神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
幌馬車は丘を下り、灰色の城壁の前まで来ている。城壁の高さはテンピンの城壁と大体同じくらいだ。
城門を通るのは何の問題も無かった。グレンが守衛と言葉を交わすだけで、難なく城門を通り抜ける。グレン以外の4人は座っているだけだ。
ピュリノスの建物は全て白の石材で建てられていた。ネットで見たギリシャの街並みに似ている。ギリシャと異なるのは歩行者の服装だ。道には、大剣や槍などを携えた冒険者が何人も歩いていた。
「リズお姉さま! 素敵な街ですね!」
「ああ。こんな綺麗な街、初めて来たよ。冒険者が多いのはダンジョンがあるからかな?」
「その通りだぜ。まずは依頼を達成しねえといけないからなぁ、早速冒険者ギルドに行くぞ」
活気あふれる白い街並みを進んでいく。歩行者の中には冒険者だけでなく、商人や漁師と思われる人々もいた。
ダンジョン、海運、漁業、これらが合わさってピュリノスは発展したのだろう。
しばらく幌馬車が進むと、ようやく冒険者ギルドに到着した。冒険者ギルドも白の石材で建てられている。
扉の上に掲げられた、剣と盾が描かれた木製の看板。それこそが、ここが冒険者ギルドである証だった。
「じゃ、私とリーシェも冒険者になっちゃおうかな」
「なっちゃいましょう! 早く中に入りませんか!?」
スーフェリアとリーシェは大はしゃぎだ。冒険者になるのが楽しみらしい。俺も実は、けっこうワクワクしている。何せ、この街には海の幸とダンジョンがあるのだ。心躍るに決まってる。
「俺はこの馬車をギルドの裏に置いてくるぜ。先にギルドに入ってろよなぁ」
「グレン、悪いな。任せちゃって」
「こんぐらいいいんだよ。さっさと中に入れ」
幌馬車をグレンに任せ、俺たちはギルド内に入っていく。
中の構造はテンピンにあるギルドと全く変わらなかった。違うのは床や天井、壁が白い石になっていることくらいか。
俺たちは金髪ロングヘアの受付嬢がいるカウンターへ向かった。ラナが受付嬢に話しかける。
「ちょっといいかしら」
「どうなされましたか?」
「テンピンからの配達依頼を受けているわ。仲間が裏に運んでるから、確認してもらえないかしら」
「かしこまりました。直ちに確認させて頂きます」
受付嬢は奥にいる男性職員に声をかける。男性職員はすぐに裏口へ向かった。確認が終わるまでの間に、スーフェリアとリーシェを冒険者に登録してしまおう。
「あと、この女の子2人を冒険者に登録してもらえませんか」
「この子たちをですか? 構いませんが……冒険者には危険な任務もあります。他の仕事の方が良いのでは?」
「他の仕事よりもね、私は冒険者になりたいな。リーシェもそうでしょ?」
「はい、あたしも同じです」
「そうですか……」
受付嬢は渋りながらもカウンターの下から用紙を取り出す。
この人は子どもに危険な仕事をしてほしくないのかもな。しかし、この2人は大人を簡単に殺せるほどの強さだ。そんな気遣いは不要だろう。
スーフェリアとリーシェは差し出された用紙に何か書いている。一文字も読めないが、多分名前だろう。
その後はギルドカードが即日発行された。俺が登録した時と全く同じ流れだ。2人のランクも俺と同じFランクから始まる。
スーフェリアはこのランクに納得いかないらしい。
「Fランクって低くない? 私はね、強い魔物を倒しまくりたいんだけど。このランクでそういう依頼受けられるの?」
「Fランクは店の掃除や船の荷積みなど、言ってしまえば雑用が主な依頼内容になります」
「え、やりたくないな。ダンジョンって行けるの?」
「ダンジョンに潜るのを許可されるのはDランクからです」
「そう……」
スーフェリアは明らかにガッカリしていた。俺も同じ気持ちである。冒険者になったのはダンジョンに行くためだ。雑用なんかせず、冒険をしていたい。
だが、コツコツと仕事をしてランクを上げなければならない。FからD、そこまで上げるのにどれくらいの時間がかかるのだろうか。小遣い稼ぎと思ってのんびりやっていこう。
そんなことを考えていたら、先程の男性職員が戻ってきた。荷物の確認を終えたようだ。
「荷物の不備は無かったようです。こちらが報酬の大銀貨4枚です。お納めください」
受付嬢がカウンターに大銀貨を4枚置いた。貨幣価値を知らないが、大って付くくらいだから高めの金額だろう。
まずラナが4枚とも手に取り、そこから3枚を俺に差し出す。
「3枚? グレンとの約束は折半だったはずだけど」
「いいのよ。食事と宿、盗賊退治までやってもらったもの。貰ってくれないかしら」
「そういうことなら有り難く貰っておくよ」
「ええ、本当にありがとうね」
聖母のように微笑んでいるラナから、3枚の大銀貨を受け取った。貰えるものは貰っておこう。3枚なら3人で分けやすいしな。
依頼の報告と冒険者登録を終えた俺たちは冒険者ギルドから出る。冒険者ギルドの前ではグレンが待っていた。
「おう、やっと終わったかぁ。ガキ共、これからどうすんだ?」
「私の友達のところに行ってみるよ。まあまあお金持ってるはずだからね、ちょっとだけ貰おうかな」
「はっはっは! そいつはいいなぁ! 金持ちから毟り取ってやれ!」
「うん、毟り取ってやるよ」
スーフェリアの友達は領主らしいから金持ちどころではないと思う。グレンが楽しそうだから、わざわざそんなことは言わないでおこう。
「ここでお別れだなぁ! じゃあなガキ共! 料理美味かったぞ!」
「寂しくなるわね。何かあったらお姉さんに頼るのよ。まぁ、皆の強さなら必要無いかもしれないけど」
「グレン、ラナ、ありがとう。2人に会えて本当に良かった」
これはお世辞ではない。本心だ。道中、彼らの優しさに助けられた。俺とスーフェリアの異常さを寛容に受け入れてくれたのも有難い。
もっと洒落た言葉を言いたかったが、残念ながら思いつかなかった。
「お前、嬉しいこと言ってくれるなぁ!」
「またね。次会うときはね、もっと美味しいハンバーガーを作れるようになってるよ」
「短い間でしたが、ありがとうございました。次に会う時を楽しみにしています」
俺たちは手を振りながら彼らから離れていく。冒険者をやっていれば再び会うこともあるだろう。案外、明日にでも道端で偶然出会うかもしれない。あまり大袈裟な別れにはしたくなかった。
人混みでグレンとラナの姿が見えなくなり、スーフェリアが話始める。
「じゃ、私の友達の家に行こっか」
「友達って、神の使徒で領主なんだっけ?」
「うん、そうだよ」
じゃあ、この街で一番偉い人に会うのか。人ではないが。
この国のマナーを知らないので少し緊張するが、なんとかなるだろう。使徒のスーフェリアがマナーを気にしたことは無い。あまり無礼すぎなければ許してくれそうだ。
「あ、あの、言いにくいんですけど、ちょっといいですか?」
「ん? どうしたんだ?」
「今の服装のまま行くんですか……?」
「うん、そうだよ」
リーシェが申し訳なさそうな顔をしていた。
言われてみれば、俺とスーフェリアは未だに茶色のボロい服を着ている。リーシェは茶色の革製冒険服だ。
ちなみに、リーシェがエルフの村を出発した時に持っていたリュック。あれは馬車の中でスーフェリアが吸収してしまった。もう必要ないからと、リーシェからの申し出だ。
リーシェの言う通り、この格好で訪問するのはまずい気がする。最低限の礼儀というものがあるだろう。この服は最低限以下だ。
「ちょっと作戦会議するぞ」
「え? なんで?」
「いいからするぞ」
スーフェリアを人のいない路地裏に無理やり連れ込む。リーシェもついてきた。
「よし、着替えるぞ」
「このままでよくない?」
「よくない。リーシェもそう思うよな?」
「はい、着替えましょうスーフェリア様。流石にこの服装はありえません」
「そんなことないけど……」
スーフェリアが着替えなくても、俺とリーシェは着替えよう。そろそろこの服を卒業したい。
でも、何を着ようか。領主に会うための服って何だ? ドレスとかか? こういうのはリーシェに聞いておこう。俺の考えは信用できない。
「リーシェ、どういうのを着るべきなんだ?」
「リズお姉さまは好きな服を作れるんですよね? なら、その服でなければ何でもいいですよ。あたしの服も作ってくれると嬉しいです」
「それは言われなくても作るつもりだったから全然大丈夫」
スーフェリアが悲しそうな目をしていたが無視しよう。そんなにこの服を気に入っていたのか。スーフェリアはともかく、「何でもいい」と言われると迷ってしまう。俺が一番着てみたい服ってなんだろう。
多分、この体には派手系よりも落ち着いたファッションのほうが似合いそうだ。落ち着いたファッション、うん、わかんねえ。なんだよ、落ち着いたファッションって。
着てみたいのはメイド服だ。でも、偉い人に会うのにメイド服はないだろ。
次に着てみたいのは……ゴスロリ。ゴスロリ、悪くないな。偉い人に会っても異世界なら何とかなるだろ。
俺は早速ゴスロリを作り出す。この体に似合う可愛い服を着ることにしよう。