【改稿版】お兄ちゃんができました   作:ちびっこ

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ドジッ子です。

『ヒナへ。今日も帰りが遅くなると思うから適当に何か買って食べてください』

 

 ヒナはメモ用紙に書かれている内容を見て、困った顔をした。片親で基本放任主義になってしまうのはしょうがない。女手1つで育てるのは大変だと、ヒナは理解している。

 

 ただ場所が問題だった。

 

 ヒナが居るのは日本ではなく、イタリアである。日本人の子どもが気軽に歩く時間ではない。

 

「冷蔵庫に何かあったのかなぁ……」

 

 メモの内容を見る限り期待は出来ないが、一応確認するために冷蔵庫の扉を開ける。目に入った情報は予想通りのものだった。

 

「母さん……」

 

 思わずヒナは非難するように呟く。ヒナの母は料理が壊滅的なため、ヒナが料理をし、体力的に辛い買い出しは母が担当すると決まっているのだ。

 

 成長真っ盛りのヒナには一食抜くのは辛く、意を決して外に出たのだった。

 

 

 

 

 出来るだけ大通りを歩いていると、ヒナの視界に倒れている人が見えた。

 

 ヒナはすぐさま周りを見渡し、誰かいないのか探す。しかし偶然にも誰も居ず、1番近くにいるのは自身だった。

 

「だ、大丈夫だよね……。男の人だけど何かされそうだったら、声を出せばいいだし……」

 

 自身に言い聞かせるように、ヒナは恐る恐る近づく。そこまで警戒するなら見なかったことにすればいいのだが、日本人の助け合い精神は強く、数年前まで日本に住んでいたヒナには放っておくことが出来なかったのだ。

 

「あ、あの大丈夫ですか!」

「いてて……。なんで今日はこんなに転ぶんだ?」

 

 思わず日本語で声をかけたヒナだったが、相手も日本語で返事をしたことに驚いた。そして同時に安心感を覚えた。髪を染めているようだが、日本人なら大丈夫だと思ったのだ。まだまだ子どものヒナには警戒心が続かなかったのである。さらに転んだという言葉を聞き、警戒心が薄れた理由の1つだ。

 

「怪我はない?」

「ん? ああ。それにしてもさっきから地面がすべるんだよなー」

 

 地面を確認するが、すべるような道ではない。バナナのようなものは近くに見当たらない。ヒナの中で彼がドジっ子認定された瞬間だった。

 

 ヒナは転んだままのドジっ子のために手を差し出す。が、思っていたより体格がよく意味がないことに気付いた。

 

「ありがとうな!」

 

 彼もわかっていたのか、ヒナが差し出した手を握って立ち上がったが、力をいれることはなかった。

 

「ううん。お兄さんも気をつけてね」

「ああ」

 

 ここでヒナは相手の顔を初めてしっかりと見た。日本人と思っていたが、顔立ちが外国人だった。日本語上手だねーと少しのんきなことを考えていると、彼がキョロキョロと周りを見渡していたのでヒナは首をかしげた。

 

「お前、1人か?」

「うん」

 

 心配そうな顔をしたため、あっさりとヒナは答える。言葉を交わした人は大丈夫という、実に子どもらしい警戒心のなさである。

 

「親は?」

「父さんはいなくて、母さんは仕事だよー」

「……そうか。子どもがこんな時間に1人で歩くと危ないぜ?」

「何か適当に買って食べなさいってメモがあったの」

 

 ニコニコとヒナは教える。生活になれるために、母親ともイタリア語でずっと話していた。久しぶりに日本語で会話するのは楽しかったのだ。

 

 グギュルルー。

 

 タイミングよく音が鳴り、ヒナが恥ずかしそうにお腹を押さえる。

 

「オレと一緒に食うか?」

 

 ジッとヒナは彼を見つめる。ヒナの中で少し警戒心が戻ってきたようだ。

 

「わりぃわりぃ。いきなり言ったら怪しいよな。まずは名前な! オレはディーノだ!」

 

 うーん、と少しだけ悩んだヒナはドジっ子ならば逃げれるだろうと考える。体格差があることをすっかり忘れている。

 

「雪宮ヒナだよ!」

「よろしくな!」

 

 結局、ヒナはディーノという男と一緒に食べることにしたのだった。

 

 

 

 ディーノは隣で歩くヒナを横目で見ながら、いつもこのような生活しているのかと心配になる。

 

 ここはディーノのシマなので治安は悪くない。が、夜に子どもが……まして日本人が1人で歩くのは危険だ。治安にはかなり気を配ってるディーノだが、まだ先代の財政を立て直してから数年しか立っていない。どうしてもスキを見て他のマフィアが手を出そうとしてくるのだ。治安が悪くはないが、良いと断言することは出来ない現状だった。

 

 そのためヒナのことを気にかけようとディーノは決めた。

 

「いでっ」

「……大丈夫?」

 

 もっとも部下がいないとヘナチョコになる体質のディーノは、思いと裏腹にヒナに心配される方だった。

 

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