冬木の番外次席   作:甘めのコーヒー

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第81話

地下大聖堂の警鐘が、なおも鳴り響く。

 

赤い警戒灯が、石造りの壁を不気味に染めていた。

 

代行者達が慌ただしく駆け抜ける。

 

自動防衛術式。

 

聖別結界。

 

対死徒用拘束杭。

 

その全てが、一斉に起動している。

 

にも関わらず。

 

地上から響く声は、止まらない。

 

『AMEN!!』

 

『ゲハハハハハハハ!!!』

 

遠く。

 

だが確実に近付いてくる、狂った笑い声。

 

キング・ブラッドレイは、深々と溜息を吐いた。

 

「……噂をすれば、だな。」

 

片手で額を押さえる。

 

「はぁ、最悪だ。」

 

その姿に、全員が僅かに目を見開いた。

 

あの男が。

 

黒き総統が。

 

二十七祖を前にしても冷静だった怪物が。

 

ここまで露骨に嫌そうな顔をしている。

 

ウェイバーが、乾いた声を漏らす。

 

「そ、そんなに嫌なのか……?」

 

ブラッドレイは即答した。

 

「ああ、嫌だ。」

 

「死徒の方が、まだ会話になる。」

 

ギルガメッシュが、面白そうに口角を吊り上げる。

 

「ほう?」

 

「貴様ほどの男が、そこまで言うか。」

 

ブラッドレイは、静かにサーベルを抜いた。

 

刃が、鈍く聖堂の光を反射する。

 

「ギルガメッシュ。」

 

「一つ忠告しておく。」

 

“究極の眼”が、ゆっくり天井を見上げた。

 

「奴は、“恐怖”で止まる相手ではない。」

 

「威圧も、殺気も、王威も効かん。」

 

「むしろ歓喜する。」

 

次の瞬間。

 

地上で轟音。

 

大聖堂そのものが揺れた。

 

何かが、外壁を“素手で”破壊した。

 

代行者の悲鳴。

 

銃声。

 

そして。

 

狂気に満ちた声。

 

『異教徒ォォォォォォォォォ!!!』

 

『裁きの時間だ!』

 

『ゲハハハハハハハハ!!!』

 

ウェイバーの顔が引き攣る。

 

「な、なんだあれは……!?」

 

マルグリット・ラ・ヴェルデュールが、椅子の上で愉快そうに笑った。

 

「来た来た。」

 

「相変わらず騒がしいわねぇ、あの神父。」

 

だが。

 

その笑みの奥にあるのは、明確な殺気だった。

 

銀髪の処刑人は、“首狩り兵装”を肩へ担ぐ。

 

「ナルバレック。」

 

「迎撃許可は?」

 

埋葬機関長は、冷徹に答える。

 

「許可する。」

 

「ただし、“殺すな”。」

 

その瞬間。

 

部屋の空気が凍った。

 

ケイネスが目を見開く。

 

「……何?」

 

ナルバレックは、静かに続ける。

 

「殺せば、“イスカリオテ”との全面戦争になる。」

 

「バチカンも埋葬機関も、そこまで愚かではない。」

 

ブラッドレイが、疲れ切った顔で呟く。

 

「つまり。」

 

「半殺しで止めろ、と。」

 

「簡単に言ってくれる。」

 

言峰綺礼が、初めて僅かに口元を歪めた。

 

「珍しいな、セイバー。」

 

「貴様が弱音とは。」

 

ブラッドレイは即座に返す。

 

「弱音ではない。」

 

「現実的判断だ。」

 

その瞬間だった。

 

地下大聖堂へ続く巨大扉が――

 

“投擲された銃剣”によって、爆発した。

 

轟音。

 

聖別銀の扉が、紙のように吹き飛ぶ。

 

煙の向こう。

 

神父服の上にコートを羽織った。

 

短く刈り上げた金髪の大柄な体型。

 

頬を裂けんばかりに歪めた笑顔。

 

丸メガネの奥には、隠しきれない狂気と歓喜を宿した瞳。

 

両手に、無数の祝福銃剣。

 

そして。

 

人間とは思えぬ速度で再生する傷跡。

 

男は、心底嬉しそうに笑った。

 

アンデルセン神父 は、両腕を広げ。

両手に持った銃剣を十字に交差させた。

 

『我らは神の代理人 神罰の地上代行者――』

 

『我らの使命は我が神に逆らう愚者を、

その肉の最後の一片までも絶滅すること―――』

 

『AMEN!!』

 

狂った歓喜と共に。

 

無数の銃剣が、一斉に放たれた。

 

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