神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
「話すのは構わないんじゃが……どこから話したものか……」
スカレアは腕を組み、うんうんと唸りながら思案していた。話すのを嫌がっている様子ではない。ただ、どうやって伝えるのか迷っているようだ。
スカレアが話し始めるのを待っていると、地面が揺れた。また地震か。波が俺たちのいる岩に叩きつけられ、水飛沫が飛んでくる。
「お、地震だね」
「けっこう大きいな。リーシェ、落ちないように気をつけて」
「は、はい、気をつけますが……大丈夫なんでしょうか? 噴火しませんよね?」
リーシェは不安げな表情を浮かべている。本日2度目の地震だ。噴火を恐れるのも無理はない。
「大丈夫じゃ。心配するな。じゃが、ここは足場が悪いから移動するかのぅ。スーフェリア、話すのは家に帰ってからで良いな?」
「うん、それでいいよ」
「釣竿はどうする? 吸収しちゃっていいか?」
「しちゃっていいじゃろう。また作ればいいだけじゃ。全て吸収してしまえ。あ、この魚たちは逃がしてしまうかのぅ。これも吸収してよい」
スカレアはバケツに入った魚を全て海に逃す。リーシェが少し悲しそうな顔をしていた。初めて釣った魚が海に帰ってしまったからな。少しはショックだろう。スカレアの言葉に従い、釣竿とバケツを全て吸収する。俺の再生の在庫は空だったから、少しはマシになった。
だが、それでも人間1人分もない。腕2本分くらいか。戦闘が始まる前にどこかで補充したいものだ。
「じゃ、帰ろっか」
スーフェリアはサメを両腕で持ち上げた。そのまま軽やかに飛び跳ねて移動していく。俺たち3人もスーフェリアの後に続いた。俺とリーシェは手を繋ぎながら、海に落ちないよう慎重に岩を渡っていく。
土に降り立つと、先に到着していたスカレアが荷車を作っていた。その上にスーフェリアがサメを積んでいる。
「これは?」
「これで運ぶのじゃ。スーフェリアが持っていては目立つからのぅ」
「あぁ、そりゃそうだな」
「あと……スーフェリア、村の皆にこの魚を分けてもよいか?」
「別にいいけど、なんで?」
「村長の還暦を盛大に祝いたいのじゃ。もちろん、3人の分は残すから安心せい」
「ふーん、多めに残しといてね」
「貴様が釣ったからな。当然じゃ」
その後は村まで戻り、そこでスカレアと別れた。スーフェリアとリーシェと共にスカレアの家へ向かう。
「スーフェリア様、お魚楽しみですね」
「うん、楽しみ。でも、それ以上にスカレアって人になった理由が気になるね」
「そんなにか。何年も生きてたら人になりたくなることだってあるんじゃないか?」
「うーん、樹木にすんごい拘ってたんだけどなぁ。気が変わっただけなのかなぁ」
どうなんだろう。俺には何万年も生きる人の気持ちがわからない。何かきっかけがあったのだろうか。
「スカレア様は産まれたときから樹木だったのですか?」
「違う違う。人の姿で産まれたよ」
「あ、そうだったんですか。樹木から産まれたときの姿に戻った、ということですね」
「それも違うんだよ。今のブギロギ……スカレアは別人だね」
「別人?」
「うん、別人。産まれたときと全然違う顔だよ」
「まぁ、セラフィオスも顔変えてるんだろ? 似たようなものなんじゃないか?」
「セラフィオスは頻繁に顔変えてるけど、スカレアもそうなのかなぁ。気になるなぁ」
それ以降、スーフェリアは黙って考え込んでしまった。セラフィオスと出会ったときも変わってしまった彼女を不思議がっていたが、それよりもさらに不思議に思っているらしい。
セラフィオスが顔を変えているのは、何年も領主を務めるためだろう。スカレアが顔を変えた理由は彼女とは違うはずだ。スカレアも領主とは聞いていない。ブギロギがスカレアになった理由……うーん、わからん! もう考察するのは止めだ。あとで直接聞けるしな。
考えているうちに、スカレアの家に到着した。周囲からは風の音しか聞こえない。静まり返った家はお化け屋敷のような、そんな冷たい印象を与えた。
家の中に入ってゴロゴロしながらスカレアを待つ。当然お化けなどいない。お化けがいたとしてもスーフェリアのパンチ、もしくはリーシェの魔法で倒せそうだ。2人が負けるところを想像できない。
3人で寝転びながら、この世界の魚と地球の魚について教え合っていると、スカレアが帰ってきた。両手で木製の大皿を持っており、その上には溢れんばかりの白身のふ刺身が載せられていた。
「只今帰った」
「あ、お帰り。持ってるのって私が釣った魚?」
「そうじゃ。皆がスーフェリアに感謝してたぞ」
「ふふ、嬉しいね。で、なんで人間の姿になったの?」
「……食べながら話すのじゃ。貴様ら起きろ。食事の時間じゃ」
スカレアは床に大皿と麦わら帽子を置く。俺たちは起き上がり、大皿の周りに座った。彼女は木箱から緑色の果実と4枚の小皿を取り出す。そして、果実を絞ってそれぞれの小皿に果汁を垂らした。果汁の入った小皿を俺たちに渡していく。
「ほれ、食べるぞ。この魚は美味いんじゃ」
スカレアは素手で刺身を摘むと、果汁をサッと付けて口へ運んだ。すると、彼女の口元が緩んだ。相当美味いらしい。
俺、スーフェリア、リーシェの3人も素手で刺身を食べる。うん、めちゃくちゃ美味い。味はハマチに近いな。超高級なハマチと言われたら信じちゃいそう。
「めちゃくちゃ美味いな。何切れでも食べれそうだ」
「美味しいです! お魚って生でも食べれるんですね!」
「うん、美味しいね。それでさ、早く質問に答えてよ」
「むぅ、答えなくてはならんか。まぁ、良い。簡潔に話してやるのじゃ」
スーフェリアとスカレアは手を止めて視線をぶつける。俺とリーシェはもぐもぐと刺身を食べながら呑気に眺めていた。
「仲の良い友人がいたんじゃ。そいつが死んで、妾がそいつの姿を貰った。そういうことじゃ」
「簡潔すぎない? もっと詳しく話してよ」
「これが全てなんじゃが……なんか質問あるか?」
「あ、私が聞いていくんだね。えーと、スカレアってその人の名前?」
「そうじゃ」
「その人が死んだのっていつ?」
「……前回の噴火じゃ」
「そうなんだ」
スカレアはめんどくさそうに答えている。しかし、その目には悲しみを帯びているように見えた。
「あー! もう! この話は終いじゃ! 空気が暗くなる! 妾は刺身を食うからな!」
スカレアはそう叫ぶと、刺身を10切れほど鷲掴みにした。掴んだ刺身全てを口に押し込み、彼女の頬がリスみたいに膨れる。
「ねぇ、最後に1つだけ質問していい?」
「むぐ、むぐ……なんじゃ。本当に1つだけじゃぞ。言え」
「樹木のほうのさ、ブギロギは残ってるの?」
「……ブギロギは溶岩に飲み込まれて死んだ。あれからブギロギを作ったことはない。はい! 終いじゃ終い! この話は終了! 刺身を食べるのじゃ!」
「うん、食べようね」
それからは不自然なほど明るいスカレアが話し続け、刺身を食べ終わった。その後、畑の世話を手伝ったり、家の近辺を散歩したりしてのんびり過ごした。夜になり、寝室に4人共移動して横になる。
寝ようとするが、スカレアの話を思い出してしまった。ブギロギとスカレアはどのような関係だったんだろう。どうしても気になってしまう。
いや、スカレアは言いたくなさそうにしていた。この話はもう忘れよう。彼女はスカレアになったんだ。それでいいじゃないか。
使徒は寝ようと思えばいつでも寝れるはずだが、今夜は何故か上手く寝付けなかった。翌朝、俺たちは布団に座って円陣を組んでいた。今日の予定を決めるための話し合いだ。
「今日は早く朝釣りに行くのじゃ。人が少ないうちに釣りまくるぞ!」
「ねぇ、私は別行動でもいいかな?」
「む? 何故じゃ?」
スカレアはキョトンとしている。今日も全員で釣りに行くと思っていたようだ。
「かつてのブギロギがいた場所に行きたいんだよ」
「……もう、あそこに妾はいないのじゃ。ただの森になっておる」
「それでもいいよ。どのくらいの月日が経ったのか見たくて」
「……好きにせよ。リズ! リーシェ! 妾たちは釣りに行くぞ!」
「行くか。スーフェリア、迷子になるなよ」
「スーフェリア様、地震と噴火に気をつけてくださいね。死んじゃいますよ」
「そんな心配しなくていいって……」
俺、リーシェ、スカレアの3人は釣竿とバケツを持って港に向かう。スーフェリアは反対方向に行った。かつてのブギロギがいた場所は覚えているらしい。
港は昨日よりも人が少なかった。いるのは一隻の帆船から積荷を下ろす人たちだけだ。
「よし! これくらい少なければ釣りができるのじゃ! やるぞ!」
スカレアは桟橋をスキップしながら進んでいく。俺とリーシェはその後ろをついていった。すると、帆船から1人の青年が出てきた。青い短髪に白いTシャツ、黒の長ズボンだ。
剣を腰から下げており、その手には水晶が────水晶!? なんで水晶が!?
青年が水晶を通してこちらを見ると、彼は目を見開いて叫んだ。
「な、なんで、ここに悪魔が!? ダンジョンにいるんじゃないのか!?」
俺はまたもや悪魔と呼ばれてしまった。クソッ! どうしてこうなるんだ!
また水晶持ちと会ってしまいました。また戦いになってしまうのでしょうか。
次回、謎の青年と話します。