【完結済み、最終話まで更新予定】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀   作:黴男

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223-ビルジースプライム封鎖戦(前編)

ビルジースプライム。

撤退がほとんど進んだその場所に、ツェーン、エルフ、ツヴォルフの三人が集結した。

正確に言えばほかにも数人の指揮官がいるが、今回の任務に配属されたのは主にこの三人である。

 

『ジャンプ反応を検知、来ますよ』

『分かっている、手筈通りに』

 

エルフが乗る機体、サマエルの下部が変形し、一つの砲身を露出させる。

だが、砲門の先には何もいないように見える。

 

『次元跳躍直撃砲、発射準備』

『マイクロワープフィールド展開します、エネルギー伝送管アクティブ、対象時間軸とのリンク開始』

『支援する、時空間伸張性を拡張します』

 

その時、隣接していたコクマーがその全身を変形させる。

鯨のようだったその機体は、全身から風を受ける翼のような機構を飛び出させて、その機能をフルに使えるようにしていた。

コクマーに搭載されているのは「試製次元共鳴連鎖動体操作装置(カイロス・デバイス)」。

時空間の靭性に干渉することのできる装備である。

汎用性が高く様々な事が出来るが、今回の場合は主にエネルギーの次元跳躍を行おうとしていた。

 

『エネルギー充填完了、転送準備完了』

『発射します、聖上の敵に裁きを!』

 

直後、サマエルが砲を解き放つ。

膨れ上がった光は、どこか虚空へと消え去った。

消えたわけではない。

 

『第一波命中』

『襲撃を開始する』

 

その時、サマエルとコクマーの傍にいたガマリエルが動き出す。

卵型の機体に、ブツブツのようにP.O.Dが配置されたそれは、周囲に侍らせた大量のビットを追随させてワープする。

 

『第二波、発射準備』

 

第10、11、12指揮官は、指揮官と同時にもう一つの側面も持つ。

それは、死刑執行官である。

教育時に、彼女たちは敵に対する一切の疑問と慈悲を捨てさせられているのだ。

 

『発射』

 

アドアステラは攻撃が飛んでくる座標を特定しようとしているが、背後に開いた空間の穴から噴き出した砲撃に吹っ飛ばされる。

なけなしのシールドが消滅し、すぐに船の姿勢を立て直して加速を始めた。

振り切るつもりなのだ。

 

『ワープアウト、アドアステラを視認した。私は攻撃を開始する』

 

ガマリエルの周囲のビットが、一斉にP.O.Dの光を放つ。

同時にガマリエルの表面にあるP.O.Dも一斉に起動し、アドアステラを撃つ。

アドアステラ側からすれば突然の事だったため、その一撃は艦橋と格納庫に直撃し、装甲が修復される前に内部に熱傷を負わせることに成功した。

格納庫から幾つか大きなコンテナが落下していく。

 

『第三波、発射準備完了』

『発射してください』

『撃ちます!』

 

アドアステラの斜め左正面に空いた空間の穴から砲撃が噴き出す。

それは混乱中のアドアステラの正面装甲に直撃し、艦底部まで一気に突き抜ける。

衝撃でアドアステラの船体が歪み、ヒビが船全体に拡大したことで崩れかける。

 

『修復など、させん!』

 

ガマリエルのビットが、一斉にアドアステラの甲板に突き刺さる。

それがナノマシンによる装甲修復を阻害し、アドアステラをその場に縫い付ける。

 

『第四波、発射します』

 

真上にゲートが開き、アドアステラに砲撃が直撃する。

艦橋に衝突したことで、アドアステラは完全に制御を失って回転しながら吹き飛んだ。

 

『来ました、キネス防御の展開を確認――――ぐうッ!!』

 

半壊したアドアステラの砲門が、たった一瞬止まったガマリエルに向けて砲撃を放った。

ガマリエルの強固なシールドが一瞬で貫通され、ガマリエルは破断した装甲を抱えたままワープアウトする。

 

『足止め役を失いましたね』

『構いません、続行します』

『ええ』

 

反撃に成功したアドアステラに、とどめの一撃とばかりに砲撃が放たれるものの、それはキネス防御によって阻まれる。

ガマリエルがいなくなったことにより、装甲を修復する事が出来、窮地を脱したのだ。

アドアステラはそのまま、ワープドライブを起動した。

 

『こちらの場所を特定されましたね』

『退避を』

『勿論です』

 

サマエルは別の場所に退避し、その場にはコクマーだけが残る。

そして、そこにアドアステラがワープアウトしてきた。

攻撃者を直接叩くつもりなのだ。

 

『勝負です、ルカ様』

 

アドアステラはワープアウトすると同時に、コクマーに砲撃する。

だが、レーザーが届く前にコクマーは唐突に消えた。

アドアステラが次に広域スキャンを広げようとしたその時、コクマーはアドアステラの死角に回り込んでいた。

搭載された四十門のミサイルランチャーから、ヘビーアサルトミサイルが乱射される。

次の瞬間には全てキネス防御に弾かれたが、しかし――――アドアステラの反撃を受ける前に、射程外にコクマーが出現した。

 

『時間軸変動、修正範囲内です』

『再変動開始』

 

直後、アドアステラの艦橋の真正面にコクマーが現れる。

アサルトミサイルが、強固な装甲を突き破り艦橋の内部に貫通する。

 

『戦闘終了』

 

窓が粉砕され、艦橋内部が炎に包まれる。

アドアステラは完全に沈黙し、勝利を確信したコクマーはその場を離れようとした。

 

『これは!?』

 

光のない宇宙空間に、一筋の紫電が迸る。

稲妻は、シールドごとコクマーの装甲を叩き割った。

恐るべき一撃、それを放ったのは…

 

『ルカを確認、攻撃を受け…』

 

アドアステラの壊れた艦橋から、仮面をつけた人間が飛び出す。

その両手には、光の剣を握っている。

直後、その真っ直ぐに伸びた刀身が形を失い、長く長く延びる。

力場が粒子を纏い、そこにエネルギーを伝導させているのだ。

威力は薄くなるが、リーチを伸ばす事が出来る。

――――ガマリエルの巨体を斬ってあまりある程に。

 

『退避します』

 

だが、間に合わない。

コクマーがワープベクトルを確立しようとしたその一瞬。

二つの斬撃が、コクマーの機体を切り裂いた。

コックピットが鮮血で染まる。

 

『どうしましたか? ツヴォルフ、応答してください』

『――――』

 

アドアステラは速度を上げ、主を失って沈黙したコクマーを放置してワープアウトした。

 

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