仲良し男子高校生4人組(俺以外の3人がボーイッシュな美少女JKということに俺だけが気付いている)。 作:麻倉(あさくら)
どうしてこうなった。
手紙の送り主を特定するために掃除用具入れに隠れていたはずが、結蘭と密室でキスしている決定的瞬間をモナカに見られてしまっている。しかも、結蘭は本当は女子であることをこの学校で知っているのは俺と空茉音と椿の3人のみというオマケ付き。
そして、目の前にいる烏丸最叶、通称モナカは結蘭のことを男子生徒であると認識している。ということはとどのつまりーー。
俺は現実逃避も兼ねてどうしてこのような状況になってしまったのかを思い返そうと放課後が始まってからの全ての流れを脳内でフラッシュバックさせ始めた。
放課後になるやいなや視聴覚室に向かって一直線に歩き出した俺の背後に、何者かの気配を感じ取る。
普通にめっちゃ結蘭だったので全力で置いていこうとするものの、空茉音から事情を聞いていたのか結蘭は頑なに俺の側から離れない。妙な噂が流れても面倒なので少しスピードを落として目的地へと向かって歩き出す。
「別に着いてくるのは良いけど、変な真似するなよ? まだ相手がどんな目的で接触を図ってきているのか皆目見当が付かないんだからな」
「分かってるよ! 竜宮君すぐイキるわりに弱っちいから結蘭が見といてって空茉音ちゃんに言われたんだもん」
「体育会系の空茉音か誰かれ構わず暴れ回る椿が来るならまだしもお前俺より弱っちいだろうが!」
視聴覚室の鍵は開いていたが、中は人っこひとりいない様子だった。俺と結蘭は慎重に室内を歩き回り、本当に誰もいないのかどうかを丁寧に確認する。
「別に監視カメラや盗聴器が置かれている感じもしないな……。悪戯にしてはやけに手が込んでいる感じだし、とりあえずもう少し待ってみるか」
「竜宮君竜宮君、せっかくだしあそこに隠れて様子を見てみない?」
そう言ってキラキラと目を輝かせながら結蘭は視聴覚室の隅にあった掃除用具入れを指差す。
「……別に俺は構わないが、絶対にバレるぞ?」
「もしかしたら油断して何か重大な独り言を言うかもしれないじゃん! それに、竜宮君なら相手が分かればバレるまでの間に対策を考えれるでしょ?」
結蘭の交友関係が狭すぎていつの間にか俺が結蘭の中で知将みたいな存在に格上げされているのはともかくとして、言っていること自体は間違っていない。俺はレディーファーストで思いの外小汚くて躊躇している結蘭を掃除用具入れに押し込み、その後ゆっくりと結蘭の身体を押し除けながら掃除用具入れに入り込む。そして扉を閉めて視聴覚室から差し込む僅かな光に向かって顔を近付けると、暗闇の中で結蘭と目が合った。
「ちゅー」
流石に色ボケし過ぎかと思いつつ、かといってとくにやることもないのでしばらく結蘭とお互いの唇を貪り合っていると、コツコツと足音が聞こえ始める。そして足音が段々と大きくなり始めると、勢いよく視聴覚室の扉が開かれた。
「竜宮君、と、塔乃……、君……? こんなところで一体、何を、してるの……!?」
そして現在に至る。
思わず大きな声を出しそうになったモナカの口元を手で押さえ付けると、結蘭に指示して視聴覚室の鍵を閉めてもらう。
どうやってモナカを説得するべきかを思案する俺の元に、結蘭が慌てて駆け寄ってくる。
「どうしよう津海君。誰かこっちに向かってきてるよ!? 急いでどこかに隠れないと……」
「そうは言ってもな……」
俺と結蘭の視線が先ほどまでチェックインしていた掃除用具入れへと移る。……他に選択肢はない。
「もがもご!?」
既に掃除用具入れに片足を入れていた結蘭を追ってモナカの口を片手で押さえたままもう片方の手でモナカの身体を担ぎ上げる。そして何とか掃除用具入れへと滑り込んだ数秒後、無機質に視聴覚室の扉が開く音が鳴り響いた。
ヒタ……、ヒタ……とホラー映画よろしくな足音が視聴覚室内を徘徊する。永遠に続くかと思われた恐怖の時間は暗闇に完全に目が慣れて来た頃に唐突に終わりを告げた。
視聴覚室の扉が開き、足音が少しずつ遠ざかっていく。俺たち3人はそれからしばらくの間無言を貫いていたものの、その静寂はおよそ事情をよく分かっていないであろうモナカによって破られる。
「えっと……、竜宮君と塔乃さんってつまりはそういうこと……なの?」
モナカがおずおずと俺と結蘭の表情を伺いながらそう尋ねる。時々忘れそうになるが、結蘭たち3人娘は男子高校生の制服を着用しており、この学校では男子生徒として日常を過ごしている。そしてモナカは先ほど俺と結蘭がこの掃除用具入れの中でキスしているシーンを目撃しており、モナカが言いたいのはつまりはそういうことだろう。
「……でも、津海と私ってその……、何回もシてるわけじゃん? もしかして、津海って両方イケる感じ、なの……?」
俺がどうやってこの場を切り抜けようか逡巡していた一瞬の沈黙から生まれてきたモナカからの予想外の告白に、斜め左から射殺すような視線が飛んでくる。というか普通に左脇腹を刺されている。え? これってちゃんと爪だよな? 普段からポケットに十徳ナイフを仕込んでいるとかじゃなくて?
「……悪い結蘭、全ては俺の責任のわけだがお互いの名誉のために言わせてくれ。あのな、モナカ。実は結蘭は……」
「待って津海君。それは私から言うよ。今日話してみてモナカちゃんとは本当の意味で友達になりたいって思ったから。……あのね、モナカちゃん。今まで騙しててゴメン。実は私、本当は女の子なの」
そう言って結蘭は自身の制服内にモナカの手を潜り込ませる。……こう言っては何だが、結蘭とモナカは髪色こそ黒髪と茶髪と違うものの髪型は同じショートカットで髪の長さもほぼ同じ。身長もほとんど差はなく、胸の大きさまでほぼ同じくらいであり、一卵性とまでは行かないが二卵性の双子と紹介されてもほとんど違和感もないくらい顔のパーツも揃っているためこうやって2人が絡んでいるところを見ると正直に言ってめちゃくちゃ興奮する。
「……興奮してるところ悪いけど津海君がモナカちゃんと関係があるっていうのは一体どういうことなの?」
卑猥な妄想をしていたところいつの間にか2人の誤解は解けていたらしく、話題が俺とモナカの関係性について移行していた。
「……関係性って言ってもな、ホラ、俺たち……じゃなくてえっと俺は結蘭のことを女の子だって分かってるとはいえ寮は4人での共同生活なわけだし羽目を外すわけにも行かないだろ? それで悶々としていた中でモナカと良い感じの雰囲気になってだな……」
本人たちはあまり気にしないだろうが空茉音と椿について勝手に話すわけには行かなかったためかなり要領を得ない説明になってしまったが、特殊な状況ということもありモナカは一応の納得をしてくれたようだ。このまま面倒な配慮をし続けるのも面倒だしそのうちモナカに後の2人の正体も明かしてしまおうと決心する。
「……それで? 結局私たちはいつまでここに隠れてるわけ? それなりに綺麗に掃除されてるとはいえいつまでもこんなところに居たら絶対体調悪くなっちゃうよ?」
衛生的にはマジで終わっているもののこうやって密室で2人のクラスメイトの美少女と密着状態にあるというシチュエーションは中々捨てがたいものがある。脅迫状がガチだったことを見るに今後俺のハーレム状態が崩壊する可能性も少なくないため、ここは今だけでも楽しんでおきたい。
そんな邪な念が通じたのか、結蘭が無言で俺に唇を重ねてくる。視線を向けずともモナカが狼狽するのが伝わってくる。モナカは頭の回転こそ早いものの俺なんかと関係を持ってしまうくらいにはとにかくその場に流されやすい。ぶっちゃけてしまえばチョロいのだ。
わざと卑猥なリップ音を響かせながら結蘭の口内を掻き混ぜる。短くない時間をモナカに見せつけるようにディープキスを行った後に名残惜しそうに結蘭の口を引き離す。そして斜め右のモナカの身体を強く抱き寄せ無理やり唇を奪う。抵抗は無い。
そこから部活が終わり始めて施錠が始まるまでの時間、俺たち3人は唇を重ね続けた。ただでさえ暗い掃除用具入れの中は陽が落ちるにつれてどんどん薄暗くなって行く。そして今重ねているのがどちらの唇か、どこからどこまでが結蘭の舌でどこからどこまでがモナカの舌か分からなくなってしまった頃にようやく俺たちは視聴覚室を後にした。