オラッ!催眠!催眠解除!催眠!(セルフ) 作:催眠お兄さん
ムチムチもうすほそも好きです♡
ノヴァ大陸における【魔王】の起源については二つの説がある──と、偏屈な学者が述べる。
『(中略)……巡遊者はおろか安全な都市に生きる人々にとっても今や常識になりつつあるのだが、【魔王】と言えば星ノ塔の最上階にて待ち構える強大な敵を指す言葉だ。〈首無し騎士〉に〈古代遺跡のゴーレム〉、〈狂気を奏でる音楽家〉……名のある巡遊者でもなければ対処が困難とされるモンスターたち……そうだ。【魔王】と書いて【ボス】と呼ぶ奴らのことだな』
『その【魔王】という言葉のオリジナル、何処から生まれたのか知っているか?』
『一つ目、有力な説はアモールに攻め込んだと伝わる邪悪な【魔王】のことだ。不可思議な力で人心を掌握し、自らに忠実な下僕へと変え幾千幾万の軍勢を率いて星ノ塔を滅ぼそうとした。侵略に侵略を重ねたが、最後は恩恵の神により裁きが下された……というのが大まかな流れだな』
『二つ目、こっちは与太話扱いされてるんだが……星ノ塔が現れるよりも前の時代、神話の時代にて恩恵の神と対立したまつろわぬ神々を世界の果てへと追いやり、暗雲に包まれたノヴァ大陸に光を取り戻した救世主が存在したと。歴史に名を刻んだ者の名こそ、【
「……一体何をそんなに集中して読んでいるのです?」
「ん? あぁ、”恩恵意思”に禁書扱いされてる本」
”千塔の都”アモールの星ノ塔地下にあるバーにて。
蜂蜜色のカクテルが並々と注がれたグラスを傾けながらとある本に目を通していると、丁度ひと仕事終えたばかりの白バニーが横から俺の手元を覗き込んできた。
「この前”恩恵意思”の書庫に行く機会があったんだけど、気になったからパクってきた」
「……ナチュラルに犯罪行為を聞かされてるのですよ」
「はっはっは、悪いのは警備体制に問題があるあっちサイドだ。俺は悪くねぇ」
と、そんな事を宣いつつ。
むにゅん♡ むにっ♡ と右腕に当たる確かな柔らかさを感じながら、俺は隣に座った呆れ顔の白バニー姿の少女へと、開いていたページをそのままに本の内容を見せてやった。
ふむふむ、と記されている文章を目で追っていた彼女だったが、ある一点を指さした。
「これ、半分から下は真っ赤な嘘なのです。少なくとも私が知っている限り、【珍鎮帝】なんて存在しないのですよ。噓っぱち、何処かの作家の創作に決まっているのです!」
「ほ~~ん。ヴェルジュがそう言うならそうなんだろうなぁ」
「ですです! どうせ、後世に名を遺したかった売れない三流作家の仕業なのですよ」
と、辛辣な呟きを言い放つ。
この白バニーの少女の名はヴェルジュ。
ノヴァ大陸に数え切れないほど点在する星ノ塔で働くスタッフの一人にして、塔を訪れた巡遊者たちの理想を鏡で映し出してから欲望で惑わせ破滅させる、双星の悪魔の片割れだ。
こうして書くとアレだが、ヴェルジュは言葉巧みに巡遊者を惑わして悦に入る一方で、進んで無理難題を吹っ掛けに行くことはしないため、『悪魔のような天使』と呼ばれてるとか。
だとしてもこんな淫猥ボディで案内人を名乗るとか各方面に失礼だよね。スケベの化身。
「ちょっと、2人してワタシを除け者にする気? 内緒話をされるなんてと~っても傷つくのよ」
「……ヴェルナー。今は私が彼と話してるのです。あっちに行くのですよ」
そんな感じでヴェルジュと【魔王】について話していると、カウンターの向こう側で酒瓶を磨いていた黒バニーが会話に混ざってくる。
あまりにもワザとらしい泣き真似を見せつけてきた彼女に対し、一瞬顔を顰めたヴェルジュは数オクターブ低い声を発しながら、しっしっと手を振って追い払おうとしていた。
「しくしく……酷いのよヴェルジュ。ねぇ、優しいアナタがワタシを慰めるのよ♪」
が、そんなこと気にしないのが黒バニーの彼女だ。ここぞとばかりにカウンターを越えて俺の左隣の席に腰を据え、そのまま腕を抱えてくる。
ふわふわっ♡ むにょん♡ と先ほどとはまた違う柔らかさと体温を布越しに感じた。
この黒バニーの少女の名はヴェルナー。
ヴェルジュと同じく大陸中の星ノ塔で案内人を務めるスタッフの一人であり、巡遊者の欲望をランタンの光で暴いては甘言を囁いて破滅へと導く、双星の悪魔の片割れである。
彼女が『天使のような悪魔』と呼ばれる所以は、小悪魔じみた笑顔を振りまき、あの手この手を使ってでも無謀な挑戦をさせようとするからだ。呼び込み君。
「目論見が外れて残念なのよ、ヴェルジュ♪」
「ヴェルナー~~っ! 今日という今日こそは許さないのですよ!!」
いつもの調子で嘲笑うヴェルナーに、いつもの調子でキレるヴェルジュ。彼女の言う”今日”カウントは既に100回を軽く超えてしまっている。よく飽きないなマジで。
デカ乳バンズに挟まれたハンバーガー状態の俺を他所に、今まさにダブルバニーによるキャットファイトの火蓋が切って落とされようとしていた。行け、ワイの猥ルド猥バーン!
「ふふっ♡ このままヴェルジュと小競り合いするのもいいけれど……何か忘れてないかしら?」
「あっ、そうです! 私たち、あなたに言わなければならないことがあるのです!」
「……俺に?」
急に矛先を向けられて困惑する俺氏。危うく手に持っていたグラスを滑らせかけた。
「これは星ノ塔の案内人としての言葉なのよ♪」
「心して聞くのです……!」
左右から同時に囁かれ、自然と背筋が伸びる。
バニー服とかいう淫猥な格好を前にしながら、せめて居ずまいだけでも正そうとグラスをカウンターに置いて耳を傾けた。何だ…?一体何を言われるんだ……?
妙な緊張感が取り巻く中、彼女たちは揃って口を開いた。
「無限リングを制覇し、戦いの記憶を刻んだ強き闘士よ」
「此度の行いは、私たちにとって目に余るものばかり」
「故に……”恩恵の神”の名において審判を下す」
「故に……”案内人”の権限において裁定を下す」
「「其方が自省の時を迎えるまで────星ノ塔への立ち入りを禁ずる」」
……
…………
……………………???????????
「つまり出禁ね」
「は?」
「つまり出禁なのですよ」
「はぁ!?」
吃驚して思わず大きな声が出てしまった。
星ノ塔への出禁──それが意味するのは、俺たち巡遊者にとって日銭を稼ぐ手段のうち、最も手っ取り早く、そして効率の良い選択肢が潰されたことになる。
荒野で活動する巡遊者の全員が全員、星ノ塔の攻略を目指すワケではないのだが、討伐依頼や護衛依頼の報酬を天秤にかけると、やはり神器を売ったほうが実入りがいいのである。
「俺が何をしたって言うんだ……」
悪いが、出禁宣告を受ける理由なんてのは皆目見当も付かない。俺がちょっとばかり
不満げに口を尖がらせたところ、ヴェルヴェルコンビにはやれやれと肩を竦められた。
「本気で言ってるとしたら冗談が過ぎるのですよ」
「自覚症状ナシなんて、人としてダメダメダ~メなのよ?」
ヴェルナーがコホン、と咳払いを一つしてから、
「……ここ数週間。アナタは両手の指じゃ数えられない程の星ノ塔を登ったのよね?」
「えっ? あ、あぁその通り。十を超えてから数えるのを止めたけど」
ストレス解消兼武者修行と称して、星ノ塔弾丸攻略ツアーを開催したのは記憶に新しい。
塔の内部に蔓延る”星骸”たちを片っ端から倒しまわり、”星骸”の癖に人間様にドエロく歯向かうというのか!? 悪霊退散! って感じで立場を
「それが問題なのよ、全く」
「……詳しく」
「私たち”案内人”の役割は、巡遊者たちに祈願箱を使わせて記憶のエネルギーを回収して循環させることと、無謀な巡遊者から欲望などの強い感情を吸い取ること、って前に説明したのよ」
そう言えばそんなことも言われたな。
「巡遊者から強い感情が発せられるのは、窮地に陥った時が多い……のだけど、アナタがここ最近”星骸”を八つ当たり気味に倒し続けているせいで、その回収が滞っているのよ」
「ハッキリ言って営業妨害なのです!」
うーん、正論。行く手を立ちふさがる”星骸”にばかり目を向けていたのだが、後続の巡遊者のことは気にもかけていなかった。きっと彼らは敵が少なくてラッキー!程度に思っていただろうが、塔の住人にとっては面白くない状況だったのだろう。反省。
「そんで、罰として星ノ塔を出禁か。ぐうの音も出ねぇわ」
ここは大人しく処分を受け入れることにしよう。多分1~2ヶ月で済むだろうし。
そんな事を考えていたのだが、更に小悪魔たちはどたぷん♡と大きな胸を揺らして囁く。
「納得したみたいね? ……でも、ワタシたちだってアナタの気持ちを無下にするような鬼じゃないのよ♪ だからチャンスをあげちゃうのよ」
チラッ。
「今ここで心から反省して、私たちの言うことを何でも聞くワンちゃんになるって誓えば、寛大な心で許してあげなくもないのですよ。さぁさぁ、早く言うのです♪ ふ~~っ」
チラチラッ。
両側からの意味有り気な視線を露骨に感じながら、甘くとろけるような吐息が俺の耳穴に吹きかけられ、脳が震えて沸騰する様を幻視した。
舐めやがって、もうキレたわ。気絶するまでイカせてやろうかこの野郎!
「だが断る」
そう告げると同時に、俺はテーブルに手をついて勢いよく立ち上がる。
俺の予想外の行動に拍子抜けしたのか、さっきまで余裕たっぷりな様子で自分たちのペースに持ち込もうとしていた彼女たちは、瞬き一つせずに固まっていた。造形が美術品のようだ……
「2人の言う通り、星ノ塔には暫く立ち入らないことにするから」
「え? ちょっ、ぇ……?」
「待つのよ、待ってって言ってるのよ!」
うるせぇ今更止められねぇよ! 帰宅スイッチオンだ!
目を見開いて惚けるヴェルジュを置いてけぼりにし、余裕の欠片もなさそうに伸ばしたヴェルナーの手を振り払ってからバーの出口へとずんずん足を進める。
「ふぃ~終わった終わった。あ、弟クン。一緒にゲームしない?」
「ごめん今は無理! 星ノ塔のパーティーから追放された俺はSランクスキルで無双する ~催眠チートで美少女ハーレム生活!?~ をしに外に出てくるから、ベアトリスに伝えといて」
「残念~、でもりょーかい。よく分からないけど、あの子には私から言っておくよ」
丁度そこにバイト終わりのポーシアが通りがかった。シャツの隙間からだらしねぇ巨峰を見せつけて何を喜ぶ? 何をのたまう?
ポーシアの誘いを泣く泣く断った俺はついでに伝言を託し、その場を後にした。まる。
★
「さて、今後の身の振り方を考えないとな……」
そんなわけで無事?に星ノ塔を出禁になった俺は、アモールの市街地をぶらつきながら今後についての考えを巡らせていた。
今まで”地理協会”を通して数々の依頼をこなしてきた為、手持ちの資金には大分余裕があると言うか20手前にしてFIREできそうな額を手にしてはいるのだが、如何せん安全が約束された都市で細々と生活するってのは俺の性に合わない。
かと言って巡遊者として活動するにしても、今の俺には星ノ塔に登れない。神器関係の依頼も暫くは受注できないわけだし、取れる選択肢の幅がかなり縮まっているのだ。
「ま、何とでもなるかな。……傭兵ライセンスも持ってるし」
少なくとも、ジッと待つだけの日々を送るつもりはない。波も揺らぎもない平坦な人生なんて、退屈にも程がある。波乱万丈でもそっちの方が──『人生は冒険や!』とは誰の言葉だったか。
道行く人たちの間をすり抜けつつ、脳内で俺の持つ手札を吟味しているうちに、気づけば中心部からちょっと離れたシルバーエリアに来ていた。
慣れ親しんだ道のりを通り抜け、辿り着いた場所は”恩恵意思”が管轄する心相石ショップ。
ここに来た理由は単純で、定期的に行っていた神器の納入を一旦ストップするためだ。
「いらっしゃいませ~。本日はどのような御用でしょうか?」
「神器の納品依頼について相談したい。ラールはいるかな」
「あ、ラール先輩が仰っていたお得意様でしたか。……少々お待ちを!」
受付にいた小柄な少女に話しかけると、そう言い残して裏に消えていった。
見ない顔だ。新人さんかな? と思えば数分と経たずに彼女だけが戻ってくる。
「申し訳ございません。ラール先輩は不在のようでして」
「お、了解」
「で・す・が、ここはこのプリチーな
名刺を渡された。ついでに名札を見てみると、そこには確かに(研修中)の文字が。やけにテンションが高いのは緊張を誤魔化すためなのかな、と一人勝手に納得した。
「ベスティナね。じゃあ用件だけど、俺への指名依頼を一時止めることはできないか?」
「ほうほう、なるほど。お得意様はいつもノルマ以上どころかノルマの数倍は多い神器を取引していただいてますし、可能だと思いますよ。……ちなみに、その期間は?」
「2か月くらい」
「承知しました。では手続きが終わり次第、私から連絡さしあげますね」
思ったよりあっさりと終わってしまった。ひと悶着あってもおかしくはないと考えていたのだが、随分と寛容な態度だ。まぁベスティナが強く出ていないだけって可能性もあるが。
心相石ショップでの用事は済んだ為、次は地理センに行って同じような手続きをしなければ。
ベスティナに別れを言ってから、後ろを振り返って入り口に差し掛かった時だった。
「──ぬ? うわっ!?」
「っと失礼、よそ見をしてたみたいだ」
丁度その時店に入ってきた、銀髪ロングの少女──お互いに考え事をしていたらしく、同じ方向に避けようとして正面衝突。俺の胸あたりに額がゴツンとぶつかって、悶絶した彼女は痛そうに鼻頭を擦っていた。
「悪い、大丈夫か?」
「ぬ、ぬぅ……。こちらこそすまない。私は大丈夫だから、これで」
手短に謝罪すると、彼女は妙に気落ちした様子で離れていこうとする。
あのくらいの少女らしからぬ、気難しい表情を浮かべて。厄介事の匂いがした、が。
彼女の去り際。溜息混じりに呟かれた独り言を、俺は聞き逃さなかった。
「はぁ~……──『白亜商会』に勝つためには、カンパニーを復活させるしかない、か……」
「待て。その話……俺に詳しく聞かせてくれ」
華奢な肩をむんずと掴み、彼女を引き留める。誰にも聞かれたくない類の話なのか、大きく目を見開いて警戒心を露にする彼女に対し、俺は真っ向から瞳を見つめ返した。
今俺を見たな? これでお前とも縁ができた! 話を聞かせろ!!
次話タイトル(仮)
:何度目の「ぬ」だ? 申してみよ 学習能力が高くてイイ女だな
次話か次々話には催眠要素を出したい