神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します!   作:光の道筋

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煽りは礼儀

「偉大なる漆黒の翼は凶刃の宝具を持ち墓所へ赴く、これどう思う? って意味不明だな。何かの暗号か?」

「何でしょうか……? 何か反応を求めているようですが」

 

 よくわからない文章だ。重要な暗号なら不特定多数の人間が閲覧できるところに書くわけがない。冒険者が遊びで書いただけかもな。

 

「とりあえず煽っとくか」

「そんなことしてもいいのですか?」

「リーシェ、煽りは礼儀なんだ。煽らないと逆に失礼になる」

「なるほど! じゃあ、煽っておきましょうか」

 

 煽りが礼儀になるのは相手が身内のときだけだが、今は相手の顔が見えないし大丈夫だろう。

 リーシェは優しい子だから、誰かを煽るようなことはしないはずだ。きっと、この言葉も本気にはしていない。

 

「最初は軽くいくか。ダサい、センスが無い、って書いてくれないか?」

「わかりました。あたしも、翼が宝具を持つのが意味不明。言語能力に問題があるのでは? って加えておきます」

「いいぞ。どんどん煽ろう」

 

 なかなか手厳しい煽りだ。俺が彼女に直接言われたら泣いちゃうかもしれん。更なる煽りを2人で考えていると、ギルド内にいる冒険者の数が減ってきた。そろそろ掲示板に行ってみよう。

 

「リーシェ、良さそうな依頼ってあるか?」

「そうですね……これなんかどうですか? 店先の掃除らしいです」

「それやってみるか。掃除なら俺でもできそうだ」

「リズお姉さまなら何でもできそうですけど」

「何でもはできないぞ。できることだけだ」

 

 俺は掲示板に貼られている依頼書を剥がし、受付のお姉さんに渡す。これで受注完了らしい。その後、依頼先の店に向かった。

 

「おう、こんな可愛い女の子が冒険者なのか」

「可愛い女の子です! リズと言います! 依頼をこなしに来ました!」

「元気あるな。まあ、適当に掃除しといてくれ。終わったら報告してくれよ」

「了解です!」

 

 初めてのお仕事なので張り切ったが、ただ一日中掃除をしているだけで終わった。掃除は楽しい。でも、この仕事って冒険者じゃなくてもいい気がする。

 

 空が橙色の灯りで照らされる頃、俺たちは冒険者ギルドに戻って報酬を貰った。2人で大銅貨6枚だ。相変わらず貨幣価値がわからないせいで、妥当な報酬なのか判断できない。

 リーシェに聞いてみたが、エルフの村では物々交換が主流だったらしく、彼女もよくわからないそうだ。セラフィオスの屋敷に帰る道中、俺はリーシェに頼み事をした。

 

「リーシェ、ちょっと頼みたいことがあるんだけど」

「はい、何でしょうか」

「リーシェさえ良ければ、俺に読み書きを教えてくれないか?」

「全然大丈夫です! 読み書きできないと不便ですもんね。あたしがわかりやすく教えてあげますよ」

「本当か! ありがとうリーシェ。すごく助かるよ」

 

 この世界を今日まで過ごしてみて、読み書きできないことが想像以上に不便だと痛感した。これから名前を書いたり、依頼書を読むのを全てリーシェ頼りでは申し訳ない。早く読み書きできるようになりたかった。あと煽りも自分で書きたいし。

 

「では、簡単な絵本を何冊か買いに行きましょう。教材にします」

 

 リーシェに連れられて本屋に向かう。といっても、2人とも土地勘が全く無いので迷いまくった。通行人に尋ねて何とか到着する。

 

「絵本一冊が大銀貨一枚か……」

「冒険者2人と一緒に貰った報酬から出しちゃいましょう。3冊買えますよ」

「そのお金を俺個人のために使っていいのか? リーシェも好きなの買っていいんだぞ?」

「あたしは欲しいもの無いから大丈夫です。スーフェリア様も……多分無いでしょう」

「……ありがとう」

 

 しっかりしてるから忘れそうになるが、リーシェはまだ子どもだ。欲しいものは何かしらあるだろう。

 それを我慢して俺の為に使ってくれるのは有難い。スーフェリアはお金で買いたいものとか無いと思う。多分、おそらく、きっと。

 絵本を買って、セラフィオスの屋敷に帰ってきた。もう日が暮れ、屋外は闇に包まれている。屋敷には既にスーフェリアが帰宅していた。現在、俺たち3人はセラフィオスの私室にいる。セラフィオス自身はいない。

 

「あ、おかえり。遅かったね」

「本屋に寄り道してたんだ。セラフィオスは?」

「まだ仕事らしいよ。あいつはどうでもいいからさ、それよりも本屋で何買ったの?」

 

 スーフェリアはセラフィオスに対して冷たい態度を取っている。こんな対応を続けているからこそ、セラフィオスが面倒くさくなっていることに気づいていないのだろう。

 俺はセラフィオスに絡まれたくないので何も言わない。彼女の処理はスーフェリアに頑張ってもらおう。

 

「絵本を買ったんだ。読み書きができるようになりたくて」

「お、殊勝な心掛けだね。私が教えてあげたいけど、人に教えるのってちょっと苦手なんだよね」

「リーシェに頼んだから大丈夫だ。スーフェリアはギルドに行ってたんだろ? どうだった?」

 

 俺はハンバーガーを3人分作りながらスーフェリアに尋ねる。

 今日は照り焼きチキンバーガーだ。スーフェリアとリーシェ手渡すと、2人とも美味しそうに食べ始めた。

 

「あ、私これ好き。それでギルドだね。うん、何事も無く仕事を終えたよ。でもムカつくことがあってね」

「え、何事かあるじゃん」

「いやいや、大したことないんだよ。ちょっとムカついただけで」

「スーフェリア様、何か問題を起こす前に相談してくださいね。約束ですよ?」

「私を何だと思ってるの……」

 

 リーシェの心配は正しい。スーフェリアが人と諍いを起こしたら迷いなく殺しそうだ。殺人犯になる前に相談してほしい。

 

 ハンバーガーを食べ終わった後、リーシェに字の読み方を教えてもらった。助手にはスーフェリアがいる。

 使徒の記憶力は優れており、もう簡単な言葉なら読めるようになった。こんな簡単に覚えられると勉強が楽しい。勉強が終わり、それぞれの個室に戻る。セラフィオスとは出会わずに就寝となった。お仕事頑張ってくれ。

 翌朝、セラフィオスの私室に行くと俺以外の3人が揃っていた。

 

「スーちゃんお願いだから! 午前中だけでもわたしと一緒にいて!」

「何回も断ってんじゃん。まだ言うの?」

「お願い! もうお仕事嫌なの! 耐えられないの! スーちゃんがいたら耐えられるの!」

 

 ソファに座るスーフェリアとリーシェの前でセラフィオスが土下座していた。額を床に擦り付けている。あ、哀れだ……。成人女性が子どもに土下座してる……。

 実際のところ、スーフェリアとセラフィオスの年齢差はほとんどないと思う。旧友と言っていたし、セラフィオスも太古から生きているのだろう。しかし、見た目のインパクトは凄まじかった。聖教国に悪魔と呼ばれた人物には到底見えない。

 

「今まではさ、私がいなくても仕事してたんでしょ。なら私いなくても大丈夫じゃん」

「大丈夫じゃないの! 周り怖い人しかいなくて! 午前中だけでいいから!」

「めんどくさ……リーシェでよくない? リーシェはセラフィオスと一緒にいたいよね?」

 

 こいつ、面倒臭くなってリーシェを売りやがった。セラフィオスと一緒の空間にいたくない気持ちは理解できるが、だからといってリーシェに押し付けるのは違うだろう。

 

「あたしですか!? あたしは大丈夫ですけど!? でもリズお姉さまの許可がないとですね!」

 

 リーシェも嫌がってんじゃん。俺の許可を必要としたことなんて無いじゃん。庭園トークの絆はどこに行ったんだ。なんだかセラフィオスがちょっと可哀想になってきたな。ここはスーフェリアと一緒に仕事してもらおう。

 いや、俺もセラフィオスが嫌いじゃないんだけどね。スーフェリアのほうが彼女と付き合いが長いしね。俺は昨日会ったばかりだしね。

 

「スーフェリア、セラフィオスと一緒にいてあげなって。友達だろ?」

「なっ! 私は冒険者の仕事をしたいんだけど!?」

「午後から冒険者の仕事をしてくれ。リーシェ、早く逃げるぞ。セラフィオスもそれでいいな?」

「うん! リズちゃんは優しいね。わたし大好き」

「俺もセラフィオスが大好きだ。じゃあ、俺たちは出かけてくる」

 

 俺とリーシェは急いで部屋を出た。部屋の中からスーフェリアの嘆き声が聞こえる。スーフェリアは優しいから、決して逃げ出すような真似はしない。そう思い込んでおく。

 屋敷を出発して、俺たちは冒険者ギルドに来た。今日も依頼を受けよう。

 

「スーフェリア様は大丈夫でしょうか」

「大丈夫だと信じよう。そんなことより、昨日書いた冊子を見ないか? 返事があるか気になる」

「あたしも気になります。見てみましょう」

 

 2人で冊子のある机まで行く。今日も掲示板前は混雑してるので暇つぶしにもなる。リーシェが冊子を捲ると、昨日彼女が書いた文章に続いて何か書いてあった。俺はまだ難しい文章を読めない。

 

「返事来てますね。私のね、この素晴らしいセンスがわからないなんて可哀想だね。私の言語能力は他人より優れてるよ。あなたに問題があるから理解できないんじゃないかな。って書かれてます」

「ブチ切れてんじゃん……」

 

 この日から謎の人物とのレスバが始まった。

 




次回、レスバします。
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