神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します!   作:光の道筋

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悪魔、再来

「総員! 戦闘態勢に入れ!」

 

 1人の男性がそう叫んだ。休憩の準備をしていた人々の顔つきが一斉に変貌する。全員が剣または杖を俺たちに向けた。その表情には驚きや恐怖、そして憎しみが浮かんでいる。

 何で水晶を持っている人がダンジョンにいるんだ? この人たちは聖教国から来たのか?分からないことが多いが、一先ずはここから逃げなければ。100人以上と戦って勝てる自信は無い。

 

「ねえ! 私たちを悪魔って呼んだよね! あなたたちは聖教国から来たの!? 何で悪魔呼ばわりするのかな!?」

 

 スーフェリアが大声で話しかける。通常の声量では聞こえないと判断したのだろう。

 俺たちと彼らの距離は遠く、この広場の端と端に位置している。それでも彼らの声が聞こえたのは、使徒の耳が優れているからだ。

 

「先生の言う通りであったか。まさか悪魔がダンジョンに隠れ潜んでいたとはな」

 

 鎧姿の男性が小声で話しているが、俺とスーフェリアには丸聞こえだ。彼の言う先生とは誰なのか。また疑問が増えた。

 

「ちょっと! 質問に答えてよ!?」

「貴様が聖教国で行なった虐殺を思い返してみろ! 答えは自ずとわかるはずだ!」

 

 男性が大声で応答してくれた。彼らが聖教国の人間であることは間違いなさそうだ。思い返してみろと言われても、虐殺を行ったのはセラフィオスであり、俺たちではない。

 

 セラフィオスは戦争を止めるという使命に従い、帝国に侵攻しようと企んでいた聖教国で暴れた。彼女の言葉を信じるならば聖教国に非があると思う。しかし、彼らにそんな事情は関係ないだろう。彼ら目線で考えれば、悪魔の言う事を信じるはずがない。

 

「私たちは虐殺なんてしてないんだけど! ちょっと話し合ってみない!?」

「黙れ! 魔法部隊! 撃て!」

 

 杖を構えた人達から炎や水、白い光線など、様々な魔法が放たれる。俺とスーフェリアは白い壁を作り出して魔法を防いだ。俺たちは魔法を食らっても死なないが、リーシェが死んでしまうからだ。

 

「何あいつら。話聞かないんだけど。あ、リズは壁作らなくていいよ。私の在庫は余裕があるからね。壁を再生し続けるのは任せてよ」

「そうか? なら壁を消すぞ」

「うん。全然大丈夫だよ」

 

 お言葉に甘えて自分の作った壁を吸収した。空いたスペースにスーフェリアが壁を作る。俺の再生の在庫はスーフェリアよりも遥かに少ない。大森林で手に入れた一本の大木と数匹の魔獣だけだ。

 しかも、ハンバーガーやケーキなどで少しずつ消費している。できる限り温存したかった。

 

「逃げますか? 今なら逃げれそうです」

「逃げるのは悪手だよ。私たちはセラフィオスの屋敷に出入りしてる。調べられたら簡単にバレちゃうね」

「セラフィオス様も一緒に逃げればいいのでは?」

「ピュリノスの領主が悪魔と友達だった、って知られたらどうなるか分かんないね。聖教国が帝国に侵攻する口実になっちゃうかも」

「確かにそうですね。あいつらを殺したほうがよさそうです」

 

 俺も逃げることを考えていたが、戦うしかなさそうだ。和解は……できないだろうな。彼らにそんな気があればスーフェリアと話し合っている。

 

「1人残らず皆殺しにしたいね。顔を見られちゃってるし、逃げられたら面倒だ」

「スーフェリアなら皆殺しにできるんじゃないか?」

「3人で協力すれば余裕で壊滅できるよ。でも、全員殺せるかは怪しいね」

「ダンジョンは迷路みたいになってますからね。逃げられてしまったら発見できなそうです」

「だからさ、リーシェが出口を塞いでくれないかな? 土の魔法って反対側の出口まで届く?」

 

 そのスーフェリアの問いにリーシェは首を振った。

 

「今の状況では不可能です。出口を視認できれば塞げますが、魔法が多すぎて顔を出せません」

「じゃ、私が飛び出して魔法使いを止めてくるよ。その隙に塞いでね。リズは壁役をお願い」

「いや、飛び出すのは俺だ。スーフェリアはここでリーシェを守ってくれ」

「え? どうして?」

 

 スーフェリアは不思議そうに首を傾げる。ここは俺が行かなければならない理由があった。

 

「俺は再生の在庫が少ない。壁役をやったら、すぐに在庫が切れる。そしたら俺とリーシェは確実に死ぬ」

「私がその前に魔法使いを殺すよ」

「できるか分からないだろ? スーフェリアなら絶対に耐えれる。だったら俺が行ったほうがいい」

「……使徒だって死ぬんだよ? ちゃんと理解してる?」

「してるよ。でも、2人とも死ぬより1人で死んだほうがいいだろ? いや、死ぬつもりは毛頭ないけど」

「……わかった。それが最善だね。死ぬ前に逃げてね」

「……すみません。あたしが足を引っ張ってしまって」

「リーシェは足を引っ張ってないぞ。それよりも、自分の役目を果たしてくれ」

 

 リーシェは申し訳なさそうな顔をしている。一方、スーフェリアは無表情だ。その表情から彼女の心の内を読み取ることはできない。

 

「その通りだね。リーシェは出口を塞ぐことだけに専念して。塞いだら私が何とかするよ」

「……了解です。何があっても出口を塞ぎます」

「その意気だ。じゃあ俺は行ってくる。後は任せた」

「うん、お互いの役目を果たそうね。頑張って暴れてきて」

 

 リーシェはスーフェリアに任せておけば大丈夫だろう。彼女は心優しい上に強い。絶対にリーシェを守り、そして敵を皆殺しにするという確信があった。

 

 俺は突っ込んで暴れるだけ。わかりやすい役目だ。怖くないと言えば嘘になる。俺は臆病なんだ。まだ死にたくない。できることなら今すぐにでも逃げたい。でも、リーシェを死なせるわけにはいかない。ここは俺が行くべきだろう。

 

 スーフェリアとリーシェに目配せした後、俺は白い壁を乗り越えた。その瞬間、魔法が直撃して上半身が爆散する。すぐさま再生し、敵陣に向かって走った。できる限り魔法を避けるが、足以外の被弾は無視する。歩みさえ止まらなければいい。

 

「化け物がっ!」

「とにかく攻撃し続けろ! 動きを止めるんだ!」

 

 魔法を避けながら全速力で走る。初速から時速200kmはあるだろう。あっという間に敵の元へと辿り着いた。急ブレーキをかける意味も無いので前衛の盾持ちに体当たりする。多くの敵がボウリングのピンのように吹き飛んだ。俺の体も潰れるが、そんなことは気にしない。

 

「ぐわあっ!」

「囲め! 袋叩きにするぞ!」

「魔法部隊を守れ!」

 

 鎧が俺を取り囲んでくるが、気にせずに突っ込む。目の前にいる敵をとにかく殴っていく。大体は一撃で倒れるが、粘る奴も現れてきた。敵は前後左右から剣を振るってくる。流石に苦戦してきた。

 俺に戦闘技術は無い。身体能力に頼って、ただ暴れているだけだ。技術のある彼らに近接戦闘では勝てない。

 

 このままだと倒れてしまう。俺は全力で電気を放った。試しにやってみた時よりも数倍は威力が高い。体が黒焦げになって視覚と聴覚が消滅するが、すぐに再生させれば問題は無い。周囲の敵は感電して地面に伏した。

 

「雷魔法を使ってくるぞ! 気をつけろ!」

「土魔法だ! この悪魔を無力化するんだ!」

 

 敵はすぐに対抗してくる。俺の四方に岩壁がせり上がった。その壁を全力でぶん殴る。幸いにも一撃で破壊できた。岩壁はゴーレムと同じくらいの硬さだ。

 

「何ッ!」

 

 壁の外に出て放電しながら進む。近づくだけで敵は倒れていった。魔法が次々と飛んでくる。全てを避けることはできない。被弾しながら進んでいく。

 

「私が相手だ!」

 

 魔法部隊に接近すると、一際大柄な鎧姿の男性が俺の前に立ちはだかった。彼を取り囲むように透明な硝子の壁がある。電気は硝子に阻まれて彼に届いていない。何だこれは? これも魔法なのか?

 

 考えても分からない。だから取り敢えず殴る。腰の入った右ストレートを打ち込んだ。硝子にひびが入るが、まだ割れない。ゴーレムよりも硬かった。もう一度打ち込む。硝子の壁は粉々に砕け散った。電気が男性の体に届き、彼は黒焦げになる。

 

「撃てッ! とにかく撃つんだッ! 奴を殺せッ!」

 

 魔法の雨を浴び続ける。視界を再生しても魔法の光で何も見えなかった。視界の再生を止め、放電しながら適当に突っ込む。火に焼かれる。鋭い何かに貫かれる。それでも暴れ続けた。今はどういう状況なんだろうか。聴覚を再生しても轟音しか聞こえない。

 

 再び、上半身が爆散した。すぐに再生しよう。そう思ったが、再生できない。下半身だけとなった俺の体は地面に倒れた。

 おかしいな。何で再生できないんだ? もう一度試してみるが、上半身は生えてこない。これは再生の在庫が尽きたのか。多分そうだろう。俺の体は2本の足だけとなり、敵陣の中で横たえた。

 




次回、決着です。
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