神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します!   作:光の道筋

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レスバをしよう!

 意味不明な文章を書いた人物は明らかにキレている。俺たちが煽ったのだから当然だ。

 

「これは負けてられませんね。言い返してやりましょう」

 

 リーシェがペンを手に取って冊子に書き始める。なんだか楽しそうだ。リーシェの意外な一面が見えた。

 

『可哀想なのはそちらですよ。自分を客観視することもできないのですか? あなたは頭に問題があるみたいですね。頭に薬草を塗ってみては? いや、あなたの頭ではそんなことも思いつきませんね。申し訳ありません』

 

 こう書いたらしい。書き終えた後、真剣な表情をしながら教えてくれた。少しリーシェが怖い。こんなことを言う子だったのか。

 

「リーシェ、もうちょっと優しい言い方のほうが良くないか? 喧嘩は良くないしな?」

「リズお姉さま、こいつに分からせてやらないといけません。ここで引いたら負けですよ」

「お、そうだな」

 

 怖くて頷いてしまう。俺が軽い気持ちで書き始めたせいで、リーシェがレスバの世界に参戦してしまった。ごめん、エルフの長。可愛い娘は顔も知らない誰かと口喧嘩しちゃってます。

 

 一旦レスバをやめさせて、俺たちは冒険者の仕事をする。今日は酒場の手伝いをした。俺は給仕で、リーシェは皿洗いだ。リーシェの気分転換になってほしい。

 

 仕事を終え、ギルドで報酬を貰う。屋敷に帰る頃には夕方になっていた。

 屋敷にスーフェリアの姿は見えない。1人で冒険者の仕事を頑張っているのだろう。娘が独り立ちしたような気分だ。父性が目覚めそう。

 セラフィオスの私室に入り、リーシェに読み書きを教わる。セラフィオスは仕事中らしく、私室にはいなかった。

 

 暫く勉強していると、スーフェリアが部屋に入ってきた。彼女は不満気な顔をしている。セラフィオスと午前中一緒にいたのがそんなに嫌だったのか。

 

「スーフェリアおかえり。朝はごめんな。セラフィオスと一緒は嫌だったか?」

「セラフィオスと一緒なのはまだマシなんだよ。問題はね、昨日も話したムカつくことがまたあったんだよ」

「え? 大丈夫か?」

 

 冒険者の仕事が合わないのだろうか。スーフェリアはダンジョンに潜りたがっていたしストレスが溜まってそうだ。

 

「大丈夫だよ。もうね、すぐ解決するから。私って親だしね。安心して」

「スーフェリア様、何か嫌なことがあったら相談してくださいね?」

「うん、そうするよ。私たちは仲良し3人組だからね」

 

 スーフェリアは微笑みながら話す。彼女は俺の何万倍も年上だ。心配など余計なお世話かもしれない。何か手伝うのは相談してくれた後でいいだろう。昨日と同じようにハンバーガーを食べて就寝する。

 翌朝、起床してセラフィオスの私室に行く。今日もセラフィオスが土下座していた。

 

「スーちゃん! 今日もお願い!」

「……ねえ、何で領主やってるの? 辞めちゃえばいいのに」

「わたしも辞めたいよ。でも、人間に任せると暴走しちゃうの。ピュリノスってさ、海運とダンジョンのせいでお金がいっぱい集まるから」

「放っておけばいいじゃん」

「一度、人間に領主を任せてみたの。そしたら帝国から独立しようとしたんだよ。もうわたしが管理するしかないんだよ」

 

 セラフィオスが領主を務めていたのはそういう理由だったのか。ただの嫌われたくない使徒だと思っていたが、すごく責任感のある人だった。

 

「後継とかどうしてるの。100年以上同じ人が領主だったら流石に怪しいでしょ」

「頑張って誤魔化してるよ。話すと長くなるんだけどいい?」

「長いならいいや。セラフィオスは大変そうだからね、今日も午前中だけ付き合うよ」

「ありがとうスーちゃん!」

 

 セラフィオスが立ち上がってスーフェリアに抱きつく。どうやって誤魔化しているのか気になるが、今は聞かないでおこう。古くからの友人の間に割り込むのは気が引けた。

 セラフィオスは頑張っているし、スーフェリアと一緒にいることで少しでも気が楽になればいいのだが。

 

 俺とリーシェは朝食を食べて冒険者ギルドに向かう。今日も仕事をしよう。ギルドに到着すると、リーシェはすぐに冊子を開きにいった。もうレスバ狂戦士と化している。

 

『客観視くらいできるからね? 頭に問題も無いから。口だけじゃなくてさ、あなたのセンスも見せてよ。文句を言うだけだったら誰にでも可能なんだよ。この世界ではね、実力が大事なんだよ』

 

 今日も謎の人物から返信があった。これは正論だ。正論をぶつけてくるタイプの狂戦士か。

 

「こいつ調子に乗ってますね。叩きのめしましょう」

 

 リーシェは水を得た魚のように生き生きとペンを走らせる。早くレスバ狂戦士から元の可愛いエルフに戻ってくれ。

 

『あなたが、これどう思う? と書いていたから返事をしただけです。何故あたしがあなたなんかにセンスを見せなくてはいけないのですか? ご自身の発言を忘れないでください。実力が大事なのは理解しています。あなたのセンスは最下層なので調子に乗らないでくださいね』

 

 長文を書き終えたリーシェは満足気な表情をしている。この子はもう戦場から戻れなさそうだ。リーシェはレスバ狂戦士として天寿を全うするだろう。

 リーシェを醜い争いから離れさせ、今日も冒険者の仕事をする。また酒場の手伝いだ。何事も無く仕事を終え、1日が終了した。

 

 次の日、まだレスバ狂戦士の戦いは続いているようだ。

 

『私のセンスが最下層って言うなら書きなよ。書かない時点で自信が無いってことが丸分かりだよ。口だけ達者で行動しない奴が一番愚かなんだよね。そんな愚か者に私のセンスが理解できるわけないでしょ』

 

「このガキッ! 調子に乗りすぎてますね。ぶっ潰しましょう。あたしのセンスを見せてあげます」

 

 子どものリーシェがキレている。俺にとってはどんぐりの背比べにしか見えない。煽りは礼儀なんてドヤ顔で言わなければよかった。リーシェは相手を負かすことに固執してしまっている。

 

『愚か者はあなたです。そんな愚か者のあなたのために私のセンスを見せてあげます。その美貌は花よりも尊く、その声は鳥のさえずりよりも可愛らしい。その慈愛は世界を全て包み込むほど器が大きかった。彼女はまるで神が創造したかのようだ』

 

「リーシェ、これって……」

「はい、リズお姉さまのことです。こいつにリズお姉さまの素晴らしさを知ってもらいましょう」

「お、そうだな」

 

 美貌と声はともかく、慈愛は無いだろ。そんな慈愛を披露した覚えはない。リーシェは俺をこんなふうに見ているのか。何処かで株を下げておきたい。勘違いされたままというのは照れくさかった。

 その次の日もレスバは続いている。謎の人物も毎日冒険者ギルドに来ているようだ。他の誰かが冊子に書き込んでいる姿を見たことがない。謎の人物は俺たちがいない間に返事を書いているらしい。

 

『何それ。センスの欠片もないね。私のセンスは頂点だけど、あなたは底辺だね。人間は神に創造されてないよ。勘違いしないでほしいな。あなたは五感全てに薬草を塗ってね』

 

「リズお姉さま! こいつまだ煽ってきます!」

「あぁ、うん。もう口喧嘩はやめないか?」

「いえ、ここで引いたら負けです。この馬鹿から逃げたら先祖に顔向けできません」

「全然顔向けできるって……」

 

 リーシェの戦闘意欲は高まったままだ。早くこの戦いから降りてほしい。

 

「リーシェ、俺が悪かった。煽りは礼儀じゃない。勢いで行っちゃったんだ。ごめん」

「謝らないでください。これはあたしの誇りの問題です」

「1日、1日だけ返事を書くのを待たないか? 一度落ち着いてみよう。そしたら何か変わるかもしれない」

「……わかりました。1日経てば良い煽りが思いつきそうです」

 

 良かった。とりあえず戦場から離れさせることができた。頭を冷やせばレスバをやめてくれるだろう。

 今日も酒場の給仕をする。もう冒険者を辞めて酒場に就職してもいいかもしれない。夕方、酒場の仕事を終えてギルドで報酬を貰う。その後、セラフィオスの屋敷へ帰った。

 セラフィオスの私室にはスーフェリアがいた。俺たちより早く仕事を終えたようだ。

 

「おかえり。ねえ、明日は3人で仕事しない?」

「ただいま。3人で仕事できるのは嬉しいけど、セラフィオスは? 一緒に居なくてもいいのか?」

「まあ、明日だけなら大丈夫でしょ」

「それならいいんだけど」

 

 翌朝、案の定スーフェリアとセラフィオスは揉めていた。

 

「何で行っちゃうの! わたしが嫌いなの!?」

「嫌いじゃないよ。大好きだよ」

「じゃあ何で!?」

「私を縛らないでよ。私はね、リズとリーシェと遊びたいんだよ」

「……わたしはスーちゃんを縛ってたの?」

 

 セラフィオスは泣きそうだ。何か力になりたいが、俺ではスーフェリアの代わりになれない。

 

「うん、ちょっとだけね。夜は一緒に居ようね」

「……約束だよ」

 

 セラフィオスが可哀想だ。今夜は俺もセラフィオスと一緒に居よう。必要無いかもしれないが、彼女のために何かしたかった。

 3人で冒険者ギルドに到着する。リーシェは日課となっている冊子の確認に向かった。俺とスーフェリアも後に続く。

 

「あ、そうだ。この前ムカつくことがあるって言ったの覚えてる?」

「しっかり覚えてるぞ。それがどうしたんだ?」

「その原因がこいつなんだよね。ちょっと見てよ」

 

 スーフェリアはそう言って、冊子をパラパラと捲る。いや、まさかな。

 

「ほら見て、この馬鹿。すぐ煽ってきてムカつくんだよね」

 

 スーフェリアは俺とリーシェが書いた文章を見せてくる。俺たちのレスバ相手はスーフェリアだった。

 




次回、スーフェリアとセラフィオスの仕事を見ます。
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