神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
青年の身長はおおよそ180cm、年齢は20代前半くらいだ。その青年を見たスカレアは硬直してしまった。彼女にも水晶と悪魔のことは伝えている。青年の言葉で色々と察したのだろう。
クソッ、油断した。慢心していた。聖教国の人がいない保証なんて無いじゃないか。なんでピアスになっていなかったんだ。俺の再生の在庫は少ない。ダンジョンでの無茶な攻撃なんて不可能だ。魔法で攻撃されたら即死してしまう。
「なんでっ! ここに悪魔がっ! 僕は祝いに来ただけなのに! あぁもう! こんなもの持ってきたからだ! 万が一とか考えなくてよかった! 気づかなければよかった!」
青年は右手で水晶を持ち、左手で青い髪を掻きむしっている。……うん、様子がおかしい人を見たら落ち着いてきた。
取り敢えず、この状況をなんとかしないと。俺は自分とリーシェが持っている釣竿を吸収する。スカレアはいつの間にか手ぶらになっていた。
「……貴様は誰じゃ」
「こんなもの捨ててやる! 僕は戦いたくないんだ! 消えろ!」
青年はスカレアを無視し、水晶を海に投げ捨てた。水晶はポチャンと音を立てて海に沈んでいく。なんだこの人……。
「……貴様、それは捨てていいのか?」
「……駄目だ。バレたら絶対に怒られる。あぁ、なんで僕は後先考えずに動いちゃうんだ。もう嫌だ。僕は何なんだ」
青年は蹲ってしまった。戦う意志が無い、ということか? この人のことがよくわからない。どうしようか悩んでいると2人の漁師が近づいてきた。不機嫌そうな顔をしている。
「てめえ、うるせえんだよ。朝から大声出すんじゃねえよ」
「どっから来たんだ? あ? さっさと答えろよ」
「僕は聖教国から来たんだ。村長さんが還暦らしいから……」
「じゃあ宿屋に行けよ。そこで寝とけ」
漁師は青年の腕を掴んで無理やり立たせた。怖いのか優しいのか曖昧な漁師たちだ。青年は2人の顔を見て困惑している。
「こ、この女性は人間じゃないんだ。それは知ってるのか?」
「あ? スカレアのことか?」
「赤い髪の人と、白い髪の人だ」
「白い髪のほうは知らねえけど、赤い髪はスカレアだな。こいつはジジイがガキの頃からこの姿らしいぞ。人間じゃねえだろ」
「なっ! じゃあ、なんで──」
「仕事の邪魔をしてすまんのぅ。この男は別の場所に連れて行くのじゃ」
スカレアは青年の目の前まで行って話を遮った。漁師の話が気になるが、今はそれどころではない。青年の対処が先だ。
「おう、さっさも連れてけ」
「どこに連れて行くつもりだ」
「そう警戒するな。ただ話したいだけじゃ」
「……わかった。信じよう」
「貴様が前を歩け。後ろから刺されたくないからのぅ」
「……僕も後ろから刺されたくないんだけど」
「ぐちぐちうるせえなぁ。早く行けや」
「あ、はい。行きます行きます」
漁師に睨まれた青年が逃げるように歩き出す。俺たちは彼の後ろをついていった。
「なぁ、何処に行けばいいんだ?」
「とにかく真っ直ぐ進め。そしたら森に着く」
「わかった。攻撃しないでくれよ」
「妾も貴様の話を聞きたいんじゃ。そんなことはせん。妾は高尚な精神を持っているんじゃ」
「……君って本当に悪魔なのか?」
「村でその話をするな。後でいくらでも話してやる」
「……わかった」
全員が黙ったまま歩いていく。スカレアとリーシェの表情は険しい。平穏な村の中で、ここの空気だけが冷たく感じた。ひたすら真っ直ぐ歩くと森に到着した。さらに奥へと進んでいき、ある程度進んだところでスカレアが声をかけた。
「ここでよい」
「わかった。お互い話を聞きたいと思うんだけど、まず僕からでいい?」
「黙れ。妾からじゃ」
「あ、はい。君からでいいよ」
「貴様は誰じゃ。悪魔とはなんじゃ。貴様は何がしたいんじゃ」
「……僕はバルバ。シテン聖教国騎士団、副団長だ」
「副団長だと……?」
この様子のおかしい人が副団長なのか。なんで俺たちは聖教国の人と出会ってしまうんだ。
「それで、悪魔ってのは首都を壊滅させた化け物のことだ。ダンジョンにいるって聞いてたんだけど、ブギロギ島にもいるなんて」
「妾は悪魔ではないわ! 何を根拠に言っとるんじゃ!」
「悪魔は魔力を持たない人間らしい。僕が持ってた水晶で判別できるんだ。捨てちゃったけど」
「妾は使徒じゃ! 神の使徒じゃ!」
「使徒と悪魔は何が違うんだい?」
「貴様……! 妾を、使徒を、母様を愚弄するか……!」
スカレアは全身を震わせ、眉を吊り上げていた。今にもバルバという青年を殺しそうだ。一方、バルバは涼しい顔をしている。馬鹿にしたつもりなんて無いのだろう。
「最後は何がしたいのか、だったね。僕は副団長として君たちを殺さないといけない。それが責務なんだ」
「さっきは殺したくないと言っておったじゃろうが!」
「それも本音だ。でも、僕は責務を全うしなければならない」
バルバは腰に下げていた剣を抜き、剣先を俺たちに向けた。やはりこうなってしまうのか。
「次は僕が質問する番だね。君たちが聖教国の首都を壊滅させたのかい?」
「妾たちではない。そう言えば見逃してくれるのか?」
「いや、見逃さないね。どう答えようと殺さないといけない」
「なら関係ないじゃろう。殺すだけじゃ」
スカレアはそう言うと、右腕を振り下ろした。振り下ろす瞬間のみ、右腕が長く太い木の根に変化している。スカレアの腕がバルバの頭に命中──するかと思われたが、そうはならなかった。彼を囲う透明な壁に阻まれる。
「クソっ、結界じゃな」
「結界? なんだそれ」
「硬い壁とでも思っておけばよい。リズ、とにかく攻撃しろ。あれを割る」
「了解」
「リーシェは離れろ。貴様は無関係じゃ」
「あ、あたしも戦います!」
「黙れ。妾とリズで奴を殺す。異論は認めん」
「……わかりました。待機してます」
リーシェは後ろへと下がっていく。スカレアの言う通り、彼女は無関係だ。使徒ではないリーシェが戦う必要はない。正直、俺も戦いたくない。殺し合いなんてせずに、皆で釣りをしていたかった。
でも、戦わなければならない。バルバの言葉を借りるならば、それが使徒になってしまった俺の責務なのだろう。
「リズ、いくぞ。奴を殺す」
スカレアの下半身が大きな木の根に変化していく。まるで巨大な蛸だ。体高5mは超えているだろう。彼女は複数の巨大な根をバルバに叩きつけた。しかし、鈍い音を響かせるだけで結界は割れていない。俺もバルバに走って近づき、思いっきりぶん殴る。
かっった! なんだこの硬さは! 殴った俺の手がぐちゃぐちゃになったぞ!試しに電気を放ってみるが、それも結界に阻まれる。俺は拳をできる限り硬くし、再度殴り始めた。
幸い、バルバは結界の中に引き篭もっているだけだ。結界が邪魔になって彼からは攻撃できないだろう。このままスカレアと攻撃し続ければ何とか……なるか? この硬すぎる結界を突破できる気がしない。
「僕の番だ」
バルバがそう呟くと、剣を地面に突き刺した。指した地点が光り、その光はスカレアを目指して伸びる。何をしようとしているんだ。嫌な予感がする。
「スカレア! 逃げろ!」
「もう遅い」
光がスカレアの足元に到着すると、大爆発を起こす。彼女は粉々に爆散してしまった。
戦闘開始です。バルバは今まで出会った敵の中で一番強いかもしれません。結界はダンジョンでも使っている敵がいました。リズは覚えているのか怪しいです。
次回、戦っていきます。結界をどうにかして攻略したいリズたちです。