神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
何が起こった? 突然何も見えなくなった。視界が真っ暗だ。しかも、スーフェリアとリーシェの声が聞こえない。周囲がとても静かだ。聴覚も失ったのか。
手足は動く。マグマで溶けた時のように、俺が小さくなってしまったわけではないようだ。
取り敢えず視覚を修復する。目の前には驚いた顔のスーフェリアとリーシェがいた。何か言っているが聞こえない。聴覚も修復しよう。
「────たの!? まだゴーレムが潜んでるから気をつけて!」
「リズお姉さま! こっちです!」
「な、何が……」
リーシェが半円状の岩のドームを魔法で作った。彼女は手に持っていた松明を投げ捨て、俺の手を引っ張ってドームに向かう。
あれ? 俺の手が黒焦げだ。先程のスーフェリアと同じ手をしている。ゴーレムに電撃で攻撃されたのか?いや、俺は使徒の能力で電気を生み出そうとしていた。その結果か? 自傷したのか攻撃されたのかが判別つかない。
2人でドームに入ると、入り口の地面から岩がせり上がって完全に塞がれた。
「私が敵を見つけてくるから待ってて!」
「了解です! ここで待機しています!」
ドームの外でスーフェリアが叫ぶ。黄色い宝石のゴーレムがもう一体いて不意打ちされたのか? その可能性はあるが、まずは俺のした事を報告しなければならない。黙ったままというのは論外だ。
「リーシェ、俺は使徒の能力で電気を生み出せないか試してみたんだ。その結果でこうなったのか、それとも攻撃されたのか、どっちか分かるか?」
「わ、分かりません。いきなりバチバチってなってリズお姉さまが焦げたんです」
「……やっぱもう一体のゴーレムがいるのかな」
「リズお姉さまは魔法が使えないはずでは? なら、もう一体いるのではないでしょうか」
そうなるのか。まだ黒焦げになった原因が判別つかない。スーフェリアにも話さなければ。
「今の話をスーフェリアにもしてくる。リーシェはここで待っていてくれ」
「……そうですね。リズお姉さまなら電撃を食らっても死にませんし、この中にいる必要は無かったですね」
リーシェがドームの入り口を開ける。外の景色は先程までいた洞窟と別物だった。
地面と壁が全て白い泥に覆われている。使徒が何も考えずに再生すると出てくるものだ。その泥は脈動しており、一つの生物のようだった。リーシェが投げ捨てた松明は、地面から生えた白い腕が掴み、持ち上げている。こんなことができる人物は、ただ一人しか思い当たらない。
「な、何ですかこれ。あたし達が避難してすぐに……」
「スーフェリアがやったのか……? 確認してくる」
「分かりました。気をつけて下さい」
ドームの外に出ると、すぐに入り口が閉じられた。地面と壁だけでなく、天井も白い泥に覆われていた。巨大生物の体内に入った気分だ。
「リズどうしたの。何かあった?」
「スーフェリア? 聞きたいことが──」
天井を眺めていると、下からスーフェリアの声が聞こえた。声が聞こえた方へ視線を向ける。そこにあったのはスーフェリアの生首だった。
「なっ! スーフェリア!? く、首が!」
「うん、私だよ。今は敵を探すのに忙しいからね、首だけで話すよ」
「そ、そんな事もできるのか……いや、それよりも敵は見つかったのか?」
「全然見つかんないね。どっかの隙間から攻撃してるのかと思ってね、肉体を広げて隈なく探してみたんだよ。それでもダメだね」
この白い世界はそういう理由だったのか。改めて、使徒の力の強大さを実感した。しかし、その力でも敵が見つからないということは、やはり俺の自傷で決まりだろう。
「敵が見つからないのか。なら、黒焦げになったのは俺が原因かもしれない」
「どういうこと?」
スーフェリアに使徒の能力で電気を生み出そうとしたことを伝える。それを聞いて、彼女は訝しげな表情をしていた。
「魔法以外で電気を生み出せるの?」
「俺も詳しくないんだけど生み出せるらしい。もう一回試してみるよ」
「うん、説明されるより見たほうが早いね」
黒焦げの体を元に戻し、電気を生み出せるか試してみる。すると、再び視覚と聴覚を失ってしまった。体を元に戻すと、スーフェリアの生首が興奮していた。
「何それ! どうやってるの!? 私もできる!?」
「多分スーフェリアもできるぞ。それで、さっきと同じだった?」
「うん! さっきリズが黒焦げになった時と同じだったね! 敵がいなくて良かったね! 私もこの形態やめよっか!」
スーフェリアの生首から下が生えてくる。彼女は普段と同じ体になった。洞窟全体に広がる白い泥も一瞬で消滅する。あの風景が嘘のように灰色の岩肌へと変わった。
「リーシェ! もう出てきていいよ!」
「はい! 出ます!」
スーフェリアがドームに向かって叫ぶと、リーシェが中から出てきた。周囲をキョロキョロと見渡している。白い泥が無くなっていて驚いている様子だ。
「敵は倒したのですか?」
「敵はいなかったよ。リズが自滅したんだって」
「リズお姉さまが? 使徒も魔法が使えるのでですか?」
「これは魔法じゃないんだ。ハンバーガーとか服を作るのと同じで、使徒の能力で電気を作ってる」
「なるほど……よく分かりませんが、そういうものだと思っておきます」
「それよりもさ、リズはどうやって電気を作ったの? 私もやりたいんだけど」
スーフェリアは目を輝かせている。俺自身も理解できていないのだが、上手く説明できるだろうか。
「人間には発電する細胞があるらしいんだ。それを増やして、プラスとマイナスを直列に繋ぐイメージをしたらできた」
「……どういうこと?」
「……俺にもわかんない」
スーフェリアは理解できなかったらしい。俺の曖昧な説明で理解できないのは仕方がない。
「取り敢えず試してみよっか。リーシェ離れてて。私の最強の力が溢れ出すから」
「あ、はい。離れます」
「危ない目に合わせてごめんな。試すにしても、一言相談してからにするべきだった」
「全然大丈夫……ではないですね。結構危なかったです。次からは試す前に相談して下さい」
「わかった。絶対にそうするよ」
リーシェの危険を考えずに試してしまった。下手したら彼女が死んでいたかもしれない。報連相は欠かさないようにしよう。
「じゃ、やるよ。雷霆の力よ! 我が身に宿れ! はあぁぁぁぁー!」
スーフェリアが力強く叫ぶ。しかし、電気は生み出されない。
「……どうやるの?」
「発電する細胞をいっぱい作る」
「それはさっき聞いたよ……」
スーフェリアはもう一度試すが、またしても失敗した。俺が電気を生み出せるのは、地球の知識が多少あるからかもしれない。
でも、スーフェリアのことだから、いつかは電気を生み出せるようになると思う。俺ができて彼女にできないものは無いだろう。
「……気を取り直して出発しよっか」
「スーフェリア様ならできるようになりますよ! あたしは信じてます!」
「リーシェは優しいね。これから練習していこうかな」
「俺も練習しないとな。毎回黒焦げになると2人が危険だし、効率も悪そうだ」
「ふふ、お互い頑張ろうね」
「あたしも魔法を練習します! 隠れてばっかりは嫌です!」
「リーシェも頑張ろうね。大魔法使いになっちゃおう」
「はい! 頑張ります!」
その後はのんびりとダンジョンを探検していった。入り組んだ道を適当に進んでいく。道中、魔物は時々現れた。その全てがゴーレムだ。
スーフェリアによると、ゴーレムはただの岩に魔素が溜まることで生まれるらしい。死んだゴーレムは高く売れるらしく、冒険者は一攫千金を夢見てダンジョンに入り浸っている、とのことだ。
ゴーレムには灰色や黄色の他に、赤や青のゴーレムがいた。赤は炎の魔法を、青は水の魔法を扱う。使える魔法は一体につき一種類だった。
俺たちは交代しながら1人ずつゴーレムを倒していく。俺とスーフェリアは突っ込んで殴るだけだ。電気の出番は無かった。
リーシェが怪我しないか不安だったが、攻撃される前に遠距離からのウォーターカッター魔法で倒していた。以前から思っていたが、あの魔法強すぎないか? 全部あれでいい気がする。
狭い道を暫く歩いていると、野球場ほどの広さの開けた空間に出た。魔物の姿は見えない。俺たちが入った入り口の他に、北西と北東にも人が通れそうな穴があった。まだダンジョンの最奥ではないみたいだ。
「ここで休まないか? 魔物がいないみたいだし」
「そうだね。ハンバーガー食べようよ」
「了解です。初めて広い場所に来ましたね」
俺は大きめの布を作り、地面に敷く。そこに3人で座った。
「ダンジョンって広いんだな」
「そうみたい。どのくらい広いかは私にも分からないね。リーシェ、チーズバーガー食べる?」
「食べます!」
リーシェは幸せそうにチーズバーガーを食べている。俺とリーシェもチーズバーガーをそれぞれ作って食べた。
その時、北西の穴から大勢の足音が聞こえてきた。スーフェリアも気づいたようだ。穴に人差し指を指している。
「リズ、リーシェ、あっちから沢山の人が来るよ」
「冒険者ですか?」
「わかんない。まあ、ほっといていいでしょ」
「流石に襲ってくるとかはないだろ。今は休憩に専念するか」
「そうですね。ハンバーガーを食べましょう」
長閑にハンバーガーを食べ続ける。食べ終わった頃に北西の穴からぞろぞろと人が現れた。服装は鎧とローブが半々くらいだ。
思ったより多いな。100人くらいか? そんな大勢では狭い道を通りづらそうだ。
「ここを休憩地とする! 各班、準備に取り掛かれ!」
鎧を着た男性が周囲に呼びかける。静かな洞窟では彼らの声がよく聞こえた。
「うるさいね。移動しよっか」
「そうするか」
「来た道を戻りましょう。あの人たちは騒がしいです」
俺たちは立ち上がり、入ってきた道に戻る。布を吸収することも忘れない。
「隊長、あいつら冒険者ですかね?」
「わからん。一応確かめておけ」
背後で彼等が話している。静かな洞窟では丸聞こえだ。無視して立ち去ろう。
「白い髪の2人! あいつら悪魔です!」
俺たちは同時に振り返った。遠くに水晶を持ったローブ姿の男性がいる。俺とスーフェリアは、再び悪魔と呼ばれた。
次回、戦闘です。