満月を抱きしめて   作:岬すみれ

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落ちる翼の為に

 

『は、初めてまして! ピナと申します!』

 

深々とゴッデスの面々にピナが頭を下げていた時の記憶は新しい。しかし、ピナは私の思惑通り、ゴッデス部隊にすぐに馴染んでくれた。彼女を通じて、量産型部隊およびゴッデス部隊との関係もより深まることができた。

 

「ゴッデスには馴染んでくれた?」

「はい! ドロシー様が色々と教えてくれて!」

 

ドロシーに関しても、ピナという重要な糸を結べたおかげで、精神的に安定感を取り戻したように見えた。

 

順調の一言。ここまで上手くいきすぎて、後が怖いと思うほどに。

 

「まぁ、全く安心は出来ないけどね」

 

相変わらず予断が許されない現状に頭を悩ませるが、思い悩むような時間はない。 

 

「あの、大丈夫ですか?」 

 

ピナは、私の顔を心配そうに覗き込んだ。

 

「いや……ちょっと、今後の未来のことでね」

「にわかには信じ難いですけど、やっぱり未来が見えているんですね」

 

ちなみにピナは、私が未来を見えていることをドロシーから聞いたようだった。

 

「うん。はぁ……少しでも間違えれば、この場所は簡単に地獄に変わってしまう。毎回毎回、この時になるとテンションがおかしくなりそうだ」

「ルナ様でも、そんなことを思うんですね」

「私を何か殺戮ロボットか何かと勘違いしてる?」

 

失礼な。人一倍、喜怒哀楽だって兼ね備えている。

 

「私達の部隊じゃ、ルナ様はいつも何を考えているのか分からない不気味な人って言われていますよ?」

 

えっ、そうなの? まぁ、確かに私のシステムの都合上、戦績は隠してるけど……なんか地味に傷ついた。

 

「でも、実際話してみると話しやすいですし、やっぱり人は見かけによらないですね。今の性格を全面に出せば、きっと誤解も解けますよ!」

「そう、か。まあ、考えておくよ」

「はい! あっ、なんなら私が呼びましょうか? ルナ様と話してみたいって子は何人かいるんですよ」

 

やばい。なんかすごい目の前のピナが眩しく感じる。これが若気の至りってやつ?

 

「まあ、それは全て終わった後でね。さてと、今日呼び出したのは君の未来についてだけど……」

「ああ、私が侵食を受けちゃうっていう話ですよね?」

 

ピナには事前に、自分の顛末を粗方話しておいてある。しかし、何故目の前の彼女はこうも平然としていられるのだろう?

 

「……怖くないの?」

「怖いに決まってます。でも、私は最期までゴッデス部隊と共に戦う覚悟はできています」

 

ピナははっきりとそう言った。 

 

「……全く」

 

この前まで、私は恐らくピナの考えの方に立っていた。しかし、こうも自己犠牲というのは後味を悪くするのだと、改めて気付かされた。

 

「確実な結末を知っていて、何も対策しないなんてそんな馬鹿なことがあるか」 

 

私は立ち上がり、ピナの額を突いた。

 

「うっ……! 痛いじゃないですか」

「君が死んだら、悲しむ人がいるの。だから、死なせる訳にはいかない」

 

ふと目線を下に向けると、ピナがいつも首に掛けているネックレスが目に入った。

 

「ピナ。そのネックレス、少し貸してくれない?悪いようにはしないからさ」

「え? いいですけど……一体何を」

 

疑問に感じていながらも、ピナは私にネックレスを渡した。

 

「秘密。君には生きて貰わないといけないから、その対策ってとこかな」

「わ、分かりました。あの、あんまり無理はしないでくださいね?」

「大丈夫。無理をしたらスノー達にしばかれるのを身をもって体験してるから」

 

あれは酷かった。下手なラプチャーの攻撃よりも効いた気がした。

 

「そ、それじゃあ私、ドロシー様の所に行ってきますね! ルナ様も落ち着いたら遊びに来てください!」

「うん。それじゃあね」

 

ピナはそう言って、部屋から出ていった。

 

「さて、頑張らないと」

 

本当なら、私がピナ達にずっと同行できれば良いが、そうも言ってられない。例のラプチャーの存在もある。だから、自衛できる能力をピナにも与えた方が良いと考えた。

 

「はぁ……胃が捩れそうだ」

 

時間は多くあるようで短い。不安はいくらでも思い浮かべられるが、ひとまずそれを振り払い、私は装備開発に着手した。

 

───

 

アークガーディアン作戦が開始してから、20日間が経過した。目立った襲撃などなく、平和そのものだったが、それも想定済みだ。

 

「時間は多くあった。それでも……」

 

新装備開発にも手を出して、例の計画も順調。史実通りのゴッデスはただ生存の為だけに生き残っていたと思うと、私達は相当有利な立場にいるはずだった。しかし、考えれば考えるほど、不安因子がいくつも浮かんでくる。

 

「ルナ。そろそろブリーフィングですよ?」

「うん。今行くよ」

 

しかし、時間は待ってくれない。ラプンツェルに呼ばれ、必要な物を持てるだけ持ち、部屋を後にした。

 

「全員来ましたね? それでは、ブリーフィングを始めます」

 

議題の内容については、今後起こりえる襲撃に対する対策だ。

 

「内容に関しては、正面と奇襲を仕掛ける二部隊構成。だけど、私の未来予知も絶対ではなくなってきてる。予想外のことが起こることだって十分ありえる」 

「成程、ここ最近襲撃がなかったのはこの為か」

 

こうして話している間でも、刻一刻と時間が迫ってきている。

 

「ならば、同時に叩けばいい。それが一番効率が良かろう」

「……」

「ええ。ここで無駄に戦力を削ぐ訳にもいきません」

 

やはり、こうなるか。いや、こうなることを想定して対策をしてきたんだ。今更恐れることではない。 

 

「正面の部隊は引き受けよう。最近は目立った戦いもなく、ちょうど腕が鈍っていた所だ」

「では、頼めますか紅蓮?」

「無論だ」

「それと……ラプンツェル、スノーホワイト。貴女達にも正面の部隊を担当してもらえますか?」

「分かった」

「お任せください」

 

紅蓮やラプンツェルの精神状態も問題なし。

 

「私達は別部隊の迎撃を行います。二人もそれでよろしいですね?」 

 

ドロシーの言葉に、私とピナは首を縦に振った。

 

この襲撃が終わってもまだやるべきことがある。エブラ粒子発生装置の破壊、特定座標の大規模なラプチャー部隊の殲滅、物資運搬用の大型エレベーターの破壊。この三つを達成しなければ、アークガーディアン作戦は完遂できない。

 

「何かあった時の為、各自信号弾は持参しておいてください。それから──」

 

その時、レーダーにラプチャーの反応を確認した。

 

「……ッチ。もう現れたか」

「いえ、先制できるので好都合です。では、今言った通りの作戦でお願いします」

「分かりました。どうかご無事で」

 

こうして、一抹の不安を抱えながら、私は戦場へと向かった。量産型部隊には、既に自拠点の防衛を指示してある。 

 

「そうだ。ピナ」

「は、はい! 何ですか?」

「これ、君のネックレス。待たせてごめんね」

 

ピナにネックレスを渡すと、ピナは不思議そうにネックレスを眺めた。

 

「あの、これどうやって使うんですか?」

 

「君が危機的状況になった時、自動で発動する。私が何かあった時は、ピナ。君がドロシーを守ってくれ」

「私がドロシー様を……はい、やってみます!」

 

そうして、既にレーダーで捕捉されていた奇襲部隊の動きは完全に掌握している為、特に苦戦を強いられることもなく撃退できた。 

 

「何だか、静かすぎないですか?」

 

ピナも疑問に思う通り、全く歯応えがない。

 

「素直に終わるに越したことはありません。このまま一気に──」

 

ドロシーの声を遮るように、轟音が鳴り響いた。 

 

「な、何ですか!?」

「……この多数反応、ウルトラか!」

 

突如現れた無数の反応。瞬間、私達の周辺にミサイルが降り注る。

 

「こんなふざけた量を送り込む馬鹿がどこにいる!!」

 

それが、いる。私をことごとく邪魔する、忌々しいラプチャーが一体。

 

「ドロシー! ヒューマンエラーを確認した! この軍勢を率いているのも恐らく奴の仕業だ!」

「なら、まずはそれから倒しましょう。指揮を失えば、他のラプチャーは一気に乱れる筈です。ピナ、いけますか?」

「はい! 勿論です!」

 

未だ止まない攻撃の中で、私達は素早く弾を込める。 

 

「侵食を誘発するウルトラには注意してください! 私とルミナスムーンが前線に出ますので、ピナは後方から援護を!」

 

遮蔽から飛び出し、ラプチャー達に弾丸を浴びせる。

 

「撃って!」

「はい!」

 

ピナの掛け声と共に放たれた弾丸が、目の前のラプチャーを貫く。

 

「せぇーのッ!」

 

開いた装甲部分を思いっきり殴りつけ、金属が悲鳴を上げる。

しかしその瞬間、背後からビーム砲がラプチャーを貫通し、私に向かってきた。

 

「あっぶな!? クソ……ドロシー! 周囲のラプチャーをお願い! 私は奴を破壊する!」 

「分かりました。危険だと思ったらすぐに退避してください」

「了解」

 

そうしてドロシーと二手に分かれ、再装填を完了しかけているヒューマンエラーにショットガンを構える。

 

「お前と遊んでるヒマはないんだよ!!」

 

放たれたビーム砲を一度遮蔽に隠れてやり過ごし、そこから一気に加速してショットガンの射程まで迫った。

 

「終わりだ──!?」

 

放たれた銃弾は、突如目の前に現れた小型のラプチャーによって防がれ、そのラプチャーは木っ端微塵となった。

 

突然のイレギュラーで動揺した一瞬を奴は逃さなかった。

 

「しまっ──」

 

ガラ空きとなった私の身体を奴は殴りつけ、私は地面に激突した。

 

「ぐ……がぁ」

『ルミナスムーン! 大丈夫ですか!?』

「なん……とか」

 

私がよろよろと立ち上がった瞬間、レーダーに映っているラプチャーが突如進路を変更した。

 

「何を……いや、まさか!? ドロシー!! 今すぐピナのいる所へ戻れ! 奴らは戦力を全て駐屯所の方へ移す気だ!」

 

奴の狙いはゴッデスではない。今までの傾向から見ると、狙っている対象は恐らく……

 

「ピナが危ない! こっちは何とかするから、すぐに向かって!」

『……ッ!? 信号弾を撃っておきます! それまで持ち堪えてください!』

 

通信を切り、私は息を思いっきり吐き出す。

 

『ヴオオオオ!!』

 

ヒューマンエラーは生物とは思えない雄叫びをあげ、私に銃口を向けた。

 

「お前は何者にもなれない。お前が望む未来は、永遠に来ない」

 

瞼を閉じ、殺意を込める。

 

あれだけ騒がしかった筈の戦場が、今は私と奴しかいないように感じた。

 

「殺ス……!」

 

赤く染まった瞳に、銃弾の雨が映った。足元から生み出した壁で弾丸を受け止め、裏から衝撃を与えると、その破裂が奴の装甲を抉った。

 

よろめいた隙を見て、腰に携えた刀を抜刀し再度急接近する。

 

「はあ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

接近した私に再び銃口を向けるが、もう遅い。機関銃を装備している腕をそのまま切断し、奴の身体に投げつける。

 

「終わり──」

 

そのまま落下し、コアを突き刺そうと刀を構えた瞬間、横から槍のようなものが見えた。回避は間に合わずに、そのまま私の上腕に突き刺さった。

 

「がああああ!!」

 

切断しようにも、今の攻撃で刀は手の届かない場所へ弾き飛ばされた。そして串刺しになり身動きが取れない私に、トドメとなるビーム砲をチャージし始めた。

 

「まだ……だ」

 

痛みで意識が飛びそうになるが、自分に突き刺さった槍を掴み、力を込める。

 

「ッ……!」

 

そして、私に向かって再び光線が放たれた瞬間、力を込めた部分から槍が折れ、光線は私の真上を通過した。

 

「決める」 

 

自分に刺さった槍を引き抜くと、奴に向かって落下していき、赤く光るコアに突き刺した。 

 

「今度こそ、終わりだ!」

 

突き刺し、露出したコア部分にショットガンを連射し、完璧に破壊する。

 

『グ、ググ』

 

奴は最期に呻き声のような鳴き声をあげ、そのまま崩れ落ちた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

騒がしかった戦場が静かになると、一気に疲れが押し寄せてくる。

 

「行かないと……」

 

立ちあがろうとするが、よろめいて倒れてしまう。武器を持ち直そうとするが、片方の腕が動かない。

 

「……っ」

 

そして、遂に立つこともままならず、そのまま地面に倒れるかという瞬間、私の身体を何者かが支えた。 

 

「……?」

 

視線を上に向かると、白髪が見えた。

 

「すまない。少々手間取ってしまった」

 

「……スノー」 

 

すると、続々とスノーの背後から足音が聞こえた。

 

「ラプンツェル、治療を頼む」

「はい! あぁ、またこんな……」

 

私の身体をラプンツェルに預け、スノーホワイトは周辺の警戒にあたる。

 

「ほう、ラプチャー共を指揮してたのはこいつか。君はいつも厄介者の対処を任せられるね」

 

紅蓮がスクラップとなったヒューマンエラーを見て呟いた。

 

「……ラプンツェル、ドロシー達は?」

 

私が一番危惧していること。彼女達の姿が見えない。

 

「ドロシーですか? それなら──」

「こんな時でも、私達の心配ですか?」

 

再び視線を上に向けると、桃色の髪が靡いていた。

 

「私は無事です。そして、ピナも」

「はい! だから安心してください!」

 

ドロシーの背後からピナが顔を出していた。

 

「そっか、良かった……」

 

二部隊によるラプチャーの襲撃は、ゴッデス部隊全員生存という形で幕を下ろした。




やりたかったことその一
ピナ救済&ピナ強化

原作キャラの口調は合ってる?

  • 問題なし
  • 少し違う
  • 全然違う
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