あっ幸運体質だ、ラッキー!   作:睡眠人間

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※後半に大幅な加筆をしたので再投稿しました。申し訳ございません。


一人称とか相手の呼び方がわからない人が多くて泣く
今回は加古さん月見さん綾辻さんに遊ばれて〜〜〜という邪な気持ちで書きました

原作にある綾辻さんの隊長、隊員呼びは実況だからであり、その場を離れたら変わる説ないかなと思ってます




飼い主

「ひとまず教えられるのはこんなところかしら。わからないところも一通り解消できた?」

「うん。ありがとう、月見」

「いいのよ。面白い時間だったわ」

 

 ぺこりとお辞儀をする招木に、月見は長い髪を耳にかけて微笑んだ。

 太刀川の幼馴染である月見は、東に戦術を教わっている真っ最中。かつ現ボーダーでの最強部隊である東隊のオペレーターであり、今日はたまたま中央オペレーター所属の新人教育に呼ばれていた。

 そこに訓練生が突撃してきて、予定が崩れるかと思いきや「戦闘員の意見も取り入れつつやってみましょう」と月見が提案し、指導は強行されたのだった。

 

「けどね招木ちゃん。本当は先にアポを取っておくべきよ。いつでも対応できるわけじゃないから」

「アポ」

「前もって約束を取り付けること。って、どうしたの?」

「あ。ううん。何でもないの。教えてくれてありがとう」

 

 招木は「考えるより先に答えを教えてもらってしまった」と少し微妙な気持ちになっていた。

 諏訪にアドバイスされたように「自分で考えて行動する・何でもかんでも相手に委ねない」というのは、相変わらずとても難しいことだった。

 

「そういえば、さっき太刀川くんに連絡したんだけど構わなかったかしら。以前からあなたのことを聞いていたものだから、つい教えたくなってしまって」

「大丈夫だよ」

「よかった」

 

 招木が中央オペレーターまで突撃したのは、諏訪に『主体的な状況判断と情報共有をしろ』と言われたからだった。

 自分で考えることができていないと指摘されたから、それもできるようになりたかった。

 戦闘でのコミュニケーションを鍛えるために何をすればいいか。二週間ほど時間をかけてじっくり考えて、辿り着いたのがオペレーターだった。

 

 オペレーターは戦闘コミュニケーションのスペシャリストである。戦闘中の隊員の視界に、様々な情報をリアルタイムに映し出す役割を持っているのだ。

 レーダーに映った敵のタグ付け、部隊合流までの道筋や逃走経路、側面・背後の敵や狙撃手への警戒警報、敵隊員の移動予想、戦術展開図など、その時々で変わる必要な情報を選び、優先順位を決め、いち早く共有する。

 戦闘における全体把握と情報の取捨選択において、彼女たちの右に出るものはいない。

 

 そんなオペレーターたちに教えを請えば、自分でも上手くできるようになるんじゃないか。部隊にとって必要な存在になれるんじゃないか。

 ……諏訪も組みたいと思ってくれるんじゃないか。

 そんなふうに期待して、後先考えずに突撃したのである。

 

「よくここまで教わりに来たわね。訓練生だからオペレーターと関わる機会は少ないと思うのだけど、その発想は誰が?」

「私。ただ、100%じゃない」

「どういうこと?」

「東隊の防衛任務の記録を見返して気付いたの」

 

 自分を変える糸口を掴むため、招木は記録を見返していた。戦闘における情報収集と共有についての課題だったから、それに直結する記録からヒントが得られないか探していたのだ。

 だがレベルの高い東隊の動きを理解することは不可能だった。参考にするには今の自分は何もかも足りていない。そう思って映像を止めようとした時だった。

 

『あ』

 

 間違ってタップしてしまって、映像が数十秒後に飛ぶ。戦況は変化していたが、東隊が優勢なのは明らかだった。

 今度こそ正しい操作をしようとしたが。

 

『二宮さんの方に標的が集まっているわ。北からも二体接近中』

 

 オペレーターである月見の声に、指が固まった。

 これだ、と直感的に思ったのだ。それは幸運体質が発揮された瞬間であり、ここでもサイドエフェクトに邪魔されたと招木は思った。

 全部、自分の力で見つけたかったのに。

 だがヒントは得られた。それから招木はオペレーターにばかり集中して色んな記録を漁り、やはり彼女らの頭脳が自身の成長になると確信した。

 

「あら。私がきっかけだったのね。嬉しいわ」

「うん。意識して聞いてみると状況判断が正確で、すごいと思った」

「褒められちゃった」

 

 そこへパタパタと可愛らしい足音が駆け寄ってきた。二人が見れば、ピカピカの新人オペレーター、綾辻である。今日は彼女に指導するために月見がやって来たのだ。

 二人の前で立ち止まると、乱れた前髪を直しながら綾辻がにこっと微笑んだ。

 

「あのっ、お二人ともこの後お時間ありますか?」

 

 

 

 

 

 

 

「よかった勇気出して。ボーダーにいる女の子って少ないから、お友達になれたらって思ってたんです」

「私もよ。かわいい後輩オペレーターが来てくれて嬉しいもの」

「とても優秀だって聞いてるわ。将来どの部隊に所属するか楽しみね。ねえ招木ちゃん」

「うん」

 

 正統派優等生の綾辻。高嶺の花と名高い月見。セレブリティ溢れる加古。そしてムチムチわんちゃんの招木。

 やたら目立つ四人の女子会がラウンジにて行われていた。それぞれ別方向に有名で注目を浴びる人物なので、その場にいる全員の視線が集まる異様な空間だった。

 綾辻が月見と招木を誘い、道中通りがかった加古も加わり、異例の女子会が開かれる運びとなったのだ。

 自己紹介を終えて、雑談をして、女の子らしくキャッキャウフフと花を咲かせていたのだが。

 

「じゃあ、ラッキーガールって招木さんのことだったんですね」

「幸運ってどこまで適用されるの?」

「ちょっと試してみたいわね。じゃあ、はい。どっちの手の中に物が隠されているでしょう」

「こっち」

「ハズレですね」

「物を当てても私には得がないから」

「残念。飴をあげようと思ってたのに」

「もう一回しよう」

「リトライするんですか」

「こっち」

「当たりよ」

 

 やがて招木の幸運体質に議題が移った。サイドエフェクトというのはとても珍しいから、女の子たちは興味津々だったのだ。

 飴玉を手に入れてさっそくコロコロ舐め始める招木。その様子を生暖かい目で見守っているのが月見と綾辻、面白いオモチャを可愛がりたくなっているのが加古だった。

 

「いつも運がいいとなれば、今日の運勢とかラッキーアイテムも関係ないのかしら」

「毎朝ついつい見ちゃいますよねー」

「星座占いもどうなるの? 興味あるわ」

 

 三人寄れば文殊の知恵というが、乙女が三人集まったことで女性的な視点での分析が始まった。分析というか言いたい放題である。本格的な予測ではなくお喋りの一端だ。

 このくらいの軽さで幸運体質を取り扱われたことはない。軽薄とかの部類ではなく、日常会話の一部のような手軽さだった。

 だから招木は少し驚いてしまって、黙ったまま飴玉をコロコロするだけである。

 

「招木ちゃん」

「加古」

「ジャンケンしましょ」

「ジャンケン。やったことある。いいよ」

「……あら」

 

 手を差し出した招木のグーを、加古はぱくん! と片手で包み込むようにして食べてしまった。月見が小さく声を上げる。

 招木はぱち! と大きく目を開いて、それからよくわからない顔で加古を見つめる。リアクションに困っているという感じではなく、加古の行動の意図が不明で不審がっているようだ。

 

「うふふ。ごめんなさい。からかいたくなったの」

「そう」

 

 そのまま加古に手をニギニギされているが、無抵抗である。その様子を見ていた月見が「あ、そうだわ」と招木に話しかけた。

 

「私、手相を見るのが得意なの。招木ちゃん、手を見せてくれる?」

「わかった」

 

 ニギニギされていない方の手に月見が触れる。しばらくフニフニ触っていくがそれだけであり、手相を見ていないのは明らかだった。

 しかし招木はなされるがままであり、それを指摘するようなこともない。好きなだけフニフニされている。

 

「うーん、ごめんなさい。そういえば私手相をよく知らないんだったわ」

「そうなんだ」

「お詫びにマッサージしてあげる」

 

 その流れで月見にも手をニギニギされてしまう。招木は大人っぽくて美しい人に両手を揉まれても、年頃の男の子らしく手汗をかくことも幼い乙女のように頬を染めることもなかった。

 無防備に他人に二本の手を差し出して自由にさせている。その様は、なんというか。

 

「遊ばれてる……」

 

 綾辻が呟いた通りだった。

 完全に加古と月見に弄ばれている。それなのに招木は遊ばれていることに気づかず「なんかずっと手をニギニギされている」と思いながらそのままにさせていた。

 ちょっと真剣な表情にも見えるので、気を抜くと笑ってしまいそうになる。

 

「こう……このまま触れていると幸運パワーか何かがもらえるのかしら」

「パワースポットみたいね」

「幸運体質が他人に移ることはないよ」

「あらそうなのね、残念」

 

 加古と月見はそのまま優雅に会話するし、招木もスッと入ってくる。すらっとしたレディたちの輪に、お座りして混ざっている犬みたいだった。

 客観的な位置にいる綾辻だけがその風変わりな光景を見ている。

 

「綾辻ちゃんもいらっしゃい」

「えっ、わたしも?」

「楽しいわよ」

 

 お姉さまに呼ばれてしまったので、綾辻もその輪に入った。

 

「招木さん、嫌じゃないですか?」

「嫌ではないよ」

「もう。そういうときは嬉しいって言うのよ」

「嬉しい、嬉しい……?」

「綺麗な人に囲まれて触られているんだから、嬉しいに決まっているじゃない」

「あまり決めつけてしまうのもどうなんでしょう……」

「やめてほしいって言わないとずっとこのままよ」

「ずっとは困る」

「じゃあ"やめてね"って言わなくちゃ。周りは助けてくれないわ」

 

 加古が微笑み混じりに指摘する。ふむ、と招木は頷くが、一向にやめてほしい旨を口にすることはない。

 

「やめてって言わないの?」

「ちゃんと考えてみたら、あんまり困らないことに気づいたからね」

「まあこの子ったら」

「そんなこと言ってたら、どんどん困らせたくなっちゃうかも」

 

 優等生の綾辻も流れに乗っかってしまう。

 招木は警戒心のない犬っころみたいな感じで、頬やら二の腕やらをもちもちつんつん自由にさせていた。

 完全に味を占めていた。飴玉を舐め終わった途端チョコレートを月見に「あーん」させられたので、新しい甘みに夢中なのである。バカ犬であった。

 

「何だか……こうしていると、傅いているみたいですね」

 

 オアシスで美しい女を侍らせて、大きな葉っぱで仰がせる大王様みたいな構図だなと思った。

 悪気なく笑い混じりに綾辻が言った時だった。

 

「っ、」

 

 招木が月見の手を思い切り振り払った。パシ、と乾いた音が響く。振り払おうとしたのではなく、反射的で制御できない感じの動きだった。

 一瞬で空気がひりつく。

 

「!」

「あ……月見、ごめんね」

「いいのよ。全く痛くなかったし、からかい過ぎたわ。こちらこそごめんなさいね」

「わたしもすみません。嫌なことを言ってしまったみたいで……」

「綾辻のせいじゃない。とにかく気にしないで」

 

 すぐに謝り合ったおかげで強張った状態は解けたが、少しよそよそしい空気が流れ始める。

 お姉さまたちは招木をニギニギたぷたぷしなくなった。その代わりに、加古が頬杖をついて唐突に言う。

 

「うーん。やっぱり私が飼いたいくらい可愛いわ」

 

 いきなり何を言い出すんだこの人、と綾辻は思った。だがすぐに思い至る。ああ、この空気を変えようとしてくれているのねと。

 だから意識して柔らかい声を出して話を繋げた。

 

「加古さん、招木さんは人ですよ?」

「わかっているわよ。でも仕方ないじゃない、欲しいって思ったんだもの」

 

 比較的付き合いの深い加古の考えは、月見には手に取るようにわかる。加古は空気を変えようとして言い出したのではない。可愛いなと思ったから、可愛いなと声に出して言っただけなのだ。

 月見が招木をチラと見る。獲物になってしまったわね、と少し哀れに思った。

 いきなり加古は招木の手を引く。無抵抗に引っ張られ、丸い顎に細い指を添えられた。そのまま顎をくいっと持ち上げられて強制的に視線を交わらせる。至近距離で加古の妖しい瞳が細められた。

 キャッと綾辻が顔を赤らめる。

 

「どう? 色んな男の子たちと遊んでるみたいだけど。私が一番可愛がってあげるわ。後悔なんてさせない」

「……」

「あなた、射手なんでしょう? 私もなの。色々と教えてあげられることもあるし。……どうかしら?」

 

 熱烈な口説き文句である。セレブ感満載の加古が唇に熱を乗せるだけで、ポッとなるほど情熱的になる。

 ストレートな愛の言葉をぶつけたれた招木は平常通りの顔つきだった。驚きも動揺もしていない。まっすぐに加古の瞳を見つめ返している。

 招木は何と返事するのか。それとも加古がさらなる勧誘をするのか。固唾を飲んで見守る乙女たち。

 その緊張状態は、バン! と硬い音で断ち切られた。

 

「待った」

「!」

「あら、見つかっちゃった」

 

 突然机を叩いて現れたのは諏訪だった。後ろに太刀川と東もいる。月見が首を傾げた。

 

「太刀川くん。どうしたの?」

「や、面白いことになってるって注目んなってたから」

 

 麗しい女性陣の密談を聞きつけてやってきたようだ。

 加古は招木の顎の下をくすぐるようにしてから、余裕たっぷりに足を組んで諏訪を見上げた。

 

「諏訪さん、あなたが招木ちゃんの飼い主? この子、私にくださいな」

「飼い主じゃねーわ。それに……」

 

 諏訪は顎でしゃくって招木を示した。

 

「……どうするかは本人に聞け」

「……!」

 

 二週間ぶりの対面だった。

 招木は諏訪に「自分で考えて行動する」ことを課せられ、そのためにオペレーターに教えを請う選択をした。

 今回も同じだ。諏訪は招木にどうすると尋ねた。誰かの言いなりになるのではなく、自分で考えろと委ねたのだ。

 では招木はどうするか。加古に可愛がられるか。断って今まで通りに過ごすのか。

 

「私は、」

 

 その時、招木の頭にある言葉が浮かんだ。

 

『俺もおまえとは組みたくない』

 

 二週間前の諏訪の発言だ。この言葉は、諏訪の本心だったのだろう。しかしこれは招木を貶す意図ではなく、発破をかけるためのものだったと理解している。

 そうだ。諏訪は招木の成長のためにアレコレ画策してくれる人だった。木崎を紹介したり厳しい指導をしたりして、ひたむきに招木のためになることをしてくれる。

 なら、ここで自分が取るべき選択肢は。

 

「加古のところに行く」

「、え」

「ま」

「……諏訪とは組みたくない」

 

 強い人に教わるのが一番だと思った。

 逃げ道を防いで一人でやってみせるという気持ちの現れだった。

 

 結果、二週間ぶりにようやく顔を見合わせた諏訪をこっ酷く振る選択をしたのだった。

 ここぞという時の言葉選びが壊滅的な女だった。参考にした元のセリフがあれだったということもある。

 招木のどこまでも淡々とした発言に、諏訪はピシャーン!!!と雷が鳴るような衝撃を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

「悪い子ね」

「?」

「あら無自覚? じゃあ撤回。唆されただけね」

 

 加古は招木の腕をとって優雅に歩いていた。面白そうな子を自分のものにできてとっても嬉しいのだ。ご機嫌なのである。

 招木はやはり無防備にトコトコついてくるばかりで、事情をきちんと理解していないのだとわかった。

 加古の予想だが、諏訪は招木に自分のもとに帰ってきて欲しかったはずだ。なのに帰ってこないどころか拒絶までされてしまったので、だいぶダメージを受けたみたいだった。

 

「太刀川くんにいじられているのを見たわ。私も参加しようかと思ったけど、さすがに可哀想だったからやめてあげたの」

「誰の話かな」

「諏訪さんよ、もちろん」

 

 すると招木の表情にも変化が現れる。口元がぴくりと動いた。だがそれだけだ。固く閉ざされた口から何か言葉が発せられることはない。

 

「でも遠慮はしないわよ。あなたが私を選んだんだから、それに全力で応えるつもり。うふふ、弟子といったところかしら」

「随分嬉しそうだな」

「東さん。いいでしょ、この子。私が誘ったのよ」

「俺も現場にいたからな。一通りの事情は見ていた」

 

 手を焼くうちの隊員が弟子をとるなんて。時間が経つのは早いものだなと東は笑っている。

 

「私はいずれ隊長になるわ。だからここでの指導は絶対に活かせると思うの。いいえ、活かしてみせる。任務には絶対支障をきたさないようにするから」

「好きなだけやれ。そのための隊長だからな」

「やった! じゃあ、二宮くんや三輪くんには内緒ね」

「ええ? どうして」

 

 内緒にしたところで、あの時のやりとりはものすごい注目を浴びていたせいで広まっているだろうに。

 しかし加古は別の考え方をしていた。招木と指を絡めて微笑む。

 

「二人ともすごく無愛想でしょう。だから鳩が豆鉄砲を食ったみたいな顔を拝んでやりたいのよね。そのために伏せられる情報は伏せておきたいの」

「おお……すごいやる気だな」

「あの男たちのギャフンが聞きたいのよ」

 

 加古には加古の目的があるようだった。まあ冗談なのだろうが。きっと。

 東はさっきのNTRじみた光景を思い返す。気づけばガラの悪い男が可愛がっている犬をしれっと手懐けたセクシーな女の図みたいになっていた。口を挟む隙もなかった。

 まさか信じて待っていた妹分が結果を出したと喜んだのも束の間、別の女に盗られるなんて。

 あの時の有頂天から一気に叩き落とされた時の諏訪の心境よ。あれはむごい。

 あいつ何も悪いことしてないのに……後で焼肉奢ってやろう。東はそう決意する。

 そして兄貴分を地獄に突き落とした張本人がどんなつもりであんなことを言ったのか、東は知りたかった。

 

「招木。ちょっと聞いてもいいか?」

「何?」

「どうして加古を選んだんだ。……しかもあんな言い方で」

「そうね。私も知りたいわ」

 

 二人分の視線を集めた招木は、ウロ、と言葉を探すように視線を下に向ける。

 

「まずは、射手としての技術を高めたかったから。今一番強い部隊は東隊で、加古はそこの射手。教わるなら一番の適任だと思った」

「そうね。もう一人トリオン能力でゴリ押ししてくる男がいるけど、あんなのよりもずっと私の方が適任だわ」

「……最近は戦術方面を伸ばしているから、力押しだけじゃなくなってきてるが、まあうん、そうかもな」

 

 そこはわかりやすい理由だ。筋が通っているし特に疑問も見つからない。

 問題は次だ。あの突き放すような発言について。

 二人が静かに続きを待つが、招木が口にしたのは。

 

「それと……あんな言い方というのは、どれのこと?」

 

 諏訪を拒絶した発言に、まるで心当たりがなかったのである。これに二人は「あ」と思って、どちらから言うべきだろうと目を合わせた。

 この場において招木を育てる役割を持つのは加古だ。だから彼女は「ああ、諏訪さんはこういうのも教えてあげていたのね」と理解して、その責任の重さを知った。

 

「諏訪さんとは組みたくない、だったかしら? 言われた本人は傷ついていたみたいだけど」

「ああ、それね。それは、諏訪に同じことを言われたから」

「言われた? 招木ちゃんとは組みたくないって言ったの? 諏訪さんが?」

「うん。だから参考にしたの。多分あの言葉は私を奮い立たせようとしていたもの。それで、諏訪に全部を教えてもらうわけにはいかないから、一人でやるよって、そういう決意表明みたいな……そのつもりだった」

「あー……なるほど、ああ、そういう……」

 

 東が難しい顔で唸る。彼は諏訪側の事情も聞いていたので、ある程度の状況を把握できた。

 しかし加古はその辺りの話を全く知らないので、もう少し別の言葉を選べなかったのかしらとちょっぴり思ったりした。

 つまり招木は自分を勇気づける目的で「諏訪と組みたくない」と言ったのだ。それがまさか相手を傷つけることになるとは思わなかったみたいだが……。

 

「……招木ちゃん。あなた、諏訪さんにそう言われた時、どう思ったの?」

「どう? 最初は嫌だなと思ったよ。すぐに発破をかけるためと理解したけど」

「じゃあ諏訪さんも、あなたに同じことを言われて嫌だなと思ったでしょうね」

「!」

「自分が傷ついた言葉を人に向けてはだめよ。意識していなかったんでしょうけど、これからは気をつけなさい。いずれ部隊を組みたいのなら」

「? 部隊?」

「諏訪さんと一緒の部隊になりたいんじゃないの? 私にはそう聞こえたわ」

 

 話によれば、諏訪はだいぶ招木を可愛がっているのが伝わってきたし、招木も諏訪のことを最も意識しているのが手に取るようにわかった。

 だから自然とそう思って質問したのだが、本人はピンときていない顔だ。

 

「わからない。ただ組みたくないと言われて悲しかったから、嘘でもそんなことを言われないくらい強くなりたいと思ったよ」

 

 そして胸の内にある感情を丁寧に拾い上げるみたいに、とてもゆったりした口調でそう言った。

 その言葉を聞き届けた加古が自信たっぷりにウインクする。

 

「大丈夫よ。私が必ず強くしてみせるわ」

 

 







この二次創作は全体的に暗い話にしようとしてたのに全然そうならないなと思ってたけど、今の生活満喫してウメーもん爆食してるデブ犬が主人公だからだった、そりゃそう
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