神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
2人の男女は、それぞれデザインの異なる革鎧を装備していた。赤の短髪の男は腰にウエストポーチ、背にはリュックを背負っている。左手の甲に丸盾が取り付けられ、右手は短槍を持っていた。
茶髪ショートカットの女は赤髪よりも軽装だ。ウエストポーチを装備しているが、それ以外には特に身に着けていなかった。
2人の外見はどちらも20代後半くらいか。彼らは俺たちを警戒している様子だ。
「一番ちっこいのはエルフかぁ? 冒険者じゃなさそうだが、ナニモンだ?」
赤髪が尋ねてくる。何と答えようか。この人たちも俺たちを悪魔呼ばわりしてくるかもしれないから、回答は慎重にしないといけない。
スーフェリアも警戒しているように見える。以前は、善意で助けようとしたら襲われたからな。どのように話し始めようか迷っているみたいだ。
「あー、私たちはね、エルフの村から逃げてきたんだよ。遭難者ってのは合ってるね」
「エルフの村から……? 森の奥にあるって噂は聞いたことがあるが、何があったんだ?」
「悪魔ってやつにね、襲われたんだよ」
「悪魔……? そいつは魔獣なのか?」
悪魔に襲われたことにして、この人たちから情報を集めようって魂胆か。
10年前に大災厄を齎した悪魔、たしか大男はそう言っていた。その正体はスーフェリアの友達らしいが、もっと詳しい情報が欲しい。
人違いで何度も襲われたくはない。
しかし、この様子では知らなそうだな。悪魔は一般的には知られていないのだろうか。
「え、えっとね。私はか弱いからさ、逃げるだけで悪魔を見てないんだよね。リーシェは見たよね? どうだった?」
こいつ、焦ったからって最悪のバトンパスしやがった。
リーシェには悪魔と呼ばれたことを伝えていない。今も、何故スーフェリアがこんな話をしているのか理解できていないはずだ。
せめて俺に話を振ってほしかった。
「え!? い、いやー、悪魔ですね。あの、悪魔ですよね。その、あの時は逃げるのに精いっぱいで。怖くて記憶が混濁しちゃって。魔獣なのかは、わかりません」
「そうか……悪いことを聞いたな」
リーシェはしどろもどろになりながらも頑張って答えた。
ごめんな、無茶ぶりしちゃって。後で詳しく説明してあげよう。それと、お詫びに何かお願いを聞いてあげようかな。
スーフェリアは叱ろう。
「ラナは悪魔ってのを知ってるか?」
「……聖教国出身の冒険者がなんか言ってた気がするわ。聖教国の街を破壊したとか、まだ討伐できてないとか。人型らしいから魔獣というより魔物かも」
茶髪の女はラナという名前らしい。ラナは悪魔について聞いたことがあるみたいだ。
「あいつか……」
スーフェリアが俺にしか聞こえないくらいの小さな声で呟く。どうやら今の証言だけで犯人の目星がついたみたいだ。
「んな奴本当にいんのかよ」
「さあ、どうかしら。それよりも、この子たちの保護のほうが先よ」
「ああ、その通りだな。おいガキども、行く当てがあんのか? 無かったら俺らがテンピンに連れてくからよぉ」
ありがたい申し出だ。今の俺たちは身分の保証が無い不審者だから、街に入れるのか怪しい。
この人たちに保護してもらえば街には入れるだろう。
「ねえ、ちょっと作戦会議してもいい?」
「はあ? 俺らを疑ってんのかよ」
「うん。だって知らない人だし」
「そういえば自己紹介してねえなぁ。俺たちは『荒野の風』ってパーティ名のBランク冒険者だ。俺はグレン。こいつはラナ。これでいいか」
グレンという男はぶっきらぼうに自己紹介した。二人とも冒険者らしい。
冒険者って職業は憧れちゃうな。いつか俺もやってみようか。俺、スーフェリア、リーシェの三人でパーティを組むのも悪くない。
「うん。じゃ、作戦会議するね」
「おいガキ、自己紹介しただろうが」
「だって作戦会議したいし」
「チッ、もう好きにしろ。さっさと終わらせろよ」
グレンは頭を掻きながら言い放つ。ラナはニコニコと眺めているだけだ。
俺たちは彼らから少し離れ、円陣を組んでしゃがみこんだ。
「あの、悪魔って何ですか? あたし何のことか分からなくて」
「ごめんな。俺が説明するから」
悪魔呼ばわりされて襲撃されたことを簡単に説明する。リーシェはその話を聞いて憤慨した。
「リズお姉さまとスーフェリア様を悪魔と呼ぶだなんて許せません! 神の使徒じゃないですか!」
「そうなの。こんな可愛い神の使徒なのにね。悪魔だなんて酷くない?」
「酷いです! お二方はこんなに可愛らしいのに! 許せませんね!」
スーフェリアとリーシェが盛り上がっている。この会話、絶対グレンとラナに聞こえちゃってるだろ。作戦会議とはなんだったのか。
「でさ、その悪魔の心当たりがあるんだよね」
「悪魔って実在するのですか?」
「悪魔はいないよ。私の友達がね、聖教国に悪魔だと思われてるみたい」
「その友達って、もしかして神の使徒か?」
「そうだよ。よくわかったね」
悪魔は神の使徒だった。
スーフェリアの友達らしいから何となく察してはいたが、本当にそうだとは思わなかった。聖教国で街を破壊するほど暴れたのか。神の使徒の力なら可能だろう。
「それでね、そいつのところに行かない? ぶん殴ってやろうよ」
「いいですね。ぶん殴りましょう。その馬鹿はテンピンにいるのですか?」
「いや、テンピンにはいないね。この国のピュリノスって街でね、領主やってるよ」
なんで神の使徒が領主やってるんだよ。それにここってカイキ帝国だろ。なんで帝国の領主が聖教国で暴れてんだよ。
色々と疑問はあったが、全て飲み込んだ。話が進まなくなってしまう。
「……じゃあ、ピュリノスを目指すってことでいいな?」
「うん」
「はい、あたしもそれで構いません」
俺たちは立ち上がり、グレンとラナの元へ戻る。
彼らは暇だったのだろう。狩った猪の処理を行っていた。
「おうガキども、作戦会議は終わったか。こっちもちょうど後処理が終わったところだぜ」
「作戦は決まった? お姉さんに話してほしいな」
ラナという女は、こちらを子供扱いして話しかけてくる。スーフェリアは中学生くらい、リーシェは小学生くらいの身長だから仕方ない。
でも、俺はスーフェリアより頭一つ分大きいぞ? そんなに子供っぽい容姿なのだろうか。早くこの顔を鏡で見たい。
「私たちはね、ピュリノスに行くよ」
「ピュリノスか! それはいい! 俺らも行く予定だったんだ! ラナ、予定はちょっと早まるが、連れて行ってやろうぜ!」
「もちろんいいわよ。君たちの旅費はお姉さんたちが出すからね。もう大丈夫だよ」
この人たちは聖人かもしれない。俺たちのために旅費まで払ってくれるとは。
俺だったら絶対払っていない。近くの街に送り届けるだけで終わるだろう。
「いいの? そこまでしなくても大丈夫だよ」
「ガキが遠慮なんかすんな! テンピンから行けばすぐだからいいんだよ! おい! さっさと行くぞ! まずはテンピンだ!」
「乗合馬車が近くにあるの。一緒に行きましょ」
彼らと共に乗合馬車へと進む。これからの目標は、ピュリノスの領主に会って文句を言ってやることだ。