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「第一。上部に報告せず、地上での作戦を遂行したこと」
「第二。5機のニケを伴い、アークの戦力を低下させたこと」
「第三。ただし、その意図は人類の平和に貢献するためであったこと」
「第四。ピルグリムを同行させ帰還したこと」
罪状が淡々と読み上げられるごとに、指揮官の手に力が入る。
「上記の事実をもとに過去の事例を調査した結果、100%一致するケースは存在しませんでした。よって判決を下します」
「指揮官に二日間、作戦遂行を禁じる。以上です」
指揮官の判決はせいぜい時間が解決してくれる。しかし……
「続いて、同行したニケに対して判決を下します」
「第一。命令体系を無視した作戦であることを認知していながら参戦したこと」
「第二。それにより、アークの大事な財産を浪費させたこと」
「第三。ピルグリムの捕獲及び、技術提供に同意させたこと」
「上記の事実をもとに過去の事例を調査した結果、これもまた一致するケースが存在しないため、特例の判決を下します」
「事件の主役であるカウンターズ、該当部隊のリーダーのニケ、ラピに対して記憶消去を実施する。尚、ワードレス、該当部隊のリーダーのニケ、ミハラに対しての記憶消去は免除する。以上です」
結局、全ての違反を払拭することはできなかった。指揮官は悔しさで手に込める力が更に強くなるが、そんなことをしてもどうしようもない。ただ項垂れ、部屋を後にするしかなかった。
「免除してそれですか?」
光学迷彩を解き、姿を現したルミナスムーンが、壁に寄りかかりながら呟く。
「技術提供及び、貴女の捕獲……いえ、同行と言った方がいいでしょう。それを加味しての判決です」
「成程……まぁ、貴女が話の通じる相手で良かった。貴女はアークに有用性を感じれば、たとえ正体不明な私でも利用する人だ」
「勿論です。それが私の役目ですから。現時点で、貴女と争うのは得策ではないと判断しました」
「利口なことで。では……」
出口へ向かうと、再び光学迷彩を起動し、ルミナスムーンはエニックの目の前で姿を消した。
───
「この、くそ野郎!!」
前哨基地に向かうと、アニスがシュエンに今にも殴りかかりそうな勢いで詰め寄っていた。
「ちょっと、余計なこと言わないで」
「どうしてくれるの!どうしてくれるのよ!」
光学迷彩をつけたままのため、彼女達はお構いなしに会話を続ける。
「なんで黙ってたの?あなたがやらせたって、なんで言わなかったのよ!あなたCEOよね?こんなの、いくらでももみ消せるのに!」
「事情があったの」
「いったい、どれだけ偉い事情なの?罪のない二人の記憶と、引き換えるくらいに!」
「だから、なんで直接回線なんて使ったのよ」
会話を聞いていると、コイツには労うという頭がないらしい。
「こっちは死ぬところだったのよ……!そのトーカティブか何かのせいで、死にかけたのよ!」
「話してないわね?トーカティブに会ったこと」
部下を部下とも思っておらず、自分はぬるま湯に浸かっているだけ。
「あなた……!それがそんなに大事なこと!?」
「おい。ニケの記憶がなくなることなんて大したことないのに、どうしたの?」
「……今、何て……」
命令。シュエンを守っているのはただそれだけのこと。それをコイツは分かっていないらしい。
「ただの兵器じゃん。私たち人間の代わりに戦わせる兵器。兵器に記憶だとか感情だとか、関係ないでしょ?」
今のコイツに同情の余地はない。
「あ、一緒に苦労してきたから?じゃあ、また一緒に苦労すればいいじゃない。白紙状態だからさらに良くない?お前好みに合う、いい友だちに仕上げられるから」
「この……!!」
アニスは我慢ならないと殴りかかろうとし、指揮官がシュエンに向かって手を振り上げそうになるが、ラピより前に私はその手を掴んだ。
「……!?」
何もない場所から自分の手を掴まれたことに驚いたのか、指揮官は目を開いた。
「はぁ……」
私は光学迷彩を解除し、全員に姿を晒した。
「は……?誰、お前……?」
「アンタ……来てたの!?」
驚くアニスと、怪訝そうな顔で私を見るシュエン。
「初めまして、ミシリスCEO。高みの見物はさぞ気分が良かったでしょうね」
瞬時に近づき、その首を手で締め上げ、シュエンの体をそのまま持ち上げる。
「がッ……!?あァ……!?」
「ほら、命令という守りがなければ、貴方を殺すことはこんなに容易い」
どれだけ私の腕を叩こうが、決して力を緩めることはない。
けれど、今死んでもらっては正直困る。
首を絞めた状態から、そのまま私はシュエンを壁に投げ飛ばした。
「ゴボッ!!……ぉ゛えっ……この鉄くずがぁ……!!」
「無様な貴女にもう一つプレゼントを」
そう言って、私は一つの用紙をシュエンに向かって落とす。
「まさか、アーク三大企業の一つのCEOがテロを計画していたとは」
彼女が指揮官に与えたように、決裁欄にはシュエンの名前、そしてメティス分隊のニケ達のサインも書かれていた。
「な、何よこれ!!こんなデタラメッ!!」
用紙を破り、私を睨みつけるシュエンはなんとも滑稽で嗤ってしまう。
「ええ、デタラメです。ですが、これをアークにばら撒けば、損するのは貴女達しかいない」
退屈な日常にこんなスクープがあれば、民衆の中で一気に浸透する。そこから噂は歪み陰謀となり、ミシリスの評判を落とすには充分な条件が満たせる。
「そして、その責任を取るのは貴女だ。貴女が丹精込めて作り上げたニケも責任を取り、正真正銘の鉄屑と化す」
「……鉄くずの分際で、良くもこの私に……ッ!!」
鉄くず、鉄くずってうるさくて堪らない。
私は腰に付いていた拳銃を引き抜いた。
「……は?」
「ちょっと待って!やりすぎ!」
アニスが制止しようとしているが、もう遅い。
私は迷わず銃口をシュエンに向けた。
「お前、私を誰だと思っているッ!?私はアーク三大企業の一つ──」
バンッ──!!
引き金を引いた。
バンッ──!!バンッ──!!
何度も引き金を引き続けた。
そして、カチカチと弾切れの音が何度か聞こえ、ようやく銃を下ろした。
「……あの捏造書類は速やかに破棄しろ。ニケの扱い方についても、考えを改めろ」
「あ……あぁ……」
弾丸は全てシュエンの体を掠め、壁に跡を付けていた。
「それと、この事は一切表には口出しするな。もし次、カウンターズ及び他の分隊に余計な真似をしてみろ……次はお前の頭を潰す」
「わ、分かった!分かったから!!その書類を今すぐ消せッ!!」
「ええ、勿論。貴女が約束を守ってくれれば、公表はしないと約束しましょう」
震えた声で叫ぶシュエンに、私は微笑んでそう言った。
そして、逃げるように去っていったシュエンがいなくなると、この場は静まり返った。
「申し訳ない。少々頭に血が上ったみたいだ」
ひらひらと手を見せて、私は言った。
「どうやって……ニケが人間に危害を加えるなんて」
「人間だと思わなければいい。少なくとも私はそうらしい」
「だとしてもやり過ぎよッ!もしアイツに弾が当たっていたら、処分されるのは私達なのよ!?」
「ああ、それについても問題ありません。ほら」
私は床に落ちた弾薬を拾い上げ、ラピ達に手渡す。
「……これは」
「ええ、ゴム弾です。人間の体に実弾を撃つのはどうしてもリスクが付き纏いますからね。牽制にはこの程度で充分です」
私は指揮官に近づき、一つの物を差し出す。
「これは?」
「私と繋がる通信機です。閉域網なので誰かに聞かれる心配はありません。貴方達とは今後も付き合っていく可能性が大きいですから」
やるべき事はやったのだ。もうここにいる必要はない。
「では、私はこれで」
「待ってくれ」
部屋を後にしようとした時、指揮官に呼び止められた。
「書類のこと、感謝する」
「礼には及びませんよ。あ、あとラピ。彼女の記憶については、心配する必要はありませんよ」
「……どういうことだ?」
「さぁ?どういうことだと思いますか?では」
前哨基地を抜け、通信を繋げる。
「書類の捏造、感謝します。ええ、現状公表する必要はありませんが、念のため削除はせずにお願いします」
通信を切り、息を吐く。
「さて、と。……帰りますか」
これから起こることは、出来れば想像したくなかった。
───
「派手にやらかしたものだ、ミシリスのCEO様は」
中央司令室内で、副司令官であるアンダーソンとエリシオンのCEOであるイングリッドが話していた。
「命令体系を完全に無視した単独命令か。日に日に暴れん坊になっているな」
「違法ではないからな」
「それが更に問題だ……三大企業にあまりにも便宜を図り過ぎている」
「その恩恵を受けている私が言うことではないが、同感だ。……でも、今は我慢しよう。シュエンはまだ、アークにとって必要だ」
「……そうだな。それで、そこまでしたシュエンは何を得たのかね?」
アンダーソンが尋ねる。
「あいつが私に何か言うとでも?」
「お互い、すぐにバレる嘘はやめようではないか」
そう言うと、イングリッドは口を開いた。
「ネオンから報告を受けた。トーカティブと遭遇したらしい」
「我々が見つけたのか?向こうから尋ねて来たのか?」
「??あっちから尋ねてきたらしい」
その質問の意味が瞬時には理解できなかったが、イングリッドは続けた。
「……そして、ピルグリムとも遭遇したと言っていた」
「!!誰と会ったのかね?」
「二人と会ったらしいが、一人は判明していない。だが、前哨基地まで同行したピルグリムの名前はルミナスムーン」
「ピルグリムの中では比較的遭遇した例がある彼女か……ふっ」
「……どうした。いきなり笑い出して」
「いや、何でもない。彼女によってアークに帰還した指揮官やニケも多い。連れてきたのが彼女で良かったな」
アンダーソンは、ルミナスムーンに救助されたと思われる人物のリストを引っ張り眺める。
「ああ、だが前哨基地でシュエンを脅していたらしい」
「……本当か?」
「ゴム弾だったらしいが、発砲もしたらしい」
アンダーソンは顔に手を当てる。
「その意図は何だったんだ?」
「シュエンのニケの扱いや、他の分隊への嫌がらせに対する警告だと言っていた」
アンダーソンは何か思いついたように顔を上げた。
「シフティーくん」
「はい」
「新人の指揮官を呼んでもらおうか」
「今ですか?」
「そう、今」
───
指揮官は急遽、アンダーソン副司令官に呼び出されていた。
「久しぶりだな。足を折った人を呼び出してすまない」
「いえ。ルミナスムーンというニケから貰った補助機で動けています」
「そうか、こんな所でも彼女の手が加わっているのか」
「……あの、彼女は一体何者なのですか?」
指揮官が尋ねると、アンダーソンは一瞬黙り込んだが、すぐに元の様子に戻った。
「彼女のことの前に、まず、君のことだ。君はニケたちを特に大切に扱っているのに、記憶消去は愉快な経験ではないだろう。そこで聞こう。気分はどうかね?」
「……話したくありません」
指揮官の声に覇気はなかった。
「……そうか。以前君は私に尋ねた。マリアンの侵食について何か知っているのか、と。そう、私は知っている。秘密厳守をするなら、私が知っていることを話してあげよう」
「秘密は守ります」
「全く誠意のない返事だな。それでも約束は約束だ、話してあげよう」
アンダーソンはその口を開いた。
「アーク内でニケに侵食させて地上へ上げ、作戦を邪魔する奴らがいる……ふむ、これも正確な表現ではないな。個人なのか団体なのかも不明だからな。とにかく、私達は彼らがラプチャーと内通していると判断した」
指揮官はその話を黙って聞いていた。
「少し前だったら君もふざけたことを言うなと言い返していただろう。しかし、君は出会った。コードネーム・トーカティブと。思考し、言語を駆使するラプチャーだ。だからこの話が理解できるだろう」
アンダーソンは続ける。
「ニケの脳にコードを埋め込んで自由自在に意志を操作する、いわゆる侵食は人類には扱えない技術だ。ラプチャー固有の技術と見て間違いない。そんな固有の技術がアーク内のニケに埋め込まれ、地上へ送られる……内通者がいるとしか考えられない。そして、そんなことは普通の市民にできることではない。防護壁を操作できる権利、誰にも気づかれない単独回線が使えるほどの、アーク内でもしっかりした立場にある人物に違いない」
「では、私はどうすればいいのですか?」
指揮官が尋ねる。
「私は彼ら、もしくは彼を捕まえたい。君も同じ気持ちだと信じている。内通者はトーカティブと繋がっているようだ。これは間違いない。だから君は、これからトーカティブの追跡に力を入れてくれ。そうすれば自然と真実に近づくだろう」
「分かりました」
「では、もう行っていい。五分後に会議があってね」
「最後に一つだけ。私を助ける理由は何ですか?」
その言葉にアンダーソンは足を止めた。
「……感覚も記憶もあるのに、自分たちではそれらをコントロールすることもできない彼女たちに捧げる、献花だと思ってくれ。君はルミナスムーンと出会ったと言っていたな?」
「はい」
「彼女とは協力を結んでおけ。私から言えることは以上だ」
そう言い残し、アンダーソンは司令室を出て行った。
───
「それで、何か言い残すことは?」
エデンに帰るとドロシーが待っていた。それはなんとも冷たい笑顔で。
「……後に重要な役割を担う人物でしたので、今のうちに接点を……」
正座でドロシーに見下ろされながら、尋問のような時間が続いていた。
「成程。では何故、私達に報告せずにアークに向かったのですか?」
「いや……多分、反対するかなーって……」
チラッとドロシーを見たが、全く瞳の冷たさが変わっていない。
「それは場合によります。貴女が未来を知っているということは周知の事実です」
「……ハイ。ソウデスネ」
「私達の身元が割れるような情報は流していませんね?」
「モチロンデス」
ここでドロシーは息を吐き、ようやく周りの空気が軽くなった。
「今後、このような事は一度相談してください。貴女にとって、私達はそんなに頼りない物なのでしょうか?」
「……」
「はぁ……次から、そのことを心得てください」
「はい。善処します……」
ようやく正座を解き、痺れるはずのない足が痺れたような感覚だった。
「貴女のことです。既に次の目的も決まっているのでしょう?」
「うん。ひとまずスノーと合流する。そこから……まぁ、うん」
「丁度、装備の点検も終わった頃でしょう。ピナにでも持ってきて貰いましょうか」
しばらくすると、私の装備を持ってピナが現れた。
「ありがとうございます、ピナ」
「はい!どうぞ、ルナ様」
ピナが持ってきてくれた私の装備は、新品のように見違えた姿になっていた。
「どうもね、ピナ」
「無茶しちゃダメですからね?約束を破ったドロシー様は怖いですから」
「私は別に怒っている訳ではありませんよ?ただ、何故そうなってしまったのかという根拠が欲しいだけです」
そう微笑んだドロシーの顔は恐ろしかった。
「じゃ、じゃあ。私、行きますね?」
この場に居続けるのも何だか気まずく感じ、装備を付けると二人に向かって手を振った。
「はい!お気をつけて!」
「無事に帰ってきてくださいね?」
「……了解。ルミナスムーン、出撃します!」
そうして、私は再び地上へ向かった。目的地は北部だ。
シュエンを虐めている時だけ妙に筆が乗りました。
何故でしょうね?
サブイベントや過去編はやってほしい?
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欲しい
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さっさと本編書け