仲良し男子高校生4人組(俺以外の3人がボーイッシュな美少女JKということに俺だけが気付いている)。 作:麻倉(あさくら)
「ふーん、脅迫状ねえ。……っていうかそれ私に話しちゃって良かったの? 津海君に心当たりがないんだったら私たちの誰かが漏らした可能性が高いと思うけど」
綺麗に整頓された空茉音の部屋で、俺は何故か空茉音にベッドの上に押し倒されながら下駄箱に入っていた手紙の詳細を伝えていた。
「まあお前ら3人が結託でもしていたら俺が真実に辿り着ける気がしないからな……。それに、最初に空茉音を抱き込んだ以上空茉音が犯人だったとしてもある程度は有力な情報を出さなければ疑われるのは空茉音自身だからな。デメリットよりもメリットの方がよっぽど大きいと判断した上での行動だ」
「それっぽいこと言ってるけど要は何も思い付かなかったから私に丸投げってことだよね?」
完全に図星を突かれていたものの何とかそれっぽい言い訳を話し出そうとした瞬間、空茉音に口を塞がれてしまう。
「……あのなぁ。俺わりと重要なこと話してると思うんだが」
「ふーん」
空茉音はその飄々とした雰囲気と水泳選手としての類稀なるキャリアによって凛としたイメージを持たれがちだが、それに反するかのように彼女が行うキスは幾許かねちっこい。
まるでマーキングでもするかのように空茉音の唇は縦横無尽に俺の顔面を動き回り、もう一度口元に戻って来ると俺の上唇に自身のものを充て器用に続きを話し出した。
「……とりあえず、全員学校から出る時に下駄箱は通る訳だからあんまり意味ないかもだけど昨日津海君が登校してからのアリバイは聞くべきだね。昨日は基本皆教室に居たわけだから昼休みと放課後さえ分かれば充分かな。それと、私たち3人が本当は女子だっていう秘密をそれぞれ誰が把握しているか。ぶっちゃけこれが一番重要だと思うよ」
「なるほどな……。じゃあ空茉音は」
アドバイス通り早速空茉音を尋問しようとすると、開いた口をぱくっと空茉音に食べられてしまう。
「私への尋問は他の2人が終わってからにして。……津海君になら別に話しても良いんだけど、ちょっとした下準備が必要なんだよね」
そう言ってイタズラそうに笑う空茉音にちょっとした反撃をしたくなった俺は空茉音の身体を支えながら半回転して今度は俺が空茉音を押し倒す体制に移行する。そして空茉音がチラッと舌を出すのを見逃さなかった俺は空茉音に唇を重ねようとしたその瞬間、段々と近付いてくる駆け足と共に勢いよく扉が開かれた。
「ーーやっぱりここに居た! 津海君最近何かあったらすぐに空茉音ちゃんのとこに行くよね? ずるいよ!」
雷鳴のように現れた結蘭を空茉音と協力してなだめすかすことに成功するまで数時間を要することになるのだった。
翌朝。朝練に向かおうとする空茉音のおはようのキスで目が覚めた俺は舌を入れて中々行かせない嫌がらせをしていると、腕の中で眠っていた結蘭に唇を奪われ、あえなく取り逃してしまう。
焦った空茉音の顔は中々拝めないためもう少し追い詰めたかったと心の中で少し残念に思いながら始業の時間まで結蘭と軽くイチャイチャして過ごす。
「そういや結局椿は帰って来なかったんだな。また学校サボる気だろアイツ、また空茉音捕まえてガン詰めしないとな……」
「そういえばさっき連絡来てたよー。バンドメンバーの家に泊まってたんだって。今から学校に向かうらしいよ」
「あー、例の彼女か。そっか、そっちの線もあったんだった」
椿の組んでいるバンドのメンバーは当然椿が女であることを知っているだろうし、なんなら恨みを買われている線での犯行で考えると椿関係の痴情のもつれの可能性が一番高いとすら思っている。
「……そうだ結蘭、お前が実は女子だってことをどのくらいの人数が知っているか教えてくれるか? とりあえずこの学校の関係者だけで構わないが……」
「え? 津海君たち以外に1人もいないけど?」
「は……?」
そういえば、結蘭が俺たち以外の人間と仲良くしている光景をほとんど見たことがない気がする。というか、会話すらしていないんじゃないか……?
これまであまり気にしていなかったが、結蘭の人間関係は俺たち4人の中で完結してしまっている。俺たちの関係が少々特殊なこともあり、基本的には教室内では俺か空茉音が供に過ごしているため特に孤立することもなかったが、今回の一件を見るにいつ崩壊してもおかしくないコミュニティーの中だけで過ごすのもあまり健全ではないと言える。
俺は結蘭のサラサラの黒髪を優しく撫でると、俺たち4人のグループチャットに昼休みに全員集合の号令をかけるのだった。
「というわけで、今日は皆で協力して結蘭の友達を作ろうと思う」
4限目が終わり、昼休みの時間が始まると俺は3限目の終わりに登校してきてから机に突っ伏し続けている椿の首根っこを捕まえ、結蘭と空茉音の2人が座っている席へと合流し、そう高らかに宣言した。
「はぁー!? 何だよそれ。つーか、俺眠いんだから寝かしてくれよー」
そう言いながら結蘭の作った弁当をバクバクと食べ始める椿を尻目に、空茉音が口を俺の耳元へと寄せてくる。
「……捜査はどうしたのさ捜査は。昨日と言ってること全然違くない? 今日の放課後犯人に呼び出されてるんじゃなかったの?」
「いやまあ最悪バレてても決定的な証拠さえ押さえられてなければお互い知りませんでしたで何とかなると思うし、結局犯人を突き止めたとしても直接対面して相手の出方を窺わないことには対策も考えれないからな……」
だから犯人の捜索は行いつつもあまり慌てる素振りを見せず、万が一のことを考えて結蘭の仲間を増やしておいた方が良いという判断だったのだが何となくその真意を察してくれたようで、空茉音も静かに弁当を開き始めた。
「……んで? その増やす友達っていうのは当てがあるのかよ?」
「んー……。まあとりあえず比較的イージーな相手から始めてみるか。ちょっと待ってろ」
俺は箸を置いて2人で弁当を突いていたモナカと紋匁の2人の下に歩み寄り、2人を上手く連れて来ることに成功する。予め今日はアイツらと飯を食うと伝えていたからか僕は学食に行っているらしい。まあ女好きみたいな印象を持たれてしまうかもしれないが結蘭の性格を考えるに女子生徒の方が仲良くなりやすいのは明らかだろう。
「というわけでモナカと紋匁を連れてきてみた。どうだ結蘭? どっちの方が仲良くできそうだ?」
「うわ津海君のMC終わりすぎてない? ……いきなりゴメンね2人供。一応、交友関係の狭い結蘭を心配しての行動だとは思うんだけど」
イケメンムーブを取り始めた空茉音を横目に、おずおずと2人と会話を始めた結蘭を視界に入れる。別に結蘭は人間関係に消極的なだけでコミュニケーションが苦手というわけではないし、モナカのコミュニケーション能力はかなり高いと前々から評価していたのでぶっちゃけモナカに全て任せておけば俺が仲人役をするまでもないと言える。
隣席彼氏面で少しずつ心を通わせていく結蘭とモナカ、紋匁と決して目立たないよう絶妙に会話を盛り上げるためにアシストを行う空茉音を眺めていると、真正面の席に座っていた椿が足で俺の脛を小突き始めた。
「……空茉音から聞いたけど脅迫されてるってマジか? 犯人の目星は付いてるんだろーな?」
「全然。今日の放課後に初対面してくる感じだよ。一応参考までに椿の正体を知っている人はどのくらいいるか教えて貰えるか?」
「ん〜〜。……正直全然分かんねーな。バンドのメンバーは全員知ってる。んで、バンドの追っかけで可愛い子が居たら大体手は出してる。けどソイツ、この学校まで来てるってことだろ? バンドメンバー以外だとわざわざ通ってる学校まで教えた覚えはないし、学生証を撮られたとかじゃない限りはあんまり身に覚えはねーな」
「バンドメンバーか……。今日の内容次第じゃ会う必要が出てくるかもしれないが構わないか?」
「別に良いぜ。幾らお前でも◯◯に手を出したらブッ殺すけどな。まあベースとドラムなら俺は預かり知らぬ話なんだが」
「わざわざ見え透いた地雷を踏みに行くわけねーだろ。じゃあタイミング良さそうな時にライブ誘ってくれ。適当に誰か誘って見に行くから」
おー、と気のない返事を送る椿と机下で脚を攻撃的に絡め合いながら結蘭の作った弁当を口に入れる。
楽しい時間はすぐに過ぎてしまうようで、あっという間に昼休みは終わってしまい放課後が訪れた。
放課後、なぜか視聴覚室の掃除用具入れに結蘭と密着しながら潜んでいると、何者かが入り口の扉を開ける音が聞こえてきた。
固唾を呑んで隙間から正体を探ろうと身を乗り出したところ、結蘭と同時に顔を近付けたせいか頭同士がぶつかってしまう。声を漏らさないように急いで僅かな光を頼りに結蘭の口を塞ぐが時すでに遅し。足音はゆっくりとこちらに近付き、軋んだ音を立てながら掃除用具入れの扉が開かれていく。
「竜宮君、と、塔乃……、君……? こんなところで一体、何を、してるの……!?」
掃除用具入れの扉が完全に開かれ、見知った顔、それも先ほどまで朗らかに会話をしていた人間が顔を出す。
「お前は、まさかーー」
「烏丸、さん……?」
そこに立っていたのは、俺の左後ろの席に座っている烏丸最叶、通称”モナカ”だったのだ。