【完結済み、最終話まで更新予定】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀   作:黴男

209 / 209
206-十、十一、十二。

戦況は、極めて良好だ。

....いや、本当に良好なのだ。

何しろアドアステラが出てこないからな....

 

「アドアステラの行方は?」

『秘匿されているようです、王国軍内部のシンパサイザーによる情報提供では、一か月前に消息を絶ったきり、乗組員を含めた全員の消息が掴めないようです』

「そうか....まあ、いいんだが」

 

最早王国の領土は残り三つだけ。

最終決戦で出てきたところで、現在量産中のアレで粉々にするだけだ。

指揮官たちの八面六臂の活躍によって、三百以上ある王国の恒星系はその殆どが陥落した。

地方殲滅において特に強かったのはズィーヴェンとノルンだな。

あの二人は寝食を必要とせずに長時間の作戦行動が可能だ。

だからこそ、寝食をしなければならない王国軍に対して有効な戦術を展開することができた。

部下(ドッグ)はシフトを組んで寝食が出来るが、指揮官(ハンドラー)は換えが効かない。

いずれ疲弊し、どんな有能な指揮官だろうと意味が無くなる。

そしてこの王国は、疲弊に膝を折る事を許さない国家であり、指揮官は自然とそれに縛られてしまう。

実に滑稽な事だ。...いや、日本もそんなもんだったけど。

 

「さて、報告を聞こう」

 

考え事をしていた俺は、背後で三人が立っている事に気づく。

息遣いから、(ツェーン)十一(エルフ)十二(ツヴォルフ)だろう。

 

「はい。王国艦隊の所有する残存主力艦の総数が判明しました」

「興味があるな、それで?」

 

ツェーンは、燻んだ金髪に白い肌、薄翡翠色瞳を持つお姫様だ。

元はイルエジータに存在する...なんだったか、生き残りの人間たちを率いる王国のお姫様だったらしいのだが、庇護を求めてきたから対価を要求したら派遣されてきた。

彼女に働かせるから見逃してほしいという何とも情けの無い願いではあったが、聞かない理由はない。

今更獣人以外をドクトリンに組み込む気もないしな。

 

「主力艦の総数は、戦闘型が211、母艦が110、旗艦級が31です」

「意外と多いな...」

「ですが、現在運用に必要な人員が不足している状況であり、主力艦を運用する以上通常艦の総数が減少する可能性があります」

「なるほど」

 

主力艦の運用には、普通は数百人の人員が必要になる。

俺たちの場合は不要だが、人間が運用する以上はそうなるだろうな。

 

「主力艦は首都防衛で全て配備され、それ以外の戦いでは動員されないものと思われます」

「そうか、よくやった」

「はい」

 

現在首都星系での活動を行っているのは主にこの三人だ。

他の指揮官と違って、遠慮なく使い捨てられるのも悪く無い点でもある。

忠誠心が高く、決して口を割らないだろう。

まあ、割ろうとしたところでオーロラトラップが発動して脳死するだけだ。

 

「さあ、次はエルフ、お前だ」

「はい、聖上」

 

この呼び方だけは何度変えるように言っても辞めさせられなかったので、放置している。

部下が呼びたいように呼べばいい。

ちなみにエルフというのは種族の方ではなく、「11(Elf)」だ。

地球の創作物の種族がこの世界に居たら逆に怖い。

 

「”辿り”ましたが、アドアステラの記録は既にありませんでした。恐らく、キネスマスターに至った”彼女”が覆い隠しているのでしょう」

「だろうな....まあ、それはいい。そのゴーグルの調子はどうだ?」

 

信じられない事だが、エルフはキネス能力者だ。

俺のように、瞳孔を基点としているわけではなく、両目の視神経を通して、使われたキネスの履歴を辿る事が出来る。

当然消耗も大きく、俺はアルテアから回収した聖遺物で彼女の為にゴーグルを作らせた。

今回頼んでいた案件は、アドアステラの捜索。

流歌の能力の詳細が分からないが、とにかく後を辿れないかと思ったが、無理なようだ。

「キネスマスター」....つまり、キネス能力者の中でも突出した存在となった彼女が、本気で痕跡を消したというわけだろう。

 

「はい、聖上のゴーグルのおかげで、目の痛みも晴れました」

「それはよかった」

 

聖遺物が他人のキネスにおいても作用することの実験だったが、上手く行ったようだ。

これで彼女についての話題は終わり、俺は最後の指揮官に目を向ける。

現状、席は残り十席だが、これ以上増やすことは考えていない。

 

「ツヴォルフ、報告を聞こう」

「はっ! 前線で活動中のアインス様、ドライ様、フュンフ様に代わり報告をお伝えします! アインス様は聖ペリュンケルト記念騎士団の本部を奇襲で壊滅させ、ドライ様はケラカ星系からの秘匿輸送船を襲撃、兵站の確保を失敗させました」

「フュンフは確か、他勢力との戦闘中だったな?」

「はい、カルメナス海賊団による侵襲行為に対処しています。侵入源のゲートを特定し、破壊することで対処したとの事です」

「そうか」

 

ツヴォルフはこの間滅ぼしたホーエンティア帝国の皇太子である。

円滑にホーエンティアを滅ぼせたのも、彼女(・・)が積極的に協力してくれたお陰でもある。

詳細は省くが、子は親を選べないな、と思ったのを覚えている。

 

「報告は終わりか? 終わったなら下がれ」

「「「はい」」」

 

彼女たちに思い入れはない。

派遣社員、観測員、裏切者の家族殺しだからな。

過程はどうあれ、俺は彼女らに同情はしない。

 

「お前たち、よく頑張ったな。....次の作戦時には休暇を取って良しとする」

「「「はい!」」」

 

出自的には、ズィーヴェンとアハト、ノルンの方がましだな。

俺は静かにその背を見送った。

 

「例の計画はどのくらい進んだ?」

『現在、44%です』

「資源不足か?」

『いいえ、Noa-Tun増築計画のために作業用ドローンを使用しているためです』

「作業用ドローンを増産しろ」

『はい』

 

俺は少し歩いて、戦闘指揮所の真下を見下ろせる場所まで移動する。

眼下では、基礎の骨組み工事が行われていた。

流歌は俺たちに敵わないと知っても、絶対にこの場所へ来る。

だからこそ、その為の工事と言える。

ホールドスターはSSC最大の構造物。

だが、その上がないとは誰も言っていない。

 

「まさか、これを組み込む事になるとはな」

 

俺は呟く。

設計図自体は、習熟したプレイヤーなら簡単に手に入れる事が出来るそれ。

問題は資源、そして防衛コスト。

浪漫構造物として知られていたそれを、俺はNoa-Tunに合体させる形で完成へと導くことにした。

その名を、「オリジン・スター」と言った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

銀河皇帝のスペアに転生した元社畜、地球軌道上の要塞でネトゲ三昧の隠居生活を満喫する 〜足元では超大国が滅亡級の異星遺産を巡って暗躍中ですが、主人公(ぼく)の命は絶対安全なので特等席で傍観します〜(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ブラック企業で心身をすり減らした元社畜は、並行世界の地球軌道上に浮かぶ完全ステルス要塞〈サイト・アオ〉で目を覚ました。▼彼の新たな肉体は、銀河帝国の最高権力者のスペアとして培養された完全無欠のクローン「ティアナ・レグリア」。神のごとき超能力と超絶テクノロジーを行使し、広大な銀河での大冒険すら早々に「クリア」してしまった彼は決意する。▼「宇宙の覇権とか面倒くさ…


総合評価:2368/評価:6.77/連載:180話/更新日時:2026年07月09日(木) 17:16 小説情報

転生したら異世界の宇宙最強の龍でした!〜0から星と生命を作り出して一大文明の支配者になったので現代日本へ帰還します。自分は日本が一番暮らしやすい。〜(作者:電動ガン)(オリジナル現代/コメディ)

目覚めたら無だった。何も無い。宇宙さえも。自分の身体を見る。銀色の甲殻、長い尻尾これモンスターだ!?よく見ると俺の他にも二頭のモンスターが。ドラゴンだこれ!!▼俺たち三頭の女神龍は宇宙創成の前の世界にいる。俺たちを生み出した主神の指示で世界を作り生命を繁栄させることとなったけど・・・・・・それ何年掛かるの?▼何億年も掛けて生命が宿れる星を何個も作り、失敗し、…


総合評価:2456/評価:7.47/連載:131話/更新日時:2026年08月09日(日) 16:51 小説情報

辺境惑星召喚――コロニストたちの異世界漂流記(作者:ホゲフガ)(原作:日本国召喚)

辺境惑星(リムワールド)から、とある企業コロニー来たる。▼――そこは、効率と利益のみが肯定され、死体すら資源となる無法の辺境惑星。▼その狂気の世界に存在する超技術企業『コホート・コーポレーション』は、ある時、拠点ごと見知らぬ異世界へと転移してしまう。▼覇権国家の傲慢も、空を支配する飛竜も、彼らにとってはただの「資源」であり、処理すべき「コスト」でしかなかった…


総合評価:544/評価:7.7/連載:65話/更新日時:2026年08月09日(日) 21:00 小説情報

底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす(作者:オタリオン)(オリジナル現代/冒険・バトル)

底辺Vtuberの根黒万太郎。▼十年前にやり込んでいたロボゲーの続編やったら動きが変態過ぎて大バズり!▼闘争を求めてやって来る強き変態たちに万太郎は更なるバズりを求める。▼果たして、万太郎は底辺を卒業しトップVtuberとなれるのか?▼(☆):他者視点有りのマークです。▼※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。


総合評価:1416/評価:7.72/連載:79話/更新日時:2026年07月28日(火) 19:59 小説情報

【7/20オーバーラップ文庫から発売!】NTRエロゲに転生して婚約者を寝取られた俺を救ったのは、地上最強の取り巻きモブ女子Aでした(作者:ぜんはいざ)(オリジナルファンタジー/恋愛)

【オーバーラップ文庫様から書籍化! 7/20発売予定です!】▼ スキル授与しきの真っ最中に前世の記憶が蘇り、NTR系同人エロゲの世界に転生したことを知るニコラス=フリートラント。▼ しかもなんと、転生先はヒロインである幼馴染で婚約者を寝取られるサレ夫だった。▼ ニコラスは授かったスキルで婚約者のステータス(ただしエロステータス)を確認したところ、バッチリ寝取…


総合評価:13672/評価:7.7/連載:143話/更新日時:2026年08月06日(木) 20:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>