冬木の番外次席   作:甘めのコーヒー

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第97話

シエルは携帯端末を操作しながら、小さく頷いた。

 

「送信しました」

 

内容は簡潔だった。

 

『北欧方面で大規模な死徒案件発生の可能性あり。ブラッドレイさん達も集結中。無理にとは言いませんが、協力をお願いしたいです。』

 

実に真面目な文章である。

 

ブラッドレイが腕を組む。

 

「さて」

 

一同も自然と視線を向ける。

 

「返事は来たかね?」

 

シエルは画面を見る。

 

まだ既読は付いていない。

 

「まだですね」

 

「そうか」

 

ブラッドレイが珈琲を飲む。

 

凛が苦笑する。

 

「今の時間なら夕飯かもしれないわね」

 

「あり得るな」

 

時臣も頷く。

 

雁夜達の家は意外と規則正しい。

 

夕食の時間に携帯を放置していても不思議ではない。

 

その時。

 

ピコン。

 

通知音。

 

全員が反応した。

 

シエルも画面を見る。

 

そして。

 

数秒。

 

固まった。

 

「……?」

 

凛が首を傾げる。

 

「どうしたの?」

 

シエルは画面を見たまま答える。

 

「返信です」

 

「早かったな」

 

ブラッドレイが言う。

 

「それで?」

 

シエルは静かに読み上げた。

 

『こんばんは、シエルお姉ちゃん』

 

その瞬間。

 

凛が吹き出した。

 

綺礼も肩を震わせる。

 

ブラッドレイは天井を見上げた。

 

まだ慣れないらしい。

 

シエルは咳払いして続きを読む。

 

『お久しぶりです。皆さんお元気でしたか?』

 

『雁夜おじさんもランスロットさんも元気ですよ』

 

『今は晩ご飯を食べていました』

 

「予想通りだな」

 

切嗣が呟く。

 

完全に夕食中だった。

 

シエルは続きを開く。

 

すると。

 

少しだけ表情が変わった。

 

「……早いですね」

 

「何がだ?」

 

ブラッドレイが聞く。

 

シエルは画面を見せた。

 

そこには。

 

『行きます』

 

たった一言。

 

全員が固まる。

 

「早いな!?」

 

凛が思わず叫ぶ。

 

まだ説明すら終わっていない。

 

すると続きが届く。

 

『ランスロットさんが既に準備を始めています』

 

さらに。

 

『雁夜おじさんは頭を抱えています』

 

部屋の全員が納得した。

 

光景が容易に想像出来る。

 

その直後。

 

また通知。

 

『ちなみに、今ランスロットさんが』

 

シエルは読む。

 

そして。

 

静かに目を閉じた。

 

「何だ?」

 

ブラッドレイが聞く。

 

シエルは疲れた顔で答えた。

 

『皆に会えるのか?』

 

『ブラッドレイ殿も居るのか?』

 

『征服王も?』

 

『シエル殿も?』

 

『なら早く準備しなければ』

 

沈黙。

 

イスカンダルが豪快に笑った。

 

「ハハハハハ!!」

 

アイリスフィールも微笑む。

 

「楽しみにしているんですね」

 

「そうみたいですね」

 

シエルも少し笑った。

 

そして。

 

最後の通知が届く。

 

シエルが確認し――

 

完全に固まる。

 

「……どうしました?」

 

ディルムッドが聞く。

 

シエルはゆっくり読み上げた。

 

『あと、桜も行くそうです』

 

全員。

 

「ああ」

 

予想通りだった。

 

だが。

 

まだ続きがあった。

 

『皆さんにお弁当を作るそうです』

 

居間が静まり返る。

 

数秒後。

 

イスカンダルが立ち上がった。

 

「出発はいつだ!?」

 

切嗣まで少し真剣な顔になる。

 

ギルガメッシュは鼻で笑う。

 

綺礼は苦笑する。

 

ブラッドレイは深く溜息を吐いた。

 

「……まったく」

 

だが。

 

その口元は僅かに緩んでいた。

 

「本当に退屈しないな、あの娘は」

 

ブラッドレイは、イスカンダルの妙に真剣な表情を見ながら珈琲を口にした。

 

「ランスロット達と合流してからだな」

 

即答だった。

 

「流石に先に出発はせん」

 

イスカンダルは腕を組む。

 

「うむ」

 

そして真顔で頷いた。

 

「確かに桜の弁当を置いて行く訳にはいかんな」

 

「そこなのか……」

 

切嗣が呆れたように呟く。

 

だが否定はしなかった。

 

アイリスフィールも小さく笑う。

 

「きっと沢山作るのでしょうね」

 

「間違いなく」

 

シエルが断言した。

 

何故なら知っている。

 

桜はそういう少女だ。

 

自分一人分ではなく。

 

皆の分を作る。

 

しかも本気で。

 

ブラッドレイは腕を組む。

 

「しかし」

 

究極眼の男は静かに考える。

 

「これで主要な面子は揃うな」

 

時計塔。

 

ケイネス。

ウェイバー。

 

聖堂教会。

 

綺礼。

シエル。

マルグリット。

 

第四次聖杯戦争の生存者達。

 

切嗣。

アイリスフィール。

イリヤ。

時臣。

凛。

ディルムッド。

イスカンダル。

ギルガメッシュ。

 

そして。

 

雁夜。

桜。

ランスロット。

 

普通なら有り得ない陣容だった。

 

綺礼がワインを揺らす時臣を見ながら言う。

 

「第四次聖杯戦争の同窓会だな」

 

「同窓会で済む規模ではないと思うがね」

 

時臣が苦笑する。

 

すると凛が呆れた顔になる。

 

「普通の同窓会は死徒討伐に行かないのよ」

 

「そうなのか?」

 

イスカンダルが聞く。

 

「そうよ」

 

「勉強になった」

 

「何の勉強よ」

 

そんなやり取りに小さな笑いが起きる。

 

だが。

 

ブラッドレイはふと窓の外へ目を向けた。

 

雨はいつの間にか止み始めていた。

 

夜空の雲が少しずつ流れていく。

 

静かだった。

 

あまりにも静かだ。

 

だからこそ。

 

彼は分かる。

 

この静寂は長く続かない。

 

北欧では何かが動いている。

 

祖級。

 

あるいはそれ以上。

 

シエルがここまで警戒する以上、生半可な事態ではない。

 

そして。

 

もしアルクェイドが本当に動くなら。

 

事態は時計塔や埋葬機関だけでは収まらない。

 

「……」

 

ブラッドレイは無意識に左目へ触れる。

 

究極眼。

 

数え切れない戦場を見てきた眼。

 

その眼が告げていた。

 

――これは大きな戦いになる。

 

その時だった。

 

ピコン。

 

再びシエルの携帯が鳴る。

 

「また桜さんです」

 

「今度は何だ?」

 

ブラッドレイが聞く。

 

シエルは画面を見て――

 

少しだけ笑った。

 

「写真ですね」

 

「写真?」

 

凛が覗き込む。

 

そして。

 

全員が見る。

 

そこに写っていたのは。

 

台所。

 

エプロン姿の桜。

 

大量の食材。

 

その横で野菜を運ぶ雁夜。

 

さらに後ろでは。

 

真剣な顔でジャガイモの皮を剥いているランスロット。

 

写真の下には一言。

 

『準備中です』

 

居間が静まり返る。

 

そして。

 

ブラッドレイは小さく笑った。

 

「そうか」

 

戦いの準備。

 

遠征の準備。

 

あるいは。

 

友人達を迎える準備。

 

どちらなのかは分からない。

 

だが。

 

その光景を見ていると。

 

不思議と肩の力が抜けた。

 

「なら」

 

彼は静かに立ち上がる。

 

「我々も準備を始めるとしよう」

 

北欧で待つ脅威。

 

真祖の姫。

 

死徒達。

 

時計塔。

 

埋葬機関。

 

様々な思惑が渦巻いている。

 

それでも今は。

 

まず戦友達との再会が先だった。

 

ブラッドレイは立ち上がりかけた姿勢のまま、ふと真顔になった。

 

そして。

 

「それに」

 

静かに続ける。

 

「多少出発が遅れたところで問題ないだろう」

 

全員が彼を見る。

 

究極眼の男は珈琲を置いた。

 

「何せ」

 

一拍置く。

 

「あのアンデルセンが暴れているんだ」

 

沈黙。

 

次の瞬間。

 

シエルが吹き出した。

 

マルグリットは肩を震わせる。

 

綺礼は顔を背けた。

 

凛も笑いを堪えている。

 

「……否定できない」

 

切嗣が呟く。

 

時臣も静かに頷いた。

 

「確かにな」

 

イスカンダルは豪快に笑う。

 

「ハハハハハハ!!

 それは安心だな!!」

 

「安心して良いのだろうか……」

 

ディルムッドが珍しく困惑する。

 

だが。

 

全員の頭に同じ光景が浮かんでいた。

 

北欧のどこか。

 

死徒達の拠点。

 

祖級存在の暗躍。

 

緊迫した空気。

 

そこへ。

 

黒衣の神父が乱入する。

 

「AMEN!!」

 

大量の祝福済み銃剣。

 

絶叫。

 

爆発。

 

死徒の悲鳴。

 

そして。

 

「ハリー!!!ハリー!!!!

化け物共ォォォォ!!」

 

大惨事である。

 

シエルは額を押さえた。

 

「……本当にありそうだから困るんです」

 

埋葬機関の人間だからこそ分かる。

 

アレは冗談ではない。

 

ブラッドレイは腕を組む。

 

「仮に敵が祖級だとしても」

 

「うむ」

 

「アンデルセンなら突撃する」

 

「するな」

 

綺礼が即答した。

 

「確実にする」

 

シエルも断言する。

 

マルグリットも頷く。

 

「止められませんねぇ♪」

 

「止まらん」

 

ブラッドレイも言う。

 

全員一致だった。

 

切嗣が小さく息を吐く。

 

「敵からすると災難だな」

 

「本当に」

 

シエルは遠い目になる。

 

「死徒側からすると、突然天災が降ってくるようなものです」

 

ギルガメッシュが鼻で笑う。

 

「フン」

 

英雄王はワインを揺らした。

 

「あの狂信者の性格は気に入らぬが」

 

赤い瞳が細まる。

 

「敵対者としては最悪の部類だな」

 

珍しく高い評価だった。

 

その時。

 

イリヤが不思議そうに首を傾げる。

 

「アンデルセンさんって強いの?」

 

部屋が静まる。

 

誰が答えるか。

 

数秒後。

 

ブラッドレイが答えた。

 

「強い」

 

即答だった。

 

「私が保証しよう」

 

それだけで十分だった。

 

キング・ブラッドレイ。

 

死徒二十七祖を討伐した男。

 

埋葬機関の怪物。

 

その男が一切迷わずそう言う。

 

イリヤは少し驚く。

 

「ブラッドレイおじさんより?」

 

またおじさんだった。

 

ブラッドレイの眉が僅かに動く。

 

だが今回は流した。

 

「単純な強弱では測れん」

 

静かな声。

 

「だが」

 

そして。

 

かつて何度も剣を交えた宿敵を思い出す。

 

地下聖堂。

 

銃剣の嵐。

 

狂気の笑み。

 

人間とは思えない執念。

 

「敵に回したくない男だ」

 

その言葉には重みがあった。

 

シエルも。

 

マルグリットも。

 

綺礼も。

 

誰も反論しない。

 

だから。

 

ブラッドレイは小さく笑った。

 

「故に安心だ」

 

「何も安心できません」

 

シエルが即座に返す。

 

「今頃アンデルセンがいるせいで、現地指揮官達は頭を抱えてますよ」

 

「だろうな」

 

「間違いなく」

 

「だろうな」

 

二人は同時に頷いた。

 

そして居間には、再び笑い声が広がる。

 

北欧では恐らく大騒ぎになっている。

 

だが。

 

それならそれで良い。

 

あのアレクサンド・アンデルセン神父が暴れているなら。

 

少なくとも。

 

死徒達だけは、彼ら以上に酷い目に遭っているはずだった。

 

ブラッドレイは珈琲を飲みながら、しみじみと呟いた。

 

「……想像すると、相手が死徒でも可哀想だな」

 

数秒の沈黙。

 

そして。

 

「それは本当にそうです」

 

シエルが即答した。

 

迷いが一切なかった。

 

「えぇ……」

 

凛が苦笑する。

 

「そこまで?」

 

「そこまでです」

 

シエルは断言した。

 

マルグリットも何度も頷く。

 

「祖でも嫌でしょうねぇ♪」

 

「嫌だろうな」

 

ブラッドレイも同意する。

 

切嗣が少し興味深そうに聞く。

 

「そんなにか?」

 

すると。

 

埋葬機関側の三人。

 

シエル。

 

マルグリット。

 

ブラッドレイ。

 

全員が同時に頷いた。

 

それだけで十分だった。

 

綺礼がワインを置く。

 

「想像してみろ」

 

全員が彼を見る。

 

「仮にお前達が死徒だとする」

 

凛が嫌そうな顔をする。

 

「嫌な例えね」

 

「そして」

 

綺礼は続けた。

 

「何十年も掛けて計画を立てる」

 

時臣が頷く。

 

祖級なら普通だ。

 

百年単位も珍しくない。

 

「秘密結社を作る」

 

「うむ」

 

「拠点を築く」

 

「うむ」

 

「眷属を増やす」

 

「うむ」

 

「完璧な計画を完成させる」

 

「うむ」

 

そして。

 

綺礼は静かに言った。

 

「そこへアンデルセンが来る」

 

沈黙。

 

全員の脳裏に浮かぶ。

 

数十年の計画。

 

数百人の配下。

 

巨大な地下神殿。

 

祖の玉座。

 

荘厳な雰囲気。

 

そして。

 

扉を破壊し突入する。

 

「AMEN!!!」

 

と叫びながら、虐殺を開始する。

 

全て台無しである。

 

イスカンダルが吹き出した。

 

「ハハハハハ!!」

 

シエルは遠い目になる。

 

「しかも大体そうなんです」

 

「本当にそうなのか」

 

ディルムッドが驚く。

 

「もっと酷い時もあります」

 

シエルは即答した。

 

「ありますねぇ♪」

 

マルグリットも笑う。

 

ブラッドレイが静かに補足した。

 

「一度、祖の眷属が千人規模で集まっていた事があった」

 

全員が聞き入る。

 

「ほう」

 

イスカンダルも興味深そうだ。

 

「潜入作戦だった」

 

ブラッドレイは続ける。

 

「本来なら情報収集後、戦力を集めて殲滅する予定だった」

 

極めて真っ当な作戦。

 

しかし。

 

「アンデルセンが居た」

 

沈黙。

 

嫌な予感しかしない。

 

「案の定、待てなかった」

 

「ああ……」

 

凛が顔を覆う。

 

「そして単独突入した」

 

「うむ」

 

「結果」

 

ブラッドレイは真顔で言った。

 

「祖は死んだ」

 

「え?」

 

凛が固まる。

 

「眷属も死んだ」

 

「え?」

 

「拠点も半壊した」

 

「え?」

 

「アンデルセンは軽傷だった」

 

完全に沈黙した。

 

イリヤだけが無邪気に聞く。

 

「軽傷?」

 

「四肢がちぎれかけていただけだ」

 

「それ軽傷じゃないと思う」

 

凛が即座に言う。

 

正論だった。

 

切嗣が額を押さえる。

 

「敵からすると悪夢だな」

 

「悪夢です」

 

シエルが断言する。

 

「死徒側からすると、埋葬機関が来るより嫌です」

 

「そこまでか」

 

「そこまでです」

 

即答。

 

ブラッドレイは少し考える。

 

そして。

 

真面目な顔で言った。

 

「私なら埋葬機関と戦う」

 

「うむ」

 

「だがアンデルセンは嫌だ」

 

「分かります」

 

シエルが頷く。

 

マルグリットも頷く。

 

綺礼も頷く。

 

埋葬機関と、協会関係者が全員頷いた。

 

ギルガメッシュですら鼻で笑う。

 

「狂信者とは厄介なものだ」

 

そして。

 

ブラッドレイは窓の外を見ながら、小さく呟いた。

 

「……だから多少出発が遅れても問題ない」

 

「まだ言いますか」

 

シエルが呆れる。

 

だが。

 

全員少しだけ思っていた。

 

今頃。

 

北欧のどこかで。

 

死徒達の方が。

 

自分達より遥かに酷い目に遭っているだろう、と。

 

ブラッドレイは腕を組んだまま、ふと真顔になった。

 

「むしろ――」

 

その声で、部屋の空気が少し変わる。

 

「あのアンデルセンが暴れて、まだ殲滅出来ていない事の方が異常だ」

 

笑い声が止まる。

 

埋葬機関の面々も表情を引き締めた。

 

「少なくとも数時間は経過しているだろう?」

 

ブラッドレイはシエルを見る。

 

「そうですね」

 

シエルも笑みを消した。

 

「連絡が入ったのが夕方頃です」

 

「つまり」

 

綺礼が静かに続ける。

 

「アンデルセン神父は、既に数時間戦っている」

 

時臣の眉が僅かに動く。

 

「それは確かに妙だな」

 

イスカンダルも腕を組む。

 

「うむ」

 

征服王の表情も真剣だった。

 

「余もそう思っていた」

 

ギルガメッシュがワインを揺らす。

 

「フン」

 

赤い瞳が細まる。

 

「確かにあの狂犬なら、普通の死徒の軍勢など数時間も要らぬ」

 

切嗣が静かに言った。

 

「つまり敵は予想以上か」

 

誰も否定しない。

 

ブラッドレイは低く呟く。

 

「アンデルセンは強い」

 

断言だった。

 

「私が知る限り、あの男は真正面から死徒の軍勢へ突っ込んで生還する」

 

マルグリットが頷く。

 

「しますねぇ♪」

 

「普通はしないんだがな」

 

ブラッドレイは溜息を吐く。

 

「しないですね」

 

シエルも同意した。

 

そして。

 

ブラッドレイの表情が険しくなる。

 

「だが」

 

部屋が静まる。

 

「そのアンデルセンが数時間暴れても終わらない」

 

究極眼を持つ男は静かに結論を口にした。

 

「ならば敵は祖級だ」

 

「あるいは」

 

シエルが続ける。

 

「祖級が複数」

 

その言葉に空気が重くなる。

 

凛が思わず呟く。

 

「それ、かなり不味いんじゃないの?」

 

「かなり不味い」

 

切嗣が即答した。

 

「アンデルセン神父が時間を稼いでいると考えるべきだ」

 

綺礼が小さく笑う。

 

「本人はそのつもりが無さそうだがな」

 

全員が納得した。

 

おそらくアンデルセン本人は、

 

「AMEN!!」

 

と言いながら楽しそうに暴れている。

 

だが結果として。

 

時計塔。

 

埋葬機関。

 

第四次聖杯戦争の生存者達。

 

彼らが集結する時間を稼いでいる。

 

ブラッドレイは窓の外を見る。

 

「なるほど」

 

雨は完全に止んでいた。

 

「そう考えると」

 

小さく笑う。

 

「今回ばかりは、あの男に感謝せねばならんな」

 

シエルは複雑そうな顔をした。

 

「本人が聞いたら喜びますよ」

 

「それは困る」

 

「私も困ります」

 

即答だった。

 

マルグリットがくすくす笑う。

 

しかし次の瞬間。

 

シエルの携帯が再び震えた。

 

全員の視線が集まる。

 

「北欧からです」

 

シエルの顔から笑みが消える。

 

メッセージを開き。

 

数秒。

 

沈黙。

 

そして。

 

「……やはり」

 

その一言で、部屋の空気が凍る。

 

ブラッドレイが問う。

 

「何だ?」

 

シエルはゆっくり顔を上げた。

 

「アンデルセンは敗北していません」

 

誰も驚かない。

 

問題はその先だった。

 

「ですが」

 

青い瞳が細まる。

 

「現地の代行者部隊三個中隊が壊滅」

 

居間が静まり返る。

 

「祖級反応が三つ」

 

さらに。

 

「そして――」

 

シエルは画面を見つめる。

 

珍しく本気で警戒していた。

 

「アンデルセン本人から、『面白い化け物がおる』という報告が入っています」

 

その瞬間。

 

ブラッドレイの究極眼が細くなった。

 

かつて何度も死線を潜った経験が告げる。

 

それは最悪の報告ではない。

 

最悪なのは。

 

アレクサンド・アンデルセンが。

 

“危険”ではなく、

 

“面白い”

 

と言ったことだった。

 

 

 

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