神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
ピアス(虫)
「ブギロギって人は何処にいるんだ?」
「ブギロギ、今はスカレアだね。スカレアはブギロギ島にいるの。ピュリノスから船に乗って北上すれば、すぐに着くよ」
「ブギロギ島? その人と同じ名前の島なのか」
「うん、元々ブギロギはその島で崇められててね。いつの間にかブギロギ島って呼ばれてたの」
「なんか、壮大な話だな」
スーフェリアとセラフィオスは人に崇められているわけではない。ブギロギは彼女たちとは違うタイプなのだろう。むしろ神の使徒としては人に崇められて当然なのかもしれない。
「ねえ、何でブギロギはスカレアに改名したの? セラフィオスは理由知ってる?」
「知ってるけど、わたしが勝手に話しちゃうわけにはいかないの。だから直接聞いてほしいな。ごめんね」
「まあ、その通りだね。ブギロギ、じゃなくてスカレアに聞くよ。明日にでもブギロギ島に行こうかな」
セラフィオスは申し訳なさそうな顔をしながら謝っている。スーフェリアは改名の理由を知りたいらしいが、セラフィオスの言葉に納得していた。
ブギロギが改名した理由、全然思いつかないな。美少女に相応しい名前になりたい、という俺と同じ理由はありえないだろう。
「明日もブギロギ島行きの船は出てるけど、もう少し待ったほうがいいって。今すぐ行ってほしいわけじゃないし、水晶を持ってる人がいたら危ないよ」
「なるべく早く行ったほうが良くない? 人型にならなかったら大丈夫だって」
「早く行ったほうがいいのはそうなんだけど……」
「またリュックにでもなればいいんじゃないか? リーシェ1人だけに見せかければ、悪魔だってバレないと思う」
水晶は魔力の有無で悪魔かを判別していた。それなら、そもそも魔力の無い物体に化ければバレなさそうだ。
「大丈夫かな? また襲われないか心配だよ」
「大丈夫だって。リーシェもそれでいいでしょ?」
「あたしは構いませんが……お二方がリュックになってる間は会話できませんか?」
「リュックになってたらできないね。ダンジョン内ならともかく、人目のある所じゃリーシェが怪しい人になっちゃう」
「そうですか……あたしが1人でブギロギ島まで行って、スカレア様を発見できるとは思えません……」
「ふふ、なら私にいい考えがあるよ」
スーフェリアは得意顔だ。リュック以外の何かに化けるのだろうか。地球だったらイヤホンか。イヤホンになれば俺たちが話しても他人にバレない。しかし、この世界にイヤホンでは不自然だ。イヤホンを装着している人など見たことがない。ならば、耳に装着する別の物になろう。
「ピアスとかか? ピアスなら俺たちが話しても他人には聞こえなさそうだ」
「……何で言っちゃうの」
「あ、ごめん」
どうやら正解だったようだ。スーフェリアは半目で俺を見ている。
「でも、ピアスくらい小さくて耳と口を再現できるのか?」
「ふふ、できるよ。リーシェ、これを耳珠に付けて」
スーフェリアは何の変哲もない真珠のピアスを作り出した。これで耳と口を再現できているのだろうか。
「じじゅ、って何ですか?」
「耳の穴のすぐ前にあってね、この小さな出っ張りだね」
「そこ、耳珠って言うんですね。分かりました。付けます」
「ちょっと待って! スーちゃんが作った針で穴開けるつもり!?」
「え? 駄目ですか?」
「駄目! 不衛生でしょ! わたしが石鹸と針持ってくるから待っててね!」
「私が汚いみたいに言わないでよ……」
セラフィオスは言い終わると部屋を飛び出していった。針はスーフェリアが作り出したばかりなので汚くはない。気分の問題だろう。それでも石鹸は必要だ。万が一化膿してしまったら大変だからな。セラフィオスを待っている間にピアスの仕組みについて聞いておこう。
「スーフェリア、このピアスはどうやって耳と口を再現してるんだ? ただのピアスにしか見えないんだけど」
「ふふ、虫の聴覚器と口を作るんだよ。しかも複眼もあるよ」
「虫!? 真珠にしか見えないのに凄いな!」
「そうでしょ。私って凄いんだよね。リズも作りなよ」
「作れる気がしないけど、取り敢えずやってみるか」
手の平にスーフェリアが作ったピアスと同じ物を作ってみる。綺麗な真珠のピアスが出来上がったが、ただのピアスだ。聴覚器や口、複眼は存在しない。見た目だけの張りぼてだ。
「駄目だ。何も見えないし、聞こえないな」
「じゃ、庭に行って虫を見てみよう。実物を見た方が早いからね」
「それもそうだな。ちょっと行ってみるか」
スーフェリアのピアスは虫の姿には見えない。実物を見て再現したほうがよさそうだ。虫は苦手だが、今はそんなことを言っていられない。
「リーシェはここで待っててね。セラフィオスが戻ってきたら穴を2つ開けといて」
「分かりました。開けちゃいますね」
「リーシェ大丈夫か? 穴、開けれるか?」
「大丈夫です。これくらい大したことありません。ちゃちゃっと終わらせますよ」
「そ、そうか。頑張ってな」
「頑張ります!」
気合いの入っているリーシェと別れて、スーフェリアと庭園に向かう。素人が自分でピアスの穴を開けるのは痛そうだけど、本当に大丈夫かな?
しかも、穴は2つも開ける。俺に痛覚があったら耐えれる自信が無い。
この世界の人間は痛みに強いのか? そうでもなければ、あんなに自信満々ではないだろう。庭園に到着すると、スーフェリアが花壇をゴソゴソと漁り始めた。虫を探しているらしい。
「あ、いたよ。これ持ってみて」
「ひっ」
スーフェリアが俺に手を差し出してくる。その手には、シャーペンほどの長さの太った青虫が乗っていた。背中には赤い瘤が何個もある。気持ち悪い。あまりの気持ち悪さに思わず一歩退いてしまった。
「え、何でそんな顔するの。この子、可愛いでしょ。私とリズほどじゃないけど」
「可愛い……? そいつには複眼がないだろ。別のやつにしよう。もっと小さい虫がいい」
「じゃ、こいつはもういいか」
スーフェリアはスナップをきかせて青虫を投げる。可愛いとか言っていた割に雑な扱いだ。丁寧に扱ってほしいとは全く思わないが。
「こいつは? 口なら再現できるんじゃない?」
「お、こいつはいいな」
スーフェリアが次に見つけたのは蟻だった。日本の蟻と変わらない大きさだ。小さすぎて目を再現するのは難しいが、口なら可能だろう。そもそも蟻に目があるのかすら知らない。
右手の人差し指の先に蟻の口を作ってみる。思ったより簡単にできた。クワガタみたいな顎が開閉している。
「この尖ってるのはリーシェに刺さるかもしれないね」
「確かにそうだな。失くしてみよう」
蟻の顎を失くす。ただの開閉する穴のようになってしまった。人差し指を耳に近づけて喋ってみる。すると、微かに声が聞こえた。ノイズが入っている変な声だ。
「おお! 指が喋ってる!」
「ふふ、おめでとう。口はこれでいいね。後は複眼と聴覚器だね」
スーフェリアは虫探しを再開した。その間、俺は発声練習だ。今のままではリズの可愛い声とは程遠い。ノイズ混じりの音声を可愛い声に変えていこう。
「あ、大物発見」
「うっ」
不穏な言葉と共にスーフェリアが手を差し出す。彼女は20cmを超えるコオロギを鷲掴みにしていた。き、気持ち悪い。
「何だそいつは……」
「これなら大きいし再現しやすいでしょ。ほら」
「な、なあ、複眼じゃないと駄目なのか? 単眼でも大丈夫じゃないか?」
「単眼だと目玉になっちゃうよ。目玉をピアスにしてる人って目立たない? 複眼ならじっくり見ないと目って分からないし、こっちのほうがいいと思うんだけど」
「それは……その通りだな」
俺もリーシェに目玉のピアスなんて付けてほしくない。もっとオシャレしてほしい。目玉をピアスにしてる子どもなんて怖すぎる。少し離れてコオロギを観察する。しかし、よく分からない。どうやって複眼を作ればいいんだ。
「もっと近づいて。離れてたらよく見えないでしょ」
「なっ! 引っ張るなって!」
「だって近づかないと」
スーフェリアが空いている手で俺を引っ張る。俺は強制的にコオロギの間近まで来てしまった。コオロギはスーフェリアの手から逃れようと暴れている。本当に気持ち悪い。
「ほら、よく見て。複眼はね、個眼が集まってるんだよ。足にある白いのが聴覚器だね」
「なるほどなるほど。そうだな聴覚器だな」
早くこの場から離れたい。その一心で複眼と聴覚器の再現を試みた。真珠のような複眼を作る。正直、複眼がどうなっているのか分からない。だから極小の単眼の集合体にした。これはこれで気持ち悪い。厳密には複眼ではないと思うが、この目でも視界を確保できたから大丈夫だろう。
聴覚器は複眼よりも分からない。何なんだこれは。ただの白い模様じゃないか。意味不明だ。コオロギの聴覚器を再現できる気がしないので、真珠に取り付けるのは人間の耳にした。といっても、穴を開けるだけだ。真珠に穴を開け、そこから聴覚を作り出した。
「え、私が言ってたのと全然違うじゃん。ここに来た意味って何なの」
「俺には不可能って理解できただけでも進歩だ。目と耳、口はちゃんと作れてるからこれでもいいだろ?」
「まあ、それでもいいけど。じゃ、戻ろっか」
スーフェリアはコオロギを投げ捨てる。相変わらず扱いが雑だ。
「私も人間以外の再現は苦手なんだよ。構造がよくわからないし。でも、セラフィオスはすんごく上手なんだよね」
「セラフィオスが?」
「うん。虫になって忍び込んだり、大きい魚になって船を飲み込んだり、そういうのが上手だね」
「へー、セラフィオスって凄かったんだな。俺は虫になれる気がしないよ」
「その代わり人間形態が雑魚なんだけどね。私なら瞬殺できるよ」
「褒めたままで終わっとけよ……」
スーフェリアと雑談しながらセラフィオスの私室に戻る。虫の再現はできなかったが、喋るピアスは作れた。これで十分だろう。
「血が! 血が止まりません! まだ痛いです! あたしはここで死んじゃいます!」
私室の前に辿り着くと、リーシェの悲痛な叫び声が聞こえた。別れる前の自信満々な声が嘘のようだ。この世界の人間は痛みに強いのかと思っていたが、そんなことは無さそうだ。
次回、ブギロギ島へ出発します