神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します!   作:光の道筋

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幌馬車と魔法使い

 何もない一面の野原を幌馬車が走ってゆく。この風景は、テレビで見たアメリカの田舎を思い起こさせた。

 

 この広い野原の中で唯一見えるものは、左側遠くに見える大森林だけだ。大森林は俺の想像よりも大きく、地平線までずっと続いている。この幌馬車は大森林に沿うようにして真っ直ぐ進んでいた。

 

「まあ! スーフェリアちゃん、この料理美味しいわよ!」

 

 揺れる幌馬車の中で、スーフェリアがチーズバーガーを作ってラナに食べさせている。

 

 最近、スーフェリアはハンバーガー作りに凝っており、チーズバーガーや月見バーガーなど様々な種類を作ることに成功していた。

 今、チーズバーガーを提供したのは一番自信のある種類だからだろう。俺は何回も彼女のチーズバーガーを食わされている。

 

「ふふ、そうでしょ。いっぱい作れるからね。たくさん食べていいよ」

「お姉さん嬉しいわ。後でお腹が空いたらもっと貰うわね。リズちゃんもこのクッション凄く良いわよ。おしりが全然痛くないわ」

「リズお姉さま、ありがとうございます。リズお姉さまの温かみを感じられて心地よいです」

「……喜んでくれたなら良かった」

 

 俺は尻の下に敷くクッションを作った。ガタガタと揺れる馬車内で座っているのは、人間の体だと大変だろうからな。

 ラナと御者台にいるグレンは、羽毛のクッションを尻の下に敷いている。痛みは改善されたようで何よりだ。

 

 しかし、リーシェの尻の下に羽毛のクッションは無い。

 代わりにいるには、俺というクッションである。彼女は俺の太ももに座っていた。俺が作ったクッションは大事そうに抱えている。

 

 リーシェが俺の上に座ったのは、テンピンを発ってすぐのことだ。リズお姉さまと一緒に座りたいです、と上目遣いで可愛くおねだりされたので了承した。

 そんなに俺のことが好きか。愛いやつめ。

 

 俺とリーシェの正面にラナとスーフェリアが隣り合って座っている。ラナはコップに注がれた水を飲んでいた。

 コップはスーフェリアが作り、水はリーシェが魔法で生み出したものだ。

 

「3人とも凄いわね。皆が無詠唱で食べ物とか水とか生み出すなんて。エルフの村だとこれが普通なのかしら?」

「うん、普通だね。私たちみたいなのがうじゃうじゃいるよ」

「それは……とんでもないわね」

 

 スーフェリアは息を吐くように嘘をつく。スーフェリアみたいなのがうじゃうじゃいてたまるか。

 

 実際に魔法を無詠唱とやらで使っているのはリーシェだけだ。俺とスーフェリアは使徒の力でズルをしているだけにすぎない。

 無詠唱というのは結構珍しいらしく、俺たちが何かを生み出すと最初は驚かれた。現在は2人とも慣れたようで驚かなくなった。

 

 ところで、リーシェって実は凄かったのか? 彼女は無詠唱について特に何も言わないので凄いとは知らなかった。

 いや、ラナとグレンがお世辞を言っているだけ、という可能性もあるのか。考えても結論が出なさそうだ。

 

「あ、あの、ピュリノスってどの辺にあるのですか? あたし、エルフの村から出るのが初めてで、よくわからないんです」

「あら、そうだったの。じゃあ、お姉さんがわかりやすく教えてあげるわね」

 

 スーフェリアが話すことに不安を感じたのか、リーシェが話を変える。俺もこの世界の地理を全く知らないのでありがたい。

 

 ラナは本当にわかりやすく教えてくれた。

 今いるのはカイキ帝国の北西の端っこらしい。現在地から見て西にある大森林をさらに西へ進むと、そこにシテン聖教国があるという。

 テンピンから北へ進むと海があり、そこが目的地のピュリノスだ。今は北上してる最中だな。

 

 大森林はめちゃくちゃ大きかった。帝国と聖教国の国境上にあり、国境の半分より上は全て大森林に覆われているそうだ。

 深奥まで行くならば、絶対に生きては帰れないらしい。

 

 ……スーフェリアは何でそんな所に住んでいたんだろう。

 あんな場所で俺の体を作っていた理由も謎だ。ラナたちの前だと聞けないから、ピュリノスに着いたら尋ねてみるか。

 ラナによると、7日ほどでピュリノスに到着するとのことだ。焦る必要もないだろう。

 

 それからはエルフの村の文化や冒険者がどのようなものなのかを話しながら、幌馬車はのんびりと進んで行った。

 そこそこ時間が経ち、空が赤く染まり始めた頃に幌馬車の揺れが収まった。御者台に座るグレンがこちらへ振り返る。

 

「おいお前ら、今日はここで野宿すっぞ」

「え、もう止まるの? 夜通し進もうよ」

「進めるかアホ。飯食って寝て、早朝には出発するからなぁ。もう野宿の準備すんぞ」

「じゃ、ここにおうち作ろっか」

「……家も魔法で出せるのかぁ?」

「うん、ちゃちゃっとやっちゃうね」

 

 スーフェリアはグレンとの会話を終えると幌馬車から跳び下りた。俺とリーシェも彼女についていき、少し遅れてグレンとラナがこちらに歩いてくる。

 

「じゃ、やるね」

 

 その一言を言い終わると、一瞬で立派なログハウスが現れた。俺が初めて作ったやつの二階建てバージョンだな。

 

 グレンとラナは目を見開き、口を大きく開けている。

 スーフェリアがハンバーガーを作るところは何度も目にしていたはずだが、何でこんなに驚いているんだろう。こんなに大きなものを作れるとは思っていなかったのかな。

 

「こんな大きい家を一瞬で……しかも無詠唱だなんて。スーフェリアちゃんって大魔法使いだったのね……」

「おいスーフェリア、お前魔力は大丈夫なのかぁ? 道中でも結構魔法使ってただろうが」

「魔力? ああ、魔力ね。やばいよ。無くなりそうだよ。大魔法だからね」

 

 魔力? この世界の人間には魔力があるのか。でも、そんなものを一度も感じたことが無い。俺が地球出身だからか?

 

「そうだろうなぁ。無理すんなよ。今日は早く寝ろや」

「うん、ありがとう。じゃ、入ろっか」

「待て待て。荷物を取ってくるぜ。盗賊に盗まれるかもしれねえからなぁ」

「あ、俺も手伝うよ」

「リズちゃんたちは先に休んでて。食糧と水、そのうえ立派な宿まで作ってくれたじゃない。皆を働かせるなんてできないわよ」

 

 ラナは優雅にウインクをして、グレンと共に幌馬車に戻っていく。お言葉に甘えて俺たちはログハウスへ歩を進めた。

 

 玄関を越えると、室内は四角い木箱の中みたいになっており、右奥にある2階へと上がる階段以外に家具は無かった。

 いや、階段は家具ではないか。寂しいので丸テーブルと5つの椅子を作った。ここはリビングにしてしまおう。

 

 すると、スーフェリアが近づいて小声で話しかけてきた。

 

「さっきの魔力の話、嘘だからね。使徒にはね、魔力が無いよ」

「そうなのか? なんで?」

「だって魔力なんて見えないし、作れるわけないでしょ」

 

 地球出身は関係なかったらしい。使徒の体は人間の完全上位互換だと思っていたが、そうではなかった。魔力が無いということは魔法を使えないのか。ちょっと残念だ。

 

「使徒は目に見えるものしか作れない、ってことか」

「そういうこと。リーシェは魔力あるよね? 羨ましいな」

「あたしはお二方に魔力が無いことのほうが驚きです。今までのは魔法とは違うのですか?」

「え、魔法だと思われてたの。……そうだったんだ、本当に神の使徒の力なのに」

 

 スーフェリアは愕然としている。俺も魔法だと勘違いされていてちょっと驚いた。

 

「い、いえ! あたしはですね!? 信じてましたよ!? でも、エルフの友達がですね!? 魔法かなって!?」

「心の中では私のことを笑ってたんだ……使徒を騙る滑稽な馬鹿だって……エルフの皆からの尊敬も嘘だったんだ……」

「リ、リズお姉さま! ど、どうすれば!」

 

 リーシェが助けを求めてきた。スーフェリアは悪魔呼ばわりされたときよりも落ち込んでいる。

 

 そんなにショックだったのか。これはリーシェに詳しい話をしていなかった俺たちが悪い。普通は信じないよな。神の使徒だと言われても、頭のおかしい魔法使いだと思われるだけだろう。

 

 エルフは信じてくれたほうだ。そう考えると、よくリーシェはついてきたな。

 どんなに胡散臭いやつでも、受けた恩はとりあえず返すということか。

 

「2人とも落ち着いてくれ。スーフェリア、俺たちがちゃんと話してなかったせいだ。ちゃんと話せば、神の使徒だと信じてくれる」

「使徒の力まで見せたのに信じてなかったじゃん……」

「どうやって使徒の力を使っているのか、使徒とはどういうものなのかは言ってなかっただろ? 改めて、リーシェに説明しよう」

「うん……」

「あたしからもお願いします。リズお姉さまとスーフェリア様のこと、もっと知りたいです」

 

  俺とスーフェリアは使徒について話した。といっても、俺は使徒になって日が浅いから大体はスーフェリアが話している。

 使徒の能力は吸収と再生であることと、使徒の使命は戦争を止めること。これらをリーシェに説明した。

 

「こんなかんじだね。その、信じてくれた?」

「はい、もちろんです。今まで使徒の力だと信じきれていなかったこと、大変申し訳ありませんでした」

 

 リーシェはそう言って深く頭を下げる。スーフェリアは慌てて頭を上げるよう頼んだ。なんとか頭を上げさせたが、リーシェはまだ申し訳なさそうな顔をしている。

 

「ですが、あたしは失礼なことを……」

「おい! 待たせたなぁ。なんとか持ってこれたぜ」

「ちょっと、これ重すぎるわよ。詰め込みすぎじゃないかしら」

 

 ちょうどいいタイミングでグレンとラナが戻ってきた。2人で1個の木箱を運んでいるようだ。

 

「あれ? 1個だけなのか?」

「あと3個は家の外よ。とりあえず4個とも家の外まで持ってきたの。これから1個ずつ入れてくわよ」

 

 そういうやり方だったのか。正直、最初から家に入れてこないで助かった。リーシェが頭を下げているところを見られたら気まずいからな。

 

 2人はすぐに4個とも入れ終えた。その後は食事だ。ハンバーガーを和気藹々と食べる。しかし、リーシェは食事中も静かなままだった。

 食事を終え、皆で2階に昇る。2階には2つの部屋があったので、俺、スーフェリア、リーシェの3人チームとグレン、ラナのチームに分かれた。

 ラナはこっちに来たがっていたが、グレンに止められていた。3人だけのほうが気が楽だろう、とのことだ。

 

 俺はグレンたちの部屋に2つのベッドを、俺たちの部屋にはキングサイズのベッドを作った。その後はすぐに就寝だ。グレンが早朝から出発すると言っていたし、早く寝ておこう。

 

 スーフェリアはベッドに入ってすぐに寝た。使徒としての年季が長いから体のコントロールが上手だ。俺はまだそんな早く眠れない。

 早く寝てしまおうと考えていると、リーシェが何やらごそごそとしている。眠れないのだろうか。

 

「リズお姉さま、起きてますか?」

 

 リーシェが小さく静かな声で話しかけてきた。

 

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