冬木の番外次席   作:甘めのコーヒー

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第94話

ブラッドレイは静かに外套を脱ぎ、濡れてもいないそれを椅子へ掛けた。

 

そして、何事も無かったかのように珈琲を手に取る。

 

その姿が、逆に異様だった。

 

つい先程まで最上位死徒を斬っていた男とは思えない。

 

「ハサン達は、既に向かっているようだ」

 

ブラッドレイは淡々と言った。

 

「私の店の常連なのでね」

 

凛が思わず素っ頓狂な声を上げた。

 

「アンタの店、客層どうなってるのよ……」

 

「静かで礼儀正しい客だぞ?」

 

「それ基準がおかしいから!!」

 

綺礼が小さく吹き出す。

 

ギルガメッシュは鼻で笑った。

 

イスカンダルは豪快に笑う。

 

「ハハハハ!!

 良いではないか!!

 暗殺者が通う食堂とは実に面白い!!」

 

「全然面白くないわよ!!」

 

ブラッドレイは気にした様子もなく続けた。

 

「本人達から今回の件を聞いてな。

 わざわざ冬木まで戻ってきた」

 

その瞬間。

 

空気が少し変わる。

 

ディルムッドが静かに問う。

 

「……つまり、彼らは既に“敵”を見ているのですね」

 

「ああ」

 

ブラッドレイは頷いた。

 

「しかも、かなり深く潜っている」

 

綺礼が眉を寄せる。

 

「ハサンが、か」

 

それは異常だった。

 

“山の翁の影”。

ハサン達は基本的に、深入りを避ける。

 

情報収集。

暗殺。

監視。

 

だが今回は違う。

 

自ら戦場へ向かっている。

 

つまり。

 

放置出来ないと判断した。

 

ブラッドレイは静かに珈琲を置いた。

 

「百貌が言っていた」

 

その瞬間。

 

部屋の空気が少し鋭くなる。

 

百貌のハサン。

 

多数人格を持つ暗殺者。

最も広範囲へ潜伏可能な“影”。

 

その彼女が動いているなら、既にかなり危険だ。

 

「“既に東欧の地下都市へ、死徒の交易路が形成されている”そうだ」

 

時臣の顔色が変わる。

 

「……交易路?」

 

「血液。

 霊薬。

 魔術礼装。

 幻想種素材。

 更には、人間まで」

 

凛が顔をしかめた。

 

「人身売買……」

 

「いや」

 

ブラッドレイは低く訂正した。

 

「“兵站”だ」

 

その一言で、空気が凍る。

 

兵站。

 

それはつまり。

 

継戦能力。

 

国家規模戦力。

 

ギルガメッシュの赤い瞳が細くなる。

 

「雑種風情が、随分と大掛かりな真似をする」

 

イスカンダルは静かに笑った。

 

だが、今度の笑みは獰猛だった。

 

「ますます面白い」

 

「征服王、嬉しそうにするのをやめてください」

 

ディルムッドが本気で疲れた声を出す。

 

だがブラッドレイは、珍しく征服王へ同意した。

 

「いや、イスカンダルの感覚は正しい」

 

全員が彼を見る。

 

究極眼の男は、静かに言った。

 

「これは既に、“戦”だ」

 

その声には、埋葬機関時代の冷たさが戻っていた。

 

かつて死徒二十七祖を狩り続けた、人間の怪物。

 

「しかも、かなり古い形式のな」

 

綺礼が低く問う。

 

「古い形式?」

 

「王と軍勢だ」

 

ブラッドレイは即答した。

 

「近代組織ではない。

 もっと原始的だ」

 

王。

忠誠。

軍。

侵略。

 

それはまるで――

 

神代。

 

ギルガメッシュが、不意に笑った。

 

「フン……

 ようやく形が見えてきたな」

 

凛が嫌そうな顔をする。

 

「その笑い方やめてくれる?

 絶対ロクでもない時の顔だから」

 

英雄王は椅子へ深く腰掛ける。

 

「当然だ。

 ロクでもない」

 

そして。

 

黄金の王は、静かに告げた。

 

「恐らく、“真祖側”が動いている」

 

ブラッドレイは静かに珈琲を飲み干した。

 

その仕草は、まるで明日の天気でも話すように自然だった。

 

「来る途中に、時計塔へ寄ってな」

 

凛が嫌な予感しかしない顔になる。

 

「……アンタ絶対また勝手に話進めてるでしょ」

 

「効率的と言ってくれ」

 

ブラッドレイは平然と返した。

 

「ケイネスとウェイバーにも協力を要請してきた」

 

ディルムッドの目が少し細まる。

 

「お二人は?」

 

「当然来る」

 

即答だった。

 

「ケイネスは既に法政科と降霊科へ根回しを始めている。

 ウェイバーは頭を抱えていたがな」

 

全員、容易に想像出来た。

 

――また厄介事だ。

――しかも今回は世界規模。

 

そういう顔で胃を押さえるロード・エルメロイⅡ世が目に浮かぶ。

 

イスカンダルは豪快に笑った。

 

「ハハハ!!

 ウェイバーは苦労人よなぁ!!」

 

「原因の八割は貴方です」

 

ディルムッドが即座に返す。

 

ブラッドレイは続けた。

 

「現地集合は北欧だ」

 

「北欧……」

 

時臣が静かに目を伏せる。

 

霊脈。

神代残滓。

幻想種領域。

 

現代でもなお、“神秘が濃い土地”。

 

もし敵が古代級存在なら、確かに拠点としては理に適っている。

 

綺礼が低く問う。

 

「埋葬機関は?」

 

「当然、私の古巣にも話は通した」

 

ブラッドレイの目が僅かに細くなる。

 

「既に代行者部隊が動いている。

 ただし、正面戦力は足りん」

 

「祖級戦力が絡めば当然だな」

 

綺礼が静かに頷く。

 

埋葬機関は強い。

 

だが数が少ない。

 

対怪異最強クラスの怪物達ではあるが、“戦争”向きではない。

 

ブラッドレイは静かに言った。

 

「じきに、マルグリットとシエルがここへ来る」

 

その瞬間。

 

空気が変わった。

 

凛が真顔になる。

 

「……シエル?」

 

ディルムッドも僅かに表情を変える。

 

綺礼が低く呟く。

 

「第七聖典か」

 

シエル。

 

埋葬機関でも最強格に位置する代行者。

 

不死に近い再生能力。

異常な魔力量。

そして――

対死徒戦闘へ特化し過ぎた怪物。

 

時計塔内部では、半ば“人型災害”扱いされている。

 

ギルガメッシュですら、少しだけ目を細めた。

 

「ほう。

 あのカレー女も来るか」

 

「お知り合いなんですか英雄王」

 

「少々な」

 

絶対ロクでもない関係だった。

 

イスカンダルが楽しそうに笑う。

 

「これで役者は揃い始めたな!!」

 

「全然嬉しくないわよ……」

 

凛が本気で疲れた顔になる。

 

だが。

 

ブラッドレイだけは、静かだった。

 

「いや」

 

その声で、全員が彼を見る。

 

究極眼の男は、低く言った。

 

「まだ足りん」

 

「……何?」

 

ブラッドレイはゆっくり立ち上がる。

 

その瞬間。

 

店主としての穏やかな空気が消える。

 

そこに居たのは――

かつての埋葬機関番外席。

 

死徒二十七祖を狩り続けた、人間の怪物。

 

「もし相手が、“真祖側の王”なら」

 

静かに。

 

確実に。

 

彼は告げる。

 

「“アレ”も動く可能性がある」

 

沈黙。

 

イスカンダルの笑みが消える。

 

ギルガメッシュの赤い瞳が細まる。

 

綺礼ですら僅かに眉を寄せた。

 

凛が戸惑う。

 

「……アレって誰?」

 

誰もすぐ答えない。

 

だが。

 

数秒後。

 

ブラッドレイは、静かに口を開いた。

 

「――朱い月の残滓だ」

 

「真祖の姫君には、まったく面識がなくてな」

 

ブラッドレイは腕を組み、静かに言った。

 

「私が知っているのは、“存在している”という事だけだ」

 

その言葉に、時臣の表情が険しくなる。

 

真祖。

 

吸血種の原初。

死徒とは根本から異なる、“星の側”に近い存在。

 

そして、その姫君。

 

現代魔術世界において、半ば伝説扱いされる怪物。

 

「だが」

 

ブラッドレイは続けた。

 

「シエルがどうやら交流があるそうなんだ」

 

凛が思わず聞き返す。

 

「……交流?」

 

「本人曰く、“腐れ縁”らしい」

 

綺礼が珍しく少しだけ呆れた顔をした。

 

「埋葬機関は時々、人脈が意味不明だな」

 

「今更だろう」

 

ブラッドレイは淡々と返す。

 

ギルガメッシュが鼻で笑った。

 

「フン。

 あの女、“姫”と妙な因縁を持っておったな」

 

凛が嫌そうな顔になる。

 

「待って。

 なんで英雄王まで知ってるのよ」

 

「我を誰だと思っている雑種」

 

「はいはい万能万能」

 

イスカンダルが豪快に笑った。

 

「ハハハ!!

 良いではないか!!

 強い者同士、妙な縁が出来るのはよくある事だ!!」

 

「貴方の場合、その“妙な縁”が大体世界規模災害なんですよ」

 

ディルムッドが真顔で言った。

 

完全に正論だった。

 

ブラッドレイは小さく息を吐く。

 

「まぁ、詳しくは本人が来てからだな」

 

その時。

 

遠坂邸の結界が、再び微かに震えた。

 

だが今度は。

 

凛が顔をしかめる。

 

「うわ、魔力が濃い」

 

時臣も静かに目を細める。

 

「……来たか」

 

外。

 

雨の気配が、一瞬だけ消えた。

 

次の瞬間。

 

ズゥン――

 

重い圧力が空気を揺らす。

 

まるで、“怪物”が結界を潜ったような感覚。

 

ディルムッドが無意識に槍へ手を掛ける。

 

綺礼の黒鍵が滑る。

 

ギルガメッシュですら、少し興味深そうに目を細めた。

 

そして。

 

門が開く。

 

まず現れたのは、銀髪の女。

 

エプロンではない。

 

黒い執行装束。

 

処刑槍“ラ・サンクチュエール”を肩へ担ぎながら、マルグリット・ラ・ヴェルデュールが、いつもの柔らかな笑みで手を振った。

 

「こんばんはぁ〜♪

 お邪魔しますねぇ♪」

 

だが。

 

その後ろ。

 

空気そのものを変える存在が立っていた。

 

青い瞳。

 

短い金髪。

 

黒いロングコート。

 

そして――

背負われた巨大な杭打ち機構。

 

第七聖典。

 

シエル。

 

埋葬機関最強格の代行者の一人。

 

彼女は部屋へ入るなり、全員を一瞥し――

 

最後に、ギルガメッシュを見て、露骨に嫌そうな顔をした。

 

「……なんで居るんですか、英雄王」

 

ギルガメッシュは即座に不機嫌そうに眉を寄せる。

 

「その台詞、そっくり返してやろうかカレー女」

 

「帰っていいですか?」

 

「我の屋敷ではないぞ」

 

「じゃあ居ます」

 

凛が頭を抱えた。

 

「もうなんなのこの空間……」

 

一方。

 

マルグリットは、そんな空気など気にした様子もなく、にこにこ笑っている。

 

だが。

 

ブラッドレイは気付いた。

 

シエルの目。

 

疲れている。

 

そして――

僅かに、焦っている。

 

それを見た瞬間。

 

究極眼の男は理解した。

 

状況は、自分達の想定より悪い。

 

シエルは静かに、第七聖典を床へ立て掛けた。

 

そして。

 

低く告げた。

 

「……アルクェイドが動きます」

 

シエルは数秒、沈黙した。

 

遠坂邸の空気が静まり返る。

 

暖炉の火の音だけが響く中、彼女は静かにブラッドレイを見る。

 

「こちら側かね?」

「……半分正解です」

 

その言葉に、全員の表情が変わった。

 

凛が眉を顰める。

 

「半分?」

 

シエルは深く溜息を吐いた。

 

「アルクェイドは、“こちら側”とか“あちら側”で動く存在じゃありません」

 

その声音には、疲労と諦めが混じっていた。

 

「彼女は基本的に、“真祖”です」

 

「つまり?」

 

綺礼が問う。

 

シエルは静かに答えた。

 

「世界の異常へ反応する」

 

ギルガメッシュが鼻で笑う。

 

「星の白血球か」

 

「ええ」

 

シエルは嫌そうに頷いた。

 

「もし今回の件が、“真祖側”に関係しているなら……アルクェイドは高確率で介入します」

 

イスカンダルが腕を組む。

 

「敵ではないのだな?」

 

「基本的には」

 

シエルは即答した。

 

だが。

 

その後、僅かに間が空く。

 

その沈黙が、逆に不安を煽った。

 

凛が顔を引き攣らせる。

 

「……“基本的には”?」

 

マルグリットが苦笑した。

 

「アルクェイドはん、めっちゃ気分屋なんですよぉ♪」

 

「笑い事じゃありません」

 

シエルが即座に返す。

 

珍しく本気で疲れた顔だった。

 

「普段は割と無害です。

 よく食べるし。

 よく笑うし。

 妙な所で世間知らずだし」

 

「ほぉ?」

 

イスカンダルが興味深そうに笑う。

 

「面白そうではないか」

 

「でも」

 

シエルの青い瞳が、静かに細まる。

 

「“敵認定”された瞬間、世界最悪クラスの怪物になります」

 

沈黙。

 

その場に居る誰もが、“冗談ではない”と理解した。

 

埋葬機関のシエルが、ここまで断言する。

 

それだけで十分だった。

 

ブラッドレイが低く問う。

 

「どの程度だ?」

 

シエルは少し考え――

 

やがて、静かに言った。

 

「……全盛期なら、在り方としては“天災”です」

 

凛が絶句する。

 

時臣も、僅かに目を細めた。

 

ディルムッドは静かに槍を握り直す。

 

だが。

 

ギルガメッシュだけは笑った。

 

「クク……」

 

赤い瞳が愉快そうに細まる。

 

「ようやく、“王”らしい話になってきたな」

 

「嬉しそうにしないでください」

 

シエルが即座に刺す。

 

「貴方とアルクェイドが本気で衝突したら、洒落になりません」

 

「知った事か」

 

「知ってください」

 

完全に慣れていた。

 

どうやら本当に面識が深いらしい。

 

その時。

 

ブラッドレイが静かに問う。

 

「それで?

 本人は今どこにいる」

 

シエルは少しだけ目を逸らした。

 

嫌な予感しかしない。

 

「……北海道です」

 

全員が固まる。

 

凛が真顔で聞き返した。

 

「なんで?」

 

「蟹を食べに」

 

沈黙。

 

イスカンダルが吹き出した。

 

綺礼が顔を覆う。

 

ディルムッドですら僅かに口元が揺れた。

 

ギルガメッシュは心底呆れた顔になる。

 

「相変わらず自由な白姫よ」

 

シエルは深く深く溜息を吐いた。

 

「本当に自由なんですあの人……」

 

だが。

 

次の瞬間。

 

彼女の顔から、疲れた笑みが消えた。

 

「でも」

 

空気が変わる。

 

「もし、“朱い月の残滓”が本当に絡んでいるなら」

 

シエルの魔力が、僅かに漏れる。

 

部屋の温度が下がる。

 

「アルクェイドは、確実に戦場へ来ます」

 

その声には、確信があった。

 

そして同時に。

 

長年、“姫”を見続けてきた者だけが知る――

恐れも。

 

「おそらく、あの魔眼持ちの青年も来るのだろう?」

 

ブラッドレイのその一言で。

 

シエルの表情が、ぴたりと止まった。

 

「……」

 

数秒。

 

沈黙。

 

凛がきょとんとする。

 

「誰?」

 

だが。

 

ギルガメッシュは即座に鼻で笑った。

 

「フン。

 あの“壊し屋”か」

 

イスカンダルも少し興味深そうに眉を上げる。

 

「ほぉ?

 英雄王が知っておるのか」

 

「少々な」

 

ギルガメッシュは不機嫌そうにワインを揺らした。

 

「妙に目障りな男だ」

 

シエルが深く溜息を吐く。

 

「……来る可能性はあります」

 

その瞬間。

 

ブラッドレイの究極眼が細まる。

 

「やはりか」

 

ディルムッドが静かに問う。

 

「どのような人物なのです?」

 

シエルは少し考え――

 

やがて、疲れた顔で言った。

 

「“普通の青年”です」

 

全員が怪訝な顔をする。

 

「ただし」

 

彼女は続ける。

 

「世界で最も、“殺してはいけない普通の人間”の一人です」

 

空気が静まる。

 

綺礼が静かに興味を示す。

 

「ほう?」

 

シエルは壁へ寄り掛かりながら、ゆっくり説明した。

 

「遠野志貴。

 魔眼保持者」

 

「魔眼、か」

 

時臣が低く呟く。

 

現代においても、魔眼は希少だ。

 

それだけで脅威になり得る。

 

だが。

 

シエルは首を横に振る。

 

「普通の魔眼じゃありません」

 

青い瞳が、僅かに険しくなる。

 

「“直死の魔眼”です」

 

その瞬間。

 

ギルガメッシュ以外の全員が空気を変えた。

 

ディルムッドの手が止まる。

 

綺礼の目が細まる。

 

ブラッドレイですら沈黙する。

 

凛が戸惑う。

 

「……何それ」

 

シエルは低く答えた。

 

「“死”が見える」

 

静寂。

 

「物体。

 生命。

 魔術。

 幻想。

 概念」

 

彼女は静かに続ける。

 

「“壊せないもの”を壊せる目ですよ」

 

その言葉には、実感が滲んでいた。

 

イスカンダルが低く笑う。

 

「なるほど。

 確かに面白い」

 

「面白くありません」

 

シエルが即答する。

 

「本当に洒落にならないんですあの人」

 

ギルガメッシュが不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 

「我の財すら“斬れる”時点で気に入らん」

 

凛が顔を引き攣らせた。

 

「ちょっと待って?

 英雄王の宝具斬れるの?」

 

「理論上は可能です」

 

シエルは疲れた顔で答える。

 

「実際、“あり得ないもの”を何度も壊してます」

 

綺礼が静かに問う。

 

「なら危険人物では?」

 

「本人はむしろ一般人寄りです」

 

「余計怖いわね……」

 

凛が真顔で言った。

 

ブラッドレイが低く呟く。

 

「なるほど。

 “王殺し”になり得る目か」

 

その言葉で、空気が少し重くなる。

 

確かに。

 

直死の魔眼は、極論すれば“格”を無視する。

 

どれほど強大でも、“死”があるなら届く。

 

だからこそ異常。

 

シエルは静かに言った。

 

「ただ、遠野志貴本人は戦いを好みません」

 

「だが来るのだろう?」

 

ブラッドレイの問い。

 

シエルは少し黙り――

 

やがて、小さく頷いた。

 

「……アルクェイドが行くなら、多分来ます」

 

その瞬間。

 

ギルガメッシュが、心底面白そうに笑った。

 

「クク……」

 

赤い瞳が獣のように細まる。

 

「ますます愉快になってきたな」

 

凛が頭を抱える。

 

「もう嫌な予感しかしないんだけど……」

 

だが。

 

ブラッドレイは静かだった。

 

究極眼の男は、窓の外――

遥か北欧の空を見つめる。

 

そして。

 

低く呟いた。

 

「……これで、“役者”は揃い始めたか」

 

 

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