神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します!   作:光の道筋

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告白

「うん、起きてるよ」

「あたし、ちゃんと謝りたいんです。さっきは途中で遮られてしまいましたので……」

 

 リーシェは布団の中で悲しそうな表情を浮かべ、こちらを見つめている。

 謝りたいと言われても、俺は全く気にしていない。勘違いしてしまうのは誰にでもありえることだろう。

 

「気にしなくていいよ。神の使徒なんて信じられないのが当たり前だって」

「申し訳ないんです。口では信じてるように装いながら、心の底ではお二方を信じ切れていなかったんです。自分の醜さが嫌になります」

「そんなことないって。使徒が魔法使ってる、って思ってただけだろ? もうスーフェリアも気にしてないから」

「そうですか……」

 

 そう言ってみたが、リーシェの表情は変わらない。

 なんでこんなに申し訳なさそうにするんだ。魔法か使徒の力か、どっちでも良くないか。リーシェの心を晴らしてあげたいが、かける言葉が見つからなかった。

 

 それに、内面は俺のほうが醜い。外見で騙しているだけで、中身は男性だ。リーシェが卑下するほどではない。

 

「リズお姉さま、あたしが嫌いになりましたか……?」

「嫌いになんてなるわけないだろ。大事な旅の仲間だ」

「ふふ、ありがとうございます」

 

 彼女は少しだけ微笑んだ。しかし、その目は悲しそうなままだ。

 リーシェは俺のことが好きらしい。そうでなければ舌をねじ込んでこない。鈍い俺でもさすがにわかる。

 

 しかし、その理由はわからない。エルフの村で活躍したのはスーフェリアだ。俺を好きになる要素はないだろう。

 好きになるとしたらスーフェリアのほうがふさわしい。直接聞いてみるか? 恥ずかしいが、悶々としているよりマシだ。

 

「その、リーシェは俺のことが好きなんだよな?」

「はい。愛しています」

 

 本当に恥ずかしい。今すぐ崖から跳び下りたい。俺は何様のつもりなんだ。自意識過剰にもほどがあるぞ。

 だけど今は聞きたいことがある。跳び下りるのは、そのあとでいい。

 

「なんで俺なんだ? エルフを救ったのはスーフェリアだろ?」

「もちろんスーフェリア様も好きですよ。ですが、愛しているのはリズお姉さまです。その美貌、美しい髪、すらりとした手足、全て大好きです」

 

 ああ、そういうことか。スーフェリアの作ったこの体は非常に美しいからな。リーシェ好みの顔だった、ということか。

 

「でも、そんなのはどうでもいいんです」

「え?」

「確かに、リズお姉さまのお姿は誰が見ても美しいです。でもあたしが愛しているのは、それだけじゃありません」

 

 リーシェはゆっくりと手を伸ばし、俺の手を優しく包み込んだ。その手は震えていた。

 

「初めて会ったときにも話したのですが、リズお姉さまの内面が好きなんです。忘れちゃいましたか?」

 

 言葉に詰まる。

 美貌なんてどうでもいい?  俺の内面を好きになった?  そんなこと……ありえるのか?

 

「一緒に旅をしてると、リズお姉さまの優しいところをもっと知ることができたんです。お二方についていけないあたしを気遣ってくれました。ハンバーガーも美味しかったです。あたしの魔法を褒めてくれて、魔獣に襲われたときも庇ってくれました。全部、嬉しかったです。」

「でも、俺は……」

 

 言いかけて、飲み込んだ。俺の本当の姿を知ったら、彼女はどう思うだろう。スーフェリアが作った、この偽りの体。見た目は女性だけれど、中身は……。

 

「リズお姉さま?」

 

 リーシェが心配そうに覗き込んでくる。その目は、俺を拒絶するものではない。ただ、俺の答えを待っている。

 言うべきだろうか。実は俺が男だと知ったら、嫌いになるだろうか。はは、さっきとは立場が反対だな。

 

 使徒について詳しく説明しなかったから、リーシェは勘違いして悲しそうにしてるんだ。本当は男だと打ち明けよう。

 それで嫌われたとしてもしょうがない。このまま秘密にして、彼女を騙すほうが嫌だ。

 

「その、まだリーシェには言ってなかったことがあるんだ」

「はい、なんでしょうか」

「俺はな、女性の体だろ?」

「はい、とても可愛いです」

「でも、中身は男なんだ」

「んん? どういうことですか?」

 

 リーシェは困惑している。急にこんなこと言われても意味不明か。

 

「俺は別の世界で男として暮らしてたんだ。それがいつの間にかスーフェリアの作ったこの体になって、この世界にいた」

「……今日は初めて聞く情報が多いです」

「ごめん、説明しなさすぎだよな」

「いえ、話してくれて嬉しいです。もう言ってないことはないですか?」

「無いけど……」

「わかりました。お時間を頂いちゃってすみません。明日になったらスーフェリア様にも改めて謝ろうと思います」

「俺は男なんだぞ? なんか言いたいことはないのか?」

 

 緊張しながら打ち明けたが、リーシェはその話を流して寝ようとしている。もう俺とは出来る限り話したくない、ということか。そりゃそうだよな。嫌悪するよな。

 

「リズお姉さまの中身が男だとしても、何も変わりませんよ。今までの優しさが無くなるわけじゃありません」

「い、いや、でもな」

「あ、でも男として扱ってほしいですか?」

 

 リーシェは真剣な目でこちらを見つめながら問いかけてきた。

 

「え、いや……そういうわけじゃ……」

 

 俺は口ごもる。男として扱ってほしいのか? いや、そもそも俺自身、どう扱われたいのかもわかっていない。

 

「なら問題ないですね!」

 

 リーシェはぱっと表情を明るくして、俺の手を握り直した。

 

「男だろうと女だろうと、リズお姉さまがリズお姉さまであることに変わりはありません。あたしは、リズお姉さまを愛しています。その気持ちは変わりませんよ」

 

 まっすぐな瞳に射抜かれる。こんなにも純粋な想いをぶつけられて、俺はどう返せばいいんだ?

 

「そ、そうか……」

 

 情けない返事しかできなかった。だがリーシェは気にすることなく微笑む。

 

「不安ですか? なら、ギュってしたまま寝ましょう。落ち着きますよ」

 

 そう言って彼女は俺に抱き着き、口に軽く触れるキスをした。俺はしばらく呆然としながら、その顔を眺める。

 

「では、お休みなさい。リズお姉さま」

 

 男だから嫌われるんじゃないか、と恐れていた。でもリーシェは変わらず俺を想ってくれている。むしろ、性別なんて些細なことだとさえ言わんばかりの態度だった。

 

 ……なんだろうな、この気持ち。

 心の奥底が、じんわりと温かくなる。

 

 俺はこのままでいいのかもしれない。男であることに囚われる必要はないのかもしれない。リーシェがそう思ってくれるなら、少なくとも俺は、彼女の前で「リズ」としていられる。

 

 そう考えながら、俺もそっと目を閉じた。




第1章はここで終わりです。第2章ではダンジョンに行きます。
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