冬木の番外次席   作:甘めのコーヒー

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第43話

アインツベルン城――中庭。

 

白銀の雪が静かに降る。

 

その中央に、

黄金の粒子が集束していた。

 

空間そのものが軋む。

 

そして――。

 

「ふむ」

 

黄金の鎧。

 

紅い瞳。

 

絶対的傲慢を纏った英雄王、

アーチャー――ギルガメッシュが姿を現した。

 

雪すら、

その存在を避けるように舞い落ちる。

 

セイバーは階段の上から見下ろしていた。

 

片手には剥きかけのみかん。

 

もう片方は軍刀の柄に添えられている。

 

「……招待した覚えはないが? アーチャー」

 

静かな声だった。

 

敵意も。

殺気も。

だが油断も無い。

 

ギルガメッシュはそれを見て、

愉快そうに口元を歪めた。

 

「だから来た」

 

「ほう?」

 

「招かれぬ場に現れるのは王の特権だ」

 

「迷惑な王だな」

 

「貴様ほどではない」

 

二人の間で、

空気が軋む。

 

ただ立っているだけ。

 

それだけで、

周囲の木々が震えていた。

 

城内。

 

切嗣は窓際からその様子を見下ろしている。

 

最悪の状況だった。

 

英雄王単独ならまだいい。

 

だが――。

 

「……もう一つ来る」

 

セイバーが呟いた。

 

次の瞬間。

 

遠方。

 

冬の森を裂いて、

雷鳴が轟く。

 

爆音。

 

大地が揺れた。

 

「ハッハァァァ!!」

 

豪快な笑い声。

 

神威の車輪――ゴルディアス・ホイール。

 

雷を纏った牛車が、

雪煙を吹き飛ばしながら庭園へ突入した。

 

轟音と共に停止。

 

その上で、

征服王イスカンダルが豪快に腕を広げる。

 

「邪魔するぞセイバー!!」

 

ウェイバーは荷台で叫んでいた。

 

「だから僕は嫌だって言ったんだ!!」

 

切嗣は額を押さえた。

 

……何なんだこれは。

 

聖杯戦争か?

 

それとも深夜の集会か?

 

だが。

 

問題なのは、

この場にいる面子だった。

 

セイバー。

アーチャー。

ライダー。

 

現時点で、

冬木最強クラスのサーヴァントが三騎。

 

しかも全員、

まともに空気を読まない。

 

下手をすれば、

ここで冬木が吹き飛ぶ。

 

一方。

 

ギルガメッシュはライダーを見て、

露骨に不快そうに眉を寄せた。

 

「……雑種。

貴様まで来たのか」

 

「ハッハッハ!

固いことを言うな黄金王!」

 

ライダーは平然としている。

 

「面白そうだったのでな!」

 

「失せろ。

余は今、

セイバーと話している」

 

「ならば余も混ぜろ!」

 

「図々しい雑種だ」

 

「征服とはそういうものよ!」

 

バチバチと空気が爆ぜる。

 

魔力。

 

威圧。

 

大気そのものが震えていた。

 

ウェイバーは泣きそうだった。

 

「な、なんで普通に会話してるんだよこの化物共……」

 

その時だった。

 

階段の上。

 

セイバーが静かに口を開く。

 

「騒がしいな、お前達」

 

全員の視線が集まる。

 

セイバーはゆっくり、

みかんを一房口へ放り込んだ。

 

もぐもぐと咀嚼する。

 

沈黙。

 

雪が降る。

 

そして。

 

「で?」

 

セイバーは淡々と言った。

 

「夜中にわざわざ来た理由は何だ」

 

その自然体が、

逆に異常だった。

 

普通なら警戒する。

 

武器を抜く。

 

殺気を放つ。

 

だがこの男は違う。

 

まるで、

近所の知人が突然来訪した程度にしか思っていない。

 

だからこそ、

ギルガメッシュは笑った。

 

心底愉快そうに。

 

「気に入ったぞセイバー」

 

ライダーも豪快に笑う。

 

「うむ!

余もだ!」

 

切嗣だけが、

胃痛を感じていた。

 

――頼むから戦うな。

 

だがその願いとは裏腹に。

 

冬木最悪クラスの英霊達は、

確実に互いへの興味を深め始めていた。

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