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奇襲
レーダーで周辺を探り、スコープ越しの目視による確認で、改めて敵がいなくなったことを確認する。
「異常なし」
スコープから目線を離して、ようやく一息ついた。あれからというもの、指揮官、リリスという支柱を失い、紅蓮やスノーホワイトの思考転換が発生したゴッデス部隊だったが、新リーダーであるドロシーの元で、現状は問題なく作戦は実行できていた。
「スノー。どうだった?」
もう動かない量産型のニケを、スノーホワイトはジッと眺めていた。
「進行しすぎている。どうしようもなかった」
スノーホワイトの銃口からは、硝煙が上がっていた。
「そっか……認識票は?」
「回収した」
「なら、行こう」
二人並んで歩くと、向こうからドロシー達が見えてきた。
「旅立たれたのですか?」
「……あぁ」
「名前は何と?」
「……聞けなかった。話せるような状況ではなかったから。認識票にはケイトと書かれていた。それが本人の名前かどうかは分からないが」
作戦自体は順調だった。資源の面においても、史実より潤沢であることに間違いはないが、それでも、犠牲を一人も出さないということは不可能だ。
「……恐ろしいですね、侵食」
「……はい。自我を奪う恐ろしい武器です」
「あの者でさえ乗り越えられなかったのだから」
「……」
沈黙が走る。
「祈りを、捧げてきます」
「やめておきなさい。君の死と向き合う気持ちは分かるが、向き合い続けるのも、君にとっても酷なはずだ。いずれ、死によってもたらされる沈黙が移ってしまうよ」
「それでもです。それが私の役目ですから」
そう言って、ラプンツェルは私達が歩いてきた方向へと向かって行った。
「やれやれ、頑固だのう」
「それがラプンツェルの存在意義になるなら、私達が口を出す権利はないんじゃない?」
死に行く者に優先順位をつけたくない。そんな思いが、ラプンツェルにはあるのだろう。そして、ラプンツェル自身にとっても。
「犠牲者の数は平均的、襲撃回数もここ最近は圧倒的に減少傾向にある。このままいけば、無事に作戦を終わらせることができる」
「ああ、この二ヶ月がこれほど長く感じられるとはな。終わりが近づくというのは、こういう気持ちなのかね」
「ええ、嘘みたいです。全てが報われる終わりまであと少しです。それまで頑張りましょう」
「私は監視所に戻って警戒を続ける」
スノーホワイトは武器を持ち直し、そう呟いた。
「またですか?少しお休みになられては?他のニケのみなさんもいますし、休んでください」
「いや。今回の襲撃も事前に気づけたから、この程度で済んだんだ。警戒をするに越したことはない」
そう言って譲らないスノーホワイトは、監視所へと向かっていった。
「やれやれ。性格が変わってから、よりストイックになっちゃって」
「それは、ルナ。貴女もです。聞けば、今回の襲撃の時も、また量産型の監視に同行したと聞きます」
「……襲撃は少なくなったと言っても、相手するラプチャー達は、量産型達だけでははっきり言って苦戦を強いられる面子だった。実際、私が同行しなければ、今よりも犠牲は増えていたかもしれない」
「それは……そうかもしれませんが、このままでは貴女が壊れてしまいます」
「私の身体は、私が一番良く知っている。ただのパーツ交換で済み、精神的苦痛を比較的感じない身体なら、私が休んでいる訳にはいかない」
そう言って私は武器を拾い、ドロシーの横を通り過ぎる。
「どこへ行くつもりですか?」
「スノーのとこ。あの子にも休みをあげるために、いい案がある」
後ろで聞こえる声に耳を貸さず、スノーホワイトが通って行った道へと進んでいった。
───
「来ちゃった」
「……」
私を見つめるスノーホワイトの目は何処か……いや、間違いなく呆れていた。
「何故、お前がいる」
「そりゃ、スノーの負担を減らすため。ダメかな?」
「私一人でも、問題なくこなせる」
「まあまあ、人の親切は受け取っておくべきだよ?」
そう言ってスノーホワイトの隣に付くと、横からため息が聞こえた。
「ドロシーから、散々休めと言われていたはずだが?」
「それは、スノーもでしょ?」
「お前は偵察だけでなく、救護部隊への指示、資源の管理と、度を越していると聞いているが?」
「仕方ないでしょ。私がやらなきゃいけないことだから」
ここまで多忙なんて言葉じゃ言い表せない程の業務を同時並行で行なっているのに、私の身体は問題なく動いている。最初はこういう体質なのだと割り切っていたが、ここ最近、どうもその考えも間違っている様に感じてきた。
「量産型に頼めばいい。お前の頼みなら、喜んで聞くんじゃないか?」
「私が管理する方が確実。そう結論付けてあるから、それはないかな」
両者に沈黙が生まれる。別の話題を話そうにも、特に突出した話題もここ最近ない。
「そうだ。聞いてよスノー。ここから少し遠いけど、廃棄された良い研究所を見つけたんだよね。全てが終わったらさ、そこでしばらく──」
「お前が黙っていることを全て話してくれたら、乗ってやってもいい」
私の言葉に被せるようにして、スノーホワイトは喋った。
「どうしても……かな?」
「それが条件だったはずだ」
スノーホワイトは、はっきりと言った。
「こんな事、君に言うのは変かもしれないけど、ドロシー達がこんな私を受け入れてくれると思う?」
「さあな。それはお前の技量次第だろう」
「はぁ、相変わらず容赦ないなぁ……励ましとかしてくれないの?」
「……」
私の発言に対して、スノーホワイトの返答はない。
「……手厳しいな」
これ以上、もう望めることはないと。私も自分の愛銃に目を向けた時だった。
「……待つ」
「え?」
「お前が全てを話してくれると信じている。だから、私はお前を一方的に攻撃することはしない」
そう言うと、スノーホワイトは再び前へと視線を向けた。
信じる。そうだ。リリスだって、レッドフードだって、仲間を信じてくれたから、自分を打ち明けてくれた。なら、私が怖気付いてどうする。
「スノー」
「……」
「ありがとう」
「……ふん」
先程までとは違い、少しだけ身体が軽くなった気がした。
「あっ、クッキー食べる?」
「!!……ああ」
この後、3分の2は持っていかれた。こういう所は変わらないなと、目の前で頬張っているスノーホワイトを見て、笑った。
───
「……」
私達の間に会話はない。
「……」
かれこれ、3時間はこの場での監視を続けていた。
すると、隣からお腹の虫が鳴った。
「ルナ。クッキーはもうないのか?」
「ない。全部食べた。我慢して」
明らかにテンションが下がったスノーホワイトと、しばらく監視を続けていると、下から見覚えのある姿が見えた。
「おっ。ほら、スノー。救世主だ」
「二人とも!そろそろ下りてきて食べませんかー?」
下から、ラプンツェルの声が聞こえた。
「行ってきなよ」
「だが、ここを動く訳には……」
「私がスノーの分も引き受けるから、行っていいよ。お腹空いたんでしょ?」
そう言うと、スノーホワイトは「そうか」と口調は落ち着いているが、露骨にテンションが上がり、監視所を降りていった。
「さて……と」
弾薬を詰め込み直し、スコープを覗き続ける。ラプチャーの反応は、未だにない。
「……」
だが、奴らは確実に来る。そして、その狙いは……
ピコン
『ルナ。貴女も降りてきて一緒に……』
「ドロシー!!戦闘体制を取れ!ラプチャーだ!!」
『え……?』
「距離はおよそ8000!砲撃型多数あり、食糧倉庫を狙ってる!」
先程まで静かだったセンサーが、一斉に鳴り響いた。
『ッ!?そちらから目視はできますか?』
「いや、まだ目視はできない。ドロシー、今すぐ量産型を退避させろ!多数の部隊では、余計な犠牲を生む!奴らは、鳴りを潜めていただけだ!」
ここ最近の緩い襲撃は全部、こちらの油断を誘うためのものだった。
『りょ、了解です!ラプンツェル、頼めますか?』
穏やかだった時間が、一気に緊迫した場面へと様変わりしている。
監視所を一度降りて、ドロシー達と合流する。
「私と紅蓮、ルミナスムーンは接近して、一気に叩きます!スノーホワイトは、後ろから取りこぼしたラプチャーを狙ってください!」
「了解」
この間、距離は7000mに縮んでいた。
「ラプンツェル!君は食糧倉庫を守って!量産型全員と協力すれば対処できるはずだ!」
「わ、分かりました!」
距離、6700。そして、この反応は……
「不味い……ドロシー!!先行するから、援護できる!?」
「え?ま、待ってください!単独での行動は危険だと……」
「やるしかないんだ!4段階で迎え撃つ。初めに私。次にドロシーと紅蓮。次にスノーホワイト。最終防衛ラインにラプンツェルと量産型。頼むね!」
「待て!ル──」
制止を振り切り、私は飛び出した。独壇場。私が最も経験してきた場面。上等だ。
「いたッ!」
遠くからでも、嫌と言うほど見える砲撃部隊の数々。そして、その真ん中で指揮を取るように存在しているラプチャーがいた。
「やっぱり、お前かっ……!!」
この世界で私の邪魔をするように現れる人型のラプチャー。
「お前にも名前が付けられたんだっけ?」
そう言って、先制攻撃を仕掛けるため、刀を抜刀した。
私を殺すため、砲撃の雨が降り注ぐ。それを掻い潜り、ラプチャーの腕に斬りかかった。
目の前で、雄叫びの様な声を上げるソレの名前は──
ヒューマンエラー
「くそ……見るたびに武装を増やしやがって」
2回目の接敵の時には見なかった、肩部に新たに2本の腕が生えており、その手には近接のためのブレードが握られていた。
「お前はお呼びじゃないんだよ!!」
ブレードがぶつかり合い、私は弾かれたが、素早くショットガンに持ち替え、二つの腕のうち一対を粉砕した。
「ぐ、あ……」
しかし、砲撃の一部が掠り、私も左腕を破損した。
「くっ、そがぁ……」
歯を食いしばり、右腕で握ったライフルで、もう一対の腕も破壊する。これで、近接の武器は失われた。だが、無力化したわけではない。ヒューマンエラーはすぐさま、ビーム砲を構えた。
「……U.N.I.S.O.Nコードッ!!」
地面に手をつき、タール状の壁がビーム砲の一撃を防ぐ。その壁を殴り飛ばすと、鋭い破片状となり、ヒューマンエラーの装甲を切り裂いていく。
その間、背後に回り込み、首と思える部分に刃を当てた。
「終わりだ……」
再起動する前に、私は奴の首を切断した。
「うっ……お゛えぇ」
激しい立ち眩みと共に、私は赤い液体を吐いた。ここ最近の連続使用の影響が?
「まだ……だ」
目の前まで迫った砲撃部隊に対して、私は弾丸を浴びせたが、さほどの損害にはならない。
「全部……コイツのせいだ」
私は残骸となったヒューマンエラーを蹴飛ばして、砲撃部隊に、再度突撃を試みようとした。
『全く。お前を回収する身にもなってほしいものだな』
瞬間。目の前のラプチャーが崩れた。
「ああ。君の無鉄砲さには呆れを通り越して、感心するよ」
白い刃が装甲を切断する。
「ええ、全くです。リーダーの指示を聞く耳は持たないのでしょうか?」
私を支える女神が、そう愚痴をこぼした。
「そっちにラプチャー達は行ってない?」
「ええ、貴女が標的になってくれたおかげで。こんな時でも、他人の心配ですか?」
「そうだけど、悪い?」
「……」
しばらくすると、紅蓮が戻ってくる。
「ルナ。自己犠牲のその精神は確かに感心するが、君が消えて、悲しむ者がいることを忘れてないかい?」
「……」
「貴女だって、私達の仲間なんです。だから、私達を頼ってください」
「……うん。ごめん」
ドロシーの手から離れ、武器を持ち直すが、無理矢理座らせられる。
「ここからは、私達が引き受けます。貴女は休んでいてください。スノーホワイトは援護をお願いします」
『了解。それとルナ。後で話がある』
「うぇぇ……」
「自業自得です。行きますよ、紅蓮」
「ああ。帰ったら私も聞いてみるとするかね」
そう言って、二人は飛び出していった。
『ラプンツェルが向かっているはずだ。そこで大人しくしてろ』
「え?しょ、食糧倉庫は?」
『量産型に任せても問題ないと、ドロシーは判断した。それよりも、お前の状態の方が深刻だということなんだろう』
向こうで紅蓮とドロシーは、まさに蹂躙と言っていい状態だった。
「ルミナスムーン!大丈夫ですか!?……ッ!?なんて無茶を!」
ラプンツェルに身体を支えられながら、私は撤退を始めた。
「ごめん。無理はしないって約束してたのに、私は結局やっちゃうみたい」
「済んだことを責めても仕方ありません。ですけど、貴女は一人じゃないんです。全部一人でやるなんて考えはやめてください」
「うん。ごめんなさい」
腕を支えられながら、私の意識は少しずつ落ちていった。
───
『状況終了』
スノーホワイトの言う通り、既に砲撃部隊は鉄屑の山と化していた。
「まだ距離があったから良かったですが、もう少し気づくのが遅れていたらと思うと、恐ろしいです」
「そこは感謝しないとだな。まぁ、あの特攻は感心しないが」
「それに、あの焦りようです。一度ルナには話を聞かないといけないかもしれませんね」
「ああ。彼女の悩みを受け入れるのも、私達の仕事であろう」
残骸の山の中を、二人は素早く撤退した。
こうして、ラプチャーによる奇襲攻撃はほとんど被害を出さずに終結した。
原作キャラの口調は合ってる?
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問題なし
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少し違う
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全然違う