【改稿版】お兄ちゃんができました   作:ちびっこ

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急に連載を再開する、これがちびっこクオリティ!←

で、久しぶりに書いて思ったこと。
一話分の文字数少なすぎww
びっくりしました。


雲雀の苛立ち

 応接室に入り、ヒナが1番最初に目についたのは雲雀の弁当だった。このことから運悪く草壁と会えなかったと知る。

 

 そして雲雀の目にも入ったようで、僅かに首を傾げた。

 

「今日、早く起きちゃったの! そ、それで……」

「そう」

 

 ヒナの話を区切るように雲雀は返事をした。そこまで拘る内容でもないので、ヒナの話を最後まで聞く必要を感じられなかったのだ。……ヒナの話す速度が遅いのも多少は関係しているが。

 

 一方、話を区切られてしまったヒナは恐る恐る雲雀を見るしかない。今更ながらに邪魔しちゃダメに引っかかるかもしれないと気付いたのだ。しかしいつまでたってもトンファーを出す気配がしない。

 

 ヒナが大丈夫だったとホッと一息しようとした時に雲雀が顔をあげた。

 

「ご、ごめんなさい!」

「失礼します!」

 

 ヒナの声にかぶさるように、ドアの方から草壁の声が響く。雲雀はヒナの視線ではなく、足音に反応して顔をあげたらしい。察した理由は雲雀が一瞬だけしかヒナを見なかったからだ。つい謝ってしまったヒナは真っ赤になり、その顔を隠すように教科書を広げたのだった。

 

 時間がたてば、ヒナは冷静になり真面目に勉強しようと教科書を見る。しかし勉強しようにも漢字が読めない。

 

「僕は少し用事で学校から離れる。……頼んだよ」

「はい!!」

「……ぁ」

 

 相談しようと思った途端、雲雀が出て行ってしまう。タイミングはあったのにとショボンとヒナは肩を落とす。ヒナが顔をあげた時に一瞬だけだが雲雀と目が合ったことに驚いてしまい、声をかけるのが遅れてしまったのだ。

 

「どうかしましたか?」

「な、なんでもないよ!!」

 

 漢字が読めないなんて言うの、恥ずかしいもん。……あれ?

 

 否定するようにブンブンと両手を振っていたヒナだったが、ハタと気付く。草壁にはテストの点数が悪かったことも漢字が読めないことも知られている。

 

「ふ、副委員長さん!」

「はい」

 

 数秒前までなんでもないと言っていたにも関わらず、すぐにお願いするのはヒナにとってちょっぴり勇気のいることだった。そんな中、草壁はヒナの言葉を待ってたような、まるでヒナがウソをついていたことを知っているような返事で、ヒナは安心して言葉を続けることが出来た。

 

 ……もちろん草壁は気付いていた。ちなみに草壁でなくてもヒナがウソをついていると気付いていただろう。それほどヒナはわかりやすかった。

 

「あのね、読み仮名を教えてほしいの」

「お安い御用です」

 

 雲雀に頼まれたのもあるが、ヒナのお願いは草壁にとって、言葉通り苦にならないことだった。だが、相手は日本を離れていたヒナである。少しでも言い回しを難しくすると通じなくなる。

 

 コテンと首を傾げたヒナを見て、草壁は自身の失態にすぐさま気付くのだった。

 

 

 

 読み仮名を教える自体は草壁にとって至極簡単なことだった。

 

 通学時とは違い、勉強中なので話題を出さなくて済む。今朝は苦肉の策として雲雀の話を出したが、途中から草壁がただ雲雀の良さを熱弁していただけだった。始終ヒナを聞き役にしていたことに後から気付いた時には、あまりの酷さに頭を抱えたくなるほどだった。ヒナは申し訳なさそうにしているが、草壁からすれば教えているだけで時間が過ぎていくので助かったのである。

 

 問題は立ち位置である。通学中はヒナの前や後ろを歩こうとすれば、ヒナが合わせようとするのだ。もっともヒナは護衛ということを知らないので、ヒナはただ隣で歩こうとしただけである。そのため草壁はヒナの歩調に合わせて歩くしかなかった。そして今も草壁が立ちながら教えようとすれば、ヒナも立ってしまう。結果、ヒナの隣に腰をおろすしかない。

 

 もちろん草壁はそのような葛藤を顔に出さずヒナに教え続ける。

 

 ある程度教えていると今の教科書がヒナにあっていないとわかる。もう少し難易度を下げるべきだ。しかし図書室にある本も中学生向けになるので、今は諦めるしかない。用意しなければと頭の中にメモをする。明日には様々な本が用意し終わってるだろう。雲雀は面倒事を草壁に押し付けただけなのだが、草壁は雲雀の妹を任されたことで張り切っていたのだった。

 

 そしてゆっくりと着実に進んでいる頃、事件は起こった。

 

 ノックもなく扉がひらかれる。すぐに草壁が反応し、ヒナを隠すように立ち上がる。が、 扉がところにいたのは雲雀はだったので警戒はすぐに解く。

 

「ねぇ、屋上のフェンスが壊れていたんだけど」

「っ!」

 

 声だけで不機嫌だとわかる。雲雀が大事にしている学校が傷つけられていれば、その反応は当然だった。

 

 ガッ!

 

 草壁が声を発する間も無く、振り下ろされたトンファー。

 

「ひゃぁ! 副委員長さんっ!? お、お兄ちゃん!?」

 

 草壁の身体で何が起きたのか見えていなかったが、草壁が倒れたことで雲雀の手にトンファーがあったことで悟った。

 

 カミコロス。

 

 今までよくわかっていなかった、カミコロスの意味がはっきりとわかった瞬間だった。

 

 ヒナの目に涙がたまる。この光景から目をそらしたいからなのか、雲雀が怖いからなのか、はたまた止めれない自分が情けないからなのか、あるいは全てか。ヒナは涙を流さないように口を閉じ、スカートをギュッと握りしめた。

 

「……はぁ」

 

 普段の雲雀なら気の済むまでボコボコにするのだが、ヒナがいるせいでやりにくい。ヒナを咬み殺すことは出来ないが、文句を言って来ても続ける気でいた。しかし、まさか自分の罪でもあるかのように目の前の光景をしっかりと見て耐えはじめるとは……。邪魔をしないでとは思っているが、雲雀の行動を背負わせる気はなかった。背負わせる気なら最初にブレザーを用意しない。

 

「……手加減したから、すぐに目を覚ますよ」

 

 実際は手加減などしていないが、草壁はなんだかんだいって幼少の頃からの付き合いだ。雲雀に咬み殺されるのは慣れている。咄嗟に急所をズラしていた。一時間もしない内に目を覚ますだろう。

 

 その言葉にすがるような視線を雲雀は見なかったことにし、応接室から離れる。

 

「気にくわない」

 

 ヒナにというよりも、ヒナを面倒を見るようにケシかけた人物が。

 

 先ほどの雲雀の行動は今までならありえない。今からヒナの面倒を撤回出来ない雲雀のプライドの高さが自身に影響を与えたのだ。

 

 ヒナの面倒を見させて、いったい自身に何を学ばせようというのか。この警戒さえ、手のひらの上で転がされていそうで雲雀は苛立つしかなかった。

 

 

 

 雲雀が去った応接室では、ヒナが右往左往していた。雲雀曰く、大したことがないという。かといって、このまま床に放置というのも出来ない。保健室に運ぼうと思うが、ヒナと草壁には体格の差がありすぎて不可能だ。誰かに助けを求めようと考えたが、雲雀が出ていったのはそのためかもしれない。

 

「ふ、副委員長さぁん……」

 

 結局目を覚ましてというように、ヒナは草壁の身体を揺すった。

 

 しばらくヒナがグズグズ泣いていると、ガバリと草壁が身体を起こした。本当にいきなりだったのでポカンとした顔で草壁を見上げる。

 

「どうかなさいましたか!?」

 

 先ほどまでアワアワしていたのはヒナだ。今は草壁の方がアワアワしている。目を覚ませば、ヒナが泣いていたのだ。心臓に悪すぎる。

 

「副委員長さん、もう大丈夫なの……?」

「オレ……ですか?」

 

 ヒナの言葉で今更ながら雲雀に咬み殺された後だったことを思い出す。それにしては怪我が少ない。雲雀ならもう数回はトンファーでボコる。

 

 普段と違うのは、目の前にいる人物がいたからだろう……と、思ったところで質問内容をはっきりと理解する。そしてヒナが泣いている理由も。

 

「も、もちろん大丈夫です!」

 

 ビシッと立ち上がり、どこにも問題がないとヒナに示す。つられてヒナも立ち上がった後、頭をさげた。

 

「お兄ちゃんがごめんなさい!! ヒナも止めれなくてごめんなさい!!」

「顔をおあげください、雪宮さん。委員長は当然のことをしたまでで、雪宮さんが罪悪感を持つことも謝る必要もないのです」

 

 雲雀を尊敬している草壁にはこの理不尽な暴力でさえ、素晴らしいことと思えるのだ。明らかにおかしな考えだが、このようなことをした雲雀を嫌うことが出来なかったヒナにはありがたいことだった。心からそう思っている草壁にヒナは自然と微笑んだ。

 

 委員長の妹のヒナが笑ったことで、草壁も自然と優しい目をしていたのだった。

 

 

 その後、草壁はヒナに再び大丈夫だと説明してから屋上へと向かったため、ヒナは応接室に1人でいた。草壁はフェンスの壊れ具合を確認し、誰も入らないように見張りの手配を出せばすぐに戻ってくるようで、ヒナはそれまで休憩らしい。わからない漢字が多すぎて1人では進まないのと、短時間にいろいろあったので気を遣ったのだ。

 

 ヒナは最初は興味津々で応接室を見ていたが、高級な物はあっても、これといって面白い物はない。すぐに飽きた。やることのないヒナは教科書に手を伸ばすが、草壁の予想通りすぐに行き詰まってしまう。

 

「むー」

 

 悔しい。イタリアに引っ越した時はわからなくても割り切れたが、日本語がわからないのは思った以上にショックだったようだ。ディーノと話せていたので、日本に戻っても問題ないと思っていたのもあったのだろう。

 

「教室に行こう!」

 

 廊下が賑やかになったので今は休憩時間のはずだ。ちょっぴり気分転換も兼ねて、また弁当も取りに行こうとヒナは教室へと歩き出したのだった。




明日も更新
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