神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
俺はリール、ガイド、ウキ、重りを取り付けた釣竿を2本作り出した。木の枝に糸と釣り針だけの簡素な釣竿と比べると、その性能に圧倒的な差があるだろう。
「おお! それが異世界の釣竿だね!」
「ふっふっふ、そうだ。これさえあれば俺たちでも釣りまくれるぞ!」
「何じゃそれ! 面白そうじゃのぅ! 妾も使いたいのじゃ!」
「スカレアは自分の釣竿使ってなよ。それで釣れてるじゃん」
「そうじゃが……リズ、だ、駄目か……?」
スカレアが上目遣いで俺を見てくる。スーフェリアは使って欲しくないらしいが、俺は別に構わない。スカレアが喜んでくれるなら俺も嬉しいしな。
「全然使っていいぞ。今スカレアとリーシェの分も作るからな」
「有難い! 異世界の釣竿、使ってみたいのじゃ!」
「あたしもいいんですか?」
「リーシェも使ってくれ。何か不満点があったらすぐに改善するぞ」
「ありがとうございます! リズお姉さまはお優しいですね!」
「え、私が優しくないってこと? 私は何も釣れないカスで器も小さいってこと?」
「そ、そんなこと言ってませんよ! スーフェリア様もお優しいです!」
スーフェリアが釣れなさすぎて卑屈になっている。そんな彼女を無視して釣竿を2本作り、スカレアとリーシェに渡す。スカレアは釣竿を受け取ると、飛び跳ねて喜んでいた。
「おお! これどうやって使うんじゃ! 教えてくれ!」
「ああ、皆一緒に教えるよ。スーフェリアにも教えるから聞いてくれ」
「この釣竿なら釣れるんだよね?」
「もちろん、釣れまくりだ」
「ふふ、これでスカレアとリーシェより釣っちゃおうか」
「妾たちも使うんじゃぞ。勝てるわけないわ」
スカレアは呆れた目でスーフェリアを見つめている。スーフェリアはその視線に不満そうだ。
「私の偉大なる第3の手なら勝てるって」
「……何の話じゃ?」
「この釣竿のことじゃないか?」
「なんじゃそれ。スーフェリアでは勝てんって。勝てたら何でもしてやるのじゃ」
「その言葉、後悔しないでね」
スーフェリアは鼻息を荒くし、やる気に満ち溢れていた。俺は3人にリールの使い方を教える。難しいものではないため、3人ともすぐに習得した。
「これはいいのじゃ! 今度村の皆にも教えようかのぅ!」
「リールってものは便利ですね。あたしでも簡単に使えます」
「ねぇ、これで釣れるの? まだ釣れないんだけど」
教え終わってから5分も経過していない。スーフェリアはソワソワしながら魚を待っていた。
「焦っちゃ駄目だ。スーフェリアはいつも冷静沈着だろ? その冷静さを見せてくれ」
「そうだね。私は常に冷静なことで有名だからね、落ち着いて待とうかな」
「スーフェリアは本当に面白い性格じゃのぅ。昔と変わってなくて安心したのじゃ」
「ふふ、昔から冷静だからね。これくらい待てるよ」
「そうじゃのぅ。冷静じゃのぅ」
スカレアは温かい目でスーフェリアを見ていた。まるで彼女の保護者のようだ。その気持ちはよくわかる。俺も時々、スーフェリアに対して父性が目覚めそうになるからな。
「お、釣れたのじゃ。これからはこの釣竿を使っていくかのぅ」
「あたしも釣れました。リズお姉さまの釣竿のおかげです」
「お、おう、なら良かった」
「……釣れないんだけど」
スカレアとリーシェは順調に釣れているが、俺とスーフェリアはまだ1匹も釣れていなかった。
……なんで? 俺の聞き齧った釣り知識が何の役にも立っていない。ただ座っているだけで時が過ぎていく。
「餌が悪いんじゃない? もっと大きな餌にしようよ」
「もう認めるんじゃ。貴様の腕が悪いとな」
「いやいや、腕は悪くないって。大きな餌なら釣れるって」
「そうかのぅ。まぁ、試してみたらいいのじゃ」
「うん、試すよ」
スーフェリアはそう言うと、左腕を引きちぎった。血は流れていない。断面は紙粘土のような白い肉だ。失った左腕はすぐに再生し、元通りになった。
「スーフェリア様!? どうしましたか!?」
「え? 腕を餌にするだけだよ。こっちのほうが美味しいでしょ」
「スーフェリアって美味しいのか?」
「こいつが適当なこと言っとるだけじゃ。放っておけ」
スカレアはスーフェリアに顔を向けることなく、釣りに集中している。腕で魚が釣れるとは思えないが、好きにやらせておけばいいか。俺は自分の釣りに専念することにした。
スーフェリアは引きちぎった左腕に釣り針を捩じ込む。そして、そのまま海に下ろした。
「よし、後は待つだけだね」
「これで釣れるのでしょうか……」
「どうだろうな。リーシェ、腹減ってないか? ハンバーガー食べるか?」
「食べます!」
「ハンバーガーって何じゃ? 美味いのか?」
「スカレアにもあげるよ。スーフェリアも食べるか?」
「私は自分で作るからいらないよ」
「そうか。大物釣れるといいな」
「大物釣っちゃうよ。私の腕だしね」
俺はハンバーガーを作り、スカレアとリーシェに渡した。リーシェは受け取ると嬉しそうに頬張る。ハンバーガーが大好きなエルフ女子だ。スカレアも一口食べた瞬間、目を輝かせた。
「おお! 悪くないのぅ! これも異世界のものか!?」
「そうだ。異世界で人気の料理なんだ」
「ほーん、一度行ってみたいのじゃ。その時はリーシェも一緒に行くか?」
「行きます! リズお姉さまの故郷に行ってみたいです!」
「来た! 魚来た! すんごい大きいよ!」
俺たちがハンバーガーを食べていると、スーフェリアが嬉しそうな声を上げた。釣りを始めてから初めて聞く明るい声だった。
本当に魚が食いつくとは思わなかった。こんな岸に近い海にも、大型の魚がいるなんて。この世界では地球の常識は通じないんだな。
「お! やっと来たか!」
「これどうすればいいの!? 無理矢理引っ張っていいの!?」
「待て!? まだ引っ張るな! ゆっくりじゃ! リールをゆっくり巻け!」
「ゆっくりね! ゆっくりやるよ!」
「スーフェリア様、頑張ってください!」
俺たちはハンバーガーを食べながら、魚と闘うスーフェリアを応援していた。スカレアはハラハラとした様子で、不安そうに見守っている。
「おい! もっとゆっくりじゃ! 糸が切れる!」
「切れる!? これ切れるの!?」
「切れるわクソボケ! 釣竿貸せ! 妾がやるのじゃ!」
「私がやるから! こっち来ないでよ!」
「黙れ! 貴様が下手すぎて逃げられるわ!」
「お優しいスーフェリア様なら絶対釣れますよ! あたしは信じてますから!」
スーフェリアとスカレアは、まるで喧嘩しているかのような勢いで会話していた。リーシェは先ほどスーフェリアに詰められたことを気にしているのか、ひたすら応援に徹しているだけだ。
スカレアが釣竿を奪おうとするが、スーフェリアは俊敏な動きで回避する。スカレアはスーフェリアに触れられないが、明らかに釣りの邪魔になっていた。
「リズ! スカレアを止めて!」
「ああ。スカレア、ちょっと落ち着こう。スーフェリア1人でも大丈夫だよ」
「じゃが! 妾ならもっと上手くできるのじゃ!」
「もう! 私が釣ればいいでしょ! リズ! 釣竿持ってて!」
「え? スーフェリアが釣るんじゃないのか?」
「そうだよ! だから持ってて!」
「わ、わかった。任せてくれ」
俺はスーフェリアから釣竿を受け取る。スーフェリアが釣ると言っているのに、どうして俺が持つのだろう。理由は不明だが、取り敢えず彼女の言葉に従った。
すると、スーフェリアが海に飛び込んだ。大きな水飛沫を立て、彼女の姿が海面の下に消える。
「スーフェリア!?」
「あいつは何やっとんじゃ!」
「だ、大丈夫ですか!? 助けに行った方がいいですか!?」
「あいつはこれくらいじゃ死なん! 助けに行かなくて良い!」
「わかりました! 助けません!」
「おわっ! この魚、力強いぞ! 持ってかれる!」
持っている釣竿が海に引き摺り込まれそうになる。踏ん張って耐えるが、その前に糸が切れそうだ。糸を太く、硬くしていき、暴れ狂う釣糸は鞭のように変化した。
俺の少ない再生の在庫がほぼ0になる。暴れる鞭に振り回されないように、ひたすら耐える。
「妾も手伝うのじゃ!」
「あたしも手伝います!」
「助かる!」
スカレアとリーシェが加わり、3人で釣竿を抑える。数十秒――いや、数秒かもしれない。そんな短い時間耐えていると、突如、釣竿が静まった。
3人で軽く息を吐いて安堵していると、海から白い肉の塊が浮かんできた。結構大きい。直径5mはありそうだ。多分スーフェリアだな。
「スーフェリア! 何をしとる! はよ戻ってこい!」
「うん、今戻るよ」
白い肉からスーフェリアの声が聞こえる。やはり彼女だった。スーフェリアはナメクジのように岩を這いながら、俺たちの元へと戻る。
巨大ナメクジが岩に上がると、その大きさがよくわかった。おおよそ高さ2m、横は5mくらいの長さで、俺が10人ほど中に入れるだろう。
「でかいな……」
「スーフェリア様、どうしたんですか?」
「リーシェの言う通りじゃ。貴様は何やっとる。さっさと人間の姿に戻れ」
「ふふ、今人間に戻るからね。よく見ててね」
ナメクジが消えると、人間のスーフェリアが姿を現した。同時に、中にいたと思われる巨大な魚が姿を現す。
見た目はサメに似ているが、地球のサメと違い、眉間には鋭い角が生えていた。何本かの蔓で固定されており、逃げられないようになっている。
「でっか……」
「な、何ですかこの魚! 怖い顔してます!」
「こいつがさっき食いついた魚かのぅ? スーフェリアが捕獲してきた、ということじゃな」
「流石スカレアだね。そういうことだよ。でも、捕獲じゃなくて釣ったんだからね」
「いや、捕獲じゃろ……」
「釣ったんだよ」
スーフェリアは頑なに「釣った」と主張している。俺もどちらかと言うと捕獲だと思うが、餌には食いついていたし釣りでもいいだろう。
「まぁ、良い。こいつは非常に美味なんじゃ。帰って食うぞ」
「お、それはいいな。スーフェリア、釣ってくれてありがとな」
「いいですね! 食べたいです!」
「ねえ、最強釣り人決定戦は私の優勝でいい? スカレアが何でも言うこと聞いてくれるんだよね?」
「そうじゃな。一番大きいやつ釣ったのじゃし、優勝でいいのじゃ」
「やったね。スカレアに聞きたいことがあるんだよ」
スーフェリアは微笑みながらスカレアを見つめている。一方、スカレアの顔は引き攣っていた。
「な、なんじゃ。何でも聞くが良い。妾は高尚な精神を持つからな。発言を撤回などせん」
「私はね、なんでブギロギがスカレアを名乗っているのか聞きたいんだよ。樹木だったのに人間の姿になっている理由も聞きたいね」
「そうくるか……」
スーフェリアの発言を聞いたスカレアは、どこか憂鬱そうだった。スーフェリアは人間のスカレアを受け入れたのだと思っていたが、まだ疑念が残っているようだ。
スーフェリアはブギロギではなくなったことを気にしていました。
次回、ブギロギがスカレアになった理由です。