満月を抱きしめて   作:岬すみれ

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RED ASH
私というニケについて。


 

『突然のお別れを許してね? でももう、時間がないの』

 

この声は……?

 

『もう、そんな顔しないで。大丈夫、自信を持って。貴女が昔から願ってたことじゃない。きっと上手くいくわ』

 

すりガラスの様に、薄らと人の形が見えた。

 

『ふふ、そうよ。貴女の力で、困っている人を沢っ山助けてあげないとね?』

 

というか、ここは何処だ? 自室で寝ていた筈なのに、辺りを見渡そうにも身体が動かない。

 

『じゃ、行くわね?………愛してるわ、私の最愛の──』

 

ちょっと待て! ここ何処!? あなた誰!?

 

意識は、ここで途切れた。

本当に何もかも分からずじまいだった。

 

けれど、どうしてだろう?最後に聞こえていたあの声は、不思議と安心できる声だった。

 

──起動シーケンス再起動。

身体的損傷、異常なし。

各種機能、異常なし。

 

機体名:ルミナスムーン、覚醒。

 

そうだ。そうだった。それが、私の名前。

 

「んぅ?……あ」

 

どうやら、無事に目覚めることができたらしい。

しかし、記憶の修復は未だ不完全。

さて、目が覚めたら美少女になって話をしよう。

 

この世界は『勝利の女神:NIKKE』というケツ……ゲフンゲフン! 背中で魅せるゲームの世界である。

かなり……いや、無茶苦茶に重いストーリーが展開され、プレイヤーの心を何度抉ってきたか分からない。

絶望。まさにこの世界にぴったりの言葉。

けれど、まだこの世界の人達には、絶望という言葉は似つかわしくない。

何故か? それは、彼女達が居るからである。

 

「そんな所にまた座り込んで、どうしたのかなー?」

「……ん?」

 

私は頭上から聞こえる声に目線を向けると、そこには白いショートヘアーが揺れていた。

 

「少佐」

「その呼び方はだーめ」

「……リリス」

「よし♪」

 

目の前には、リリーバイスの御尊顔があった。

 

「はぁ、前は顔を真っ赤にして可愛かったのに、随分ドライな反応になっちゃったなー」

 

不服そうに呟く彼女は、私の頬をつんと突き始めた。

 

「何度も貴女がからかってきたおかげで、慣れました」

「そっかぁ。じゃあ、また別の方法を考えないとなー」

 

相変わらずのその姿に、嘆息をもらす。

 

「時間は大丈夫なんですか? あの、指揮官を……」

「ううん、大丈夫じゃないよ? でも、君のほっぺを突くことだって、とっても大切なことなんだよ?」

「……そうですか」

 

表裏のない屈託のない笑顔、誰とでも話せるその人望。もう何度も会話を交わしているが、やはり目の前のこの人は本当にリリーバイスなんだなと、私はその事実を毎度脳に焼き付ける。

 

「ねぇ、君ってブリーフィング前にいつもここにいるけど、何してるの?」

 

一瞬、心臓が跳ねたが、すぐに呼吸を整える。

 

「まぁ、精神統一みたいなものです。ほら、調子が良かった時と同じ行動を取ることで、次回も同じレベルのパフォーマンスを発揮できる、みたいな感じで」

「へぇ、今度私もやってみよっかなー」

「リリスの場合はそんなことしなくても強いので、もっと他のことに時間を割いた方がいいですよ」

「もう、そんなことないってー!」と軽口を叩けるほどに、今の所、私達の関係はそれなりに良好だ。

 

「さてと、そろそろ指揮官を呼んで来なくっちゃ! じゃ、また後でね、ルナ!」

「はい。またあとで」

 

リリーバイスが去った後の部屋は、一段と静まった。

さて、現状把握だ。知っての通り、この世界はまだリリーバイスが生きており、ということはゴッデス部隊も勿論全員健在。なんとも嬉しいかぎりである。

そして私は『フェアリーテイルモデル』と呼ばれる高性能のニケであるのだが、私の場合は少々生まれ方が特殊らしい。

 

「あっ、やば」

 

記録をまとめていたら、集合の時間間近になってしまった。

 

「仕方ない、歩きながらでも進めておくか」

 

しかし、まぁ……過酷な世界に生まれたものだ。これから起きるあらゆる惨劇を考えると、胃が捩れそうだ。

けれど私は、この先に起きる事を知っている。ということは、予め対策を打つこともできる。しかし、過度な物語への干渉のせいで生まれてしまう犠牲もあり得るため、干渉は慎重に行わなければならない。

なんとも難しい問題だ。未来を知ってても、そう簡単に解決できるとは限らないと、この世界にきて実感した。

 

「やれることをやる。ただ、それだけ」

 

そうだ。私に出来ること、私にしか出来ないこと。私という存在は一人しかいないのだ。全てを簡単に救えるなどと、甘えた考えは捨てた方がいい。

 

「やってやる。いや、私がやらないといけないんだ」

 

私は誓った。必ずや絶望の渦に飲まれた少女達を救い出すと。

その為には準備が必要だ。ありとあらゆるフラグを、本筋の話と辻褄が合うように、良い方向に傾ける。

当然、簡単なことではない。成功する確証もないし、そもそも私が簡単に死んでしまうかもしれない。

この世界で本当の意味で救いたいのなら、時には指を咥えて見捨てる選択肢も必要になってくる。

けど、とりあえず今必要なことは、次回の戦闘を生き延びることだろう。

 

「さて、そろそろか……」

 

休んでいる暇はない。すぐに次の予定が控えている。

私は小走りで目的地に急いだ。

 

とある一室の前に立つが、何度行ってもこの瞬間は鼓動が速くなる。何せ、この扉の向こうに、人類の希望となる彼女達がいるからだ。

 

「失礼します」

 

意を決して扉を開けると、そこには六人の女神と一人の男性がいた。

そして奥の方では、リリスよりも白い髪をした少女が、赤髪の女性にヘッドロックをかまされていた。

 

「……プロレ」

「違います」

 

私が言い切る前に、白髪の少女──スノーホワイトがそう言い切る。

 

「アッハハハ! これで全員コンプリートだな、スノー?」

「何も嬉しくありません……」

 

赤髪の女性、レッドフードがちょっかいを出すと、それに対してスノーホワイトが頬を膨らます。

 

「聞いてください、ルナ。レッドフードがいじめてきます」

「だーかーらー! あたしが可愛いスノーをいじめるわけないだろー? なぁ、ルナ?」

「どうだか。ヘッドロックされてる本人に聞いてみればいいんじゃないですか?」

「おっ、それもそうだな。ほーら、スノー? あたしが可愛いスノーのことを、いじめるわけないよなー?」

「…………」

 

スノーはむすっと頬を膨らませ、レッドフードの方を見ようとはしないが、体はガッチリとレッドフードに抱き抱えられている。

その様子を微笑ましく見ると同時に、これから起きることを考えると頭が痛い。

 

「随分と遅かったな、ルナ」

 

私の前方に座るグラサンを掛けた男性。彼こそ、このゴッデス部隊の指揮官である。

 

「すみません。少し機能の微調整を……」

 

「いや、別に構わない。ただでさえお前は多忙なんだ。毎回毎回、私達のブリーフィングに参加する必要はないと思うが?」

「いえ、ゴッデス部隊を支える者として、欠席するわけにはいきません」

「そうか、相変わらず律儀だな」

「そうそう、指揮官も見習った方がいいですよ〜?」

 

リリーバイスの一言に、指揮官は分かりやすく咳払いをする。

 

「まぁいい。では、全員揃っているか?」

 

私も適当に座ろうとした瞬間、リリーバイスが私の腕を掴み、彼女の隣に無理矢理座らされた。

 

「……はぁ」

 

両者無言。私に選択肢など存在しなかった。

 

「紅蓮」

 

その声に、紅蓮は無言で軽く手を挙げる。

 

「ラプンツェル」

「はい、指揮官」

 

「ドロシー」

「はい」

 

「リリーバイス」

「は〜い」

 

「ルミナスムーン」

「……はい」

 

「よし。では、ブリーフィングを始め……どうしてそんなに離れて座っているんだ? 仲が悪いのか?」

 

指揮官の視線を横にずらし、レッドフードを見る。

 

「仲よくなる為には飲み会が必要だよな。前にいつやったのか、もう覚えてないぞ」

「?? 一週間前にやったでしょ?」

 

リリーバイスの言葉通り、一週間前に飲み会は確かに行われたが、はっきり言ってあの飲み会は思い出したくもない。

 

「んぁ?」

「いつも酔いつぶれるまで飲んでいるのですから、覚えているはずがないでしょう」

「ん、う〜ん………いや〜最近、ちょっと飲むだけでブッ潰れちまうんだよな…」

「レッドフードはお金を払いたくなくて、寝たフリしてるのかと思いました」

「全く。貴女の悪酔いに付き合わされる私とスノーの気持ちを考えてみてください」

「わ、悪いとは思ってるけどよ〜……てか、スノー。あたしをなんだと思ってるんだ?」

「無銭飲食をして捕まった事があるって……」

「それは……昔の過ちってヤツさ……」

「静かに。そろそろブリーフィングをさせてくれ」

 

指揮官の一言で、騒がしかったブリーフィングルームが静まる。

 

「よし、それでは。ゴッデス部隊のブリーフィングを始める」

「…………」

「あの、どうかしました?」

「いや、やはり部隊の名前が気に入らんと思ってな……『女神』なんて、私だけ仲間はずれみたいだと思わないか、ルナ?」

「いや、知りませんけど……私に聞いてどうするんですか?」

「お前はこの中では、唯一ゴッデス部隊ではないからな」

 

そんな理由? と口に出そうとするより先に、リリーバイスが口を開く。

 

「指揮官、ブリーフィングはいつ始まるんですか?」

「……始めよう」

 

こんな調子の部隊が人類の希望を背負ってるのだと一般人が知ったら、どんな反応をするのだろう?

まぁいい。にしても、遂に始まった。始まってしまった。希望と絶望が入り混じる『RED ASH』が。

 

ゴッデス部隊のブリーフィングは極めて重要だ。この場での決断で、どれほどの人類が影響を受けるか計り知れない。

だと言うのに……

 

「お〜ほほほほっ! 当然の結果ですわ! 庶民の皆様には理解できないでしょうけど!」

「レッドフード、ドロシーのことお嬢様って言うのはやめた方がいいって、何回も……」

 

レッドフードがまたふざけた。いや、言い出しっぺは指揮官なのだが、ドロシーのことをまたいじり始めている。

 

「はぁ……」

 

重要な集まりの筈なのに、学生の駄弁りの様に聞こえてしまうのは何故だろう? そんな時間がありながらも、ブリーフィングは本題に入っていく。

 

「我々は戦線に投入されて以来、連戦連勝している。……だが、これは私たちの部隊に限った話だ。我々だけがどれほど活躍しても、全体的に見ればあまり大きな意味はない」

 

ゴッデス部隊の力は圧倒的だ。それこそ、彼女達に任せておけば大丈夫だと思わせる程に。しかし、いくらゴッデス部隊が強いと理解していても、彼女達だけではラプチャー相手では、いずれ限界がきてしまうだろう。

他にも物資の枯渇、ラプチャーの増加、人類とラプチャーの戦力差は一向に縮まる気配を見せない。

 

「降伏するという話はどうなりました?」

「言葉が通じない以上、通用するはずがないだろう」

「私が提案した、白旗を振ろうって提案は?」

「当然、持ち出してもない」

「ひど〜い」

 

リリーバイスの言葉通り、降伏という意見も出ている。人類は薄々感じているのだ、ラプチャーには勝てないということを。このままラプチャーに全面戦争を仕かけた所で、ジリ貧になるのは人類だ。

だが、完全に万事休すというわけではない。まだ宇宙にいるラプチャーの親玉──クイーンを倒すという方法があるわけだが……。

 

宇宙に行くための軌道エレベータには、およそ20万ほどのラプチャーがいる。制空権も失われ、ゴッデス部隊の支援は僅か数百の援軍のみ。

 

「……勝算は?」

 

分かっている。

 

「さあな。結果は勝つか負けるかの二つに一つだろう?」

 

どれだけ頑張った所で、私達が勝てないということ。

 

「生きて帰る確率はどれくらいでしょうか」

 

だが、分かった所でどうだと言うのだ。

 

「さぁな。生きるか死ぬかどちらかだから、50%と言うところか?」

 

嫌だとか、死にたくないとか、最早そういう次元ではない。

 

「受けられる支援は量産機の皆さんだけですか?」

 

やらなければいけない。

 

「さあな。秘密兵器ぐらいは出るかもしれないぞ」

 

最善を尽くさなければならない。

 

「ハッキリ言えることはねえのかよ?」

 

全ての責任を背負う覚悟がなければ、彼女たちが笑う日は来ない。

 

「私達が勝つ」

 

今は、そうだとしても。いつの日か……

 

「よし、やるよ。あたしの最後の戦いにはちょうどいい」

「……?」

 

レッドフードの言葉に、紅蓮が首を傾げる。

 

「あぁ、そっか。新人のセンセイは知らないんだったな?」

 

そう言ってレッドフードが瞼を閉じて再度開くと、その瞳は赤くなる。

レッドフードは侵食を受けている。それは、この物語において最重要事項の一つ。

そして彼女達が予想にもしていない隠し球を敵が持っているということ、私達はその隠し球に勝つことは不可能だということ。それを彼女達が知る由もない。

 

「では、解散する。早朝から動く予定だ。今日は十分に睡眠をとってくれ」

「お先に失礼します」

 

スノーホワイトが真っ先に立ち上がり、早足で出ていく。理由は勿論、レッドフードだ。

 

「では、私も……」

 

これ以上ここにいる意味はないと悟り、私も席を立つ。

 

「少しいいか、ルナ」

 

背後から指揮官に呼び止められる。

 

「何でしょうか?」

「いや、あまり時間は取らせない。お前の研究についてだ」

「……それが、どうかしましたか?」

「順調かどうかを聞きたい。それこそ、実戦投入できるかどうかだ」

「研究自体は特に問題なく進んでいます。けど、安定した運用には、まだ時間がかかる可能性があります」

「……そうか、すまない。これ以上は聞かないさ」

「ええ、なにせ取引ですからね?」

「そうだ。だが、私の血液など本当に利用価値があるのか?」

「まだ秘密です。そう、まだ」

 

人差し指を口に当て、私は部屋を後にする。

 

私には休んでいる暇はない。駆け足で、研究所として使っている部屋の前まで行き、ロックを解錠する。この研究は絶対に誰にも渡してはいけない。指紋、顔認証、静脈認証、声紋認証、何重にも重なったセキュリティを解除し、やっと部屋に入る。

 

「ふぅ。いよいよか……」

 

机の上に広がっている設計図、アンプルに入っている赤い液体。この日の為に何日も何日も、準備に準備を重ねてきた。

あとはその日を待つだけ。まだ私が死ぬわけにはいかない。

 

「……保険なんて、100あっても足りないくらいだよねぇ」

 

今の私の目標、それは量産型ニケの犠牲を減らすこと。今後の物語において、彼女達は然程重要な意味は持たない。しかし、それでも彼女達は見捨てていい命にはならない。

 

「フゥ──ハァ──おっと……」

 

大きく深呼吸をしようとして、少しよろめいてしまう。

 

「はぁ、やっぱり完全に扱えるには至らないか…」

 

鏡に映る私にそう問いかけ、目の前に映る金色の瞳を瞑る。

 

そして、ゆっくりと開眼する。

 

その瞳は──赤色だ。

 

さて、この状況においても説明しなければならない。

私の瞳はさっきのレッドフードと同じ。そう、私は侵食を受けている。

だが私の場合、侵食を受けているというか、あえてラプチャーのコードを身体に取り込んでいると言った方がいいかもしれない。

この不思議な状況を生み出しているのは、私の作ったとされる科学者が仕込んだシステムらしく、侵食による凶暴化を制御し、自らの力に変換できるというシステムらしいが、はっきり言って未知数。

そもそもニケという存在において、侵食は最も警戒すべき攻撃。それを自らの力に変えるなぞ、自分でも理解が追いつかない。

今の所異常はないが、少しでも異変が起きた場合の自壊機能も取り付けた。

 

「研究も、一人じゃ限界があるか……」

 

いっそ研究専用のクローンでも作ってみるか? いや、今はそんな暇はない。

 

「使えるものは何だって使う」

 

私だけのこのシステムを、ありがたく利用させてもらおう。

そして、これから起こることに対しても、対策をしていかなければ……

───

「あっ、スノー」

「……ルナ」

 

廊下に出ると、スノーと鉢合わせた。その様子から、恐らくレッドフードと一幕あったのだろう。

 

「元気ないけど、大丈夫?」

「……」

 

スノーは顔を伏せ、答えようとしない。

 

「レッドフードのこと?」

「言いたくありません……」

「それ、実質言ってるようなものだよ?」

 

口を固く閉じ、言葉を発したくないというスノーの意思表示を受け取り、ため息を吐く。

 

「おいで」

 

スノーの了承を得ずに私は彼女の手を引き、来た道を戻った。

 

───

 

「はい、どーぞ」

「ありがとうございます……」

 

飲み物を注ぎ、スノーと対面する形で座る。

 

「さて、お話しよっか、スノー?」

「……ルナ、怖いです」

 

スノーの目は、未だ濁っている。

 

「あっ、ごめんごめん。別に責める訳じゃないからね? ただ、君のメンタル的問題を考えると、ここで吐き出させるものは吐き出した方がいいかなって」

「……別に、吐き出すことなんて」

「そうかい? スノーは隠し事をすると、目を右側に逸らしちゃうことを自覚してないんだね?」

 

これはブラフだが私の言葉に、スノーの肩が跳ねた。

 

「……私に話しづらいことかい?」

 

私に癖を指摘され、ますますスノーは口を閉じている。

 

「しょーがないなぁ……」

 

そう言って徐ろに席を立つと、スノーの背後から抱きしめ、頭を撫でる。

 

「子供扱い、しないでください」

 

ただ黙ってスノーに抱きつく。しばらく時間が過ぎるが、スノーは私を拒絶することはない。

 

「辛い問題だよね。身近にいた家族の様な人が、こうも簡単に居なくなっちゃうかもしれない。しかも、あのお調子者のレッドフードがだからねぇ……」

 

スノーは未だ言葉を発さない。

 

「ねぇ、スノー? レッドフードは嫌い?」

「……いいえ」

「レッドフードに消えて欲しい?」

「……嫌です」

「じゃあ、今レッドフードにスノーが出来ることは何だと思う?」

「……分かりません」

 

その言葉に、私は思わず笑みが溢れる。

 

「何故、笑うのですか……」

 

スノーは頬を膨らませ、私を睨みつける。

 

「ごめんごめん。やっぱり君は可愛らしいなって」

 

その言葉で、彼女の白い顔が赤く染まる。

 

「もう! 子供扱いしないでくださいってば!」

 

ポカポカと私の腕を叩くスノーが愛おしい。

 

「ごめんって! ちょ、叩かないで……」

 

私の制止も無駄のようで、ここは甘んじて受けることにした。

 

「はぁ、悪かった」

「次は許しません!」

 

未だ頬の膨らみが直らないスノーを何とか宥め、改めてスノーに向き合う。

 

「ねぇ、スノー? 今君がレッドフードに出来ることを教えてあげよう」

 

私のこの言葉は、スノーの注目を惹くには十分だった。

 

「それはね、一緒に居てやることだ」

「……え?」

 

一体スノーはどんな想像をしていたのだろう? でも、私の言葉が決してスノーが望む答えではないことには間違いなかった。

 

「難しく考える必要はない。ただいつものように、レッドフードの冗談に振り回されて、困る日常を過ごしてほしい」

「ま、待ってください!」

 

私の言葉を、スノーは慌てて止める。

 

「そ、それじゃあレッドフードをただ見殺しにするだけじゃないですか!」

 

確かに、このまま同じことを繰り返していたら、いずれレッドフードは侵食に飲まれる。いや、まずそれ以前に……。

 

「スノー、勘違いしないでね? 私は決してレッドフードを見捨てるなんて考えはないから」

 

まだなのだ。辻褄を合わせるためには、ここで答えを言ってはいけない。

 

「私が考えたレッドフードの対処法は、まだ未知数なことが多過ぎる。だから、まだ君には教えられない」

 

私は膝を曲げて、スノーに目線を合わせる。

 

「だからさ、スノーにはレッドフードの不安を少しでも取り除く手伝いをしてもらいたい。このお願いはね、君にしか頼めないことなんだ」

「……私にしか?」

「そう。このお願いは、君が一番適してると思ったからね」

「……でも」

「ほーら、不安そうな顔しないの! 大丈夫。いつかきっと、スノーにも協力してもらう日が来るかもしれないから。その為にも、私達は生きないとね?」

 

ゆっくりと微笑み、私は立ち上がるとスノーに背を向ける。

 

「ほら、明日から忙しいんだから、スノーも少しは休んどいたら?」

 

彼女の返答も待たずに、私は部屋を出る。伝えたいことは殆ど言えたはずだ。けど、これ以上深掘りさせるのも面倒なことになる。スノーには悪いが、無理矢理退出させてもらった。

 

「いよいよか……」

 

ここから始まるのだ。生き地獄のような戦闘の毎日が。

全ては忠誠を誓ったゴッデスの為。

 

私は生きて、必ず彼女達を救う。




お試しのような内容ですので、かなり時間をかけて構成を練るつもりです。
独自のシステムについては、また次回。
ニケは色々設定が多すぎてムズイ……
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