神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
「か、可愛すぎる……」
「でしょ! 私の作った体すんごい可愛いでしょ!」
初めて見る俺の姿は、自分の体だと思えないほど可愛かった。スーフェリアと酷似している顔は当然ながら整っており、どこか儚げで病弱そうな印象を与えている。腰まで伸びている白髪と黒のゴスロリが似合っていた。スーフェリアが最高傑作と称したのも納得の美しい容姿だ。
「あたしもリズお姉さまは可愛いと思います!」
「ふっふっふ、リーシェもそう思ってくれるか」
鏡の中の俺は得意満面の笑みだった。か、可愛すぎる……。
「わ、わたしもリーシェちゃんと同じ気持ちだよ。リーシェちゃんとは気が合うね。わたしを嫌いにならないでね」
「あたしもセラフィオス様と仲良くしたいです。だから、嫌われる心配なんてしないでください」
「リーシェちゃん……!」
手鏡を奪われたセラフィオスが座っているリーシェに抱きついた。リーシェの顔が彼女の胸に埋まっている。セラフィオスは友情に飢えているようだ。
一方、スーフェリアはそんな彼女を嫌そうな顔で見ている。昔からの友人が変わってしまってショックなのだろう。
「じゃ、こいつはほっといてリズも体を作ってよ。リズみたいに動くかもしれないしね」
スーフェリアはテーブル上の裸体を吸収してそう言った。自分の顔を見たので己の肉体を作り出すことは可能だ。しかし、少しだけ怖い。俺と同じように転生する人がいたら可哀想だ。
もし誰かが転生して動き出したら、その時は親身になって色々と手助けしよう。俺はスーフェリアとリーシェのおかげでこの世界を楽しめている。今度は俺が助ける番だ。
俺はそう決心し、テーブル上に自分の裸体を作り出す。あまりにも可愛すぎる裸体はぴくりとも動かない。……ほんの少し安堵した。この殺伐とした異世界に来る人がいなくて良かった。
「リズでも動かないね」
「やっぱり俺は事故だったんじゃないか? 自我を持って勝手に動く体なんてありえないだろ」
「それもそうだね。ただの事故なのかな」
「リズちゃんでも駄目なんだね。ねえ、リーシェちゃん。お腹空かない? 何か食べる?」
セラフィオスにとっては体が動くかどうかよりも、リーシェとの関係のほうがよほど重要らしい。リーシェに抱きついたまま食事を提案している。
「あ、はい。お腹空いてます」
「じゃあ、わたしが料理持ってくるからね。ピュリノスの料理は美味しいよ」
セラフィオスは再び部屋を飛び出していった。手鏡の次は料理を持ってきてくれるらしい。ピュリノスの料理というと、やはり海鮮料理だろうか。俺はこの世界に来てから使徒の能力で作った料理しか食べていない。
本物の料理を食べるのは初めてだ。期待で胸が高鳴り、待ちきれそうにない。暫くの間3人で雑談しながら待っていると、セラフィオスがようやく戻ってきた。
両手で木製のトレーをしっかりと支えている。その上には銀の食器があり、フォークとスプーンが添えられていた。食器の中には、鮮やかな真紅のブイヤベースのような料理が湯気を立てている。
「はい! まずは1人分持ってきたよ! あと3人分もすぐ持ってくるからね!」
「美味しそうだね」
「おいおい、これ絶対美味いじゃん。すっごい良い匂いする」
「あたし、こんな料理食べるの初めてです!」
セラフィオスは料理とフォーク、スプーンをリーシェの前に配膳すると、また部屋を出ていった。屋敷の使用人は手伝わないのか。部屋に入るだけで神の使徒だとバレることはないだろうし、使用人に配膳を任せたほうが合理的なはずだ。
それでも自分で運んできたということは、何か特別な理由があるのだろうか。……いや、ないだろうな。料理を運ぶことでスーフェリアとリーシェからの点数を稼いでいるのだろう。セラフィオスの「嫌われたくない」という思惑が透けて見える。
セラフィオスはすぐに3人分も運んでくる。彼女はリーシェを隣に座らせ、俺とスーフェリアが彼女たちに向き合う形で席に着くことになった。
「セラフィオスも食べるの?」
「駄目? スーちゃん、出会ってすぐにわたしを殴ってきたもんね。やっぱわたしのこと嫌いなんでしょ」
「それはね、悪魔呼ばわりされたのがセラフィオスのせいだからだって。もう気にしてないよ」
「本当? 嫌いじゃない?」
「嫌いじゃないって。めんどくさいな」
「面倒臭いとか言わないで!」
「もう早く食べようぜ……」
スーフェリアとセラフィオスが拗れたカップルのような会話をしている。正直、俺も面倒臭い。でも目の前に美味そうな料理があるんだ。メンヘラ使徒の対処よりも先に、この料理を食していこう。
痴話喧嘩をしている2人はほっといて、俺はブイヤベースもどきを口へと運ぶ。うん、めっちゃ美味しい。味はブイヤベースと全く同じだ。ブイヤベースにしては赤すぎるから何か違う料理かと思っていたが、そんなことはなかった。
「リズお姉さま美味しいですね! ちょっと辛いですが、その辛味も悪くないです!」
「え? 辛いか?」
もう一口食べてみる。全然辛くない。海鮮の出汁たっぷりの美味しいスープだ。
「使徒は辛味を感じないんだよ。スーちゃんは理由知ってる?」
「私たちが人間を完全には再現出来てないからじゃない? それっぽい姿に変化させてるだけだしね」
「そっかー、スーちゃんがそう言うならそうなのかも」
2人は辛味を感じない理由がわからないらしい。俺は何となくだが、その理由がわかってしまった。多分、使徒には痛覚が無いからだろう。ネットに「辛味とは痛覚」だと書かれていたのを思い出した。痛覚がなければ、辛味も感じられない。
その情報を話さずに、俺は黙々とブイヤベースもどきを食べ続ける。ネットで知った情報をドヤ顔で喋るのは恥ずかしかった。そもそも、これが本当に事実かどうかも分からないしな。
食事を終え、その後はセラフィオスに寝室へと案内された。個室しか無いようでスーフェリアとリーシェとは別部屋だ。部屋のベッドは俺が作ったものよりも寝心地が良い。俺の安いベッドは高級なベッドに勝てなかった。
翌朝、俺とリーシェ、セラフィオスの3人は食事を摂った部屋に再び集まった。スーフェリアの姿は見えない。
「スーフェリアは?」
「スーちゃんは夜明けには冒険者ギルドへ行っちゃった。早くダンジョンに行ってみたいらしいよ」
「もう行ったんですか。早いですね」
早すぎるだろ。そんなに楽しみだったのか。Dランクに上がるため、頑張って仕事しているのだろう。今日の予定は何も無いし、俺も冒険者ギルドに行ってみようか。
「リーシェ、朝ご飯を食べたら俺たちも冒険者ギルドに行かないか? Fランクの依頼を受けてみようと思うんだ」
「いいですね。あたしも冒険者の仕事をやってみたいです」
「わたしも行きたい……」
セラフィオスが寂しそうな表情でこちらを見ている。今のセラフィオスに威厳は無いが、それでも領主だ。冒険者にはなれないだろう。
「セラフィオス様が一緒に来ても大丈夫なのですか?」
「……全然大丈夫じゃない。仕事がたくさん待ってる。もうやだ、今すぐ辞めたいよ」
俺とリーシェは何も言えなくなってしまった。今まで気にしていなかったが、何で神の使徒が領主をやっているんだろう。尋ねてみたかったが、気分が沈みきっているセラフィオスに尋ねるのは憚られた。
朝食を食べた後、俺とリーシェはゴスロリから革製の冒険服に着替えた。リーシェは以前着ていた服と同じもので、俺は彼女の服を参考にして新たに作った服だ。
ゴスロリでギルドに行くのはさすがに避けておいた。舐めてると思われて他の冒険者にぶん殴られそうだ。ゴスロリを着る必要は無かったかもしれない。領主があのような性格をしてたし、ボロボロの服でも全然大丈夫だったな。でも、可愛い服着るの楽しかったからいいか。今度また着よう。
リーシェと冒険者ギルドに向かう。ギルド内には多くの冒険者がいた。しかし、その中にスーフェリアの姿は見えない。
「冒険者がいっぱいいますね……」
「端っこで待ってるか。人が減ったら掲示板に行こう」
「そうしましょうか」
冒険者がいち早く依頼を受けようと掲示板の前で争っている。小柄で可愛い俺たちがあの中に入ったら潰れてしまいそうだ。
依頼を受けるには、掲示板の張り紙を剥がして受付に持っていくらしい。張り紙に書かれている文字は読めないが、全ての冒険者がそうしていたので正解だろう。
周囲を眺めていると、木製の机を発見した。その前には誰もいない。安全そうなので机の前まで行くと、糸綴じされた冊子とペンが置かれていた。パラパラと捲ると色々と書かれている。全く読めないが。
「リーシェ、これ読める?」
「汚い字ですね。えーと、魔物の情報や問題を起こした冒険者の名前が書いてあります」
「これは交流冊子ってものだ。冒険者が共有すべき情報が書いてある。新人は読んだ方がいいぜ」
背後から何者かに話しかけられた。振り返ると、強面で大柄の冒険者が無表情で立っていた。
「そうだったのか。教えてくれてありがとう」
「これぐらい構わん。この本には誰でも自由に書いていい。お前たちも書いていいからな」
強面の冒険者はそれだけ言うと去っていった。クールな人だ。俺もあの人みたいにクールで優しくなりたい。
「色んなことが書かれてますね。ここのお店が安くて美味い。この依頼主は依頼料が渋い。あ、聖教国の団体がダンジョン攻略をするらしいとかも書いてあります」
「何でも書いていいんだな。聖教国の人間には気をつけてないと」
悪魔呼ばわりされて攻撃されるのは嫌だが、対策方法がわからない。聖教国の人間らしき者を見かけたら、急いで隠れるくらいしか対策が思いつかなかった。
「ん? 最後のページに変な言葉があります」
「変な言葉?」
「はい。偉大なる漆黒の翼は凶刃の宝具を持ち墓所へ赴く、これどう思う? って書いてあります」
「何だそれ」