神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
「ねえ、私たちはさ、今何処を歩いているのかな」
「わからん。ここは何処なんだ。リーシェは帰り道を覚えてるか?」
「私もわかりません……ずっと同じ道を歩いている気がします……」
「え、2人とも分からないの? どうやって帰ろう」
「多分、左の道だと思います。あたしの勘がそう言ってます。出口はこっちです」
「じゃあ左に行ってみるか」
帰り道では迷いまくった。スーフェリアかリーシェが道を覚えていると思い込んでいたが、誰も覚えていなかったのだ。手探りで進んでいくが、出口に近づいているのかどうか分からない。目印くらい付けながら探索すれば良かったと後悔している。
ちなみに左の道は行き止まりだった。
途中でリーシェの睡眠休憩を一度挟んだ。ダンジョンに入ってから丸一日経過しているということだろうか。食料はスーフェリアが作り、水はリーシェが生み出せるため何日でも過ごせる。俺は再生の在庫が空っぽだから何も作れなかった。今襲われたら結構危ない。帰宅したら大森林に行って大木を刈ろうかな。
灰色の岩肌しか見えない風景に飽きながら歩いていると、ようやく出口に辿り着いた。既に俺の姿はスキンヘッドの盗賊になり、リーシェはリュックと化したスーフェリアの中に入っている。
ダンジョンの前に立つ衛兵の横を挨拶しながら通り過ぎる。彼は気さくな態度で挨拶を返してくれた。ダンジョンを出てスーフェリアの屋敷へ向かう。屋敷に到着すると、特に問題なく門を通ることができた。
スーフェリアとスキンヘッドの男は友人ということになっている。今の俺の風貌はかなり怪しいから止められなくて安心した。
スキンヘッドのままセラフィオスの私室に向かう。屋敷の2階に上がったところで、廊下の先から走ってくるセラフィオスの姿が見えた。
セラフィオスはいつものダボダボとしたスウェットを着ている。貴族があんな服を着ていてもいいのだろうか。いや、俺の偏見かもしれない。セラフィオス以外の貴族を見たことがないからな。あの服が貴族の一般的な服である可能性はある。
「リ──うぬ! 非常事態だ! すぐに来てくれ!」
「あ、ああ。ダンジョンでも大変なことが起きたんだ」
「そうか! 取り敢えず我の私室に来い!」
セラフィオスと共に階段を駆け上がる。セラフィオスの私室に入り、リュックを下ろしてリズの姿に戻った。
「リーシェ、もう出てきても大丈夫だ」
「あ……ひ、光です……地上の光があたしを歓迎してくれています……」
スーフェリアの中から、死にそうな顔のリーシェが水晶を持ちながら出てくる。長時間のダンジョン探検で疲れてしまったのだろう。
「リーシェちゃん大丈夫!? 顔やつれちゃってるよ!?」
「ずっと歩いてて疲れちゃって……少しソファで寝ててもいいですか……?」
「寝て寝て! どんどん寝て!」
「ふう、ようやく帰ってこれたね。セラフィオスにね、報告したいことがあるんだよ」
「スーちゃん! こっちは大変なことが起きたんだよ! ダンジョン内に悪魔がいるかもしれないって聖教国の人に言われたの! 今度討伐に来るらしいよ!」
「え? 今度?」
今度討伐に来る? だったら、俺たちが殺した人たちは何をしに来てたんだ?
「どういうこと? 私たちはダンジョン内で聖教国の人たちに悪魔呼ばわりされてね、皆殺しにしたんだよ。報告したいことってのは、これだね」
「え!? そうなの!? あ、だからリーシェちゃんがこんな顔になってるんだね」
「そうかも。それよりもさ、詳しく説明してよ」
「リーシェちゃんのために紅茶入れてくるから! ちょっと待っててね!」
「いや、説明してって……」
セラフィオスは部屋の奥に引っ込んでしまった。リーシェはソファに寝転び、俺とスーフェリアは彼女の向かい側にあるソファに座って待つ。
5分ほどでセラフィオスが戻ってきた。手には湯気の立つカップを1つ持っている。
「はい、リーシェちゃん。これ飲んで」
「ありがとうございます……んっ、美味しいです……」
「でしょ。わたしもこの紅茶好きなんだ。スーちゃん、今説明するからね」
「うん、お願い」
リーシェは起き上がって紅茶を飲んでいる。セラフィオスはリーシェの隣に座った。
「まず、聖教国の人が訪問してきたの。わたしは会いたくないから部下に任せたんだけどね」
「それで?」
「ダンジョンに悪魔が隠れ潜んでいるかもしれないから調査隊を送ったんだって。でも、帰ってこないから悪魔に殺されたんじゃないかって」
「それおかしくない? 帰ってこないのはまだ調査中だからかもしれないよね」
スーフェリアの言う通りだ。あの戦闘からそれほど時間は経っていない。帰り道で迷ったものの、まだ調査が続いている可能性は十分にあるだろう。
「半日に一度、10人くらいが地上に戻るはずらしいの。地上で調査隊の現在位置と状況を伝えて、休憩してた人が補給物資を持ってダンジョンに潜るんだって」
「あぁ、そういうこと。でも悪魔とは確定してないよね?」
「してないよ。調査隊の人たちは凄腕だからゴーレムに負けるとは考えられないらしいの。だから悪魔がいたんじゃないかって」
全員を始末しただけでは、俺たちの存在を完全に隠すことはできなかった。考えてみれば当然か。あの多人数が行方不明となれば、何か異変が起こったと考えるのが自然だ。
「なら、これからは引き篭もろうかな。10年くらい隠れてたら忘れるでしょ」
「それがいいかも。わたしも引き篭もっちゃお」
「あの、この水晶はどうしますか? 壊しますか?」
「壊しちゃおうか」
「ちょっと待ってくれ。調べたほうが良くないか? 壊すのはその後にしよう」
どうやって悪魔を判別しているのか調べる必要がある。それが分かれば、対策を立てる手がかりになるかもしれない。
「これ何? ダンジョンで見つけたの?」
「悪魔を見つけるための道具らしい。これを持った人が俺たちを悪魔と呼んできた」
「え!? 怖いね! 壊しちゃダメだよ! 調べないと!」
「そうかな。そうかも」
「でも、どうやって使うのか分からないんです。触っても何も起こりません」
「わたしに貸してくれない? 調べてみるよ」
リーシェがセラフィオスに水晶を手渡す。セラフィオスは水晶を両手で持ってじろじろと見始めた。
「不思議なのが透明に見えるのに透けて見えないんです。特殊な石なのかもしれません」
「リーシェちゃんは見えるよ? ぼやけてるけど」
「え? 見えるんですか?」
「セラフィオス貸して。私も見る」
「はい、スーちゃんも見てみて」
セラフィオスがスーフェリアに投げ渡した。落として割るんじゃないかとヒヤヒヤする。
「うん、リーシェはぼやぼやしてるね。セラフィオスは見えないや」
「俺も見てみたい。貸してくれないか」
「うん、いいよ」
スーフェリアに水晶を手渡され、水晶を通してリーシェを見てみる。すると、リーシェは青い煙のような姿に見えた。セラフィオスとスーフェリアは全く見えない。それどころかリーシェの青い煙以外何も見えなかった。これは何だろう。全く分からない。
「屋敷の使用人も見てみない? リーシェちゃん以外にも見える人がいるかも」
「そうだね。見てみよう」
その後は4人で屋敷を歩き回った。何人かのメイドを水晶越しに見ると、全員がリーシェと同じように煙になっている。その色は赤や緑など、人によって変わるようだ。さらに、人以外にも魔道具と呼ばれる物にも煙が見える。一通り調査を終え、セラフィオスの私室に戻ってきた。
「おそらく、この水晶を通すと魔力が見えるのだと思います」
「使徒には魔力が無いからね。聖教国は魔力が無い人間を悪魔認定してるのかも」
「魔力なんてもの初めて見た。あんな感じなんだな」
「わたしも見たのは初めてだよ。モヤモヤっとしてて綺麗だったね」
聖教国が悪魔と判別している方法は分かった。でも、どうやって対策すればいいんだろう。
人間の姿をやめて、スーフェリアがやっていたようにリュックにでもなればいいのか。出来る限り人間の姿でいたいが、襲われるよりはマシかもしれない。
「スーちゃん、この水晶のことをスカレアにも伝えようよ。何も知らなかったら危ないよ」
「スカレア? 誰?」
「あ、スーちゃんはスカレアに改名したのを知らないのか。ブギロギだよ。ブギロギがスカレアを名乗ってるの」
「ブギロギが!?」
スーフェリアは目を見開いて驚いていた。ブギロギという人物を知らない俺とリーシェは困惑している。初めて聞いた名前だ。
「なぁ、ブギロギって誰なんだ?」
「ブギロギってのはね、神の使徒だよ。リズちゃんたちにブギロギのところまで行ってきて欲しいの」
ブギロギは神の使徒らしい。何も知らずに悪魔と誤解され、襲われるのはあまりにも気の毒だ。これからはブギロギを目指して旅をすることにしようか。
第2章はここで終わりです。ここまで読んで戴き本当にありがとうございます。第3章はブギロギという神の使徒に会います。次回は出発のための準備をしていく予定です。
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