ようやく本編スタートです。
Chapter4献花:巡り合う
「座標は……この辺りか」
廃墟と化してきた市街地の中で、私は目の前に映し出されている地図と睨めっこしていた。
「似たような場所も多いし、一度通信を……」
「私をお探しか?」
背後から聞き慣れた声が聞こえた。
「やあ、スノー。悪いね、ちょっと同行させてもらう必要が出てきた」
「お前がわざわざこっちに出向くんだ、何か重要なことがあるんだろう?」
「うん。とりあえず例のおしゃべり野郎を見つけようか。まずはそこからだ」
「分かった。なら、ついて来い」
そう言って私がスノーの後を追うと、地面に僅かな足跡が見えた。それは人でも動物でもない、異形と呼べる足跡だ。
そして、遠くから銃声が聞こえてくる。
「……あれか」
装備を一度点検し、異常がないことを確認する。
「居たぞ」
スノーと一度物陰に隠れて様子をうかがうと、そこには五人のニケと一人の指揮官がトーカティブと戦っていた。
「アイツらが重要人物か?」
「よくお分かりで。とりあえず、さっさとアイツを片付けてしまおうか」
「了解」
バイザーを装着し、私はトーカティブに一発のミサイルを発射する。
それを合図に、スノーと私は飛び出した。
「エンカウンター!!」
───
突如現れたトーカティブによって、私達は窮地に陥っていた。
ミハラ、ユニは戦闘不能。私自身もトーカティブの尻尾に当たり、足の骨が折れていた。
「指揮官!」
「こいつ……!」
「逃亡とは、愉快じゃないな。さぁ、大人しくついてこい」
まさに万事休す。私は判断を誤ってしまったのか?
「……アニス、ネオン。ごめん。命をかけて──」
「……くそっ」
「……はい」
このままではラピが……その時だった。
「素晴らしい」
トーカティブの背中で爆発が起こると同時に、奴の体に巨大な穴が空いた。
「ほら、もう一発!!」
トーカティブの頭上で再度ミサイルが発射され、奴の体の一部が崩れた。
「ここは任せろ」
「お初にお目にかかります。おしゃべり野郎」
黒髪のニケがそう言いながら、トーカティブの顔面に弾丸を打ち込んだ。
「ぐぅ……! 巡礼者共が……!」
「失せろ、異端め」
白髪のニケが更に撃ち続け、黒髪のニケがその傷を抉るように打ち込んでいく。
「……修復機能が間に合わない……くっ」
トーカティブはあっという間に視界から消え去った。
「……逃げたか。私は奴を追う。そいつらの対応は任せた」
「了解。気をつけて」
白髪のニケはトーカティブの後を追うように去り、黒髪のニケは小走りでこちらへ近づいてきた。
「止まれ!」
ラピが銃口を向けるも、黒髪のニケは全く意に介さない様子だった。
「私に警戒する暇があったら、さっさと指揮官を安全な場所に移してください。怪我人も多数いるんでしょ?」
そう言って、彼女は自分の顔についていたバイザーを取った。
「初めまして。私の名前はルミナスムーン。以後、お見知り置きを」
───
未だ警戒を解かないラピにゆっくりと近づく。
「あなた方と敵対する気はない」
そう言って、握っているショットガンを一時的に捨てる。
それでも銃口を下ろさないラピに更に近づき、自分の体に銃口が当たるまで寄り添い、彼女だけに聞こえる声で呟く。
「赤髪の彼女は、私のことを伝えていないようだね」
「ッ!?」
そう言うと、驚いた表情を見せつつも少しだけ銃口を下ろしてくれた。
「さて、指揮官さん? 聞こえてますか?」
「……ぐっ……あぁ」
「喋らない方がいい。無駄に喋ると痛いですよ」
私は持ってきた工具を組み立て、指揮官の足に装着させる。
「ちょ! アンタ一体誰なのよ!」
「後でいくらでも説明しますから。ひとまずあの伸びてる二人を連れてきてください」
トーカティブの攻撃で未だ倒れているミハラとユニを指差す。
「アニス、ネオン。ここは従って」
「……ッラピまで! ああ、もう! ネオン行くよ!」
「あっ、待ってください!」
アニスとネオンが倒れた二人の回収に向かっている最中も、私は指揮官の足の手当てを続けた。
「よしっと。いかがですか? 流石に走ったりは出来ないですけど、自分で歩くことはできるはずです」
「ああ、助かった」
指揮官を起き上がらせると、ちょうどワードレスの二人も担いで戻ってきた。
「丁度いい。ここからどうしますか? 通信、途切れてますよね?」
「……近くに電波塔がある。そこなら、アークとの直接回線がある」
「そう。なら、私も同行しよう。戦力は多い方がいいでしょう?」
ショットガンを拾おうとした瞬間、奥からもう一つ手が伸びた。
「……」
「……何か?」
「えっと、中々の火力でしたので、分解して今後の参考にしようと思いまして!」
「絶対ダメ。返して」
ネオンからショットガンをせがまれていると、ワードレスの二人も目覚めたらしい。
「ん……? っ! ミハラ、大丈夫?」
「ええ、トーカティブは……」
「もう逃げましたよ」
目覚めた二人に声を掛けると、やはり警戒された。
「巡礼者……」
「やめろ撃つな」
銃口を向けられたかと思ったが、ここは指揮官が制止した。
「私のことについては移動しながらでもできる。さっさと行った方がいいかと」
「なんでアンタに指図されなきゃいけないのよ! はぁ……もう! こうなったら詳しく聞かせてもらうからね!」
「ええ、洗いざらい吐いてもらいましょう! 特に火力についても……」
「……」
相変わらず、騒がしい部隊だ。
───
無事に電波塔に着く頃には、私は別の意味で疲れていた。特にネオンの火力のためだと、私の装備について一つずつ聞かれた時は流石に堪えた。
「随分、変わった子をお持ちのようですね」
「……すまない。ああいう奴なんだ」
「ええ、知ってます」
ラピが通信を試みている最中、私は指揮官と話していた。
「……未来が見えているというのは、本当なのか?」
「ええ、勿論。信じないならそれまでですけど、私は自分が知っている未来の通りに動いている。だから貴方を助けた」
「私達が、そんなに重要なのか?」
「ええ、勿論。ただ、詳しく言える段階ではありません。でも、貴方が重要人物ということは理解しておいてください」
ここで今後の出来事を話しても、おそらく現状のカウンターズでは対応しきれないことを加味してだ。
「……分かった。ありがとう」
そう会話している間も、ワードレスの二人の表情は暗かった。
「……逃してしまったわ、トーカティブ」
「うん。ユニ、どうすることもできなかった」
「ラプチャー捕獲分隊が、ラプチャーを逃してしまった」
任務が達成できなかったニケに対しての処罰は重い。特に、使い捨てのようにニケを扱う奴らに関しては。
「ユニたち、廃棄されるの?」
「ふふ、それはシュエンの考え次第だわ」
「ユニは廃棄されたくないよ。ミハラと離れたくない」
ユニは小さく嘆いた。
「……そうね。私もそうよ」
「なら、私を捕まえて差し出してみるかい? 地上で生きるニケを捕まえれば、少なくともそう言った処罰は免れる」
ミハラに対してそう言うが、然程の反応を示さない。
「……いいえ、やめておくわ。トーカティブを圧倒するニケに挑んでも、返り討ちにあうだけよ」
ミハラの顔には諦めのような表情が窺えた。
「……指揮官、ユニたちが廃棄されないように助けて」
ユニは懇願するように指揮官に助けを求めた。
「ああ、私が助ける」
そして指揮官は迷いなくその助けに応える。その一言で、やはり彼がこの物語の主人公なのだと再確認する。
「ふふ、何をどう助けてくれるのかしら」
「……何としてでも助ける」
「……ふふ、そうね。信じているわ」
そうこうしている間にアークとの通信が可能になったらしく、ラピが戻ってきた。
「それじゃあ、私は少し席を外そう」
「何をする気?」
「仲間からトーカティブの情報がないか、こちらでも通信を入れる。それじゃあ」
外へ戻り、誰もいないことを確認すると、私は通信を入れた。
「こちらルミナスムーン。スノー、奴の状況は?」
『見失った。どうやら逃げ足だけは一人前らしい』
しかし痕跡は確認できていたようで、スノーはこれからその跡を追うとのこと。
「了解。こっちも死者は出すことはなかった。全員助けられたよ」
さて、ここからどうしようか? 向こうには恐らく、救援が来る。そこに私が出たら、事態をややこしい方向に進ませてしまうかもしれない。
だが、カウンターズと交流を深めれば今後に大きく役立つ。
「スノー」
『どうした?』
「少し行ってくるよ。アークに」
『……なに?』
やはりと言うべきか、スノーの声が一気に冷たくなった。
「彼らとの交流は今後に大いに役に立つ。今のうちに済ませておきたい」
『……』
「大丈夫。無駄な揉め事は起こさない」
無駄に引き延ばすのも面倒だ。一言言って通信を切ろうとした時だった。
『……終わったら、一度エデンに戻れ。それが約束だ』
「了解」
それくらいかと、元々説教ならいくらでも受ける覚悟だ。
『それと、この事はドロシーにも伝えておく』
「え……」
『以上だ。私はおしゃべり野郎を追う』
そう言って、通信は切れた。
「……帰るの、やめようかな」
いやダメだ。約束すら守らなかったら、本当に八つ裂きにされるかもしれない。ここは腹を括るしかない。
「まぁ、しょうがないか……」
もう一つの理由として、アークが今どんな状況なのか、この目で一度見てみたいからだ……なんて、とても言えなかった。
───
中へ戻ると、既に次の移動のための準備が始まっていた。
「滑走路へ行くのでしょう?」
「!! ……聞いていたの?」
「いいえ。未来が見えていますから。どうです? そこまで行くにも、戦力が必要なのではないですか?」
何も知らない彼女達から見れば異常者だと見られてもおかしくない発言だと、我ながら自覚した。
「指揮官様! こんな奴信用できないわ!」
「私は指揮官。貴方の判断に従います。もし出ていけと言うなら、私は今すぐこの場から抜けます。力を貸して欲しいと思うなら、その指示に従います」
指揮官に詰め寄り、ジッと顔を見つめる。
「いかがですか?」
「師匠から離れてください!」
ネオンから銃口を向けられるが、私は気にせず指揮官の顔を見つめる。
「ねぇ、例の捏造書類の件も私なら対策できますよ?」
「!!」
「驚きました? 言ったでしょう? 未来が見えるからって」
彼等にとって、まさに都合の良い存在として振る舞う。
「何故、ここまで私達に手を貸す?」
「言ったでしょう? 今後、重要な役割となると。そんな貴方達に助力を惜しむ理由はありません」
にっこりと笑い、手を差し出す。
「改めて聞きます。私に力を貸して欲しいですか?」
「……分かった。頼めるか?」
指揮官は私の手を握った。
「指揮官様! 本気!?」
「そうですよ、師匠!」
「地上に関しては、私達より遥かに詳しい。それに、私達を殺そうと思うならとっくにそうしているはずだ」
「……っ! それはそうかもしれないけど!」
「諦めなさい、アニス。指揮官がそう言った以上、私達に拒否権はない。出来ることは、十分に警戒することよ」
「そういうことで、よろしくお願いしますね?」
そんなこんなで、敵意を剥き出しにされながらも、私は一時的に部隊の一員となった。
───
「わあ。こんなに広々とした場所があったんですね。やっぱり地上はいいですね」
目標の滑走路には無事に辿り着き、周りを眺めていると、遠くで砂嵐が発生していた。
「……来たか」
「え? 何がですか?」
「ラプチャーだ。数は恐らく200機ぐらいか」
『ヴオオオオ!!』
突如、砂嵐の向こう側から雄叫びのような声が聞こえた。
「なに、今の叫び声みたいなの」
「……面倒な」
センサーを確認すると、ラプチャーの軍勢の奥に新たな反応を確認した。
「指揮官さん、念のため通信機を渡しておく」
無理矢理手に握らせ、私はバイザーを下ろす。
「前衛のラプチャーはお願いします。私は後方の邪魔者を潰してきます」
一礼をして、私は飛び出した。
「あっ、ちょっと! もう! いきなり何なのよアイツ!」
「今は目の前のラプチャーよ。すぐに輸送機が来る。それまでの辛抱よ」
ラピ達は武器を構え始める。
「本当に、昨日と今日はツイてないね」
「ええ、せっかく初めての地上へのお出かけなのに、何なんですかこれ」
「三十秒後、交戦状態に入る。みんな、準備して」
───
「……余計な仕事を増やしやがって」
残骸の山の中で、私は奴と対面していた。
「いい加減、やめない? それとも、諦めることすらできないほど愚かなのかな?」
脚部がもぎ取られたヒューマンエラーに向けて煽ってみたが、アリのように命令に従うことしかできない奴にとって、理解することは不可能だろう。
「お前、こんなに弱かったか? 戦果をあげられなくて、予算をケチられたか?」
今回の戦闘では、これまでで一番の快勝と言っていい。
「じゃあね。私はお前と違って忙しいんだ」
トドメを刺そうと銃口を向けた瞬間、背後に気配を感じた。
「ッ!?」
残骸の間から突如飛び出した槍型の武器を避けると同時に、地面が盛り上がった。
「地中かッ!」
私へと突き出した攻撃に飛び上がり、奴は空中に上がった私を狙おうと銃口を構えたが、ジェットパックで軌道をずらして奴の頭に向けて射撃を行い、トドメを刺した。
抵抗もせずただ傍観していたのはこれが狙いだったのかと、もう動かない奴を見て、その顔が妙に憎たらしく感じ、もう一発打ち込んだ。
「向こうは、もう終わったか……」
滑走路の方面を見ると輸送機が既に到着しており、ラプチャーの姿も見えなかった。
「さて行こうか、アークに」
と言っても、無駄に姿を晒すわけにもいかない。私はステルス迷彩を起動し、輸送機へと向かった。
指揮官達から見て、相当胡散臭い感じになっちゃいましたけど、あくまで協力関係という位置付けで見れば、これくらいが妥当かと。
サブイベントや過去編はやってほしい?
-
欲しい
-
さっさと本編書け