神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します!   作:光の道筋

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神の使徒、冒険者になる

「冒険者に登録って……お隣の女性がですか?」

 

 グレンはお姉さんの問いに軽く頷く。お姉さんは訝しげに俺を見ているが、そんなにおかしいことなのだろうか。

 

 今すぐ冒険者にさせてもらえるのは悪くない。

 グレンがどういう意図で俺を冒険者にさせようとしているのかは不明だが、どうせピュリノスで登録してダンジョンに挑む予定だった。ここで冒険者になっても変わらないだろう。

 

「ああ、そうだ」

「失礼ですが、お忍びのお貴族様では? 申し訳ありませんが、私の一存では登録できません」

「……お前、貴族だったのかぁ?」

「いや、違うけど。こんなボロボロの服着てる貴族なんていないだろ」

「そりゃそうだよなぁ」

 

 そう、俺は未だにスーフェリアの作ったぼろい服を着ている。

 エルフの村を出立してから着替えようとしたことはあったが、その度にスーフェリアが悲しそうな眼で見つめてくるのだ。

 可哀そうになってしまい、それからずっとこの服を着用している。

 

「どうして貴族だと思ったんですか?」

「平民ではありえないほど容姿が整っていらっしゃるので……お貴族様ではないのですか?」

 

 逆に聞かれてしまった。この顔を褒めてくれるのは嬉しいが、ちょっと困る。

 本当に貴族ではないのだ。貴族ではない証明ってどうすればいいのか分からない。

 

「本当に貴族ではないのですが、信じてくれませんか。平民です。ただ可愛いだけの一般庶民なんです」

「……なるほど、そういうことにしておきましょう。私の前にお貴族様はいません。ならば、冒険者に登録できます」

 

 平民だとは信じていないようだが、登録できるみたいだ。このお姉さんは思い込みが激しい気がする。

 お姉さんはカウンターの上に一枚の紙を差し出した。なんか色々と書かれているが、全く読めない。

 

「では、ここにお名前を」

「俺、字の読み書きができないんです。代筆お願いできますか?」

「なるほど、徹底してますね。もちろんかまいませんよ」

「お願いします。名前はリズです」

「リズ様、ですね。家名は入れないのですか?」

「リズ、だけでいいですよ」

「なるほど、徹底してますね」

 

 お姉さん、俺が貴族だと完全に信じ切っているな。そんなに高貴な顔なのか。

 スーフェリアありがとう。こんなに可愛く儚く高貴な顔に作ってくれて。

 

 お姉さんが紙をカウンターの下にしまい、代わりに金属製の名刺のようなものを取り出した。首にかけるためにか、紐が括り付けてある。

 彼女はその名刺にも何か書き込んでいた。

 

「これがギルドカードになります。失くさないでくださいね。リズ様はFランクです。くれぐれも死なないよう、頑張ってください」

 

 まさかの即日発行だ。もう少し時間がかかると思っていた。ギルドカードを受け取り、そのまま首にかける。

 

「うし、登録は終わったな。ピュリノスへの配達依頼はあるか。そいつをこのガキと一緒に受ける」

「俺もか?」

「そうだ。お前、金ねえだろぉ。ピュリノスに行くついでに金稼ぐんだよ。報酬は半々だからな」

 

 一銭も持たない俺たちに気を遣ってくれたのか。いきなり俺を冒険者にさせたのはこのためだろう。

 その優しさが五臓六腑に染み渡るぜ。

 

「ありがとう。すごく助かる」

「こんくらいいいんだよ。ただ一緒に仕事するだけだからなぁ。それで姉ちゃん、配達依頼はあんのか」

「はい、ありますよ。ギルドの裏庭に配達物を置いておきましょうか?」

「ああ、そうしてくれ」

「承知致しました。リズ様、冒険者になって初のお仕事、頑張ってくださいね」

「グレンさんの足を引っ張らないように頑張ります」

 

 会話を終えてギルドを出る。グレンと共にギルドを回り込んで裏庭へ向かった。

 

 裏庭はそこそこの広さがあり、剣術の稽古をしている男性が4人いた。

 ギルドの裏口付近に目を向けると、そこでは筋肉質の男性が木箱を運んでいる最中だった。

 

「グレンと……新しく冒険者になった人か。これがピュリノスに運ぶやつだ」

 

 男性はそう言い終わると、すぐギルド内に戻ってしまった。

 男性が持ってきたのは1m四方の立方体の木箱だ。それが4つある。これを徒歩で運ぶのだろうか。俺とスーフェリアなら余裕そうだ。

 

「これを持っていけばいいのか」

「待て待て、馬車を今持ってくる。食糧も持っていかねえといけないからなぁ」

「あ、食糧なら俺とスーフェリアが作れるから大丈夫」

「は?」

 

 グレンは俺の言っている意味がわからないらしい。まあ、そうだろうな。俺だってどういう理屈で作ってるのかわからないし。

 でも、わざわざ食糧を買うのはもったいない。なんとか納得してもらおう。

 

「俺とスーフェリアは食糧を作る魔法が使えるんだ。というか大体なんでも作れる。さすがに水は無理なんだけど、それはリーシェが魔法で生み出せる。だから、何も買わなくていいよ」

「……んな魔法聞いたことねえぞ」

「エルフの秘術なんだ」

「……じゃあ、ここで何か作ってくれ」

 

 訝しげに俺を見てくる。長々と説明するより、ここは目の前で見せてしまうほうが早いだろう。

 俺はもう何回も作って手慣れたハンバーガーを手から作り出した。

 

 ここ最近は毎食ハンバーガーを食べている。リーシェの大好物だ。

 スーフェリアもハンバーガーにハマっており、俺とスーフェリアでどちらがより美味しいハンバーガーを作れるのか、毎日勝負している。

 

「うお!? なんか出てきたな!?」

「エルフ大好きな料理、ハンバーガーだ。ちょっと食べてみてくれ」

 

 グレンはハンバーガーを手に取り、恐る恐る口に運んだ。

 

「お! うめえなこれ!」

「だろ! 美味いだろこれ!」

 

 スーフェリアとリーシェの2人以外に食べてもらうのは初めてだ。

 2人とも毎回褒めてくれるが、異世界人の口に本当に合うのか不安だった。他者に褒められるのはやっぱり嬉しい。

 グレンはがつがつと食べ進め、完食してしまった。喜んでくれて何よりだ。

 

「これ、どんくらい作れんだ?」

「俺は1000食くらいかな? スーフェリアはほぼ無限だと思う」

「めっちゃ作れんじゃねえか! 水もリーシェが生み出せるっつうなら何にもいらねえな。ちょっとここで待ってろ。馬車借りてくるぜ」

 

 彼は走って裏庭から出て行った。手持ち無沙汰になったので、剣の稽古を眺める。

 何か勉強になれば良いのだが、やっぱ剣ってかっこいいな、以外の感想が無い。

 

 ちらちらと稽古中の男性がこちらを見てくるので、俺は深窓の令嬢をイメージして手を振ってみる。

 すると、彼らは一層激しく稽古に励むようになった。罪な女だぜ。

 

 しばらくしてグレンが裏庭に戻ってきた。馬車には乗っていない。

 

「馬車は?」

「表に停めてある。荷物を運ぶぞ。手伝え」

 

 俺は木箱を積み重ね、2つ同時に運ぶ。4つ同時もできそうだが、安全を考慮してのことだ。

 

「こんな重いのにお前すげえなぁ。俺は1個でぎりぎりだぜ」

「ふっふっふ、日頃から鍛えているからな」

 

 当然嘘だ。鍛えてなどいない。使徒パワーだ。

 ギルド前の通りに、さっき乗った幌馬車と全く同じデザインのものが停めてあった。一匹の可愛らしい馬がいる。御者がいないが、誰が運転するんだろう。

 不思議に思いながらも、俺たちは木箱を積み込んでいく。中も乗ってきたものと全く同じデザインだ。

 

「じゃあ、あと1個持ってくる」

「お前は座って待ってろや。大人が子供に負けたら笑われちまうからなぁ」

「これ勝負なのか?」

「人生はいつでも勝負なんだよぉ」

 

 グレンがかっこいいことを言って裏庭へ走っていった。

 子供なので大人しく幌馬車の中で待つことにする。5分も経たずに彼は木箱を持って戻ってきた。

 

「待たせたなぁ」

「そんな待ってないよ。でも、御者は? どこにいるんだ?」

「俺がやんだよ」

「グレンさんが?」

「そうだ。俺は天才だから何でもできるんだぜぇ」

 

 御者台にグレンが乗る。彼が鞭を振るうと馬がいななき、馬車が動き始めた。

 先程歩いた道を今度は馬車で通る。視線の高さが違うと、まるで別の街のようだった。

 

 あっという間に城門に着く。グレンが衛兵と数度言葉を交わすと、すぐに城門から出ることができた。

 馬車の振動が小さくなり、緩やかに止まる。そこでスーフェリア、リーシェ、ラナの3人が待っていた。

 

「リズお姉さま!」

 

 リーシェが幌馬車に駆け込み、俺に勢いよく抱き着いてきた。

 彼女は俺の胸に顔を埋め、くんかくんかと匂いを嗅いでいる。匂いを嗅がれるのは恥ずかしいからやめてほしい。本当、切実に。

 

 リーシェに遅れてスーフェリアとラナも幌馬車の中に入ってきた。

 

「リズ、お帰り。パワーアップした?」

「したした。見てこれ、冒険者のギルドカード」

「冒険者になったの!? いいなあ。私もなろうかな」

「リズお姉さまが冒険者ならばあたしもなります! スーフェリア様、一緒に冒険者になりましょう!」

「いいね。ピュリノスでなっちゃおうか」

 

 ラナは俺たちの会話を微笑を浮かべながら見ている。

 この3人は何をして待っていたんだろう。あまり想像つかない。

 

「グレン、荷物が少なくないかしら。もっと必要だと思うのだけれど」

「心配すんな。大丈夫なんだよ」

「この子たちもいるのよ? 絶対足りないわよ」

「大丈夫だ。出発したら教えてやる。絶対驚くぜ」

「……そこまで言うんだったらいいんだけど」

 

 グレンがラナを無理やり説得し、馬車が徐々に動き出す。テンピンから出発し、次に向かうのはピュリノスだ。

 ダンジョンと海の幸に早く会いたいと願いながら、馬車は野原を駆けて行った。




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