神の使徒にTS転生したので、最強美少女と旅します!   作:光の道筋

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エルフ

 燃え盛る炎から逃れるために走る。大火から離れようと辺り一面で動物たちが騒いでいた。大森林は出発時の静けさが嘘のような喧噪だ。

 

 ふと、人間の声がすることに気が付く。それも少人数ではなく大勢いる。

 スーフェリアの顔を見ると彼女も気づいていたらしい。その表情はこわばっていて、何かを恐れているかのようだ。

 

「スーフェリア、行ってみるか?」

「でも、私は悪魔らしいから……。行かない方がいいよ……」

 

 先ほどの4人に悪魔と呼ばれたことで相当落ち込んだらしい。しかし、避難中の人々を助けるにはスーフェリアの力が必要だ。

 

 俺はもう再生の在庫を使い切ってしまった。これから貯めるには時間がかかるうえ、このような大火では貯める資源も多くないだろう。

 雑草を毟っても限界がある。

 

 スーフェリアなら既に大量の再生の在庫があるから、避難民の食糧を賄える。

 なにより、落ち込んでいるままのスーフェリアを見たくない。避難民を助けて自信を取り戻してもらおう。

 

「大丈夫。さっきの人たちは水晶を出してから、俺たちを悪魔だと呼んでいただろ? きっと水晶が無ければ普通の人間と見分けがつかないよ」

「その水晶があるかもしれないじゃん……」

「その時は一緒に逃げよう。一切会話せずに逃げに撤すれば絶対逃げ切れる。それに、スーフェリアの力は皆の役に立つんだ。一緒に行ってみない?」

「……悪魔って呼ばれたらすぐ逃げるよ?」

「それでいい。行こう」

「うん」

 

 スーフェリアを説得できたので人の声がする方角へと走る。意外と遠くなかったらしく、すぐに到着した。

 周囲を警戒していたと思われる銀髪の若い男が俺たちに声をかける。

 

「おい、お前たちも逃げてきたのか。ここなら安全だ。とりあえず休め」

 

 若者は銀髪を頭の後ろで結わいており、大弓を持っている。

 なにより目を引いたのが長い耳だ。もしかして、エルフというやつだろうか。俺はその耳をまじまじと見つめてしまった。

 

「もしかしてお前、エルフを見るのは初めてか? そんなに珍しいか、ここら辺にはエルフしか住んでいないはずなんだが」

「はい、エルフを見るのは初めてで、不躾な視線を向けてしまい申し訳ありません。旅の途中、火事と遭遇してしまい逃げてきたのですが、ここで休ませてもらってもよろしいでしょうか」

「ははっ。礼儀正しい姉ちゃんだな。もちろん休んでいっていい。けどな、食べるものが少なくて皆ぴりぴりしてるから、女二人だと危ないかもな」

 

 優しい人だ。女二人の俺たちに気遣ってくれている。スーフェリアは俺の横でいつでも逃げれる準備をしていたのだが、今の言葉を聞いて警戒を少し緩めた。

 

「それでも構いません。お世話になります」

 

 俺とスーフェリアはお辞儀をして彼の横を通り過ぎる。彼は心配そうに見送ってくれた。

 

 しばらく歩くと開けた場所があり、そこには大勢のエルフが集まり地べたに座っていた。

 ざっと見ただけでも500人以上はいるだろうか。皆が俯いて悲痛な表情をしており、動いているのは看病している人だけだ。

 

 近づくと大勢がこちらに注目して身が竦んでしまったが、彼らはすぐに俯いてしまう。

 二人でエルフのいない端へ行き腰を下ろした。不安げな表情のスーフェリアと小声で話し合う。

 

「悪魔って言われなかったね」

「あの水晶はここには無いかもな」

「そうだといいんだけど。これからどうしよっか」

「食糧を分けるんじゃないのか?」

「え? もっと困窮してから食糧を出したほうが感謝されるでしょ?」

 

 聞き返されてしまった。その通りなんだが、そのやり方は性格が悪い。

 スーフェリア自身に最大の利益が発生するやり方なのかもしれないが、これでは悪魔と呼ばれても仕方ない気がする。

 今は慈愛に満ちた神の使徒らしくしてもらおう。

 

「スーフェリア、今食糧を提供しよう」

「なんで?」

「後から食糧を提供すると、何故早く提供しなかったのか聞かれるだろ? そのとき困らないか?」

「うん、困るね」

「今は死者も少ない。後からだと死者が増えているだろうから、今なら感謝してくれる人が多いんだ。わかった?」

「うん、リズ、わかったよ」

 

 屁理屈だったが、スーフェリアが納得してくれて一安心だ。

 しかし、ただ食糧を出して終わりでは駄目だ。エルフたちに神の使徒のありがたみを感じさせる仕掛けを考えなくては。

 スーフェリアを悪魔とは呼ばせないために。

 

「スーフェリア、スーフェリアをもっと神々しくさせる演出を考えないか? それでエルフたちに敬ってもらうんだ」

「うん、いいよ。考えよっか。でも、既にすんごく神々しいけどね」

「もっとだ。もっと神々しくさせて、最強の神々しさになるぞ」

「ふふ、後光で私の可愛い顔が見れなくなったら、エルフたちに申し訳ないね」

 

 二人で演出を考え、神々しさを高めるための準備を行う。

 

 

 

 

 

「エルフの民よ! 刮目せよ! これより神の使徒スーフェリア様がご降臨なされる!」

 

 スーフェリアが作った木の台に、俺とスーフェリアが立っている。

 見渡すとここにいる全てのエルフがこちらを見ている。静まり返っていたところへの大声だ。当然、注目を集めるだろう。

 

「スーフェリア様はエルフの民の境遇を哀れみ、救済なさる為、この地へのご降臨をご決断なさった! あなた方は救われるのだ!」

 

 エルフたちが騒めいている。自分でも非常に胡散臭い言葉だと思うが、こっちの力は本物なのだ。何も後ろめたいことはない。

 エルフに文句を言われて計画が崩れるとまずいので、さっさと降臨してもらう。

 

「スーフェリア様! お願いします!」

 

 神聖な言い回しなど知らないので陳腐な挨拶となったが、俺の言葉を合図にスーフェリアの周りを木の葉が舞い、彼女の周りを回っている。

 大量の木の葉はスーフェリアの姿を完全に隠している。これはスーフェリアが作った葉っぱに糸を付けて高速で回転させているらしい。

 

 舞い落ちる木の葉から現れたのは成人女性の見た目となったスーフェリアだ。俺の記憶にある真っ白いドレスを着てもらっている。

 

 可愛い女の子を着せ替えて遊ぶのは楽しかった。彼女は滅茶苦茶嫌がっていたが。

 もちろん、エルフに見られないよう離れた場所で着せ替えしていた。

 

 エルフたちから感嘆の声が上がる。当然だ。小さな子がいきなり大人になったインパクトだけでなく、スーフェリアはとても可愛いのだから。

 

「あなたたちを救うため、私は降臨しました。私がいるからには、あなたたちが飢えることはないでしょう」

 

 スーフェリアの声は森全体から聞こえてくるため、エルフたちは困惑しているようだ。

 

 これは彼女が作った蔓をエルフたちの周囲に張り巡らせ、それらから声を出す仕組みとなっている。スーフェリアの美しい声を立体音響で聞くが良い。

 

「エルフの民よ、森の恵みを与えましょう」

 

 スーフェリアは俺たちが載っている台の下に、1m四方の立方体の籠を作り出した。彼女は胸の前で両手を組み、祈りを捧げるふりをする。

 

「ふふ、ではご照覧あれ。大地の精霊よ、我に力を与えたまえ。はあぁぁぁー!」

 

 この掛け声を考えたのはスーフェリアだ。俺は必要ないと思って反対したが、スーフェリアは頑なにこの言葉を言いたがった。

 結局俺が折れたが、本当に必要だろうか?

 

 籠の中に果物と野菜が大量に作り出され、すぐ籠に入りきらなくなる。

 そうしたら左右に一つずつ籠が現れ、果物と野菜でまた満たされる。

 後はこれの繰り返しだ。最終的には、果物と野菜が大量に入っている籠が15個作られていた。

 

 エルフたちから歓声が聞こえる。食べ物にありつこうと箱に駆け寄る者もいたが、周囲のエルフに止められていた。さすがに無礼だと思ったのか。

 悪いが、あと一つだけやることがある。ちょっとだけ待っていてくれ。

 

「では、皆様! スーフェリア様を讃えましょう! スーフェリア! スーフェリア!」

「「「スーフェリア! スーフェリア! スーフェリア! スーフェリア!」」」

 

 スーフェリアコールはどんどん大きくなっていき、俺も止められないほどの大合唱だ。

 隣ではスーフェリアが得意げな顔をして笑っていた。

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