「はい、一丁ぅ〜」
力なく垂れ下がった身体をそのまま投げ捨てる。
マリアンがカウンターズ所属になったその後、彼女は記憶が戻っている状態でもラプチャーに情けをかけるような様子が確認され、中央政府からの追手があらわれるようになってしまった。
「やれやれ。結局こうなるのか」
初めのほうは指揮官たちだけで対応していたが、エンターヘブンや中央政府の軍人、あらゆる人間がマリアンを狙い始め、そんな報告を指揮官から直接受け、こうして臨時の戦力として活動している。
勿論、素性が判明しないように、武装から服装、顔を新しく作成したバイザーを装着して戦闘を行っている。
「これで十三回目。そろそろか」
地べたに情けなく立ちすくむ人間共を適当に放り投げ、私は前哨基地へと向かう。
「指揮官さーん? 無事ですかー?」
「ああ。問題ない」
「なら良かったです。いい加減、奴らもしつこいですね」
人間相手のため、殺すことは許されない。手加減というのは何ともむず痒いものだ。
「……すまない」
「いいえ。あなたが気にすることじゃありません。所詮、向こうはその程度の組織なんですよ」
「まぁ、あんたが来てくれたおかげで随分と楽になったわ」
アニスが炭酸水を飲みながら呟く。
「それは何よりです」
「まあ、守られてばかりで何だか申し訳なくなってくるわね」
「では、もっと力をつけてください」
「分かってるわよ! それが簡単に出来れば苦労しないっての!」
「では! 私にあなたの火力を教えてください!」
「ああ……うん。また今度ですね。さて、そろそろご飯にしましょうか」
この時に備え、エデンからいくつかの資源を運んできた。正しく使えばおよそ一ヶ月程度は持つ量を。
「こんな資源、一体どこから持ってくるの?」
「企業秘密です」
ラピからの質問を流しながら、缶詰やら保存食を開けていく。
「ほら、マリアン。君も食べな」
「は、はい。あの、すみません。こんなにいっぱい……」
「気にしなくていいって言ったでしょう? これは人類のための先行投資だと思えばいいって」
「……はい」
一つ、ビスケットを口に入れ考える。本来より資源は潤沢にあるが、それでも限界はくる。そして、彼らの精神的・身体的疲疲労も加味すると、ここが限界か。
「指揮官さん、少しいいですか?」
私は指揮官だけに聞こえる声で話す。
「どうした?」
「あなたはきっと、マリアンをここにいさせたいと願うでしょう。しかし、状況は悪化の一途を辿っています。厳しいことを言いますと、ここが限界かもです」
「……そうか」
「? 指揮官、どうしました?」
マリアンが私たちの会話に気がついたようで近づいてくる。
「マリアン……」
「はい。何ですか?」
指揮官は言いづらそうに口ごもっていた。
「私から話してあげましょうか?」
「いや、大丈夫だ」
さすがにそこまでではなかったか。指揮官はマリアンに向き合うように座り直す。
「マリアン。君を、ピルグリムに任せたい」
「……え」
マリアンは少し顔を蒼白にした。
「君を守り続けるのは、ルミナスムーンの力を借りても現状不可能だ」
「……そう、なんですね」
「ああ。だが、必ず迎えに行く。次会う時は、君を守れる力をつけて」
先ほどの賑やかな食卓が一瞬にして冷え込んでいる。
「……すまない。分かってくれ」
「大丈夫です。指揮官たちと離れることは勿論嫌です。でも、指揮官は約束を守ってくれますよね?」
「ああ。約束する」
「なら、大丈夫です。信じています」
マリアンが頷き、ひとまず安心した。
「それじゃあ、そういう方向性のために連絡しておきますね」
席を立ち、私は出口へと向かう。
「あれ? あんたどこ行くの?」
「ちょっと野暮用です。詳しくは指揮官さんに聞いてください」
カウンターズの面々にそう言って、私は外に出た。
───
「あーあー。こちらルミナスムーン。誰かいたら、応答どうぞ」
通信を入れ、しばらく待っていると、賑やかな声が聞こえてきた。
『どうしたんだい? この無線を使うなんて珍しいじゃないか』
「やっほー、紅蓮。今そこに誰かいる?」
『ああ。今、ラプンツェルと共にいるよ』
耳を澄ますと、ラプンツェルの声らしきものが聞こえた。
『一体何事ですか。ルナがこの無線を使うなんて』
「あっ、ドロシー。今どこにいる?」
『ピナと一緒にエデンにいます。いきなりそんなことを聞いてどうしたんですか?』
「いや。ちょっと頼みたいことがあってね」
そう言うと、無線越しに驚くような声が聞こえた。え? そんなに驚くこと?
『今、起動しました。珍しいですね。ルナ、あなたが頼み事なんて』
「私が頼み事しちゃダメかな、ラプンツェル?」
『いいえ。約束を守ってくれてとても嬉しいですよ』
約束というのは、恐らく全員が集まったあの時のことだろう。
「そっ、か。まぁ、その。頼み事と言うのは……」
『すまない。少々電波が悪かったようだ。たった今回復した』
言葉を遮るようにスノーの声が入ってきた。
『スノー。そういえば最近あなたを見てませんけど、装備の点検は大丈夫なんですか?』
『装備のことなら、私が一番知っているつもりだ。そんな単純なミスは犯さない』
『どうだか。君はどこか抜けているからね。ルナを連れてきた時のあの時は──』
『今すぐその話をやめろ。そして二度と思い起こすな』
『ああ、すまない。久しぶりにこうして会話をできることに、少し気分が高揚してしまったらしい』
スノーの話は気になるが、ここで聞いてしまってはスノーが話を聞いてくれなくなってしまうため、ここは堪える。
「……後で聞いておくか」
『……? ルナ、どうしました?』
「へ!? あっ、いや。何でもない。それより本題なんだけど、例のヘレティックのことで少し……」
ようやく本題に入った。
『……確か、マリアンと言いましたっけ?』
「うん。それで、彼女が──」
そこから、私は今マリアンが置かれている現状と、その対策を説明した。
『なるほど。人類の楽園を謳っていた割には、思ったより状況は凄惨みたいだね』
『では、エデンにその方を?』
「いや。今エデンはまずい。例の火竜がいるでしょ? 同じヘレティックを合わせたら面倒だ。ヴァイスリッターに連れて行くのが安全だと思ってね」
それに、エデンに入れるとなると絶対試練があるから、とは口が裂けても言えなかった。
「あそこならある程度融通が利くから、ちょうどいい」
『……それは、エデンに自由がないとおっしゃいたいのですか?』
「……へ? いや、別にそういうわけじゃ……」
変にドロシーの地雷を踏んでしまったらしい。
『君が行っているその試練を、もう少し優しくすれば良いのではないのかい?』
『それは行けません。楽園に入る者はしっかりと見極めないといけませんから』
「と、とにかく! マリアンの護衛のために、いくつか人員が欲しいんだけど」
本来はスノー、紅蓮、ラプンツェルの三人がいた。けれど今回は私もいる。だからそんな大人数は必要ないと思うのだが……
『分かりました。ではそちらに向かいますね』
『そのお嬢ちゃんの顔も拝んでおきたいしな』
『了解した。一度紅蓮たちと合流してから向かう』
「うん。分かった」
これで目的は達成できたはずだった。
『では、久しぶりに遠征と行きましょうか、ピナ?』
「え? ちょっと待って。ドロシーにピナも来るの!?」
『? 当たり前でしょう? まさか、私たちを仲間外れにするつもりですか?』
「いや、でも……うーん」
正直誤算だった。でも今のゴッデスなら、多少人数が多くなったって支障は出ないか……
「分かった。後で座標を送る。えっと、気をつけてね?」
『勿論です。さあピナ、早速準備しましょうか』
『はい! ドロシー様!』
遠くからピナの声が聞こえ、何とも楽しそうな雰囲気で通信が切れた。
「……」
『では、私たちもこれで』
『次は現地でな』
ラプンツェルと紅蓮の通信も切れる。
『王国への連絡はどうする?』
「私がしておくよ」
『分かった。私も、トーカティブを逃してしまったことを謝罪しないとな』
そうしてスノーとの通信が切れ、あれだけ騒がしかった連絡機は静まり返った。
「さて、王国にも連絡しないとな……」
色々不安はあるが、ひとまず回線を繋げる。
「あーあー。こちらルミナスムーン。応答どうぞ」
『貴様ぁ〜! いきなり何なのだ! こんな忙しい時に連絡をするなんて、一体どういうつもりなのだ!』
通信機から聞こえるチャイムの大声に、思わず耳を離してしまう。
「え、えっと。新たな民をそちらに迎えたくって……」
『なに!? 何故そんな大事なことを早く言わないのだ!』
「いや、先に振ってきたのはそっちでしょ……」
駄目だ。あの王国のノリにはどうしてもついていけない。
『むっ。かしこまりましたお嬢様! 今から通信をお嬢様に代わるのだ! 絶対に無礼の無いようにするのだ!』
「あっ、はい。了解です……」
一方的に会話を進められげんなりしていると、王国の主人の声が聞こえてきた。
『お久しぶりですわね、ルナ。貴女という民が、更に新しく民を連れてきてくれることはとても嬉しく思いますわ』
「あ、はい。そうですか……」
すっかり私は「民」という扱いになってしまったらしい。
『いつ、こちらへ向かわれますの?』
「ゴッデスの全員が揃い次第、そちらに向かいます。多分、二週間ほどで辿り着くと思います」
『分かりましたわ。貴女方を心よりお待ちしておりますわ。チャイム?』
『代わったのだ! 王国に着くのは二週間後でいいのだな?』
「はい。大きなアクシデントがなければ」
『分かったのだ! では、我らは業務に戻るのだ!』
そう言って一方的に通信が切られた。
「……苦手だ」
立ち上がり、前哨基地に戻ろうとした瞬間、レーダーに反応が映った。
「……ほんと、タイミングってのに気を遣えないのかな?」
指揮官たちを呼ぶまでもない。武器を担ぎ、バイザーを閉じて暗闇を駆けていく。
音もなく建造物の間を抜けると、ちょうどこちらへ進行している部隊が見えた。
「……数は、十数人」
装備を見てエンターヘブンの分隊だと判明する。
「行っきまーす」
頂上から落下し、そのまま分隊の最後尾の兵士を殴りつける。
「何だ貴様ッ──ガッ!?」
向けられた銃口を蹴り飛ばし、そのままライフルを向ける。
「さて。大人しく去れば、互いに無駄な傷を負わずに済む。どうかな?」
「総員──撃て!」
何故連中はこうも争いが好きなのか。
銃弾を飛びながら避け、フラッシュバンのピンを抜く。
「よっと」
その手でそのままニケの一人を殴り飛ばし、一緒にフラッシュバンを投げ込む。
「グアッ!?」
光と轟音が辺りを包み、怯んだ一瞬の隙で一人、また一人と蹴り、殴り、確実に意識を失わせていく。
「テロリストだと言っても、そう簡単に殺しはしないよ」
ようやくこの場に静寂が訪れた。そのまま奴らはアウターリム周辺にでも転がしておいた。
「さ、帰ろう帰ろう」
一仕事を終えて、私はようやく前哨基地へと戻った。
Q.どうして最後、人間に攻撃できたの?
A.侵食を発動させるとNIMPHが一時的に機能停止になるため。
改変によるキャラクターの口調や本作の進行はどのような方向性にして欲しい?
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積極的に変えて
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原作っぽさを残しながらも変えてほしい
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あまり変えないで欲しい
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原作そのままで