神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
灰色の噴煙が大きく膨れ上がっていく。さっきまで見えていた溶岩があっという間に隠れてしまった。
噴煙が火山の麓にある森を飲み込む。まるで一体の巨大な生物のようだ。抱えているリーシェも、俺と同じように唖然としながら火山を見ている。
「か、火山が……み、皆……また……皆死んでしまう……」
呆けたように火山を眺めていた俺は、後方から聞こえた声で気を取り直す。振り返ると、大きな根の傍らで立ち尽くす人型のスカレアがいた。
彼女は絶望の表情を浮かべている。スカレアから少し離れた所には、地面に刺さった剣を掴みながら屈むバルバの姿があった。彼は目を見開いて火山を見ている。もう攻撃はしてこないらしい。
「助けないと……妾がやらないと……」
スカレアはバルバに背を向け、村の方角へと走り出した。バルバはそれを止めない。ただ火山を眺めているだけだ。スカレアは村の避難を手伝うのだろう。使徒の力があれば百人力だ。俺も村に行かなければ。
「リーシェ、俺たちも行くぞ」
「は、はい、急ぎましょう」
俺とリーシェが村に行くためにはバルバの横を通り過ぎなければならない。俺は彼から遠ざかるように大回りで走り去ろうとする。
すると、眼前の地面が光った。俺は急停止して後ろに跳ぶ。着地と同時に、光る地点が爆発した。バルバの仕業だ。今は1秒も無駄にできないのに。早くスカレアの元に行かないといけないのに。
「ま、待て!」
「お前! 戦ってる場合じゃないだろ!」
「わかってる! わかってるよ!」
「このままじゃお前も死ぬぞ! 戦いは終わりだ! 避難するぞ!」
「でも! 君を見逃したら、仲間にどんな顔をすればいい!? 僕は副団長になってしまったんだ! 相応の責務がある!」
「んなもん知るか! お前の爆発のせいで噴火したんだろ! もう爆発させんな!」
「ぼ、僕は……!」
どうする。スカレアなしでこいつに勝てる自信は無い。全速力で逃げるか? いや、村でこいつと戦闘するのが最悪だ。爆発で村人を巻き込む可能性がある。ここで戦わないといけない。
俺はバルバと睨み合う。彼は攻撃してこない。爆発させようか逡巡しているらしい。突如、俺とバルバの間に白い何かが降ってきた。それは猛スピードで地面に衝突し、砂埃を巻き上げる。
砂埃が薄くなり、その姿が顕になる。現れたのはスーフェリアだった。
背中には一対の大きな翼が生えている。その色は彼女の髪と同じ純白だ。スーフェリアはまるで天使のような風貌になっていた。
「スーフェリア!」
「スーフェリア様!」
「噴火したから急いで飛んできたんだけどさ、これどういう状況? スカレアと一緒じゃないの?」
スーフェリアは俺たちとバルバを交互に見ている。明らかに困惑している様子だ。バルバはスーフェリアを見て固まってしまった。突然羽の生えた人間が降ってくれば、当然驚くだろう。即座に爆発させて攻撃してくる、なんてことはなくて安心した。
「こいつは聖教国の人間だ! スカレアは村の避難を手伝いにいった! 俺とリーシェは足止めされてる!」
「聖教国!? ……うん、わかったよ。私が相手する。2人は村に行って」
「助かる! 後は任せた!」
「さ、させるか!」
「私が殺すからね。安心して行ってね」
スーフェリアがそう言うと、彼女と俺たちの間に白い壁が作られた。その壁によってスーフェリアとバルバの姿が見えなくなる。
「リズお姉さま、行きましょう」
「そうだな。早く行こう。しっかり掴まっててくれ」
「はい! 掴まってます!」
ここはスーフェリアに任せておけば大丈夫だろう。俺は全速力で森を駆けていく。俺とリーシェはすぐに村に到着した。
「こ、こんなに被害が出てるんですか……」
村の光景は今朝とはまるで違っていた。多くの人々が港に移動中であり、村中で怒号が飛び交っている。建ち並ぶ家屋は過半数が倒壊していた。下敷きになった人々を助けようと、男性たちが力を合わせている。その集団の中に一際目立つ赤髪の女性がいた。スカレアだ。俺はスカレアに急いで走り寄る。
「スカレア! 俺も手伝う!」
「リズとリーシェか! 聖教国の馬鹿はどうした!?」
「あいつはスーフェリアが相手してる! 一先ずは大丈夫だ!」
「スーフェリアが戻ったのか! なら安心じゃ! リズは倒壊してない家に行って、避難してない人がいないか探してくれ! リーシェは魔法で邪魔な瓦礫を切れ!」
「わかった! すぐ行く!」
俺は抱えていたリーシェを下ろす。急いで倒壊してない家屋に向かった。1軒目、扉が開かれたままの家に入る。室内は様々な小物が床に散らばっていた。
「誰か! 誰かいないか! いたら返事してくれ!」
大声で呼びかけるが、返事はない。全部屋を回ってみても人影は見つからなかった。この家の人はもう避難済みみたいだ。俺は2軒目に向かう。しかし、そこにも誰もいなかった。
3軒目にも、4軒目にも誰もいない。それなら安心だ。もう全員避難済みなのかもしれない。
そう考えながら5軒目に向かう。入り口の扉を開けようとするが開かない。鍵が掛かっているか?
俺はドアを蹴飛ばして壊した。こんな状況だ。壊しても文句は言われないだろう。
「誰かいるか! いたら返事してくれ!」
「た、助けて……こ、ここにいます……」
「いるのか! すぐに助けます!」
玄関で呼びかけると、扉の反対側から掠れ声が聞こえた。俺は急いで扉を開ける。そこには倒れているお婆さんがいた。足が倒れたタンスの下敷きになってしまっている。
「もう大丈夫です! 俺が助けます!」
「足が……足が……」
「大丈夫です! 助けます! よく耐えましたね!」
俺は左手でタンスを持ち上げながら、右手でお婆さんを引き摺る。お婆さんがタンスから脱出したの確認して、タンスを離した。
そして、お婆さんを背負う。この方は足を怪我している。俺が運ばないと避難できない。
「俺が避難先まで運びます! この家に他の人はいますか!?」
「私1人です……ありがとう……ありがとう……」
「いえ、お気になさらず! もう少しの辛抱です! 頑張ってください!」
俺は壊したドアを通り過ぎて港に行く。港に向かう途中、倒壊した家屋で救助活動をしているスカレアを発見した。俺は彼女に声を掛ける。
「スカレア! 倒れてるお婆さんがいた! 港に行けばいいか!」
「ルーレルか! リズよ、有難い! 港に行ってくれ! 貴様はまだ再生できるか!? できるなら船を作ってくれ!」
「船を作れるほどは再生できない! もうほとんど空だ!」
「なら、スーフェリアを呼んできてくれ! 妾も家を吸収して船を作るが、まだ必要だ! ルーレルは妾が運ぶ!」
「わかった! スーフェリアのところに行ってくる!」
スカレアにお婆さんを任せ、俺は再度森に向かう。全速力だ。スーフェリアはまだバルバと戦闘中だろうか。あの結界は1人では突破することが難しそうだ。リーシェを連れてくればよかったと少し後悔しながらもひたすら走る。とりあえずスーフェリアの元に行こう。
俺は先程まで戦闘していた空間に着いた。爆発のせいで、いくつものクレーターができているから分かりやすい。そこにいたのは巨大な白いナメクジだけだった。バルバの姿は見えない。
このナメクジはスーフェリアが釣った魚を包んでいた形態だ。その形態のまま、何倍にも大きくなっている。内側から爆発しているが、すぐに再生して元通りになった。
「スーフェリアか……?」
「うん、スーフェリアだよ。どうしたの? もう避難終わった? けっこう早いね」
巨大なナメクジがスーフェリアの声で喋る。さっきは天使のようだった彼女がナメクジになっていた。
次回、バルバの処遇です。