少しずつペースを戻そうと思ってます。
呆然。
今のヒナに1番当てはまる言葉だった。
獄寺が大量にダイナマイトを投げた時点では、まだ驚くことが出来ていた。リボーンがツナに死ぬ気弾を撃ったところぐらいから、驚きすらしなくなっていた。もしかすると意識が飛んでいるのかもしれない。
リボーンは獄寺とツナの戦いを観察しながら、ヒナにも意識を向けていたのだ。ヒナはリボーンが用意した人物ではなかったが、獄寺の言った通りマフィア関係者の可能性がある。さらに、ヒナは急遽決まって転校してきたのだ。警戒するのは当然だ。もっとも獄寺とは別のタイミングで接触するつもりだったが。
何にせよ、良い機会なのは間違いない。ツナがヒナを呼び止めた時点で、獄寺と一緒に観察しようと決めたのだった。
そしてリボーンの観察眼より、ヒナは素人と判断された。
出来ることなら、無関係だったヒナはこの場から遠ざけてあげたい。しかし当のヒナが動けそうになく、リボーンが強制的に移動させている間に決着が着くだろう。それゆえ、そのままである。
雑な扱いにも見えるが、パニックを起こし予測不能な動きを見せた場合は気絶させていたことを考えると、今のままの方がましな扱いだった。
リボーンはツナの幼馴染の愛に目を向ける。ツナを応援しているだけで、特に何かしているわけではない。
しかしそれが、違和感を生む。
ツナのことを詳しく知らなかったクラスメイトや京子は、死ぬ気のツナを見てもこのような一面があったのかと受け入れることが出来るだろう。だが、幼馴染の愛は違う。幼い頃からツナを知っているならば、戸惑うのが普通だ。球技大会などと違い、今回はダイナマイトをつかっているため尚更だ。
一般的な反応をしたヒナがいるため、その異常さが際立つ。
頭の片隅に愛の素性を調べ上げると入れておき、消化を終えたツナに声をかけるためにヒナの肩から飛び降りる。
その反動でヒナの意識が戻るのを考慮して……。
「はっ!」
ヒナはすぐさま辺りを見渡す。先程まで何をしていたのか全く覚えておらず、少しでも情報がほしかったのだ。
その結果、ヒナは首を傾げた。
獄寺がツナに土下座していたのだ。何がどうあってそのような状況になったのか想像出来ない。
「10代目!! あなたについていきます!! なんなりと申しつけてください!!」
「はあ!!?」
獄寺の言葉を聞いたツナが、驚いた声をあげてヒナは安心した。よくわかっていないのはヒナだけではないとわかったからだ。ただ、ツナがパンツ一丁になってるので本当に安心していいのか怪しいが。
「私はツナ君の妻になる人だから、これからよろしくね♪」
「はい!」
愛と獄寺の言葉で、ついにヒナは考えることを放棄した。楽しそうにしているのだから、それでいいかなと思ったのだ。
これは海外に引越ししたヒナが学んだことである。言葉がわからないからと会話を止めてしまえば、その場の空気が悪くなってしまい、徐々に避けられてしまうのだ。
それから、みんなが楽しそうにしているから、ヒナも嬉しくて笑う。そう考えるようになった。すると、どうしてもついていけない時に首を傾げれば、日本人のヒナには伝わらなかったとわかりやすい単語をつかって教えてくれるのだ。
「さ、沢田君」
この状況に頭を抱えたい衝動にかられていたツナは、ヒナに声をかけられたことで真っ青になる。つい呼び止めてしまったが、すっかり忘れていた。死ぬ気弾の影響だが、二重人格と思われているのかもしれない。今から言い訳しようとしても、ダイナマイトまで見てしまったヒナには誤魔化せるとは思えない。
「よくわかんないけど……良かったね!」
「え? あ、うん」
ニコニコと話すヒナにツナはホッと息を吐く。嫌われてはなさそうだ。
そんなツナの様子を見て、ヒナもホッとしていた。ここは言葉が通じない海外ではない。良かったとだけ伝えて、次からわかる前提で話しかけられた場合に困るのだ。だからわからないのに良かったと伝えれば、気を悪くしてしまうかもしれない可能性があった。しかし、みんなが楽しそうで良かったと思ったのも、ヒナの本当の気持ちだった。
「ありゃりゃ、サボっちゃってるよ。こいつら」
この場の空気をかえる不良の声に、ヒナはビクリと肩がはねる。見た目だけならヒナは怖がらないが、雰囲気がヒナをからかう時に似ていたのだ。
……あれ?
ヒナは首を傾げる。彼らの言葉がなぜか引っかかった。何か大切なことを忘れている気がする。
「テストが!! 風紀が!!」
ヒナは真っ青になる。友達関係は大事だが、それよりも雲雀の方が大事だ。雲雀に嫌われた場合、誰に頼って生活をすればいいのか、わからない。隣の家のおばさんも根回しや見返りもなしで、いつまでも面倒を見てくれるわけもない。
そんなヒナの叫びにツナが驚く。まさか不良に絡まれてる時にテストや風紀の心配をするなんて思わなかったのだ。
ドカンッ!
音に驚き、恐る恐るツナは振り返った。ヒナに気を取られている間に、不良達は獄寺の手によってやられたらしい。焦げてる不良達を見てツナは察してしまったのだ。
ひぃぃぃ!と心の中でツナは怯える。怖くて動けない。
ツナはこの気持ちを共感できるであろう人物に目を向けると、慌てたように動き出していた。
「獄寺君、ありがとう!」
ダイナマイトのことなど、気にしてられない。早く、早く教室に戻らないと。
心の声が聞こえそうなぐらい必死にヒナの走って行く姿を見て、ツナは悟った。
……この子も、ちょっと変だ。