【改稿版】お兄ちゃんができました   作:ちびっこ

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テスト返却です。

 雲雀と母親のおかげで元気を取り戻したヒナだったが、次の日に返ってきたテストの点数を見て撃沈していた。そして今から自信のない理科のテストが返ってくる。ヒナは授業が始まる前から祈るように座っていた。

 

 転校生で五十音順で獄寺より後なので、最後に呼ばれるため待つ時間が長い。とても心臓に悪い。

 

 ビクビクしながら名を呼ばれるのを待ってると、沢田という言葉が聞こえた。沢田……ツナは先生に頼まれたのもあるかもしれないが、何かと大丈夫かと気を遣ってくれる。ヒナは少し気になって顔をあげた。

 

「あくまで仮定の話だが……20点台をとって平均点を、いちじるしく下げた生徒がいるとしよう」

 

 ビクリと肩をはずませる。ヒナの予想では理科のテストは20点ほどしかない。先生の顔はツナに向けられているが、ヒナに向かって言われてる気がした。

 

 根津という先生はエリートコースを歩んできたらしく、ツナの点数に向かって嫌味をつぶやいてテストの点数をみんなにわざと見えるようにした。基本ボケっとしているヒナもここまですれば、悪意があるとわかる。そのため真っ青になった。ツナと似たような点数のヒナは何を言われるかわからない。

 

「まぁそれよりさらにひどい奴がいるのだが……」

 

 ヒナは根津と目が合い、涙目になる。クラスもツナより点数が低いものがいるとは思わないようで、驚いたような声をあげている。その中で最も驚いた声をあげたのはツナの幼馴染の愛だった。

 

「そんな……ツナ君が1番悪くなんて……! どういうことっ!?」

「……愛」

 

 親しき仲にも礼儀がありという諺があるように、ツナは愛に非難するうな目を送った。ダメツナと日ごろから呼ばれているツナだったが、幼馴染にも当たり前のように思われたことにショックだったようだ。

 

 空気がちょっと戻った気がして、ツナには悪いがヒナはこっそり安心してた。ヒナの予想ではツナより点数が悪いのは自身なのだ。

 

「いいだろう。ここで発表しようではないか」

 

 ドクンと心臓の音が跳ねる。今から呼ばれれば、誰が1番点数が悪い人物なのかすぐにわかってしまう。やめてと叫びたいが、叫べば自身だと公言しているようで言えない。といっても、今から名を呼ばれるので数秒の差でしかないのだが。

 

「クラスで唯一10点台をとったクズは、生きてる資格があるのかねぇ? 雪宮」

 

 嫌味を言われながら名を呼ばれ、ヒナは絶望に染まる。クラス中から視線を向けられ、ヒナは縮こまることしか出来なかった。しかし根津は追い討ちをかけるように教壇まで取りに来いと言う。仕方なく向かったヒナだが、顔をあげることも出来ず、視線から逃げたくて泣く寸前だ。

 

「ッチ」

 

 大人しく行けば、渡された時に舌打ちされ、ついにヒナはテストを受け取り走るように席に戻る。これ以上は耐えられなかった。

 

 そんなヒナに声をかけたのはツナだった。隣の席のこともあるし、同じように嫌味を言われたのだ。気持ちはわかる。

 

「雪宮さん、元気出してね……」

「沢田君……!」

 

 ヒナはツナの優しさにすがるように顔をあげた。しかし次の根津の一言で、再び撃沈される。

 

「類は友を呼ぶとは本当だな」

 

 もう耐え切れなかったヒナは机に倒れこんだのだった。

 

 

 

 グズグズとヒナは鼻を鳴らしながら、状況を把握する。机に倒れこみながら涙を流していれば、なぜか校長室に呼び出されたのだ。チラリと横をみれば、ツナと転校生の獄寺がいる。獄寺が根津に何かしたらしいが、気付けば全て終わっていたのでヒナは根津が倒れたことしか知らなかったのだ。

 

「連帯責任で3人全員、即刻退学にすべきだ!!」

 

 意味を理解するのに数秒かかる。理解した瞬間、涙が完全に引っ込んだ。しかし、ジワジワと再び目に涙が溜まっていく。

 

「しかしですな、いきなり退学に決定するのは早計すぎるのかと……。この通り泣くほど反省したみたいですし……」

 

 校長先生の言葉にヒナは希望を見る。転校してたった数日で退学になれば、母親にも転入手続きをしてくれた雲雀にも申し訳ない。

 

 最終的に、猶予を与えられ今日中に15年前に埋めたタイムカプセルをグラウンドから発掘すれば、退学は免れることになった。しかし、体力や腕力が一般的な数字のヒナにとっては絶望的な内容だった。

 

 

 校長室から出たヒナはふらふらと屋上に足を向ける。グラウンドの大きさを知りたかったのもあるが、泣きはらしてる顔で教室に戻るのは避けたかったのだ。もう泣き顔は見られているが、恥ずかしいものは恥ずかしいのである。

 

 しばらく体育座りをしながら、景色を眺める。グラウンドの大きさを見て、再び涙が出てきたのだ。

 

「……どうかしましたか?」

 

 声をかけられ、何も考えずに呼ばれた方に顔を向ける。しかし涙で良く見ない。

 

「雪宮さんっ!?」

 

 名を呼ばれ、慌ててハンカチで涙を拭う。転校してきたばっかりのヒナの名を知っている人物は少ない。声をかけてきた人物がまさか知り合いとは思わなかったのだ。視界が良くなったので、もう1度顔を見れば、ヒナは驚き完全に涙が引っ込んだ。まさか声をかけてきたのが、昨日会った副委員長の草壁だとは想像すらしていなかったのだ。

 

「……な、なんでもないよ!!」

「ですが……」

 

 無理矢理元気を出したヒナだったが、目も鼻も真っ赤だ。誤魔化せるわけもない。草壁の目から心配していのが伝わるのもあり、ヒナは申し訳ない気持ちになる。

 

 だが、ちょうどいいタイミングでもあった。昨日親切に学校を案内してくれた草壁ならば、ヒナを助けてくれるかもしれない。そう思い、声をかける。

 

「あの、スコップはどこに借りればいいですか?」

「ス、スコップですか?」

「うん」

 

 絶望的な条件だとしても、何もせずに退学になるわけにはいかない。先程までは泣いていたが、ヒナは自分の取り得が元気だとわかっている。しかし実行するにしても、素手で掘るのは無謀なので、職員室で聞く前に草壁ならばわかるかもしれないと聞いてみたのだ。出来るだけ根津に会いたくないという気持ちもあった。

 

 この言葉に困ったのは草壁だ。もちろんスコップぐらいならば、すぐに用意は出来る。しかしなぜスコップが必要なのか。その前にヒナは泣いていた。委員長の妹であるヒナが泣いていたことを放置したままにするわけにはいかない。

 

「スコップを必要とする理由を教えてもらってもいいでしょうか?」

「そ、それは……」

「借りるには理由を話す必要がありますから」

 

 ヒナが口ごもったのを見て、先程の涙と関係しているだろうと推測をつけ、もっともらしい言葉を口にする。意を決して顔をあげたヒナを見て、草壁は話してもらえそうだと思った。が、ヒナの口から出た言葉は草壁をさらに混乱させるものだった。

 

「15年前のタイムカプセルを探すの!」

 

 なぜヒナが探すのかはわからない。だが、15年前のタイムカプセルのことは少しだけ知っている。

 

「……確か、業者に頼む予定だったと思います。また確認してお伝えしますので、安心してください」

「ダ、ダメなの! 今日中に探さないとダメなの!」

 

 暗にスコップでわざわざ掘る必要はないと伝えたが、ヒナは必死に今日中じゃなければならないと草壁に訴える。理由は不明だが、元々業者に頼む予定だった。雲雀の妹のヒナの頼みならば、今日中に手配しても何とかなるだろうと草壁は考え始める。しかし、続いたヒナの言葉に草壁は思考を停止する。

 

「じゃないと、退学になっちゃう!」

「え?」

「……あ!」

 

 うっかり話してしまったというのはヒナを見ればわかる。一体どこで何があって退学という言葉が出てくるのか、草壁は眉間に皺がよりそうになったのを必死に耐えた。顔が怖いと草壁は自覚しているため、ヒナを怖がらせないように気をつけているのだ。

 

「雪宮さん、オレ……いえ、私でよければ相談に乗りますよ。話してもらえないでしょうか?」

 

 草壁の優しい言葉に、ヒナは観念したようにポツリポツリと語りだした。

 

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