あれから数時間ほど、何気ない話をしながら桜を眺め、両者満足したところで私たちは帰路についていた。時間的にはお昼過ぎ、小さい子供ならおやつを食べているような時間帯。
今日は試しに早起きして気合の入った弁当を作ってみたが、かなり好評だったようだ。これからもちょくちょく作っていこうと思う。
帰り道も半分、ちょうど佳境に入ったとき、事件が起こる。
「電車の遅延?」
「はい…ただいま、車輌に技術的なトラブルが発生し、大幅に遅延しております。誠に申し訳ありません。」
技術的なトラブル…しばらくは動けそうに無いか。
まあそれ自体は大きな問題では無い。問題は…
「わ〜!」
…見慣れない場所に取り残されたせいで持ち前の興味心を発揮している人物が一人いるという点だ。
興味を持つ事が悪いことではない、むしろ私としては様々なことに興味を持って学んでいってほしいのだが…
「ねえクレハ!あっち行ってみようよ!ほらほら行くよ!」
疲れる。とにかく疲れる。私にはニケにその元気がどこから湧いてくるのかさっぱり分からない。
「ちょっと待って…休憩させて…」
どうしてコイツはこんなに元気があるんだろう?私にも少し分けてほしいものなんだが…
「分かった。ここ座る?」
「そうさせてもらおうかな…」
さすがに数十分間人混みの中を歩き回るのは身体的にも精神的にも疲れる。
「大丈夫?ちょっと顔色悪いよ?」
「大丈夫…少し休めば多分治る…」
「どこか悪いの?」
「昔からの体質でね…小さい頃から、人の多い場所に長くいると体調が悪くなるんだよ。」
「そうなんだ…ごめん、クレハ。」
ニケが申し訳なさそうに謝罪する。ニケから謝られる道理は無いが、ニケからすれば自分が連れ回したせいで私が体調を崩したとも取れるだろう。
「謝らなくても良いよ。言ってなかったのは私の責任だし、この症状にももう慣れてるしさ。」
私の言い訳とも取れるようなフォローで、ニケは少し明るさを取り戻したようだ。
「よし、だいぶ良くなったし、ほかの場所も見て周ろうか。どこか行きたいところはある?」
「…いいの?」
コクリ、と頭を動かし肯定の意を伝える。
少し心配そうな表情で私を見つめるニケの目には反省の色が浮かんでいた。しっかり自分の犯した過ちを省み、反省できるというのはいいことだ。まあ今回の場合は私が悪いのだが。
「じゃあ、あっちに行ってみたい!」
何とか持ち前の明るさを取り戻したようだ。
それからは休憩を挟みつつ、様々な施設を見て周った。
大規模な商業施設に、街角でひっそりと営む個人商店。書店からアミューズメントパークまで見て周った。
ニケはしっかりと遊び、私は書店で面白そうな本を買うことができ、お互いに満足した。ニケも本に興味を持ったようだ。
今日は様々な人の生活に触れる事ができた。若いカップルから、熟年の老夫婦まで、様々な人々がいた。
私は、自分なりの人生の楽しみ方を見つけられた気がした。