神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します! 作:光の道筋
悪魔に擬態する方法
悪魔のふりをして殺されるってどういうことだ? 以前、スーフェリアは使徒でも死ぬことはあると言っていた。殺されたら元も子もないと思うのだが。
「悪魔として殺されたのならば、聖教国は悪魔探しを止めると思うのじゃ」
「スカレア、どういう意味? 私はさ、死にたくないし、皆にも死んでほしくないんだけど」
「死ぬわけではない! あくまで殺されるふりじゃ!」
「危なくないですか? あたしも皆さんに死んでほしくないです」
「絶対に大丈夫じゃ! 今からそのやり方を見せてやる!」
スカレアは指先から木の根を生やし、テーブルの上まで伸ばした。そして、根の先端から小さな人形が作り出される。身長10cmほどのスカレアだ。白のワンピースを着ている小さなスカレアは根に繋がったまま踊り始めた。
「おお、可愛いな!」
「そうじゃろ! 妾は可愛いじゃろ!」
「スーちゃんの方が可愛いけどね。そんなことより、こうやって悪魔のふりをするってこと?」
「そうじゃ! スーフェリアより可愛い妾が考えた最高の案じゃ! 作った悪魔が殺されても本体は死なないからのぅ!」
「いいね。私もやってみよ」
スーフェリアもスカレアと同じように指先から根を生やし、小さな人形を作り出した。
現れたのは、不気味ながらもかっこいい悪魔だった。全身は脈動する黒い膿で覆われ、二足歩行の体に四本の腕が生えている。鋭い爪がいかにも悪魔らしい。
頭部はウナギのような触手で構成され、背中には二対の羽が生えていた。その姿はまるで、クトゥルフ神話に登場しそうな異形の存在だ。スーフェリア作の悪魔はスカレア作の人形と同じ踊りを始めた。
「おお、かっこいいな!」
「おい! なんじゃこの気持ち悪いのは! 可愛い妾の隣で踊らせるな!」
「え、かっこいいでしょ。この子も一緒に踊りたいって言ってるよ」
「スーちゃん……これは……」
「ん? どうしたの?」
セラフィオスは小さな悪魔を見てドン引きしていた。まぁ、そうだよな。引いてしまう気持ちは理解できる。
多分、黒い膿が良くない。俺も初めてサザエの黒い部分を見てしまったときは驚いた。ウンコみたいな見た目だし、食いたくなかった。今のセラフィオスもそんな気持ちなのかもしれない。
「いや、大したことはないんだけど……これがスーちゃんの考えた悪魔なんだよね?」
「そうだよ。かっこいいでしょ」
「……うん、そうだね。かっこいいよ」
「おいセラフィオス! スーフェリアを甘やかすな! 正直に感想を言うのじゃ!」
「正直な感想だよ! わたしは生まれてから一度も嘘を言ったことがないよ!」
「人間を騙して領主を続けてるじゃろが!」
「嘘はついてないから! ただ真実を言ってないだけだから!」
セラフィオスは顔の前で腕をぶんぶんと振り、慌てたように否定してみせた。彼女はスーフェリアに甘いのか。でも、満足そうな表情で悪魔を眺めているスーフェリアを見たら、セラフィオスでなくても貶したりはできないだろう。
そもそもかっこいいしな。俺も制作する悪魔のデザインを考えておこうかな。
「リーシェはどうじゃ! この化け物を見てどう思うのじゃ!」
「え!? あたしですか!? えーと、そうですね、あたしもかっこいいと思います。スーフェリア様のセンスは素晴らしいです」
「だよね。私もそう思う」
「ここにもスーフェリアに甘い奴がいたのじゃ! それは本当に貴様の意見なのか!? 言わされてないか!?」
「い、いや、そんなことないですよ。心の底から思ってますよ」
本当に心の底から思っているのだろうか。リーシェがスーフェリアとレスバした時はボロクソに言っていた気がする。確か、頭に薬草を塗った方がいいとか、センスが最下層だとか。あのレスバは嘘だったと信じたい。
「リズは! リズはどうじゃ! 貴様が最後の希望じゃ!」
「すっごいかっこいいだろ。俺もそんな感じの悪魔にするか」
「終わった……ここにはクソボケに甘い奴しかおらん……妾が頑張るしかないのか……」
スカレアは俺の返答を聞いて項垂れている。率直な感想を言っただけで、俺はスーフェリアを甘やかしていないはずだ。
男の子はこういう悪魔が大好きだからな。今は女の子だが。
「甘いというか私のセンスが優れてるだけだからね。リズは私の真似するの? 別に構わないよ」
「……真似はやめるか。別系統の悪魔にしようかな」
「そうしなよ。色んなの見たいし」
確かに、様々な外見の悪魔がいたら面白そうだ。せっかく作るのに、ただの模倣ではつまらない。
俺だけのオリジナリティあふれる悪魔を生み出してやるか。ふふ、なんだかワクワクしてきたな。
「はぁ、あまり気持ち悪い奴は作ってほしくないのぅ。とにかく、明日から4人でダンジョンに入るのじゃ。そこで討伐隊を待ち構えるとしよう」
「え? 4人? その中にわたしは入ってる? 入ってるよね?」
「あ? 入っとるわけなかろう。セラフィオスには仕事があるじゃろうが。ここで待っとけ」
「え……わたしも行きたい……」
セラフィオスは餌を欲する子犬のような眼でスカレアを見ていた。一方、スカレアはそんな彼女を鬱陶しそうにしている。俺はセラフィオスと一緒に行きたい。だけど、仕事を放り出して来いとは言えなかった。
領主の仕事は膨大だろうし、討伐隊が来るまで何日かかるかも分からない。もし長引けば、セラフィオスの部下にも迷惑がかかってしまう。
「俺もセラフィオスと一緒に行きたいな。でも、仕事は大丈夫なのか?」
「……全然大丈夫じゃない。だけど外部の人と会う予定は無いから、なんとかなる筈」
「あたしもセラフィオス様と一緒がいいです。なんとかならないんですかね」
「誰かにさ、相談してくればいいじゃん。ちょっとお休みくださいってお願いしてきなよ」
「スーちゃんの言う通りだね。誰かに相談してくるよ」
スーフェリアの提案を聞いて、セラフィオスは部屋から出ていった。以前、セラフィオスと一緒にダンジョンに潜る約束をしたからな。全員でダンジョンに行けるのが一番良い。休暇を貰えることを祈ろう。
「おい、スーフェリア。その気持ち悪いのをさっさと消せ。いつまで踊らせておるのじゃ」
「いやいや、気持ち悪くないから。すんごいかっこいいでしょ」
「かっこよくなどないわ。なんじゃこいつは。どういう生物なんじゃ」
「私が考えた最強の魔物だよ。強そうでしょ」
「まぁ、強そうじゃが……」
スーフェリアは最強の魔物を手に取り、細部の調整を始めた。暇だし、俺も悪魔を作る練習をするか。指先からテーブルの上まで根を伸ばす。そして、先端から白い消しゴムのようなものを作り出した。そこから段々と人型に変えていく。
「あの、あたしもダンジョンに行っていいんですか? あたしは使徒ではありませんが」
「行ってもいいじゃろ。1人で留守番は寂しかろう」
「そうですね。寂しいです」
「リーシェには魔法でさ、道を塞いでもらおうよ。一本道にしたら討伐隊も迷わないし、悪魔を見つけやすくなるよね」
「リーシェはそんなこともできるのか! 偉いのぅ。いい子じゃのう」
「えへ、えへへ、あたし、そんな凄いですかね?」
リーシェは頭を掻きながら照れている。その姿は子どもにしか見えない。本当に成人しているのだろうか。
3人が会話している間も、俺は作り出した白い人形を動かしている。人形に目や耳を付けると、ちゃんと視覚と聴覚を確保できた。でも、視覚は難しい。本体が目を開けたままだと視界が二重になって気持ち悪くなる。
人形で見るときは目を瞑っておいたほうがいいな。目を瞑れば人形視点でも問題ない。
「リズ、この白いのが悪魔? なんかシンプルすぎない?」
「これは練習だから。本番はもっとかっこいいのにするから」
「そう? 討伐隊を怖がらせるような見た目にしようね」
「行ってもいいって!」
突如、扉が開け放たれてセラフィオスが叫んだ。左手で大きな袋を持っている。部屋から出たときには持っていなかったものだ。
「おお! 休暇がもらえたのか! よかったな!」
「そうなの! セラフィオス様にもお休みが必要でしょうって言ってくれて! わたしにも休暇がもらえたの!」
「それはよかったのぅ。それで、その袋はなんじゃ。何を持ってきた」
「あ、そうだね。今説明するよ」
セラフィオスは扉を閉めて入室する。それから大きな袋をテーブルの上に置き、中から高級そうなランタンを取り出した。
「えーと、まずランタンだね。ダンジョン内は暗いからね。暗いとリーシェちゃんが見えないでしょ」
「あ、そういえばそうですね。ありがとうございます」
「残りは魔石だね。これは使徒の皆に必要だからね」
「なんで必要なの? 何かに使うの?」
「スーちゃん! よくぞ聞いてくれました! これを体内に埋め込むとね、水晶で見られても人間と同じになるんだよ!」
袋の中には輝く石が大量に入っていた。その色は赤や黄、灰や青など様々だ。というか魔石ってなんだ。なんでそれを埋め込むと人間と同じになるんだ。この世界に来て日が浅い俺には分からないことだらけだった。