神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します!   作:光の道筋

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虐殺

 幌馬車の前後にそれぞれ5人、合計10人の盗賊と思われる男たちがいた。全員が山賊のような暗色の汚い服を着ている。

 いや、汚さなら俺とスーフェリアの服も負けてないな。むしろ勝っているかもしれん。

 

 正面左端の男だけが弓を構えており、他の9人はノコギリのような剣を持っていた。

 おそらく、さっきの風切音はあの弓で射られた矢の音だろう。その矢によってうちの可愛い馬が攻撃されたのだと思う。今も可愛い馬は暴れている。矢が当たって痛いのだろうか。

 

「男は全員殺せ! 女は犯してから売り払うぞ!」

 

 正面中央にいる大柄のスキンヘッドが叫ぶ。あいつがリーダーか。あのスキンヘッドの思考が完全に蛮族だ。この世界が異世界だと実感する。

 ここに来るまでに他の馬車とすれ違うことは無かったが、こういう奴等がいるから通らないのかもしれない。だとしたら流通が滞ってそうだな。

 

「じゃ、殺してくるね」

 

 スーフェリアは、まるでコンビニに行くかのような気軽さで幌馬車を飛び出した。止める暇も無く、彼女はスキンヘッドの目の前に立っている。

 

「あ〜? 上等なガキじゃねえか。命乞いに来たか?」

「スーフェリア! ガキは下がってろ! 今俺が行く!」

「スーフェリアちゃん! 助けるからね!」

 

 グレンとラナがスーフェリアを助けようと幌馬車から出て行こうとする。だけど、そんな必要無いのだ。むしろ巻き込まれてスーフェリアに殺される可能性の方が高い。俺はすぐさま彼らの腕を掴んで止めた。

 

「なんで止める!? って、お前握力すげえな!? めっちゃいてえぞ!」

「リズちゃん! い、痛いから! ちょっとだけ緩めて!」

「ご、ごめん! でもこの中で待っててくれ! 死んじゃうかもしれないから!」

「スーフェリアが死ぬだろうが!」

「あいつは大丈夫だから! 魔法! なんか凄い魔法が使えるから!」

 

 グレンとラナを必死に止める。この場面で子どもを助けようとする彼らはとても良い人たちだ。こんな聖人たちを死なせるわけにはいかない。

 

「スーフェリア様は死にませんよ。リズお姉さま、ケーキくれませんか?」

「ほうら、美味しいチョコケーキだぞぉ」

「わあ、とっても美味しそうですねえ」

「お前らは何やってるんだ!?」

 

 俺はリーシェの持つ皿の上にチョコケーキを作る。さっきケーキを落としちゃったからな。その代わりだ。リーシェはスーフェリアの強さを知っているから余裕なのだろう。スーフェリアは以前、「一万回殺されても死なない」と言っていたので、彼女を心配する必要はない。

 

「私は大丈夫だよ。リズ、それよりもこいつら殺しちゃっていい?」

「俺に聞くことじゃないだろ。スーフェリアが決めろって」

「それもそうだね。ねえ、あなたたちも死ぬ覚悟があってこんなことやってるんだよね?」

 

 スーフェリアが盗賊たちに話しかける。スキンヘッドはその声を一笑に付した。

 

「はっ、生意気なガキだな。こいつは足の腱を切って飼ってやろうか」

「はっはっは! そいつはいいですねえ!」

 

 スキンヘッドの周囲にいる4人が同調して大笑いしている。趣味の悪い人たちだ。

 それにしても、後ろの5人は動かないな。命令があるまでは待機とでも言われているのか。仮に襲ってきても俺とリーシェでなんとかなるだろう。

 

「それは私もやったことないね。試してみようかな」

「射ろ」

 

 スキンヘッドの合図と同時に弓が放たれた。その矢はスーフェリアの左の太腿に向かっている。

 しかし、そんなもので使徒の体にダメージを与えることはできない。スーフェリアは矢が太腿に触れると同時に吸収した。木製の矢だったのだろう。人の目には一瞬で消えたように見えるはずだ。

 せめて金属製の矢を射るべきだった。それでも小さい穴を開けるだけで何の意味もないのだが。

 

「なっ! 消えた!?」

「じゃ、私の番だね」

 

 スーフェリアは右手を横に振るう。それは音よりも速く、しかも振っている間のみ細長く伸ばしている。

 もし俺が使徒の体でなければ絶対に視認できていないはずだ。人間である盗賊たちには全く見えていないだろう。

 右手の鞭は5人の膝下を平等に切り落とす。彼らは立つことができず、地に伏してしまった。

 

「あがっ! ああっ! ああああぁ!」

 

 彼らの呻き声が林に響き渡る。スーフェリアは彼らに歩み寄り、切り落とされた足を丁寧に吸収していた。

 

「飼う? だっけ。私もね、昔動物を飼ったことがあるんだ。もう死んじゃったけどね」

 

 盗賊たちはスーフェリアの話を聞いていない。いや、話を聞けないと言ったほうが正しい。彼らは己の痛みを叫ぶことしかできなかった。

 

「足の腱を切ったら可哀想だと思うんだけどな。人の常識というのはわからないね。じゃ、殺すね」

 

 スーフェリアは彼らの頭を1人ずつ掴んで握り潰し、次々と吸収していく。

 盗賊は剣以外に金属を有していなかったため、その場に残ったのは4本の剣のみとなった。

 残るは後ろ側の5人だけだ。振り返って背後を見る。そこには、足に絡みついた木の枝を必死に切り払おうとしている盗賊たちがいた。頑張って切断しようとしているが、木の枝は全く切れていない。

 あのノコギリみたいな剣の切れ味が悪いのだろうか。

 

「これはリーシェがやったのか?」

「はい、前から叫び声が聞こえると逃げ出そうとしたんです。なので拘束しました」

「そうか。仕事が早いな」

「このまま放って置くのもどうかと思うのでトドメ刺しますね。えいっ」

 

 リーシェの人差し指の先からウォーターカッター魔法が放たれる。彼女はそれを横一閃に振るい、盗賊たちの胴体を真っ二つにした。

 うわ、グロい。

 

「終わりましたね。結構あっけなかったです」

「そうだな」

「あの人たちも私が吸収していい?」

 

 いつの間にか幌馬車に戻っていたスーフェリアが俺に話しかける。もちろん了承した。俺は何もしてないからな。

 グレンとラナは固まってしまっている。スーフェリアを怖がっているわけじゃないと思いたい。

 スーフェリアは幌馬車を降りると一瞬で吸収を終え、すぐにこちらへ帰ってきた。

 

「お待たせ。私ばっかり吸収しちゃって悪いね」

「全然大丈夫。今回、俺は何にも出来なかったからな」

「え? あー、確かに魔獣とばっか戦ってたからね、対人戦の練習はしといたほうが良かったかも。私が出しゃばりすぎたかな」

 

 対人戦の練習はしておきたいな。俺の戦闘経験はほとんどない。

 スーフェリアとリーシェは何の躊躇いもなく盗賊たちを殺していた。これからも人を殺さなくてはならない場面があるかもしれない。

 そんな時に足手まといにはなりたくなかった。

 

 俺はこの世界に来てから1人殺している。襲ってきた金髪の優男だ。今更人殺しを躊躇う理由なんてない。

 

「ピュリノスに着いたら戦闘の練習をしたいな。悪いんだけど、付き合ってくれないか?」

「ふふ、当然でしょ。親だからね、リズのために頑張っちゃうよ」

「あたしも付き合います。リズお姉さまの頼みなら、なんだって引き受けますよ」

「皆……!」

 

 2人の優しさに感動してしまう。また泣いてしまいそうだ。

 使徒の体、ありがとう。強い男は涙を見せないぜ。女だけど。

 

「お前ら、すげえ強かったんだなぁ……」

「ええ……お姉さんびっくりしちゃったわよ」

 

 固まっていたラナとグレンが動きだす。俺は彼らの腕を離した。彼らを見てスーフェリアは狼狽している。

 

「あ……その……怖い、かな? 私はね? 可愛いだけなんだけどね?」

 

 スーフェリアはグレンとラナに怖がられたくないみたいだ。

 せっかくログハウスでの撃退を内緒にしたのに、台無しになってしまった。

 

「あんま俺たちを舐めんじゃねえぞぉ。確かに驚いたけどな、感謝こそすれどお前を怖がったりなんかしねえよ」

「お姉さんも同じよ。何もできなかったお姉さんたちが不甲斐ないわ。スーフェリアちゃん、リーシェちゃん、守ってくれてありがとうね」

 

 優しすぎる。グレンとラナがまるで後光をまとっているように見えた。

 スーフェリアはそう言われて嬉しそうにしている。リーシェはどうでもいいのか、チョコケーキをちびちびと食べていた。

 

「怖くないかな?」

「お前みてえなガキ、怖いわけねえだろうがぁ。あんなクズども、お前が殺さなくても俺が瞬殺してたぜ」

「ふふ、そうかな? 私の極大魔法『生者と死者の舞踏』、すごかった?」

「ええ、すごかったわよ。正直、何をしているのかわからなかったわ」

 

 スーフェリアはいつもの調子を取り戻している。落ち込まなくて本当に良かった。グレンとラナには感謝しないとな。

 

「続きは出発してから話すぞ。くだらねえ奴らに時間とられちまったなぁ」

「あれ? 馬は無事なのか?」

「矢は当たってねえ。驚いて暴れちまっただけだ」

 

 可愛い馬も無事だった。グレンは御者台に戻って鞭を振るう。幌馬車はゆっくりと動き始めた。

 自然豊かな林の中を進んでいく。再び盗賊に襲われるようなこともなく、穏やかな旅路が続いていた。

 

 盗賊に遭遇してから6日経過した。これまで大きな問題は起こっていない。

 強いて言えば、リーシェが車酔いして嘔吐してしまったことくらいだ。その吐瀉物はスーフェリアが綺麗に吸収していた。

 後処理がほぼ無くなって非常に助かるのだが、ちょっとだけ汚い。

 

 既に林を抜け、周囲の木々は少なくなっている。現在は丘の上へと進んでいる最中だ。

 海鳥の鳴き声が聞こえ、潮の香りがする。海がすぐ近くにあるとわかり、気分が高まってきた。

 

 幌馬車が丘の上に到着する。そこから見えたのは美しい水平線、輝く大海原だ。

 海に隣接している街は灰色の壁に囲われている。ここから眺める限りでは相当広い街だ。

 その中にある建物は全て白く、街全体が一つの作品のようだった。

 

「おおっ! 綺麗だな!」

「久しぶりに来たね。うん、いい匂い」

「海! 海ですよ! 大きいです! 初めて見ました!」

「おうガキども、これがピュリノスだ。やっと着いたぜ」

 

 俺たちは海の街ピュリノスに到着した。これから海の幸を食べまくろう。

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