【改稿版】お兄ちゃんができました   作:ちびっこ

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転校初日はテストでした……。

 ヒナはホッと息を吐いた。チャイムがなったため、ヒナへ向ける視線が減ったのだ。それでも久しぶりの日本での授業なので、まだ緊張は残っている。

 

 そんなヒナをツナは心配そうに見ていた。

 

「姫川、前を向けー。テストを始めるぞ」

「……すみません」

 

 ツナはヒナから視線を外し、顔を前に向けた。正確には怒られた女子を見ていた。珍しい光景だったからだ。

 

「テスト……?」

 

 先生の言葉に反応し呟いたヒナの言葉が聞いて、再びツナはヒナを見た。

 

「あ、そっか。雪宮さんは知らないよね。今日はテストだよ」

 

 ツナの言葉にヒナは言葉を失った。そんなこと一言も雲雀や草壁から説明されていない。慌てて貰った紙――今年の学校行事が載っているプリントを見ると、確かにテストと書いていた。

 

 ガックリとヒナは肩を落とす。転校初日にテストはヒナでなくてもハードルが高い。

 

「が、頑張って……」

 

 あまりにもヒナの落ち込みが酷かったので、ツナが声をかけた。ヒナは必死に頷く。やるしかないのだから。

 

 ツナは嬉しくなった。クラスでもっとも成績が悪いので、テストで応援する機会なんて今までなかった。それも相手は可愛い女の子。嬉しくならないはずがない。

 

「姫川!」

 

 だが、すぐに先生に怒られている女子……幼馴染の名がまた聞こえ、ツナは心配することになった。

 

 

 

 

 

 一つ目のテストが終わった途端、ヒナは机に倒れこむ。

 

 漢字が読めなかった……!

 

 そう、ヒナは小学校低学年で漢字が止まっていたのである。初っ端のテストが国語というのも悪かった。

 

 本文の内容について答える問題……恐らく教科書に載ってるであろう話は、ヒナが知らない話なのである程度は読まなくてはいけない。が、難しい漢字が出るたびに止まる。なんとか前後の文で正しい読み方を想像し読んでいれば、すぐに内容が頭に入ってこない。流し読みが全く出来ないので、時間が足らない。

 

 かといって、本文に関わらない問題は漢字の読み書きや諺、四字熟語、文法なんて日常会話では使わないので更にわからない。

 

 ヒナは苦肉の策で、先に記号で答える問題を埋めた。そして読める問題文を選んでその前後の本文だけ読んで答えた。

 

 充分頑張った方だろう。それでも手ごたえを感じないテストは初めてだったので、ショックが強い。しかし時間はない。休憩が終わり次第、次のテストがあるのだから。

 

 ガバリと起き上がり、ヒナはツナに声をかけることにした。英語と数学は大丈夫と信じ、問題が起きるだろう二科目を何とかするために。

 

「……沢田君、理科と社会のテスト範囲教えてほしいの!!」

 

  ヒナはテストが終わってすぐに机に倒れこんだので、声をかけようか悩んでいたツナは、かなり驚きすぐ返事をすることが出来なかった。

 

「ダメツナに聞いても意味ないぜ? 入学以来全部赤点だからな!!」

 

 急に聞こえてきた声にヒナはキョトンとした顔で振り向けば、いつの間にかヒナの周りには人が集まっていた。多くの人数、それも男子に囲まれヒナは驚きながらも首を傾げた。何が面白くてそんなに笑っているのだろう、と。

 

「テスト範囲は俺らが教えるからさ。雪宮さんのこと教えてよ!!」

「う、うん」

 

 ヒナは頷くしかなかった。テスト範囲は教えてほしい。それにクラスに馴染むためには必要なことだ。本音を言えば、後にしてほしかったのだが。

 

 しかしいつまでたってもテスト範囲を教えてもらえない。時計の針を確認すれば、後5分しかない。ヒナの視線に気付いた生徒は時間がもう無いと知り、ぞろぞろと戻っていく。テスト前に少しでも詰め込みたいと思うのはヒナだけじゃない。

 

「あの……雪宮さん、これ……」

 

 ツナからそーっと渡された紙を見て、ヒナは目を輝かせる。

 

「テスト範囲、書いてくれたんだ! ありがとう、沢田君!」

「う、うん」

 

 何をやってもダメなツナはこのような視線は向けられないため、少し戸惑った。ヒナからすれば、ヒナの疑問を一向に答えてくれないクラスメイトより、さりげなく声をかけて助けてくれるツナの方が好きだ。自然と笑顔になる。

 

「ちょっと!!」

「は、はい!」

 

 突如きつい声をかけられ、ヒナは挙動不審になった。その声の主は少し目元がきついが、とても綺麗な子である。

 

「ツナ君は渡さないわよ!」

 

 そういうと、綺麗な子はツナの腕に絡ませた。

 

「んなーーー!! 愛! 何いってんのーーー!?」

 

 真っ赤な顔をしてツナは叫んだ。ヒナには恐る恐る話しかけていたので、ツナの反応を見てヒナは目をパチクリさせた。

 

「……沢田君の彼女?」

 

 思考が戻ったヒナは察した。いくら鈍くても、ツナに腕を絡ませヒナを警戒していれば気付く。

 

「ま、まぁね」

 

 得意げに返事をしているが、耳が赤い。ヒナは微笑ましく思った。

 

「ちっ違うよ!!」

 

 だが、すぐにツナから否定な言葉と必死に腕を外す姿を見て、ヒナは首を傾げる。一体どっちが正しいんだろう。

 

「オレの幼馴染の姫川愛だよ」

「もぉ彼女でいいのにー」

「冗談だからね!!」

 

 ヒナにはよくわからなかったので、とりあえず頷いた。仲が良いということはわかったのだから。

 

 いいなぁとヒナは思う。引越しばかり繰り返すヒナは、2人の関係が羨ましい。仲良くなった子も、会わなければ疎遠になっていくのだ。

 

「さっき聞こえたけど、あなたお兄さんと一緒に住んでるの?」

 

 愛の声でハッっと我に返り、頷いた。

 

「……そう。お兄さんも一緒に転校してきたのね」

「ううん。お兄ちゃんはずっとここに住んでたと思う」

 

 驚いた顔をした2人のためにヒナは説明する。

 

「あのね、まだちゃんと決まってないんだけど再婚するの。だからお兄ちゃんとは血が繋がってないんだ」

「す、少し複雑なのね……」

「そうなの。私もお兄ちゃんとは一昨日初めてあったもん」

「ええええ!? それで2人で住んでるのー!?」

 

 ツナの驚いた声にヒナは曖昧に笑った。ヒナだって一週間前にこんなことになるとは思ってもいなかった。

 

 ヒナの反応を見て、ツナは心配し声をかける。ちょうど最近ツナも変わった同居人が増えたので気になったのだ。

 

「大丈夫なの!?」

「うん。変わってるけど、お兄ちゃん優しいもん」

 

 はにかんで笑ったヒナを見て、ツナもつられて笑う。いつの間にか2人の間にはホワホワした空気が流れ始める。

 

 あれ……?とツナは思った。いつもと違う。子どもの頃から女子と話していると愛が腕を絡めてくるのに。

 

「愛? どうかしたの? 今日、なんか変だよ。体調悪い?」

 

 振り返れば愛が下を向いていた。いつも明るく、成績優秀で、運動神経も良くて、ツナがいじめられていると追い払ってくれて、ツナが落ち込んでる時はいつも声をかけて大丈夫と言ってくれる、とても優しい幼馴染。

 

 その幼馴染が今日は何度も先生に怒られていて、下を向いている。ツナは心配で顔を覗き込んだ。

 

「……っ! ツナ君、心配してくれるの!? ありがとう!」

「愛ーー!? は、離して!! 雪宮さんが勘違いするからーー」

 

 ぎゅっと抱きつかれ、ツナは叫ぶ。クラスメイトはいつものことなので気にしないが、目の前にいるヒナは違う。そして名前は出していないが、ツナの思い人である京子にも勘違いされたくはない。

 

 なんとか愛に離れてもらい、目を丸くしてるヒナにツナは違うからと必死に説明する。京子にも伝わることを願って。

 

「2人って、本当に仲がいいんだね!」

 

 ヒナにキラキラとした顔で言われ、京子と同じような雰囲気を感じ取ったツナは項垂れた。

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