アインツベルン城――中庭。
白銀の雪が静かに降る。
その中央に、
黄金の粒子が集束していた。
空間そのものが軋む。
そして――。
「ふむ」
黄金の鎧。
紅い瞳。
絶対的傲慢を纏った英雄王、
アーチャー――ギルガメッシュが姿を現した。
雪すら、
その存在を避けるように舞い落ちる。
セイバーは階段の上から見下ろしていた。
片手には剥きかけのみかん。
もう片方は軍刀の柄に添えられている。
「……招待した覚えはないが? アーチャー」
静かな声だった。
敵意も。
殺気も。
だが油断も無い。
ギルガメッシュはそれを見て、
愉快そうに口元を歪めた。
「だから来た」
「ほう?」
「招かれぬ場に現れるのは王の特権だ」
「迷惑な王だな」
「貴様ほどではない」
二人の間で、
空気が軋む。
ただ立っているだけ。
それだけで、
周囲の木々が震えていた。
城内。
切嗣は窓際からその様子を見下ろしている。
最悪の状況だった。
英雄王単独ならまだいい。
だが――。
「……もう一つ来る」
セイバーが呟いた。
次の瞬間。
遠方。
冬の森を裂いて、
雷鳴が轟く。
爆音。
大地が揺れた。
「ハッハァァァ!!」
豪快な笑い声。
神威の車輪――ゴルディアス・ホイール。
雷を纏った牛車が、
雪煙を吹き飛ばしながら庭園へ突入した。
轟音と共に停止。
その上で、
征服王イスカンダルが豪快に腕を広げる。
「邪魔するぞセイバー!!」
ウェイバーは荷台で叫んでいた。
「だから僕は嫌だって言ったんだ!!」
切嗣は額を押さえた。
……何なんだこれは。
聖杯戦争か?
それとも深夜の集会か?
だが。
問題なのは、
この場にいる面子だった。
セイバー。
アーチャー。
ライダー。
現時点で、
冬木最強クラスのサーヴァントが三騎。
しかも全員、
まともに空気を読まない。
下手をすれば、
ここで冬木が吹き飛ぶ。
一方。
ギルガメッシュはライダーを見て、
露骨に不快そうに眉を寄せた。
「……雑種。
貴様まで来たのか」
「ハッハッハ!
固いことを言うな黄金王!」
ライダーは平然としている。
「面白そうだったのでな!」
「失せろ。
余は今、
セイバーと話している」
「ならば余も混ぜろ!」
「図々しい雑種だ」
「征服とはそういうものよ!」
バチバチと空気が爆ぜる。
魔力。
威圧。
大気そのものが震えていた。
ウェイバーは泣きそうだった。
「な、なんで普通に会話してるんだよこの化物共……」
その時だった。
階段の上。
セイバーが静かに口を開く。
「騒がしいな、お前達」
全員の視線が集まる。
セイバーはゆっくり、
みかんを一房口へ放り込んだ。
もぐもぐと咀嚼する。
沈黙。
雪が降る。
そして。
「で?」
セイバーは淡々と言った。
「夜中にわざわざ来た理由は何だ」
その自然体が、
逆に異常だった。
普通なら警戒する。
武器を抜く。
殺気を放つ。
だがこの男は違う。
まるで、
近所の知人が突然来訪した程度にしか思っていない。
だからこそ、
ギルガメッシュは笑った。
心底愉快そうに。
「気に入ったぞセイバー」
ライダーも豪快に笑う。
「うむ!
余もだ!」
切嗣だけが、
胃痛を感じていた。
――頼むから戦うな。
だがその願いとは裏腹に。
冬木最悪クラスの英霊達は、
確実に互いへの興味を深め始めていた。