神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
再出発
翌朝、目が覚めて起き上がると既にスーフェリアとリーシェは起床していた。
彼女たちはベッドの上にちょこんと座っている。
リーシェの魔法で髪を乾かしているようで、彼女たちの髪が風に吹かれて揺れていた。
俺が最も遅く起床するのは初めてだ。熟睡してしまった。
「あ、リズも起きたね」
「おはようございます。リズお姉さま」
「おはよう……」
リーシェの顔を見ると、昨夜の出来事を思い出して恥ずかしくなる。
彼女にみっともない姿を見せてしまった。顔から火が出そうだ。
使徒の体は顔が赤くなるのだろうか。体内に血液が無いから赤くならないと信じたい。
使徒の体は人間の見た目をしているが、中身は紙粘土のような謎の白い物体なのだ。
「リズお姉さまの髪も整えますね。お水、かけますよ」
リーシェが四つん這いでこちらに近づき、俺に魔法の水をかける。
水はすぐに消え去り、気持ちの良い温風が吹いてきた。
「……色々と話してなくてごめん」
「謝らないでください。気にしてませんから、って同じことを先程スーフェリア様から言われました。ふふ、あたしとリズお姉さまは同じことをしてますね」
どうやら、彼女は目覚めてからもう一度スーフェリアに謝ったようだ。
リーシェは俺に負担を感じさせないように気を遣ってくれている。優しい子だ。
「リーシェ、ありがとう」
「大丈夫ですよ。リズお姉さまの深いところを知れて嬉しかったです」
「ね、そろそろ下に降りない? もうグレンとラナが一階にいるよ?」
髪を乾かし終えたスーフェリアが話しかけてきた。彼女は早く出発したいようで、うずうずしている。
グレンとラナを待たせては申し訳ないので急ぐとしよう。
「じゃあ早く下に降りるか」
「ちょ、ちょっと待ってください。まだリズお姉さまの髪が乾いてません」
「歩きながら乾かせないの?」
「出来ますが……」
「うん、なら大丈夫だね。降りよっか」
「わかりました……」
リーシェは渋々納得した。俺はもう充分に乾いていると思うのだが、リーシェはそうとは思わないみたいだ。
俺たちは部屋を出て、一階に降りる。その間も俺の髪は温風で揺れていた。
一階に降りると、グレンとラナが2人で1個の木箱を持ち上げているところだった。家の扉は開かれ、幌馬車に運ぼうとしている。
「起きたかガキ共。さっさと出発するぞぉ。朝飯は馬車の中でだ」
「皆おはよう。よく眠れたかしら。あのベッド、ふわふわで最高ね」
俺たちも朝の挨拶を返す。ラナは俺の作ったベッドを気に入ったみたいだ。
残り3個の木箱も運んでしまおう。俺は木箱を2個重ねて持ち、スーフェリアは1個持った。
リーシェは未だに俺の髪を乾かしている。もう良くない?
「リズちゃん、すごい力持ちね」
「鍛えてるんで」
「私もできるよ。リズ貸して」
スーフェリアにそう言われたので、木箱を一旦下ろして1個だけ彼女の持つ木箱の上に乗せた。
スーフェリアはドヤ顔で2個の木箱を持っている。前が完全に塞がっているが、スーフェリアなら問題ないだろう。目を瞑っていても運べそうだ。
ラナとグレンはその姿を見て驚いていた。
「お前すげえな。ガキが1個持つだけでもすげえのに、2個持てんのか」
「スーフェリアちゃんも力持ちなのね。これも魔法なのかしら」
「え? そうそう、魔法だよ。私はね、大魔法使いだからね」
「本当に凄いわ。お姉さんが褒めてあげる」
「ふふ、もっと褒めていいよ」
スーフェリアは上機嫌だ。エルフの村でもそうだったが、人から褒められたり尊敬されるのが好きなんだな。
いや、褒められるのが嫌いな人なんていないか。承認欲求は誰にでもあるもんな。それこそ神の使徒にだって。
スーフェリアがラナに褒められながら俺たちはログハウスを出る。
全員が外に出たところで、スーフェリアがログハウスを吸収した。一瞬で綺麗さっぱり無くなっている。
幌馬車に目を向けると、付近には数十本の剣と謎の金具が大量に落ちていた。昨日はこんなもの無かったはずだ。
「あ? なんだこれ?」
「剣? なんで剣が落ちてるのかしら」
彼らは心当たりがないらしい。
もちろん、俺たち3人も心当たりがない。そう思っていたが、スーフェリアを見てみると挙動不審になっていた。
グレンとラナは俺たちの前方にいるため気づいていない。しかし、隣にいる俺とリーシェにはバッチリ見えていた。
俺はスーフェリアとリーシェにだけ聞こえるように小さな声で尋ねる。
「これ、スーフェリアの仕業だろ」
「うん、そうだよ。よくわかったね」
やはりこいつが犯人だった。おそらく何者かを吸収したのだろう。
使徒は金属を吸収できないので、剣と金具が残ってしまったわけだ。
「何があったんだ?」
「夜中にね、盗賊が来たの。それを撃退しただけなんだよね。このことグレンとラナに言ってもいいかな」
「それは……言わないほうがいいんじゃないか? 人を消せるなんて怖いだろ」
「やっぱそうだよね。怖がられたくはないからね。言わなくてよかった」
予想は大体合っていた。軽い口調で言っているが、剣の数からして多くの盗賊がいたようだ。
それを簡単に殺してしまうのだから使徒というのは恐ろしい。
「よく気づいたな。俺なんてずっとスヤスヤだったぞ」
「今日はお客さんがいたからね、意識を家に移して警戒してたから気づいたんだよ。あいつら結構静かだったし、寝てたら気づかないね」
「……意識を家に移すって、何」
「そのまんまだよ。体を抜け殻にして本体を家にするだけ。簡単だよ」
初めて聞く使徒情報だ。そんなこともできたのか。これを活かせば犯罪しまくれるじゃないか。色々と悪用できそうだ。
というか、夜中に意識があったのなら俺とリーシェの会話を聞いていたのか? 確認しなければ。
「なあスーフェリア。昨夜、俺とリーシェが会話してたのも知っているのか?」
「うん、聞いてたよ。リーシェは私に謝らなくていいのにね。あ、リズは体がどうとか、中身がどうとか気にしなくていいよ」
しっかりと聞かれていた。恥ずかしい。
リーシェをチラッと見ると顔を赤くしていた。そうだよね。本人に聞かれてるとは思わないもんね。わかるよ、その気持ち。
「私の作ったすんごい可愛くて美しい体も好きなんだけどね、それも動いて話さなきゃ意味無いしさ。私はね、リズが来てくれて嬉しいよ」
「あたしもリズお姉さまと会えて嬉しいです。だから自信持ってくださいね」
「スーフェリア……リーシェ……」
2人からの好意が嬉しい。今は使徒の体で良かったと心底思う。
だって、人間だったら絶対泣いちゃってる。使徒の体なら涙もコントロールし放題だ。
「おいガキ共。さっさと馬車に荷物を積め」
俺たち3人の仲良し空間にグレンの冷やかな言葉が投げかけられる。どうやら彼らは既に積み終えたみたいだ。内緒話をしていて気づかなかった。
「じゃ、リズ。感動してるとこ悪いけどさ、さっさと積んじゃおうか」
「……感動してないけど」
「ふふ、そうだね。してないね」
「リズお姉さまのそういうところも可愛いです」
どうやら2人にはバレていたらしい。
俺たちは木箱を積み込み、幌馬車に乗り込む。幌馬車はゆったりと動き出し、徐々にスピードを上げていった。
その後は特に何も無かった。ハンバーガーを食べながら駄弁っている間も幌馬車は進んでいく。問題は暇すぎることくらいである。
暇すぎるのでスーフェリアとオリジナルのかっこいい魔獣選手権を行ったが、リーシェとラナには不評だった。
俺はモ⚪︎ハンのジ⚪︎オウガを作った。俺の手に乗る小さなサイズのフィギュアだ。
これを見たスーフェリアは大興奮している。俺と彼女の感性は近いのかもしれない。
スーフェリアはクトゥルフの悪魔のような謎生物フィギュアを作っていた。予想よりもかっこよく、本心から褒めたらスーフェリアはめちゃくちゃ照れていた。可愛いね。
ちなみに、その謎生物を見てリーシェとラナは気持ち悪そうにしていた。その反応が普通だと思う。
幌馬車は野原を通り過ぎ、現在は林の中を通っている。大森林よりもはるかに小さい木々が周囲に生えていた。
魔獣選手権に飽きた俺たちは、お菓子選手権を行っていた。選手権といっても、スーフェリアがお菓子に詳しくないので俺のお菓子を真似ているだけだ。
俺がクッキーやらケーキやらを作り、スーフェリアがそれらを吸収して真似る。
一旦吸収するのは、お菓子の理解度を高めるためらしい。そうしないと不味くなってしまう、とスーフェリアが言っていた。
新しく作られたお菓子をリーシェとラナ、グレンの3人が食べていた。これは魔獣選手権と違って好評だった。最初からこっちをやっていたほうが良かったかもしれない。
問題はお菓子選手権中に発生した。
風切音が聞こえ、幌馬車が大きく揺れる。俺たちを引っ張ってくれている可愛い馬が暴れていた。
「ああ! スーフェリア様の作ったケーキを落としてしまったのですが!」
「大丈夫、吸収して新しく作れば元通りだ」
「さすがリズお姉さまです!
「おい! 馬がやられた! 盗賊だ!」
グレンが御者台から俺たちの座る場所に転がり込んでくる。盗賊がこの幌馬車を襲ってきた。
第2章の始まりです。次回、盗賊と戦います。
少しでも面白いと感じてくださったら、お気に入り登録、評価、感想、お願いします。励みになります。