【完結済み、最終話まで更新予定】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀 作:黴男
アドアステラは速度を上げ、アバターに向かって迫る。
アバターから二回、焦滅砲が放たれるものの、アドアステラには効果がない。
『レーザー砲撃に切り替え、ミサイルは使うな、弾の無駄だ。レーザータレットをオーバーヒートさせろ、決戦モジュール起動、射撃精度にCPU使用率の割合を変更!』
毎秒480発の重レーザー砲が、全てアドアステラへと集中する。
しかし、主力艦用の武装はそもそも中型艦にはほぼ当たらない。
当たったとしても、アドアステラのシールドを貫くには至らない。
『包囲攻撃に変更! 予測軌道に撃ち込め』
『了解!』
所謂、偏差撃ちに切り替えたことで命中精度が上がり、アドアステラのシールドが歪み始める。
そして、近距離と呼ばれるような場所に入った瞬間、アドアステラが発砲する。
たった一撃で、アバターのシールドの二割程度の耐久力を持っていく。
『各種妨害装備起動!』
『起動します』
アドアステラに対して、電子戦・推進妨害モジュールが発動され、その速度と砲撃精度を低くする。
アバターの右舷に回り込んだアドアステラに対し、容赦なくレーザー砲火が加わる。
コバルトと共同でのオーロラ射撃であれば、フレンドリーファイアを気にすることなく撃つ事が出来るためだ。
『敵シールド減衰率:50%』
『アバター、シールド消失まで何秒だ!』
『残り22秒』
アドアステラもシールドブースターをオーバークロックし、シールドを減衰させないように努力はしていたものの、しかしどんなに盛ったところで、主力艦とは素の耐久力では天と地ほどの差がある。
アバターは脆弱なように思えるが、それは装備が装甲防御に主力を注いでいるからである。
そして。
『妾も忘れてはならんぞ!』
シュッツェ・フリューゲルス(近接戦闘仕様)がアドアステラを包囲し、レーザーキャノンではなくレーザーガトリングによって立体的な攻撃を仕掛ける。
アドアステラもパルスレーザーによる迎撃を行うものの、シュッツェ・フリューゲルスのシールドを破る事は出来ない。
『シンよ、今のうちじゃ!』
『ああ!』
ファンネ....ブレードがアドアステラの重レーザー砲の連射を防ぎ、シールドが崩壊する前にアバターがアドアステラのシールドを突き破った。
『アドアステラ、シールドダウン! ミサイル攻撃再開! ネム、ブラックガードを数隻こっちに回せ!』
『了解!』
妨害艦のブラックガードがアドアステラを包囲し、そこにレーザーとミサイル、シュッツェ・フリューゲルスのガトリング砲撃が集中する。
そして、それは来た。
何かの共鳴波と同時に、シュッツェ・フリューゲルスの制御が一瞬途切れ、アドアステラの船体が真っ白く染まる。
『来るぞ、こっちも備えろ!』
直後。
アドアステラの船首部分から突き出た砲台から、強力な砲撃が放たれる。
それはアバターに直撃するものの、思ったより威力が出ていなかった。
砲撃の残滓が消えると、その船体を真っ黒く染めたアバターが現れる。
『シン司令官、これは.....?』
『俺も、アドアステラと同じことをやっただけさ』
シンは笑う。
アルテアは、アドアステラの映像を見て「コレは聖遺物だ」と言った。
持ち主と共に在り、持ち主の願いに応え、持ち主に力を与えるモノ。
シンはそれに一つの予測を見出した。
聖遺物とは、キネス能力者のみが使えるものなのだと。
そして、本来は滅多に存在しないそれがアドアステラであるということは、その条件は「異世界から共にやって来た」という事である。
それに気づいたシンは、アバターに初期から存在している艦船を分解して組み込んだのだ。
結果、白銀のアバターはシンの想いに応え黒く染まった。
当然、兵装も大きく強化されている。
『さあ、流歌! どっちが長く耐えられるか勝負だ!』
シンはコアルームで一人叫ぶ。
聖遺物対聖遺物の戦いであり、両者の実力はほぼ互角と言える。
レーザー砲同士が交差し、アドアステラが放ったミサイルが、アバターの放ったミサイルに迎撃される。
爆炎の中から飛び出したアバター側のミサイルが、アドアステラに直撃してその装甲に損傷を負わせる。
しかし、その装甲の傷はすぐに塞がっていく。
反対に、アバターに到達するレーザー砲は、アバターの強固なアーマーによって止められる。
『まだ、まだじゃぞ!』
シュッツェ・フリューゲルスが、高速で飛翔するアドアステラに軸線を合わせて撃つ。
しかし、強化されたその装甲に損傷を負わせられず、反対にパルスレーザーによって撃墜される。
『レーザータレットのオーバーロード熱損傷、81%に到達』
『オーバーロード解除、急速冷却開始! ミサイルランチャーをオーバーロードさせろ、ネム! 艦載機編隊を二つこっちへ戻せ!』
『.....はい!』
ネムは少しだけ疑問に思いつつも、その命令を実行する。
自らの主が、妹を引き合いに出すと止まらないその主が、今その妹が乗る船を迎撃することに...妹を殺すことに何の躊躇も抱いていない様子に疑問を覚えたが、ネムにとっては些細な事である。
『ぐ......』
その時、シンは呻き声を上げる。
聖遺物の維持限界が近いのだ。
『どうやら、こっちの才能もないらしいな』
シンはそう言って自虐すると、コアルームに一つしかない操作盤の赤いスイッチを押す。
コアの機能が停止し、アバター級の装甲が白銀へと戻る。
直後、全ての艦船の砲撃が、アドアステラに集中した。
『......まあ、敵はいなくなったしな、結果オーライだ』
二つの船が戦っている間に、王国艦隊はほぼ全滅していた。
ワープ妨害フィールドのせいでワープできないため、アドアステラに救援は来ない。
『さあ、時間切れまでに生きていられるか、流歌?』
シンは冷徹に、ネムに攻撃指示を出した。