神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
「スーちゃん! スーちゃん!」
「よしよし」
スーフェリアは、号泣しながら抱きついているセラフィオスの頭を優しく撫でていた。
俺とリーシェはセラフィオスの豹変に唖然としている。成人女性が中学生に泣きついている絵面だ。その姿に威厳なんて感じられなかった。
「セラフィオスは本物なの?」
「本物だって! 何で信じてくれないの! スーちゃんはわたしのことが嫌いなの!?」
「だって変な喋り方してたし」
「威厳をつけるためだって言ったでしょ! 信じて! わたしを嫌いにならないで!」
「わかったって。嫌いじゃないから。ソファに戻ろ?」
「ほら! 遠ざけようとしてる! やっぱ嫌いじゃん!」
「めんどくさ……」
スーフェリアはうんざりした表情を浮かべながらセラフィオスの腕を掴み、正面の壁に向かって投げ飛ばした。勢いよく壁にぶつかった彼女は鈍い衝撃音を響かせた後、そのまま床へと崩れ落ちる。
「何するの! そんなに嫌いなの!?」
「なんかさ、性格も変わってない? こんなめんどくさくなかったでしょ。やっぱ偽物かな」
「だってスーちゃんと会うの久しぶりなんだもん! なんで遊びに来てくれないの!」
「いいから座ってよ。ほんと、どうしちゃったの」
セラフィオスは立ち上がり、俺たちの正面に座った。彼女の性格はスーフェリアの記憶と違うようだが、ただ寂しかっただけだと思う。
セラフィオスは手の上に小さな狼を作り出した。使徒の能力を使えるということは本物で間違いなさそうだ。
「ほら、わたしは神の使徒の能力使えるよ。スーちゃん、これで信じてくれた?」
「あ、本物なんだね。それでね、私はセラフィオスに言いたいことがあるんだよ」
「何でも話して。スーちゃんの話、聞きたいな」
スーフェリアは悪魔呼ばわりされて襲われたこと、その悪魔はセラフィオスかもしれないことを話した。それを聞いたセラフィオスは頭を抱えている。
「わたし、悪魔って呼ばれてるの……? 確かに聖教国でいっぱい殺したけど、わたしは神の使徒だよ……?」
「いっぱい殺したから悪魔と呼ばれているのではないでしょうか」
リーシェから冷静なツッコミが入る。俺も同感だ。
「リーシェちゃん、わたしを嫌いになった? 嫌いにならないで……」
「嫌いになんてなりませんよ。セラフィオス様とはお友達だと思ってます」
「リーシェちゃん……!」
庭園トークで生まれた絆は消えていなかった。セラフィオスとリーシェはどちらも嬉しそうに笑っている。尊い友情を外から眺めるのは堪らねえぜ。
「それでさ、何で聖教国で暴れたの?」
「聖教国が人体実験と時空間魔法の研究をしてたの。その結果次第で帝国に攻め込もうとしてたから止めたの。わたし、悪くないよね?」
人体実験。聖教国は結構怖いことをしていた。人体実験は神の教えとかそういうものに反していそうだ。神の使徒が暴れるのも当然だった。
「聖教国でいっぱい殺さないほうがよかったかもね」
「それじゃダメだよ。使命は果たさないと。スーちゃんは使命を無視してたの?」
「いやいや、私もね、使命を果たしてたよ。大森林で頑張ってたんだよ」
「え? そうだったのか?」
スーフェリアの言葉に驚いた。今までスーフェリアが使命を果たそうとする姿を見たことがない。むしろ使命なんてどうでもいい、という様子だった。俺が知らないだけで頑張っていたのか。
「うん、家の近くに来た人を頑張って殺してたよ」
「ほーん、使命に興味が無いと思ってたけど頑張ってたんだな」
「すんごい頑張ってたよ。大森林への進軍を防いでたからね」
「スーちゃんって大森林にいたんだ。だから聖教国が大森林を通ってこなかったんだね」
「進軍を防いでたなら、大森林から出てきても大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないね」
大丈夫じゃないらしい。でも、使徒の体でさえ大森林を抜けるのに何日もかかったんだ。大人数の人間が進軍するのは難しいだろう。だから大丈夫だと信じたい。
「多分大丈夫だよ。スーちゃんはしばらくピュリノスに滞在してね。それよりも、また悪魔呼ばわりしてきたらどうすればいいかな?」
「うーん、リズはどう思う?」
「悪魔呼ばわりされたら、もう殺すしかないんじゃないか? この世界ってそれくらい過酷だろ?」
「そうだね、皆殺しにしようか」
相手は躊躇せずに殺してくるのだ。この世界では非情にならなければいけない。スーフェリアとセラフィオスはともかく、リーシェはただのエルフだ。
俺たちと行動してる以上、彼女にも危険が及ぶかもしれない。そんな時、俺だけ戦わないというのは嫌だった。
「そうですね、あたしも殺すべきだと思います」
「じゃあ、わたしも悪魔呼ばわりされたらそうするよ。それで話は変わるけどね、リズちゃんに質問があるんだけど聞いてもいい? 聞いたらわたしを嫌いにならない?」
セラフィオスは不安げな表情で俺を見つめている。さっきから感じていたが、セラフィオスは嫌われることをひどく恐れている。出会った当初の雰囲気が完全に消え去っていた。
「嫌いにならないよ。スーフェリアの友達なら俺とも友達だ」
「無限友達理論だ……! スーちゃん、リズちゃんって優しいね」
「早く質問しなよ」
「そうだね。なんでスーちゃんと顔が似ているのか聞きたかったの。リズちゃん、人間じゃないでしょ?」
同じ質問を出会ってすぐにされてたな。誤魔化す必要もないだろうし、正直に言っていいだろう。
「元々は他の世界の人間だったんだが、スーフェリアが作った体にいつの間にかなっていたんだ。使徒の能力も使えるし、人間じゃないな」
「……どういうこと?」
セラフィオスは俺の言葉を理解できなかったようで、スーフェリアに顔を向けて説明を求めていた。
「私はね、ずっと1人でいるのが寂しくてもう1人分の体を作ってたの。何回も作り直してたんだけど、やっと納得のいくものが完成したと思ったら何故か動き出してね」
「……何で動き出したの?」
「異世界人の人格と記憶が入っちゃったみたい。私が凄すぎるせいかな」
「……理由になってないよ」
スーフェリアはドヤ顔だが、セラフィオスは呆れた表情をしている。さらっと明かされたが、スーフェリアが体を作っていた理由はそういうことだったのか。
あの地下室に何年も1人で暮らしていたのが俺だったら、とっくに気が狂っていただろう。スーフェリアは孤独を紛らわせようとして俺を作っていた。
「わたしがもう1人作っても動くのかな?」
「試してみれば?」
「とりあえずやってみるよ」
セラフィオスはテーブルの上に全裸のセラフィオスを作り出す。その体は目を開いたまま動かない。
あと、巨乳だ。ゆったりとした灰色のスウェットのせいで気づかなかったが、実は巨乳だったのか。
「うーん、やっぱ動かないよね。スーちゃんが凄いのかな? スーちゃん、もう1人作ってみて?」
「ふふ、私の凄さを見せちゃおうかな」
セラフィオスは自分の死体を吸収し、空いたテーブルにスーフェリアが裸体を出現させた。スーフェリアと同じ顔の肉体は全く動かない。
「スーちゃんも動かないね」
「あれ、リズが特別なのかな。リズも作ってみてよ」
「俺もか? 作ってみたいけど、自分の顔を見たことないんだよな」
「じゃあわたしが鏡持ってくるよ! ちょっと待っててね!」
セラフィオスはそう言うと勢いよく部屋を飛び出していき、すぐに戻ってきた。その手には、豪華な装飾が施された手鏡がしっかりと握られている。
「鏡持ってきたよ。リズちゃんは顔も服もすごく可愛いよね。スーちゃんも同じ服を着ればいいのに」
「私はいいんだよ。それよりもリズ、これで私の最高傑作を見てみて」
スーフェリアはセラフィオスから手鏡を奪い取り、俺に手渡す。俺はその手鏡で自分の顔を見た。
そこに映っていたのはスーフェリアの成長した姿。彼女と異なるのはストレートの長髪とゴスロリの服だけだ。その美貌に俺は見惚れてしまった。
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