトなこと言うね」
「今を生きてんだよ俺は」
「……そうだな」
約束なんてもんじゃない。必然を遠ざけた太刀川のふざけた子どもの独り言みたいなそれに、肩の力が抜ける心地だった。
「今日は助かったよ。今度カフェに行こう」
『あら嬉しい。綾辻ちゃんも誘っていいかしら?』
「もちろん」
お世話になった月見とそんな約束を交わした招木は、フッと短く息を吐く。
正隊員としての安定感の違いを見せつけられた。出水には同じ射手として格の違いを見せつけられた。
今まで幸運体質のことばかり考えていて、他のことも成長できたと思っていたが自惚れだったようだ。
実践に勝る経験はない。出水の言葉を思い出した。
「私もちゃんとボーダーの隊員にならないとね」
『? もうなってるでしょう?』
「立場ではない。心意気の話だよ」
苦手だなと思うけど、そこに楽しさを見出したならやらない理由はない。
気づけばボーダーでやりたいことが増えていた。
いつかの未来で「太刀川隊と戦って勝ったんだって」「え、あの面子が手を組んだの? やば」って噂が広まってほしいなって話
勝つのはどっち
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迅・招木・影浦(オペレーター:月見)
-
太刀川・出水・烏丸(オペレーター:綾辻)