神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
「スーちゃん何で? まだFランクでしょ? Dランクを目指して仕事を頑張ってたんじゃないの?」
セラフィオスの言う通りだ。Dランクにならなければダンジョンへの入場許可が下りない。そのために今日も給仕をしていた。どうしてダンジョンに侵入するなんて言い出したのだろう。
「早くダンジョンで遊んでね、ストレス発散したいんだよ」
「スーちゃんがストレス? 何があったの?」
「さっきの空間とか。あと私を馬鹿にしてきた奴との喧嘩とか」
確かに、先程の空間でじっとしているのはストレスが溜まりそうだ。しかも、スーフェリアは連日あの空間に居る。俺が彼女をセラフィオスに売ったせいだ。
リーシェとの口喧嘩もストレスが溜まっただろう。彼女はかっこいい言葉が好きで、自分のセンスを信じている。そのセンスを馬鹿にされたら当然怒るに決まっている。俺が最初に煽ったせいだ。
……どっちも俺のせいじゃん。どうしよう。スーフェリアのストレスの原因は全て俺だったのか。
「え!? 一緒にいるの嫌だった!? ごめんね。無理矢理付き合わせちゃったね」
「一緒にいるのはいいんだけどね。あの空間はどうにかしてよ。セラフィオスが会話しないと誰も話さないって」
「だって話すことないし……威厳出したいし……」
「そんなのどうでもいいから。好きな食べ物でも聞きなよ。あと、愛称をつけると仲良くなるらしいよ」
「うん……試してみるよ……」
以前俺が言ったことをスーフェリアが話している。あれは適当に言っていたので恥ずかしい。リーシェを見てみると、彼女はスーフェリアから視線を逸らしていた。スーフェリアと口喧嘩していたので気まずいようだ。
ちなみに、まだ俺とリーシェはセラフィオスに抱きつかれている。離してくれる気配は無い。
「リズとリーシェはどう? 侵入してみない?」
「俺はいいぞ。スーフェリアのストレス発散のためだしな」
「あ、あたしも大丈夫です! スーフェリア様が侵入するならあたしも侵入します!」
スーフェリアに頭が上がらない俺たちは、迷うことなく同意した。ここで断る選択肢は無い。
「ありがとね。セラフィオス、ダンジョンの前に衛兵っているの?」
「いるよ。でも、スーちゃんとリズちゃんなら別人の姿になって簡単に忍び込めちゃうね」
使徒なら侵入も簡単か。人間に変装がバレることもないだろう。水晶さえ無ければ大丈夫だ。
「リーシェは忍び込めないのか?」
「リーシェも侵入できるよ。リュックにでも詰めて運ぼうよ。わざわざ中身を見ないだろうしね」
「あたしもそれでいいですよ。姿を変えるとかできませんし」
子どもをリュックに詰めて運ぶのは犯罪っぽいが、本人が了承してるので何も言うまい。そもそもダンジョンに侵入するのが規則違反だ。
「じゃ、詳しくは明日話そうか。リーシェ眠いでしょ」
「お三方が起きているなら、あたしは寝ませんよ」
「もう寝ないか? 夜遅いし、俺も寝るから一緒に寝よう」
「そうだよリーシェちゃん。わたしも疲れたから早く寝たいな」
「わ、わかりました。そこまで言うのでしたら寝ましょう……」
3人の連携プレーでリーシェを寝かす。睡眠が必要ない神の使徒に付き合わせる訳にはいかない。子どもは早く寝たほうがいい。皆で執務室を出て、それぞれの部屋に解散となった。
翌朝、今日はダンジョンに不法侵入する。不法侵入の準備のため、俺たち4人はセラフィオスの私室に集まった。
「セラフィオスはどうせ仕事で来れないでしょ? ここに居なくてもいいよ」
「何でそんな酷いこと言うの!? 確かに仕事だけど、わたしも話聞くから!」
「冗談、冗談だよ。じゃ、リズが変身してね。私はリュックになるよ」
「俺が? てっきりスーフェリアが変身するのかと思ってた」
「盗賊殺した時に戦闘訓練したいって言ってたじゃん。その一環だよ」
そういえばそんな事を言っていた。最近、酒場の店員ばっかりやっていたから忘れてたな。使徒の能力を上手に扱えるようになりたいから、喜んで変身しよう。
「覚えててくれたんだな。変身はなりたい人の姿をイメージすればできるのか?」
「うん、その通りだね。変身するのは故人がいいかも。生きてる人に変身して、その人と出逢ったら面倒だし」
「あの、ダンジョンに入る際にギルドカードの提出を求められたらどうするのですか? あれって偽造できますか?」
リーシェから指摘が入る。使徒ならギルドカードの偽造もできそうだ。あれは名前とランクが書いてあるだけだからな。
「ギルドカードって魔力が込められてるから、使徒の能力だけじゃ不可能だよ。わたしの部下に頼んで魔力を込めてもらうしかないね」
「それなら、あたしが魔力込めますよ。魔法使えるんです」
「え!? リーシェちゃん魔法使えるの!? 凄いねぇ、頑張ってるねぇ」
「えへ、えへへ。あたし、また何かやっちゃいました?」
セラフィオスがふにゃっとした笑顔のリーシェを撫でている。褒められて嬉しそうだ。
ギルドカードには魔力が込められているらしい。込める魔力は誰のでもいいのか。セキュリティが高いのか低いのかわからない。
「リズ、変身しちゃって。私が殺した盗賊でいいよ。スキンヘッドの人とか冒険者っぽいでしょ」
「冒険者っぽいか……?」
「冒険者っぽいよ」
「そうか? じゃあ、あの人に変身してみるよ」
あの人は典型的な盗賊に見えたが、逆らわずに変身を始めた。スキンヘッドの盗賊をイメージしながら体を大きくしていく。目線が段々と上がっていき、体全体が筋肉質になる。
自分の体を見る限りでは男になった。服も盗賊が来ていたものと同じだ。しかし、肝心の顔がわからない。本当に変わっているのだろうか。
「わ……リズお姉さまがおじさんになっちゃいました!」
「なんか怖そうな見た目だね。スーちゃん、この人間を殺したの?」
「うん、足の腱を切って飼いたいとか言ってたね」
「うわ、中身も怖い人なんだね……」
3人の会話の内容から察するに、ちゃんとスキンヘッドの盗賊になっているらしい。俺はちゃんと元の顔に戻れるのか? ちょっと心配になってきた。
「スーフェリア、俺は元の顔に戻れるのか? 自分の顔を鏡で見たのって一回しかないんだけど、戻したら少し顔が変わるとか無いよな?」
声もあの盗賊と同じだ。声帯まで変わっているのか。
「大丈夫だよ。体が元の姿を覚えてるからね。マグマで溶けたときってさ、顔を見た事無いのに元の姿に戻れたでしょ?」
「あ、そういえばそうか。溶けた前後で顔変わってなかったのか」
「うん、全く変わってなかったね」
あの時は何も考えずに再生させていた。それでも元の姿に戻れたらしい。なら大丈夫か。というか、今元の姿に戻ってみよう。試さないと不安だ。
リズの姿をイメージし、体を縮小させていく。手足は細くなり、雪のような綺麗な肌に戻った。服もリーシェとお揃いの冒険服だ。
「リズお姉さまに戻りました!」
「え、何で戻しちゃったの」
「元に戻れるか不安だったから……」
「盗賊になってよ。私はね、早くダンジョンに行きたいんだよ」
スーフェリアに怒られてしまった。体をスキンヘッドの盗賊に戻す。今回はさっきよりも早く変身できた。セラフィオスはリーシェに銀色のカードを渡す。おそらくギルドカードだ。
「また怖い人に戻った。それでリーシェちゃん、これに魔力込めてくれない? 使徒には魔力が無いの」
「はい、任せてください」
「使徒って金属も作れるのか?」
「これは見た目だけ金属っぽくしてるだけなの。中身みて、木製でしょ?」
「あ、本当だ」
セラフィオスが偽ギルドカードを半分に割る。中は茶色い木だった。
「では魔力込めちゃいますね…………はい、終わりました」
リーシェが偽ギルドカードをほんの5秒ほど持っただけで魔力が込められたらしい。見た目は何も変わっていない。使徒に魔力が無いから気づけないのだろうか。
リーシェは俺にギルドカードを渡す。それにはDランクと書かれていた。名前は……多分「セラフィ」って書いてある。セラフィオスが考えた偽名か。
「リーシェはこれに入ってね。早く早く」
「え? これ、スーフェリア様ですか?」
「私だよ。ふふ、使徒はこんな姿にもなれちゃうんだよね」
スーフェリアの声がする方へ目を向けると、そこには革製の大きなリュックがあった。背負い紐に口があり、そこから喋っている。いつの間にか、スーフェリアがリュックになっていた。
……何これ。いや、さっきはっきりと「私はリュックになるよ」と言っていたのだが、俺はてっきりリュックを作り出すという意味だと思っていた。スーフェリア自身がリュックになるとは予想外だ。
「で、では、入らせていただきます……」
リーシェは恐る恐るスーフェリアの中に足を踏み入れる。サイズはぴったりで、膝を抱えたまますっぽりと収まってしまった。リーシェが入るとリュックは勝手に閉まっていく。スーフェリアが動かしているのか。
「リズ、私を背負ってね。早速ダンジョン行こう」
「じゃ、じゃあ背負うぞ。リーシェ、何か問題があったらすぐに言ってくれ」
「はい、リズお姉さまお願いします」
スーフェリアの中からリーシェの声がする。彼女はいつも通りの声色だった。不安ではなさそうだ。俺はリーシェ入りのスーフェリアを背負う。どういう状況なんだ。
「セラフィオス、行ってくる」
「皆気をつけてね。わたしは仕事して待ってるから……」
「次はセラフィオスも一緒に行こう。4人でダンジョン探検だな」
「……いいの?」
「勿論。約束だ」
「……ありがと。それまでにお仕事片付けとくよ」
屋敷を出るまでセラフィオスが付き添ってくれた。今の俺の姿を友人だと周知させるらしい。そのおかげで怪しい風貌でも問題無く出発できた。
セラフィオスと別れ、ダンジョンに向かう。ダンジョンまでの道案内はリュックと化したスーフェリアがしてくれた。
ダンジョンはピュリノスの外にあるようで、城壁を越えて歩いていった。前方には4人組の冒険者達が俺たちと同じ方向へ歩いている。彼らもダンジョン探検に行くのだろう。
20分ほど歩き、ダンジョンに辿り着く。そこは山の中へと続く洞窟だった。洞窟の前には2人の衛兵がいる。ダンジョンに入ろうとすると衛兵に止められた。
「おい、ギルドカードを見せろ」
「わかりました。どうぞ」
俺はポケットから偽ギルドカードを差し出す。
衛兵は銀色の棒をギルドカードに当てていた。あの棒で魔力を感じ取っているのだろうか。
「よし、通れ」
「失礼します」
俺は軽くお辞儀をして通り過ぎる。偽物だとバレなくて良かった。
「ふふ、やっとダンジョンだね。魔物をいっぱい倒したいね」
「初めてのダンジョンです。楽しみですね」
「俺も楽しみだ。何があるんだろうな」
衛兵から離れると背中から2人の声がした。全員が小声で話している。本当は絶対にバレないと思える場所で話すべきだ。しかし、ダンジョンに入った高揚感に押されて、つい口を滑らせてしまった。
スーフェリアとリーシェを解放するために人気の無い場所を探す。ダンジョン内にはそこそこ冒険者がいて、奥へ進まなければならなそうだ。
入り組んだ迷路のような洞窟を歩く。高さは4m、横幅は3mくらいの道だ。下り坂になっていて、どんどん下へと降りている。人のいない道を選び続けていると、奥に岩の塊が見えた。人の形をしている。
「あ、ゴーレムがいるね。魔物だよ」
背負い紐に目を作ったスーフェリアがそう報告する。ダンジョンで初めて遭遇した魔物はゴーレムだった。
次回、ゴーレムと戦います。