更新が鈍すぎる
ガチャガチャとアームが動く音が喧しい。せっかく久しぶりに気持ちよく眠っているのだから、もう少しだけ勘弁してほしい。
「──ますか?」
いや、待て。そうは言っても果たして私はどれだけ眠り続けた?
「──分かりますか?」
モダニアとの戦闘の後からどれだけ時間が経った? もし、あの瞬間に間に合わなかったら?
「ルミナスムーン、聞こえていますか?」
私の名前、聞き馴染みのある声。そうか、ここは。
身体の力が一気に蘇り、慌てて身体を起こすと、横には少し驚いた様子のセシルがいた。つまりここは、エデンということになる。
「いきなり何ですか、全く。驚かせないでください」
「セシル……私は……どれだけ眠っていましたか?」
「……おおよそ一週間です。あなたの場合、頭部の損傷が激しすぎました。おかげで随分と時間がかかってしまいましたが、機能面では問題ありません」
「そうですか……助かりました」
足を地面に下ろし、歩行に支障がないか確かめる。
「ボディの修復もすでに完了しています。どれだけ暴れたら、こんな状態にまでなるんですか?」
「……例の未来改変のために、ここは死力を尽くさないといけませんでした。実際、私が見た未来とは違う箇所も見られました」
「なるほど。それでお前のお目当ての人物には会えたのか?」
背後から声が聞こえた。
「ええ、勿論ですよ、ヨハン。今回はそれが第一目標でしたから。今後はあなたの後輩になるかもしれませんから、期待しててくださいね?」
「そうか……考えておこう」
手足それぞれの動作を確認していく。意識を失うまでの重さはもう感じない。
「目覚めて早々に過度な動作はやめてください。また壊れでもしたら堪りません」
「ええ、それは勿論善処しますよ。ただ、自分を保守してるようじゃ最善の選択は取れません」
「……そうですか。あなたの身を案じている彼女たちの前で、よくそんなことが言えましたね」
「??」
ひとまず武器を回収してこよう。破損が見られたらまた修理しなければならない。そんなことを考えながら扉を開けると──
「……」
ゴッデスのみんながいた。よりによって全員集合の状態で。
「……スゥーー」
一度扉を閉じる。これは果たして現実かどうか、頬を引っ張る。引っ張る感触があった。ということは現実だ。
「セシル……彼女たちって」
「ええ、当たり前でしょう? 誰が連絡したのか知りませんが、つい先ほど全員が揃ったところですよ」
一瞬だけ見えたドロシーの恐ろしい笑顔と、スノーの冷たい目。ラプンツェルは笑顔だったが妙に影があったし、紅蓮は一昔前に戻ったようだった。ピナに助けは……無理だな、あの空気では。
どうやら私には第二戦が控えていたらしい。いっそ光学迷彩でも被って逃げてしまおうか?
「駄目だ……そんなことをしたら本当に──ヒッ!?」
肩を鷲掴みされる。恐る恐る顔を向けると、スノーの冷徹な瞳がこちらを睨んでいた。
「コイツを直してくれたこと、感謝する。後はこっちで預からせてもらう」
「ええ、どうぞご自由に」
ねぇ!! もっと止めるとかないの!? 絶対に今行かせたらヤバイじゃん!!
「ボサっとするな。さっさと歩け」
「……はい」
あぁ……私、死んだかも。
───
部屋を出て、ロビーの前で私は縮こまっていた。顔を下に下げ、ほぼ土下座で。
「さて、また自己犠牲に走ったことに関して、何か言い分があれば聞こうか?」
「……改変の影響がどこまで及んでいるのか分からなくて、それで……」
「ほう。ではここでお前の救助が間に合わなかったらどうする気だったんだ?」
「……え。それはもう……ねぇ?」
一気に眼光が鋭くなったのを感じる。冷や汗が背筋を伝う。帰還したのに、まさかこれだけの恐怖を味わうことになるとは。
「お前が死んでも、私たちは何ともないとでも思っていたか?」
「……」
「お前には何度も手を差し伸べられてきた。私たちはただお前の恩恵に縋るだけの存在だと思っているのか?」
「いえ……」
スノーが私の前にしゃがむ。
「私はお前に死んでほしくない。それは出会った時から今日まで変わらない思いだ。お前がくれた恩を、私は最大限返したい。なのにお前は……」
スノーは何かを言いかけて立ち上がった。
「はぁ……ドロシー」
「……何でしょうか?」
「このバカにお灸を据えてくれ」
「ええ、勿論ですよ。ルナ、顔を上げてください」
ドロシーの声が聞こえ、恐る恐る頭を上げる。
「貴女はいつもそうですよね。私たちの心配も無視して、何度も何度も何度も無茶をして帰ってくる」
ドロシーは私に詰め寄る。
「もし、貴女が帰ってこなくなったことを考えると恐ろしくて堪りません。何度も言いますが、そんなに私たちが頼りないですか!? 貴女は大切な仲間で、何度も苦楽を共にしてきた仲なんですよ!? 貴女のおかげで私たちは今こうして一つになれた。一言言ってくれれば、すぐに手を差し伸べてあげます。なのに、貴女はいつもいつも一人で全てを成し得ようとする。そんなに私たちは信じられませんか!? 助けを求めても大した役に立たないと思っているのですか!?」
「ス、ストップ! ストップですドロシー様! 一旦落ち着いてください!」
ピナがドロシーと私の間に一度距離を作る。
「貴女は、私達を仲間だと思っていないのですか!?」
ドロシーの目には涙が溜まっていた。泣かせた経験は初めてだった。
「……ごめんなさい。私は、その」
全てを良くするためだった。実際、私は本来存在しないニケ。私の改変でゴッデスをまとめ、救える命を救えたら、後はどうなっても構わないと内心思っていた。なのに、目の前で泣いているドロシーを見て、初めてその考えが揺れた気がした。
「やれやれ。最近問題児になりかかっていると聞いていたが、これほどだったとはね」
「ですね。私たちの為とはいえ複雑です」
ラプンツェルが私の前に出る。
「私も貴女には死んでほしくない。それは当たり前のことです。けれど、貴女は守るべき者のために、きっと傷を負うことをやめはしないでしょう」
「……」
「私はそれを止めることはしません。けれど、もし貴女に危機が訪れたら、私たちは貴女を助けることを惜しみません。そのことを覚えていてくださいね? 私自身、貴女の故郷はまだ知りたくありませんから」
「……はい」
ラプンツェルは立ち上がり、紅蓮と代わる。
「今回ばかりは、流石に肝が冷えたぞ? 顔半分を失くしていたのだからな」
「ごめんなさい……」
「謝罪なら、まずはスノーホワイトにするべきだ。そして、覚えておくといい。私も仲間が傷ついては満足に酔えないのだよ」
「……はい」
「よし。なら早く行ってやるといい。なにせ君が心配で仕方がなかったようだからね」
紅蓮が目を向けると、スノーが目を逸らした。
「あの、スノー?」
「……何だ」
「その……ごめんね、スノー。余計な心配をかけさせちゃって」
いつの間にかゴッデス部隊以外にも、周りからニケたちが集まってきていた。それにヨハンやセシルも遠くから見守っているようだった。
「言いたいことはあるかもしれない。でも、私が戦うことをやめることはできないから、その……」
視線が私に集まっていく。
「今すぐではないけど、その時が来たら、私を守って欲しい」
「……誓え」
「え?」
「必要な時、必ず助けを求めろ。今度また無謀な行動を取ったら、私がお前を戦場から引き摺り下ろす。いいな?」
周りの空気で押し潰されそうだ。
「……はい。誓います」
「よし。ならいい。立て」
土下座から解放され、私はようやく足を地面につけた。
「おや、ルナを連れてきた時は随分焦っていたようだったが?」
「……黙れ」
スノーが睨むと、紅蓮は笑いながら酒を仰いだ。
「ここでは呑むなと釘を刺しておいたはずですが? ピナが掃除してくれたこの場所が汚れたらどうするつもりですか?」
「いいではないか。久しぶりに全員揃い、こうしてルナの安否も確認できた。ようやく気分良く酔いを回すことができるというものよ」
紅蓮を見るドロシーの顔が険しくなる。
「……食事の場をピナが用意してくれています。呑むならさっさと其方へ向かってください」
「なんだ。そういう場があるなら早く言っておくれ。なら、そこで飲み直すとするかね。君たちも早く来るといいさ」
そう言って紅蓮はロビーから姿を消した。
「では、私たちも行きましょうか」
「私はルナと行く。先に行ってくれ」
「そうですか。では」
「私もピナの手伝いをしなければならないので。お先に失礼します」
ラプンツェルとドロシーもロビーから離れ、周囲のニケたちもいつの間にか姿を消していた。
「ルナ」
背後から手を握られた。
「……?」
「……頼む。死なないでくれ。私はもう、大切な人を失いたくないんだ」
スノーが今どんな表情をしているのか分からない。けれど、握られた手の力が強くなっていく。
「……うん。約束だ」
思えば、随分前にもこんな約束をした気がする。二の舞にはならないようにしないと。
「ねぇ、スノー」
「やめろ……振り向くな。黙ってこのまま握ってろ」
「……ふっ。分かったよ、スノー」
しばらく、ロビーには私たちの呼吸のみが響いた。
───
「おやぁ? 随分遅かったではないかぁ?」
会場となった場所に向かうと、既に紅蓮の舌が回っていない。
「ちょっとスノーと話し込んじゃってね」
「……」
「ふぅむ……まぁ、そういうことにしておいてやろうじゃないか」
「ふ、二人きり……!? そんな絶好のシチュエーションなんて……」
ラプンツェルが想像しているようなことは断じて行っていない。
「お二人とも、料理が冷めてしまいますので早く座ってください」
「はいはい〜。ほら、スノー?」
「……ああ」
スノーは私の隣に座り、久しぶりの料理にありついた。
「ほら、スノー? これが食べたいんでしょ〜?」
目の前に肉や何やら、スノーが好みそうなものを盛り付ける。
「い、いらない。お前が食べろ」
「えっ。スノーが食べ物で断るとか、明日は粒子砲の雨でも降るのかな……」
「あなたに食べて欲しいんですよ。そうでしょう?」
「……」
ドロシーが指摘すると、スノーはプイッと顔を横に向けた。
「そっか。なら、ご好意に甘えよっかな」
皿に盛り付けた料理を次々と口に運んでいくが、流石にこの量は想定外だ。
「……」
視線を強烈に感じる。勿論スノーからだ。
「……えっと。少し食べる?」
「!! いいのか!?」
待ってましたと言わんばかりに、スノーは目を輝かせた。
まあ、元々私一人じゃこんなに食べられないしね。
「ドロシー! 酒はもうないのかいー?」
「……この場のお酒は殆ど全てあなたが胃に収めたようですが?」
「おや、どうやらそのようだな。だったら追加だ。今宵はまだまだ酔い足りないのでな。君もそうではないのかい?」
「……ピナ、まだ在庫は残っていますか?」
「はい! すぐに持ってきますね!」
ドロシーや紅蓮。そしてピナ。
「ルナ、良かったら私のを食べますか?」
「え? でもラプンツェルの分が……」
「いえ、私はいいんですよ」
「なら、頂こうかな。あっ、ならお礼に」
ラプンツェルの耳に向かって囁く。
「久しぶりに、私のコレクションをあげようかな。心配させちゃったお礼と、この分をね」
「!?!? は、はひいぃぃ……」
とても聖女とは思えない顔をしているラプンツェルを眺めながら、料理を口へ運ぶ。
味覚はこんなに機能している。
「何故ラプンツェルは顔を赤らめているんだ?」
「ううん、こっちの話。よしっ! 私も久しぶりに食べないと!」
スノーホワイト、ラプンツェル。この場は本来なかった。改変に多少の濁りがあることは間違いない。でも、彼女たちとなら───
ひとまずは、この幸せを噛み締めることにしよう。
改変によるキャラクターの口調や本作の進行はどのような方向性にして欲しい?
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積極的に変えて
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原作っぽさを残しながらも変えてほしい
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あまり変えないで欲しい
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原作そのままで