神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します!   作:光の道筋

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釣りで無双したい

「早速出かけるぞ! 朝釣りじゃ!」

 

 スカレアは3本の釣り竿を作り出し、俺たち3人にそれぞれ渡す。木の枝に糸と釣り針が付いているだけのシンプルな釣り竿だった。

 

「あの、お三方は人間の姿で釣りしてもいいのですか? 危なくないですか?」

「そういえばそうだな。また悪魔呼ばわりされるかもな」

「む? 何の話じゃ?」

「ふふ、スカレア、知りたい? 私が教えてあげよっか?」

「お、おお! 知りたいのじゃ! スーフェリアが教えてくれたら嬉しいのぅ!」

「しょうがないな。私が教えてあげるよ。スカレアは知りたがりさんだね」

 

 スーフェリアは悪魔呼ばわりされたことについて意気揚々と説明し始めた。スカレアは少し大げさに相槌を打って聞いている。2人の様子は顔こそ似ていないが姉妹のように見えた。いや、本当に姉妹なのか。使徒は全員が神から産まれた、ってスカレアが言ってたもんな。

 

「あ、これがスカレアのところに来た理由だね。セラフィオスに頼まれたんだよ」

「ほーん、貴様ら大変じゃったのぅ。聞いた内容じゃとセラフィオスのせいに思えるのじゃ」

「え? どうしてだ?」

「そりゃ、皆殺しにせんかったからに決まっておろう。全てを灰燼に帰せばこんなことになっとらん。またあいつの甘いところが出たな」

「……そうだな。その通りだ」

 

 俺はまだ、日本での倫理観が残っているのかもしれない。皆殺しという言葉にどうしても抵抗を感じてしまう。もう何人も殺したというのに。今さら善人ぶったところで何の意味がある。

 

「スカレア、この島に聖教国の人っているの? いるんだったらさ、まだピアスでいようかな」

「ブギロギ島は一応カイキ帝国領じゃからな。聖教国の者はおらん。いたら妾はとっくに殺されておるな」

「そっか。じゃあ人間のままでいよっと」

「それで問題ないじゃろう。リズも人間でよい。いざ出発じゃ」

 

 スカレアは麦わら帽子を被り、バケツを持ってそう言った。4人で仲良く家を出て、海を目指す。扉の横に立てかけてあったスカレアの釣竿も忘れずに持っていく。

 昨日通った道を歩き、港に辿り着く。そこには多くの船と漁師がいた。漁師だけでなく、普段着を着ている人もいる。商人だろうか。

 

「人多いな。普段からこんなにいるのか?」

「いつもはもっと少ないのぅ。人が多いのはな、3日後に村長が還暦を迎えるからじゃな」

「皆さんは村長さんを祝うために来てるんですね」

「そうじゃ。ここは魚がよく釣れるんじゃが、今日は別のところに行くかのぅ。スーフェリアもそれで良いな?」

「私はどこでも大丈夫だよ」

 

 スカレアの案内で海沿いを歩いていく。朗らかな朝日と、絶え間なく寄せる波の音に心が安らぐ。歩きながら波の音を聴いていると、突然地面が揺れた。けっこう大きな地震だ。震度5くらいだろうか。

 

「わ、わ! 何ですかこれ! グラグラしてます!」

「地震だね。大森林だと滅多に地震が起きないから久しぶり」

「最近多いのじゃ。妾の経験からして、あと数年で火山が噴火しそうじゃな」

「え、これって噴火の兆候なのか。ヤバくないか」

「ヤバいのじゃ」 

 

 思わず、島の中央にそびえる火山に目を向けた。もしあの火山が噴火すれば、村は確実に被害を受ける。下手をすれば壊滅だ。早く避難したほうがいい。

 

「避難しないのか? 噴火してからじゃ遅いだろ」

「妾もそう思うんじゃがなぁ。村長がこの島で還暦を迎えたいと言っておるのじゃ。噴火はおそらく数年後じゃし、祝い終わってからピュリノスに避難する予定じゃな」

「じゃあ大丈夫か」

「そうじゃな。すぐには噴火しない筈じゃ」

 

 この島に長年住んでいるスカレアがそう言うなら、心配はない。俺は浅い知識しかないからな。村長の気持ちも理解できるし、今すぐ避難しなくても大丈夫だろう。

 

「噴火って何ですか? そんな危険なもの何ですか?」

「む、リーシェは知らんのか」

「ふふ、なら私が教えてあげるよ。大森林は火山無いからね。知らなくても仕方ないね」

「お願いします!」

 

 スーフェリアがリーシェに噴火の説明を始めた。噴石や火砕流、火山灰の恐ろしさを、まるでリーシェを怖がらせるかのように語っている。リーシェはそれを聞いて震え上がり、俺の手をギュッと握りしめた。瞳には不安の色が浮かび、噴火の恐ろしさに怯えている。

 

「は、早く避難しましょう! 皆死んじゃいますよ!」

「数日後に避難すると言ったばかりじゃろ。話を聞いておらんのか」

「聞いてましたが……こんな恐ろしいものとは知らなかったので……」

「大丈夫、心配ないのじゃ。噴火は数年後じゃし、もし今すぐ噴火したとしても、妾が絶対に守るからのぅ。だから落ち着け」

「は、はい。そうですね。慌てるのが一番良くないですね」

「そうじゃ。良い子じゃな」

 

 スカレアがリーシェの頭を撫でる。リーシェは照れ臭そうに笑っていた。スーフェリアとスカレアが話している時にも思っていたが、スカレアは姉のような優しさがある。彼女の力強い言葉を聞いていると心が落ち着いた。

 

「目的地はもう少し先じゃ。進んでいくぞ」

 

 噴火の話が終わり、一行は釣り場を目指して再び歩き出す。しばらく歩くと、浜辺を抜けて磯にたどり着いた。どうやらここが目的地らしい。

 

「ここは魚がよく釣れるのじゃ。岩を渡って行くぞ。リーシェ、足を滑らせないように気をつけよ」

「はい、気をつけます」

「私がおんぶしてあげるよ。危ないしね」

「あ、あたしの力だけで行けますよ!」

「ふふ、遠慮しないでいいよ。本当はおんぶしてほしいでしょ?」

「あの……はい、おんぶしてほしいです。してもらってもいいですか?」

「任せてよ。私はおんぶが上手すぎることで有名なんだよね」

「初めて聞く情報だな……」

 

 おんぶが上手すぎるらしいスーフェリアがリーシェをおんぶする。リーシェは恥ずかしそうに顔を赤くしていた。見る限りただのおんぶだが、足運びとかが他人とは違うのだろう。多分。

 

 今日のスーフェリアはいつもよりも世話を焼きたがっている。もしかして、昨日お母さんの話をしたからかもしれない。スーフェリアはお母さんの真似をしているのだろうか。

 

 ぴょんぴょんと跳びながらスカレアの後をついていった。スーフェリアとリーシェも海に落ちることなく進んでいる。あっという間に磯の奥に着いた。眼前に他の岩は存在せず、紺碧の大海原が広がっているだけだ。

 

「はっはー! 釣るぞ! 釣りまくるのじゃ!」

「ふっふっふ。俺の上手すぎ釣りテクニックを見せちゃおうかな」

「その意気じゃ! 最強釣り人決定戦やるぞ!」

「あ、あのスーフェリア様。もう下ろしてくれませんか?」

「そうだね。私たちも釣り、しようか」

「はい! 初めての釣りですが頑張ります!」

 

 スーフェリアがリーシェを背中から下ろした。俺たちは間隔を空けて座り、釣りを始める。餌はスカレアがミミズのような生物を大量に作った。気持ち悪い。

 ちなみに、俺は地球でも何度か釣りをしたことがある。一応経験者だと言えるだろう。その経験をここで披露しちゃおうかな! 地球の知識で釣り無双しちゃおうかな!

 

「釣れたのじゃ! 妾が最強釣り人じゃなぁ! 悪いのぅ! 妾が強すぎて申し訳ないのじゃ!」

「まだ始まったばかりだからね。調子に乗らないでね。最強は私だから」

「はっはー! 下民の声なんて聞こえないのぅ! 悔しかったらこの高みまで来い!」

 

 一番最初に釣ったのはスカレアだった。30cmほどの青魚だ。スーフェリアの言う通り、まだ始まったばかりで慌てる時間じゃない。釣りは焦ってはいけない。そう友人に教えてもらった。ゆっくりやっていこう。

 

「あ! 釣れました! やった! やった!」

「おお! リーシェも釣れたのじゃな! 初めてなのに上手じゃのぅ!」

「ありがとうございます! あたしには釣りの才能が溢れているのかもしれません!」

「……私にも釣りの才能が溢れてるからね。溢れすぎて海より大きいから」

「優勝は妾かリーシェじゃな! スーフェリアとリズは雑魚すぎて相手にならんわ!」

「……今のうちに敗北したときの言葉を考えておいてね」

 

 スカレアに煽られているが、俺は反論しない。明鏡止水の心境だ。心を無にして、ひたすら獲物を待つ。これが大事なんだ。

 

「また釣れたのじゃ! 妾が美しすぎて魚にも愛されてるのぅ!」

「来ました! さっきより大きいです! 釣りって楽しいですね!」

「そうじゃろう! 釣りは面白いんじゃ!」

「…………」

 

 その後もスカレアとリーシェはバンバンと釣っていく。バケツには2人が釣った魚で溢れていた。俺とスーフェリアは1匹も釣れていない。スーフェリアはスカレアの言葉に何も言い返さなくなってしまった。黙って釣り糸を垂らしている。

 

「スーフェリア、こんなに釣れないのはおかしくないか。きっと場所のせいだ」

「あ! そうだね! 場所のせいだね! スカレア、場所変わってよ!」

「しょうがないのぅ。愚者のために譲ってやるとするか。リーシェ、貴様もリズに譲ってやれ。勝ち組の施しじゃ」

「は、はい。リズお姉さま、どうぞ」

「ありがとう。もう俺の勝利が決定したな」

「スカレアは場所のおかげなのに調子に乗ってるからね。後悔しても知らないよ」

「うるさいのぅ。1匹も釣ってない者に口を開く権利は無いのじゃ」

 

 俺たちは場所を交代して釣りを始める。流石に場所を変えれば釣れるだろう。地球の釣り知識を持った俺が1匹も釣れない筈がない。

 

「はっはー! 今日は大量じゃな! 妾が最強の釣り人じゃ!」

「あたしも釣れました! あたしの故郷は海だったのかもしれません!」

「きっとそうじゃ! 妾たちは海と共に暮らしていくとするかのぅ!」

「………………」

 

 俺とスーフェリアは場所を変えても釣れない。何これ? 魚に嫌われてるのか? そうとしか思えないほど釣り糸に反応がなかった。

 

「ねぇ、リズ。釣れないのってこの釣竿のせいじゃない?」

「黙れクソボケが! 妾の釣竿に文句を言うのか!? 妾たちと同じ釣竿を使っておるじゃろうが!」

「いやいや、絶対この釣竿のせいだって。リズ、なんか別の釣竿作れない? 異世界の知識にそういうのない?」

「そうだな! どうして気づかなかったんだろう! 俺が最強の釣竿を作るか!」

「お、できるんだね。頼むよ。スカレアの匂いが染みついた釣竿じゃ魚が寄り付かないからね」

「殺すぞ! 妾たちは釣れておるじゃろうが!」

 

 スカレアの匂いは関係無いと思うが、新たな釣竿を作ることには賛成だ。俺は地球で使っていた釣竿を作り出す。この釣竿で最強釣り人決定戦を優勝しよう。

 




スーフェリアとリズは釣りが下手でした。ただそれだけの理由です。
次回、最強釣り人決定戦の決着です。
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