あっ幸運体質だ、ラッキー!   作:睡眠人間

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居場所

「おれと招木が噛み合わないって話さ。おれが一方的にそう思いたいからだって、自覚はしてたんだ。情けない話になるけど」

「うん」

「こんな形でも突きつけられると思わなかった」

 

 迅の言葉は間違いなく懺悔の色をしていた。

 薄暗い通路に忘れ去られたように設置されたベンチに、迅と嵐山が座っている。二人の間には京都土産の空き箱があり、本部の人間に土産を配り歩いて、ようやく全部を渡し終えたところだった。

 柿崎らは先に行ってしまって、二人だけが残っている。

 

「招木が修学旅行を楽しみにしていたことは知ってたし、おれはここに残って見送るのも悪くないと判断した。そっちの方がよっぽど可能性が高かったから」

「わかってるよ」

「でも招木は違う未来を選んだ。写真を撮れなんて伝言もさ、本当なら彼女がやるはずだったのに」

 

 迅が選んだのは招木が学校生活を満喫する未来だ。その方が後々に繋がるし、何より招木自身がそれを望んでいると思っていたから。

 クラスメイトなので、修学旅行の班決めや事前学習の様子から招木がどれだけ楽しみにしているかよくわかっていたのだ。

 別の未来もあったが可能性はかなり低かった。老人についていかない未来を選ぶと迅は考えていた。

 しかしそうはならなかった。招木は迅とは違う未来を選択したのである。

 

「迅。それは違うだろ。"本当は・実際は"、そんなものは仮定に過ぎない。ただ一つの現実を生きているんだ。おまえは無数の未来が見えているんだろうが、結局俺たちがいるのは今なんだよ」

 

 嵐山が壁を見たまま訂正する。見るべきものを間違えるな、という指摘だ。

 

「招木は自分にできないことをおまえに託した。託されたおまえは応えた。それでいい」

「……ああ」

「存在しないものに囚われてはいけない。どうにもならない時は俺たちを頼ってくれ」

「嵐山は相変わらず頼りになるね」

「いつもおまえを頼りにしているからな」

 

 迅に顔を向けて嵐山が笑う。その笑顔は今までとは一線を画していた。

 前はもっと純真さがあるというか、まだ年相応に柔らかくて隙があった。今は凄みが出ている。揺らぎがなくて一定で、綻びがない感じ。

 でもすごく似合っている。前からこんなだったと思い込むくらい馴染んでいた。澄み渡った青空みたいな笑顔が、しかし曇りを帯びる。

 

「招木は無事だろうか……」

 

 招木からふんわりと過去の話を聞かされ、彼女が辛い目に遭っていないかと、ただそれだけが心配だった。迅がそれを気にしている素振りはないから要らぬ心配だとわかってはいるが、気持ちばかりは簡単に変えられない。

 上層部に報告した時、彼らは「招木は一時的に帰省している」とだけ返答した。つまり本人から連絡があったのだ。それ以上のことはわからない。嵐山は彼女の友人だがそれだけだった。

 代わりに招木が老人について行った場面の事情聴取をされ、迅への伝言は許可されたが、その他の話を周囲にすることを制限された。

 つまり上が絡む案件なのだ。

 

「無事だよ。危険な目に遭うとか、そういう未来は見えなかった。トータルで言えばメリットのが大きい」

 

 迅は嵐山を安心させるために言った。だがしばらくの沈黙の後、独り言をあえて聞かせるように呟く。

 

「……招木が何を選ぶかわからないから、祈るしかない」

 

 幸運の女神なんて存在しないのに、敬虔な信徒のようなセリフだった。

 

 

 

─────────

 

 

 

 それから招木の姿を見たのは、修学旅行からしばらく経った後のことだった。

 彼女のいない日常に慣れてきた頃、嵐山の携帯に連絡が入る。会議中だったので「すまない」と一言断り、ちらっと確認した途端。

 

「あっ!」

 

 突然嵐山が大きな声を出したので、嵐山隊室にいた全員が注目した。

 隊長はいつも冷静で落ち着いており、大袈裟に驚く姿はあまり見たことがない。

 時枝が静かに聞いた。

 

「嵐山さんどうしたんですか」

「上からの連絡事項でも?」

「その驚きっぷりは、さては彼女ですね」

「いや違うだろ。何かあったのか」

 

 綾辻が資料を片手にそう言えば、ほほうと訳知り顔をする佐鳥の頭をポンとして、柿崎が首を傾げる。

 温度感の違う四人の目に見つめられて嵐山は「何でもない。個人的な連絡だ」と言った。

 

「中断してしまったな。話を戻そう」

 

 嵐山は何事もなかったかのように切り替えて会議を再開する。頭は冷静で思考回路もクリアなのに、心は激しく動揺していた。

 招木からの連絡だったのだ。「久しぶり。今ボーダーにいる。今から会える?」という内容だった。

 会議を終えて確認や質問に漏れがないかチェックし、今日の嵐山隊の活動は終了となる。明日の流れを全員で確認して全てのやるべきことを片付けると、嵐山が一番に立った。

 

「すまないが急用ができた。鍵は任せていいか」

「ああ。構わないけど」

 

 急いているのは珍しく、柿崎が何か言いたそうな顔をする。しかしそれを待つ余裕がなくて、礼を言って嵐山は退出した。

 早足で移動しながら招木に電話をかける。ワンコールの後すぐに彼女の声がした。胸の奥が熱くなる。

 

『もしもし』

「今どこにいる」

 

 単刀直入に言えば招木は会議室の番号を伝える。「すぐに向かう」と返事をして電話を切り、途中から走ってそこへ向かった。

 

「招木、」

「嵐山。走ってきたの?」

 

 がちゃ! と音を立てて会議室に入れば一番手前の席に招木が座っていた。

 最後に見た姿よりも痩せて見えるが、ケロッとしている。酷いことはされていないらしい。そのことにまず安堵した。

 ずっと心配していた相手が目の前にいて、急に世界が色を取り戻したかのように鮮やかに見える。その衝動のままに嵐山は行動した。

 

「わ、」

 

 嵐山が招木に抱きつくと彼女は無防備な声を上げた。無抵抗のまま嵐山の体温を感じている。ぎゅっと力強く抱きしめられて動きづらそうにしているが、モゴモゴしている間に嵐山の背中に腕を回して、ポンポンと叩いた。

 ……長い。前は一回ぎゅっとするだけで終わるさっぱりしたハグだったのに、今回のは相当長い。

 

「男女だと意味合いが変わると言っていなかった?」

「物足りないんだ。もう少しだけ」

 

 耳元で囁く声は掠れている。切なげに眉をひそめる顔を招木が見ることはなかった。結局嵐山が満足するまで抱きしめられていた。

 やがて相手が離れていく。嵐山の顔は普段通りだ。抱擁のぬくもりはもうどこにもない。招木は自身の体に残るこの男の熱に触れるみたいに、無意識に自分の肩を抱いた。

 嵐山は会議室を観察する。この部屋は隊員と上層部との会議でもよく使われる場所で、椅子は誰かが座っていたようにそれぞれの方向を向いていた。

 

「他にも人がいたのか?」

「うん。さっきまで上の人たちと話していた」

「それは……あの日のことか? それともおまえの過去をか」

「両方だね。嵐山に話してもいいと許可はもらってる。座って」

 

 嵐山は招木の隣に座った。テーブルに腕を置いて、体ごと彼女の方に向ける。ぐっと前のめりになった。

 

「教えてくれ。どうしてあの日、同郷の人間と遭遇したのか。どうしておまえはついて行ったのか。どうしてしばらく帰ってこなかったのか。全部だ」

 

 不安が一気に爆発して捲し立てるように言った。

 招木は凪いだ目をしている。老人に怒鳴られていた時と全く同じだった。

 

「あの人は私に特に執着していた人。私をずっと探していたみたいで……防衛任務中にテレビにちらっと映ったのを発見して三門市に来ていた。あの人についていかなければ君に被害が出ると判断した。帰ってこられなかったのは、あの人たちとの関係を整理するのに時間がかかってしまったからだよ」

「……」

「言葉を失っているね」

 

 招木がフッと息を吐いた。椅子の背もたれに体重を預け、窓の外へと視線を向けて続ける。その疲れた顔は嵐山にもよく見えた。

 

「もう終わった話だ。ボーダーや公的機関が対応したから、あの村の人間に引っ掻き回されることはないよ」

「……確信があるのか」

「そのために村に帰った。自分の手で決着をつけたかったから」

 

 外はすっかり暗くなっている。窓ガラスに反射する自分の顔を招木は見ていた。

 

「近界民侵攻後に保護されたと言ったよね。あれはボーダー園のことなの。知ってる?」

「ああ。慰問に行くから」

「私は三門市の住民じゃないからそこに入る予定はなかったんだけど、当時の私の状況と証言から保護するって話になって。それにも時間がかかったな。色んな組織の大人に何度も同じ話をした。私の体質をサイドエフェクトと診断されたのもその時だよ」

「幸運体質だな」

「だから県外の保護施設じゃだめだったんだろうね」

「それで最終的にボーダー園に?」

「うん。ただあの時の私は周りを信頼できなくて。人だらけの環境にも馴染めなくて、早い段階で本部に住むようになった。ここならある程度身の回りの世話を職員がやってくれるから」

 

 ボーダー園とはボーダーの保護施設のことである。第一次近界民侵攻後に家族を亡くした子どもたちをボーダーが引き取り育てている施設だ。

 本来なら県外出身の招木がそこに加わることはなかったが、サイドエフェクト発現者であることから、ボーダーの力が強く関与した。そして行政と結託して村との関わりを限りなく減らしていったらしい。

 

「ただし村人が接触する可能性を完全にはなくせない。そこである措置をとることになった」

「措置?」

「通称名の使用」

「!」

「招木は本名じゃない。本名は私には馴染みがないから、今の名前を気に入っているよ」

「……そうだったのか。それは、彼らに追跡されないように?」

「そうだね。私も強く希望したし」

 

 本名に馴染みがないと言う招木の発言に嵐山は心を痛めた。以前「名前を呼んでもらった記憶はない」と言っていたから、家族以外にも招木は人間扱いされていなかったのだ。

 

「でも過剰だったかも。村に戻ってわかったことだけど、私への執着が薄れていたから」

「そう……なのか? あのおじいさんは違ったみたいだが」

「あの人だけ特別。一枚岩じゃなかったからね。他の村人にとっては、神託を受けに行ったよその土地で権力者が死んだから、私の能力を否定する口実ができた。私を災いをもたらす児子と決めつけた。権力を手に入れた家族の増長が酷かったから、反対勢力もいたんだ。今はその派閥が村を飲み込んでる」

「酷い話だ」

「だからまあ、私を迎えに来たあの人が最後だったんだよ。みんなとっくにいないものとして処理してたのに、あの人は御地に固執してボーダーを監視した。私が正隊員入りした時、公式ホームページに名前が載っても気づかれなかったのに、テレビに映ってしまったのは運がなかったなぁ」

「……どう対処した? それだけ強い執着心がある人間の心をどうやって変えた」

「夢を覚ましてあげた。神の子なんてもういないって」

 

 招木が言ったのはそれだけだった。具体性の欠けた結果論。それは「このまま死んでしまえばいいのに」と同じ響きをしていて、嵐山の背筋に冷たいものが走る。

 

「私は自分にできることだけをやって、あとは大人にお願いした。私じゃどうすることもできないから」

「ああ……」

「ボーダーには大恩がある。無事に戻ってこれたんだから、身を粉にして働かなければならないね」

 

 招木は今回の件でボーダーへの帰属意識をかなり強めたようだった。

 今までも決してなかったわけではない。仲間たちとの交流を深めて、ボーダーという居場所を大事に思っているのは嵐山も知っている。

 けれどその段階を突き抜けた。衣食住を握られている招木は、今後何があってもこの組織の味方であり続ける。その確信を嵐山は抱いた。

 ……モヤモヤするこの感情は何だろうか。看過できない違和感を見つける。だけど正体がわからない。

 

「私の話は以上。誰にも言わないでね」

「当然だ」

「次は君の番」

「俺?」

「修学旅行。話を聞きたい」

 

 今度は招木がテーブルに腕組みして身を乗り出す番だった。その顔は薄らとだが期待に満ちている。あれだけ楽しみにしていたのに、行けなかったことを後悔している感じはなかった。

 もう招木にとっては終わった話なのだろう。村の話も、修学旅行の話も。

 それが何故か悲しくて、一人だけ傷ついた嵐山は悟らせない笑顔で言った。

 

「迅に写真を頼んでいただろう? せっかくだからそれを見ながら話すよ」

「ああ、そういえばそうだった」

「招木が伝言を残していたから迅が代わりに行ったんだ。贅沢者とか言っていたけど、迅のことを心配していたんだな」

「違うよ」

 

 席を立った招木は、嵐山の座る背もたれに手を置いてぐっと体重をかけた。顔を近づけて言う。

 

「あれはただの嫌がらせ」

 

 

 

─────────

 

 

 

「連絡くらい、あー……や、忙しくて無理だったんだろ。やっと帰ってきたな」

 

 後頭部をガシガシ掻いた後、諏訪は招木の頭に手を置いてグリグリ回した。おかげで首がぐでんぐでんになっている。

 出会ったばかりの頃の招木の様子から、彼女が劣悪な家庭環境にいたらしいことは想像がついている。家族との関係が希薄とは思っていたので、招木が実家に帰省していると知らされた時は「帰る家があったのか」と驚いたくらいだった。

 とはいえ根掘り葉掘り聞くつもりはない。本人が話したければ話せばいいし、知られたくないのなら探るつもりもない。

 ただ心の奥底でぼんやり考えるだけなのだ。

 今諏訪が招木に向けて言いたい言葉は一つだけ。

 

「おかえり」

「……、……ただいま」

 

 招木はじっくりと言葉を選んで、やがて口角を緩める。肩の力が見るからに抜けた。

 

「修学旅行行けなかったって? 残念だったな」

「お抹茶、八ツ橋……」

「飯かよ。まあおまえらしいか」

 

 諏訪はクッと笑った。

 

「いーんだよ。二度と京都行けねーわけじゃねぇんだ」

「そうかな」

「そ。おまえが言えば一緒に行ってくれる奴はいくらでもいるだろ」

「諏訪も?」

「おー行く行く」

 

 照れ隠しにわざとぶっきらぼうに言えば、招木は目を細めた。とても嬉しかったらしい。

 諏訪の背中をちょんとつついて、鬱陶しそうに手を振られて吐息をこぼす。赤ん坊をあやすような些細な仕草にいちいち喜んでいる。その距離感が懐かしくてくすぐったかった。

 

「ねぇ諏訪」

「ん」

「諏訪と部隊を組みたいな」

「考えたいことは落ち着いたのか?」

「うん」

「そうか」

 

 正隊員入りした記念に焼肉を奢ってもらったとき、招木は諏訪と部隊を結成したいと伝えていた。しかし防衛任務を終えて、立ち止まって考えたいことがあるとも話した。

 その時の招木はまだ近界民への関心を失ったばかりで、自分が何をしたいのか軸が定まっていなかったのである。

 

「帰省する前にドリームマッチをして、楽しいなと思えた。自分だけじゃなくて、誰かと一緒に決められていない結果を求めたいと思った。信頼できる人たちと一緒にやりたいと。自分に足りないものを身につけていきたいと」

 

 諏訪からすると、驚くほどの成長ぶりだった。初対面の時は自分で考えることもできなかったのに、今は周りから影響を受けてやりたいことを見つけ、そのために行動できるようになっていた。

 

「その誰かは、物好きな君がいいな」

 

 回り道で色んな宝物を手に入れて最初の場所に戻っただけだ。

 

「もう一度確認しておくが、俺はガツガツ遠征を目指す部隊を作るつもりはない。あ、風間はボコボコにするけど」

「仲良しなんだね」

「ランク戦にゃ本気で臨む。チャンスがあるなら逃すつもりはねー。ただ、おまえが別のやりたいことを見つけたなら、そっちを優先しろ」

「わかった」

「それでもいいか?」

「うん」

 

 互いのやりたいこと、部隊へのスタンスは確認した。条件のすり合わせをして齟齬がないことを確かめると、諏訪が「じゃ、行くか」と目的地へ歩き出す。

 

「どこに行くの」

「一緒に部隊組むヤツらんとこ」

「決めていたの?」

「おまえ待ちだった」

 

 諏訪についていけば先に話を通しておいたのか、ラウンジに二人の人物が座っていた。

 四人がけのテーブルだったので空いた席に諏訪と招木が座る。招木はぺこりと頭を下げて、これからチームメイトになる面々に目を向けた。

 

「おっし、この面子で部隊を作る。前に決めていた通り、隊長は俺。銃手・射手のみの中距離火力特化チームだな」

「ついにですか」

「よろしくー」

「うん。よろしく」

 

 堤が穏やかに笑うと、小佐野が棒キャンディをコロコロさせる合間に言う。招木はその様子をのんびり見ていた。

 諏訪隊結成の瞬間である。招木は射手。諏訪と堤は銃手。小佐野はオペレーター。準備していた書類に四人で名前を埋めていく。これを提出すれば正式なボーダー部隊の一員となるわけだ。

 

「これからの防衛任務は基本隊ごとに回ってくる。連携の特訓しないとな」

「次のランク戦もありますしね」

「やることたくさん」

「まー何とかなんだろ」

 

 みんなソワソワした感じでこれからのことを話し合っている。気分が高揚しているのは招木も同じだったが、少し引っかかるものがあった。

 チーム戦に詳しくないが、同じ中距離ポジションが固まっているのはどうなのかと疑問に思う。具体的な長所・短所もろくに考えられないまま、ぼーっと考えごとに耽った。

 

「ねぇ、個人的に別のトリガーも使ってみたい。いい?」

「別の?」

「今マネキって何のトリガー使ってんの? 射手だからアステロイドと、あとは?」

「バイパー。マスタークラスには程遠いけど」

「正隊員になって任務に出た回数も少ねーから、トリガーの組み合わせは模索の段階だろ。そういうの含めて練習が必要だな」

 

 諏訪が腕を組んで言う。ただ招木が自分で考えてやりたいことなら、全力で応援してやりたいと思っていた。

 

「で、使ってみたいトリガーって?」

「スコーピオン」

 

 てっきりハウンドやらメテオラやら、射手用を口にするかと思ったら。招木が選んだのは攻撃手のトリガーだった。

 

「私は意図しない攻撃をしてしまうから連携が得意ではなくて。遠くから援護するよりも、相手に接近して乱す方が向いているかもしれない」

「中距離の旨みを殺すのか? 攻撃手に突っ込む射手なんて」

「普通は考えないかもしれないね。でも私にはサイドエフェクトがある」

 

 小佐野は噂程度にしか招木のことを知らないので、どういうこと? と諏訪を見る。彼は頬杖をついて視線をよそに向けてから、「いいんじゃね」と言った。適度にほったらかしな声色だ。

 娘におもちゃをねだられた時にお父さんが無責任に「買ってあげたらいいんじゃない」と言う感じである。

 そして真っ先に加古の顔が頭に浮かんだ。師弟は似るんだなと思う。

 

「近中距離で敵にドカドカ攻め込むイメージか。アリかもな」

 

 爆発力に賭ける部隊。

 自分たちらしくていいかもしれない。

 

「何にせよしばらくはチーム戦の訓練を中心にしねーとな。隊としての連携力は課題だ」

「はい」

「招木。新しい武器を覚えるのは構わねーが、優先順位をつけろよ。全部やろうとしても時間を浪費するだけだ。目的と手段を明確にしろ」

「わかった」

「すわさん、作戦室っていつもらえるの? 持ち込みってどこまでアリ?」

「私物化すんじゃねーよ」

 

 後に麻雀卓を導入する男が文句を言った。

 そこから招木以外の三人が「とりあえず小説は持ち込む」「小説原作の映画見たい」「大きなテレビとかないかな」「招木って小説読んだことないのか? あとで貸してあげる」と話が盛り上がっていき、真面目な話から脱線していった。

 自分たちのための部屋というのはとても魅力的なのだ。やがて「無理だとわかってるけどこういうのが欲しい」「他の隊の作戦室見に行かね?」「見学させてくれますかね」と好き勝手言う時間になる。

 招木はとっくに本部に自分の部屋があるから気にしていなかったけど、そういうものなのかと思った。なるほど、自室に好きなものを増やしていっていいかもしれない。

 何があるかな。私の好きなもの。たくさん増えたな。

 

「招木は?」

「何?」

「作戦室できたら何置きたい?」

 

 諏訪に聞かれて、招木はじっと目を見つめ返した。

 とりあえず諏訪は必要だな、とぼんやり思った。







第一章完!の気持ちです
次は原作軸に時間進めてもいいし、またじっくりのんびり原作軸まで進めてもいい。


以下やりたいネタ
・諏訪さんにお世話になった草壁ちゃんと招木
・回避力を高めるために体操に興味を持ち教わりに行く招木と無言の宇野
・諏訪隊vs風間隊(スタアメーカー…)
・ボーダー園出身の六田ちゃんと一瞬しか居なかった招木
・外れる弾は撃たない主義の当真vs必ず回避する招木の矛盾
・加古炒飯回
・幸運で無双する回(in商店街の福引)

あと関係性が濃い人たちとの絡みもねっちり描きたいです。どんどん拗らせたい
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