【完結済み、最終話まで更新予定】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀 作:黴男
『アドアステラを視認!』
ガマリエルとその周囲の艦隊の眼前に、アドアステラが姿を現す。
サマエルは既に避難済みであり、コクマーのバイタルサインは途絶している。
周辺に艦隊はおらず、ガマリエルの周囲の艦隊だけである。
しかし、ツェーンに恐怖は無い。
――――彼女は元々、フェルミという名を持っていた。
イルエジータにかつて存在した人間の国家の王女であり、エミドの侵攻で王が死に、砲撃によって国土が廃れた事で、自分が犠牲になれば民は救われると、星空の帝王に身を捧げたのだ。
結果的にイルエジータは復興したものの、王国は滅び、かつての国民は彼女が戻る事を望んでいなかった...と、彼女は内心考えていた。
彼等には別のリーダーが生まれ、最早彼女を覚えている者は誰も居ないのだと。
悲観ともとれるその考えは、彼女から帰るべき場所と郷愁を奪い、冷酷さを増させていた。
『エアリアル、モルドレッドを前に出します』
モルドレッドが、前面の収束シールドを展開しながら前へと展開された。
エアリアルは四門の三連装レーザー砲を構え、アドアステラに向けて撃つ。
復活しているアドアステラのシールドに阻まれてはいるが、有効打ではある。
『その力、確かに恐ろしい....けれど! ...私は、私達はここを守り抜きます。...ヴァタスの女は強いのです』
ヴァタス王国。
かつて存在した国の名を継ぐ最後の王女。
彼女はツェーンとしてここに在るが、個人として恐れ、退かない理由はそれだけで充分なのだ。
『砲撃確認』
アドアステラの砲撃が左翼のモルドレッドのシールドに突き刺さり、しかし弾けずに逸れて奥のエアリアルのシールドに当たる。
エアリアルの方のシールドは貫通され、装甲に損傷を与える。
ダメージを受けたエアリアルは、破壊の衝撃で下方へ押し出された。
その穴を埋めるように、奥から別のエアリアル級戦艦が現れる。
『パシファイアー、シールド支援開始!』
ガマリエルの周囲に展開していたパシファイアー級支援型巡洋艦。
計四隻のそれが、損傷を受けたエアリアルとモルドレッドのシールドを回復する。
『パワーコアシンフォナイザーを使用する』
『了解、パワーコア波長パターン同調開始』
ガマリエルは他の二隻に比べて、特徴的な装備を持たない。
攻撃力も高くなく、打撃力も決定打もない。
防御が強いわけでもなく、電子戦装備耐性も無い。
速度もなく、機動性にも欠ける。
ただ、たった一つだけ。
たった一つだけの装備に、全てのエネルギーを使用するのだ。
『パワーコアのリンクを開始する』
『クロトゼム・ドライブに切り替え』
フィラメントを使いワープエネルギーを得る、クロトザクの機関。
それを搭載することで、エネルギーを全て使用しても航行は不可能では無くなる。
『全艦とのパワーコアリンク構築完了』
『パワーコア・シンフォナイザー起動!』
ガマリエルと接続された艦船のパワーコア、つまりはエネルギーを生み出す炉心が、外部からの増幅波を受けて一気に活性化する。
そうする事により、モルドレッドはシールドに、エアリアルは砲撃に、パシファイアーはシールド支援により多くのキャパシターを使用できるようになるのだ。
デメリットとしては、ガマリエルのパワーコアを消耗する事だが...
ここで使わずに、いつ使うのだ。
コバルトもツェーンも、そう判断していた。
『キャパシター安定、エアリアルの決戦モジュールをアクティブ化します』
エアリアルに搭載された決戦モジュールが作動し、砲撃の威力が遥かに増大する。
アドアステラのシールドに逸らされるのではなく、食い込めるまでに威力が上がったのだ。
砲撃がシールドを貫通し、装甲に穴を穿っていく。
『これなら...』
『アドアステラ、前部装甲の展開を確認、専用武装『ロードメイカー』であると思われます』
『モルドレッド、シールドのオーバーロード開始!』
だが、座して死を待つようであれば今ここにこの船は居ない。
アドアステラの前面から突き出した砲口に、膨大なエネルギーが収束する。
たった数秒のチャージで発射されたそれは、ただの一撃で前衛艦隊を撃滅した。
シールド強化を受けていたはずのモルドレッドが、バラバラになって離散する。
同じくシールドを失ったエアリアルも、艦列を維持出来ずに押し流される。
エネルギー干渉波と爆風によるものだ。
『こんな...状況報告っ!』
『モルドレッド、全艦パワーコアとのリンク消失、パシファイアーのうち二隻が干渉波でシールドトランスミッター使用不能。エアリアル、三十六隻中六隻がシールド残存、他シールド消失。シールドジェネレータに異常』
『シールドが無事なエアリアルとパシファイアーを離脱させてください、陣形変更、エアリアル密集隊形!』
前衛が崩れ、盾を失った。
しかし、ツェーンは退く気はない。
ツヴォルフのバイタルサインは途絶し、エルフは星系を離脱した。
ここで逃げれば、撤退中のエルフが後ろから追撃を受ける。
自分はどうなっても構わないが、仲間だけは守りたい。
それが彼女の託した願いだった。
『三隻ロスト』
『全ての砲艦はアドアステラ左舷シールド部に砲撃集中! バンカーバスター射出!』
『五隻ロスト』
アドアステラは、残った艦隊の砲撃を集中的に受けるが、キネス防御の光が輝き、シールドはどんどんとその強度を修復し始めていた。
『艦隊損耗率、99%を突破』
『ッ....コンパクトジャンプドライブ起動!』
ツェーンはガマリエルをアドアステラの眼前へと次元跳躍させ、そのシールドを最大出力でアドアステラのシールドへと擦り付ける。
シールド同士が干渉しあい、擬似的な中和状態になり消滅した。
そのままガマリエルはアドアステラにラムアタックを仕掛け、キネス防御を突き抜けた十二門のP.O.Dレーザーを艦橋に収束照射する。
『これが私の意地だ! 受け取れ!』
装甲を分解し、内部にレーザーが届くその一瞬。
旋回を終了したレーザー砲が、シールドの無くなったガマリエルを吹き飛ばした。
前面部の砲火力全てを受けたガマリエルは燃え落ちるようにして崩壊し、残骸となって慣性で遥か彼方へと流されていった。
障害を打ち破ったアドアステラはスラスターを起動し、ゲートへ向けて加速を続けるのであった。